尊徳編集長の俺にも言わせろ!!

内閣改造は党内人事の調整の一環に過ぎない 小泉進次郎氏の登用で反安倍を封印

2019.9.17

政治

0コメント
内閣改造は党内人事の調整の一環に過ぎない 小泉進次郎氏の登用で反安倍を封印

写真/Tomohiro Ohsumi

9月11日に発足した第4次安倍再改造内閣。閣僚19人中17人が入れ替わる大幅な内閣改造となったが、その顔ぶれを見れば、安定運用を目指した“いつも通り”ともいえる人事のやり方が透けて見える。目玉人事となった小泉進次郎氏もこれまでのように政権に縛られない自由な発言ができるかというと疑問だ。ワクワクさせるような内閣人事はやはり望めない……。

はっきり言って大臣には誰がなってもいい

今回の改造内閣は、良く言えば気心の知れた人たちを中心に据えた人事、悪く言えば“お友達”を登用した安定第一の内閣だ。環境大臣に登用した小泉進次郎氏以外は、特段、目玉と呼べるような人事はなかった。

それもそのはずで、本来、内閣改造なんてしょっちゅう行う必要はない。それを1年に1回とかのペースで行うのは、いわゆる入閣待機組と呼ばれる中堅議員たちにポストを与えて、不満を解消させたり、派閥同士の摩擦を抑えたりするためだ。

入閣待機組

自民党内において、衆議院で当選5回以上、参議院で当選3回以上の国会議員のうち、閣僚経験がない人を指す。現在は約70人が入閣待機組に該当する。

参院選後のタイミングになったが、参院選の結果を受けて内閣改造をしているわけではなくて、“きっかけとしてちょうどいい”ぐらいに過ぎない。前回の内閣改造も大体10月2日で同じ時期だったしね。

首相が国のトップとしての仕事をする上で、この人じゃなきゃダメっていう人事はそんなにない。もしそういう人がいたら、首相が替わってもずっと同じ役職に就いているはず。そうならないのは、内閣改造は党内人事の調整の一環に過ぎないからだ。

党内の各派閥からバランスよくすくい上げた顔ぶれ

主だった顔ぶれに注目すれば、党内の各派閥に配慮した人事だということがよくわかる。

安倍総理の派閥である細田派は3人。麻生派は麻生太郎副総理も含めて3人。岸田派は2人入閣で岸田文雄氏が政調会長を続投。竹下派は2人。二階派は2人。石破派は0人。無派閥は6人。

僕は今回、自民役員の幹事長は次期総理と有力視される岸田文雄氏がなるんじゃないかと思っていたが、蓋を開けてみれば二階俊博氏が留任。岸田氏は政調会長に納まった。二階氏は公明党にも太いパイプを持つし、影響力から見て外せなかったのだろう。その代わりというか、岸田派を2人、内閣に入れているのだと思う。

文部科学相の萩生田光一氏は細田派で、加計学園獣医学部新設問題のときに関与が取りざたされたが、否定し続けたことで総理に評価された。側近としてそろそろ入閣させてやろうということだろう。

厚生労働相の加藤勝信氏は竹下派で前回は総務会長を務めた。彼は総理が信用している人物だし、今回は党三役から外れて竹下派がいなくなったから、入閣させたと思われる。

党三役

政党内の3つの重要な役職の総称。自民党内では幹事長、総務会長、政務調査会長。

同じく竹下派で外務相の茂木敏充氏は、前回の総裁選のときに同派閥の衆議院側をまとめて安倍支持にしたことから、総理の信頼を得た。英語もできて頭も良いし、なにより外交は気脈を通じた人の方がいいから、そういう意味でも総理にとっては使いやすい人材なのだろう。

逆に麻生派で防衛相の河野太郎氏は、有能だが入閣前は党内で公然と反原発の姿勢も取っていた人物。我も強いが、そういった批判的な発言を抑えるという意味でも前回の外務相に続いて登用していると思われる。実際に入閣して以来、河野氏は反原発についての意見を述べることはなくなった。

安倍総理にとって本当に必要な人材

一方で、留任となった麻生副総理や菅義偉官房長官は安倍政権にとって、絶対に欠かせない存在。菅氏は党内を抑える力があるし、副総理と財務大臣を兼任する麻生氏は総理を精神的にも支える存在だ。総理にしたら、この2人は代わりがいないのだろう。

麻生氏や菅氏以外は、自分が使いやすい人たち、あるいは抑え込みたい人たちを据えたという印象だ。

今回でより顕著になったのが石破派の徹底排除。前回の内閣では山下貴司氏が法務相を務めたが、今回はどこにも石破派は見当たらない。石破茂氏は反安倍の姿勢をとり続けているために、石破派は徹底的に排除されてしまった。

最大の収穫は小泉進次郎氏を取り込めたこと

そういう意味で無派閥ながら石破氏を推していた小泉進次郎氏は特別な存在といえるかもしれない。

小泉氏は2012年、2018年の党総裁選で石破氏を支持し、安倍総理とは距離を置いてきた。それでも入閣させておく方がいいと総理が判断したのは、小泉人気の高さを内閣の支持率アップに充てたいというのもあるだろうが、野放しにしておくデメリットを防ぐという意味もある。河野氏と同様に、入閣させることで政権への批判的な発言を封じたいのだ。推測だが、官邸で結婚発表させたのも、菅氏あたりが考えた取り込み策だろう。前回も入閣を打診されていただろうが、今回はさすがに断れなかったのだと思う。

改めて言うが、今回の内閣改造も、派閥や待機組に配慮しただけの旧態依然とした党内人事。誰がどのポストについても同じだから、しょうがないといえばしょうがない。

安倍総理の任期は残り2年。4選は99%ないが、首相を辞めた後のことも考え、党内の入閣待機組を消化するためにもう1回ぐらい内閣改造を行うかもしれない。