平均世界シェア40%超、景気回復の芽は“ニッチトップ”

2020.9.10

経済

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平均世界シェア40%超、景気回復の芽は“ニッチトップ”

経産省HPより

新型コロナウイルス感染拡大で、世界経済は奈落の底に落ちている。日本の経済も4月の緊急事態宣言から営業自粛、外出自粛が続き、個人消費の落ち込みは深刻だ。飲食、宿泊、観光、航空など悲惨な業界を挙げればきりがないほどだ。「需要が蒸発した」と嘆く中小企業の経営者の嘆きが聞こえる。

 

だが、いつかコロナ禍は収束する。治療薬、ワクチンの開発は急ピッチで進められており、2021年前半にはアフターコロナの新たな領域がひらけるのではなかろうか。コロナ後の成長の芽となるのはどういった企業なのか、その糸口はニッチな市場に隠れている。

アフターコロナで強い企業とは

「巣ごもり消費」「ニューノーマル(新常態)」「withコロナ」「ワーケーション」……など、コロナ禍を契機に浮上した新たな生活スタイルを表象するキーワードは少なくない。コロナ後の日本経済の姿はまだはっきりとは断定できないが、現在のように過度に委縮した経済活動は是正されるだろう。しかし、常にウイルス感染、パンデミックを意識した経済活動、生活スタイルへと転換することは避けられそうにない。

端的に言えば、マスクがいらない生活に戻るのか?ということでもある。家庭用ミシンを主力とする蛇の目ミシン工業の業績はコロナを契機に急伸していることはその端的な表れであろう。ミシンで手作りマスクを作るという「withコロナ」ならではの新需要盛り上がりから家庭用ミシンがバカ売れしている同社は、2020年4~6月期の連結純利益が前年同期比約13倍に膨れ上がった。

また、「巣ごもり消費」の拡大によりゲーム需要が急伸している様は目を見張るものがある。「あつまれ どうぶつの森」が大ヒットした任天堂は4~6月期の営業利益が12年ぶりに過去最高を更新したほか、カプコンも同期の最終利益が過去最高を記録した。ソニーもゲーム利用が増え、4~6月の純利益が53%も増えた。

「巣ごもり消費」の影響は、持ち帰り需要を取り込んだマクドナルドホールディングスやケンタッキーフライドチキンの日本KFCホールディングスの業績も押し上げている。また、家庭での自炊需要の高まりを反映して日清食品ホールディングスやエスビー食品も業績が好調だ。さらに、電子コミックやペット関連の需要も急拡大しており、関連する企業が潤っている。

そして、「ワーケーション」では、いうまでもなくZoomに代表されるテレワーク関連の企業の躍進ほか、パソコンの販売増は大手家電量販店の業績にも波及している。

だが、こうしたコロナ禍を追う風とした業績の拡大は、コロナ後、どこまで持続するかは未知数だ。中には一過性の特需に終わり企業も出てこよう。

そうしたなか、市場が注目しているのは、ニッチな狭い市場であるが、当該市場の中では圧倒的な市場支配力と競争力を持つ“ニッチトップ”といわれる企業群だ。その優れた企業群について、経済産業省はコロナ禍の最中の7月、2020年度版「グローバルニッチトップ企業100選」 を発表した。

コア技術を持つ、日本の製造業の底力を体現するような企業群

グローバルニッチトップ企業とは、「大企業は、製品サービス市場の規模が100~1000億円で、過去3年間のうち1年でも20%以上のシェアを確保したことがある企業」「中小企業は、同じく過去3年間のうちに1年でも10%以上のシェアを確保したことがある企業」で、113社が選ばれている。選出された企業の平均世界シェアは43.4%、営業利益率は12.7%、海外売上比率は45%と非常に高い水準を確保している。

この選出は2013年に続いて7年ぶりで、「前回、選ばれた企業には多くの投資マネーが流入し、業績の伸長とともに市場平均を上回る投資効果を得た」(資金運用会社)という。いわば日本の製造業の底力を体現するような企業群であり、「コロナ禍、さらにポストコロナの厳しい環境下を勝ち抜き、生き残り得る企業の面々」(同)といっていい。

その中で、2013年に続き、今回も連続選出された企業をピックアップすると、

  • NITTOKU=精密FAライン設備
  • 小森コーポレーション=商業用オフセット印刷機など
  • 環境経営総合研究所=NECRES(高水分の有機性廃棄物と廃プラを混錬・熱分解によりカーボン化)
  • イシダ=自動計量包装値付機
  • フルヤ金属=イリジウム化合物(有機EL燐光材向け一次材料)
  • ナミックス=フリップチップ実装用アンダーフィル剤など
  • JEOL RESONANCE=高磁場NMR(物質の分子構造など様々な化学構造情報を測定)
  • 東京応化工業=半導体製造用フォトレジスト、高純度化学薬品
  • オプテックス=自動ドアセンサー、エスペック=温度や湿度、圧力などの環境因子を人工的に再現し、工業製品の信頼性を確保する環境試験器
  • テイカ=医療用超音波画像診断機用セラミックス振動子
  • アタゴ=ポケット糖度・濃度計、ポケット塩分計、ポケット非破壊糖度計、ポケット糖酸度計、ポケットpHメーター
  • 山八歯材工業=人口歯

となる。

これら選定企業がこれから取るべき戦略については、「コア技術を活かした他分野への進出」(69.0%)、「新規顧客との取引拡大」(54.9%)が上位を占めた。他社にないオンリーワンともいえるコア技術を持つことが生き残りの鍵を握っている。コロナ後の世界ではその重要性が一層高まろう。