沖縄県民投票告示、ほぼ反対派の圧勝か 住民投票の効力はいかに

2019.2.14

政治

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沖縄県民投票告示、ほぼ反対派の圧勝か 住民投票の効力はいかに

写真/NurPhoto

沖縄県による米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古移設への賛否を問う県民投票が2月24日(竹富町は23日)に行われる。選択肢は「賛成」「反対」「どちらでもない」の3つ。反対票が賛成票を上回った場合、政府が結果をどう受け止めるかが注目だ。

国は行政不服審査法を利用して工事を強行

県民投票は2月14日に告示された。沖縄県によると、賛否を問うのは「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立て」について。選択肢の3つのいずれかに〇をつける方式だ。

投票権を持つのは今年2月13日時点で日本国籍を有する18歳以上で、沖縄県内の特定の市町村に3カ月以上住んでいる者。一般の選挙と同じように、期日前投票もある。

投票結果に法的拘束力は無いが、賛成または反対の多い方の票数が有権者数の4分の1以上となった場合は「知事はその結果を尊重しなければならない」。その際は知事が首相と米国大統領に「速やかに結果を通知するもの」と条例で定めている。

沖縄県|辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票TVCM 30秒

普天間基地の辺野古移設をめぐっては、2015年に当時の翁長雄志(おなが たけし)知事が埋め立て工事の承認を撤回。政府は行政不服審査法に基づく不服審査請求を起こし、国交相が認めたのを受けて昨年12月に埋め立て工事の再開を強行した。

行政不服審査法

行政庁の違法または不当な処分に関して、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度。「国民の権利利益の救済を図る」「行政の適正な運営を確保する」を目的としている。2016年4月1日施行。

知事による承認の撤回も異例だが、政府が行政不服審査によって対抗したり、地元の反対を押しのけて工事を強行したりするのも極めて異例。国と沖縄県の争いは泥沼化している。

「オール沖縄」の独壇場、事前調査では7割が新基地建設に反対

こうした状況のなか、昨年9月の知事選で、「移設反対」を公約に掲げて初当選した玉城デニー知事は、政府への新たな対抗策として県民投票の実施にこぎつけた。

当初は「賛成」「反対」の2択だったことから、「民意を反映できない」などとして沖縄市、宜野湾市など5つの市が不参加を表明。その後、選択肢に「どちらでもない」を加えることで県議会の各会派が合意し、条例を修正して県内の全市町村で投票が行われることとなった。

現在、投開票に向けて共産党や社民党などで構成する「オール沖縄会議」が反対票に投じるよう懸命な運動を繰り広げる一方、移設を推進する立場である国政与党の自民党及び公明党の動きは鈍い。「今の状況では勝てる見込みがない」として両党とも自主投票を決めた。

「オール沖縄」の公式HP には、辺野古新基地移設について、県民の74%が反対している旨のアンケート結果が記載

法的拘束力の無い住民投票の実際の効力は

沖縄県で県民投票が実施されるのは1996年に続いて2例目。前回は1995年に起きた米兵による少女暴行事件を受け、「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小」についての賛否が問われた。

結果的に賛成票が投票総数の89%を占め、有権者数の過半数も超えた。投票結果を受け、当時の橋本龍太郎首相は「厳粛に受け止める」と表明。当時の大田昌秀知事との会談では、沖縄振興のために50億円の特別予算を計上するよう大蔵相に指示したことを明らかにした。

沖縄ではないが、過去には新潟県の巻町(現新潟市)で東北電力による原発建設の賛否を問う住民投票が行われたこともある。1996年8月に行われたこの住民投票は沖縄県の住民投票の約1カ月前で、条例に基づく住民投票としては日本初。結果は投票率が88%、反対票が61%、賛成票が39%となり、その後、東北電力は計画の撤回に追い込まれた。

新潟県では2001年にも刈羽村で東京電力柏崎刈羽原発3号機のプルサーマル計画の是非を問う住民投票が行われたが、このときも反対票が53%を占め、投票直後に県知事らが計画の延期を決定。最終的に新潟県が計画の事前了解を取り消し、計画はとん挫した。

いずれにしても工事は進むが…

今回は投票結果が政府の方針にどのような影響を与えるだろうか。仮に賛成が過半数、もしくは反対を上回った場合、政府・与党は「お墨付きを得た」として辺野古移設を急ピッチで進めるだろう。政府・与党にとってこのシナリオが最善だが、基地反対の声が吹き荒れる沖縄でこうした結果となる可能性は非常に小さい。

逆に反対が過半数、もしくは賛成を上回った場合は、反対票がどこまで増えるかによって対応が異なるだろう。投票率が高水準となり、1996年のときのようにはっきりとした結果が出れば首相も沖縄の民意を無視しづらくなる。

ひとつの目安は反対票が有権者数の半数を超えるかどうかだ。仮に反対過半数となれば移設は断念しないにしても、新たな振興策を打ち出すなど何らかの対応を取らざるを得なくなる。何もしなければ春の統一地方選、夏の参院選への悪影響も考えられるからだ。

一方、投票率が低水準となったり、反対と賛成が僅差となったりすれば「民意をしっかりと受け止める」などと表面的に言いつつも、淡々と移設工事を進めることになるだろう。地元の自公議員の動きが悪いのは、こうした状況を望んでいるからだとみられる。

4つ目の可能性として「どちらでもない」票が最多となった場合はどうなるか。この場合も投票率が低水準だったときと同じとなるだろう。ただ、朝日新聞によると、過去の住民投票で「どちらでもない」のような中間的選択肢を設けた例は6件で、中間的選択肢が最も多く票を集まった場合でも12%にとどまった。積極的な意見を持たない県民の多くは棄権するか白紙で投票するとの見方がある。

沖縄県の“民意”を政府が受け止めるか、それとも受け流すか。県民投票でどれだけはっきりとした意思を示せるかがカギとなりそうだ。