安倍元首相急死の影響のなか明日、参院選投開票

2022.7.9

政治

1コメント
安倍元首相急死の影響のなか明日、参院選投開票

写真:つのだよしお/アフロ

安倍晋三元首相の銃撃による急死は、政界に大きなショックを与えた。非常時だが予定されていた7月10日投開票の参院選は実施される。報道各社の情勢調査では自民、公明の与党が勢いを維持している。岸田文雄首相の掲げた勝敗ライン「非改選を含めて与党で過半数」は固いとみられ、よりハードルの高い「改選過半数」も超えそうな勢いだ。

与党の勝敗ラインは改選過半数から

  • 「与党、改選過半数の勢い 立民伸び悩み、維新大幅増の公算」(7/1~3、読売新聞)
  • 「自公、改選過半数の勢い 立民伸び悩み、維新は伸長」(7/1~3、日経新聞)
  • 「野党がやや盛り返し『接戦区』増加」(7/2~3、毎日新聞)
  • 「接戦区で与党総力、野党間も激戦」(7/2~3、産経新聞)
  • 「自公、改選過半数の勢い維持 立憲、改選議席割る可能性」(7/4~5、朝日新聞)

報道各社が“ラストサンデー”の前後に行った終盤情勢の結果がこちら。読売と日経はかなり表現が近く、朝日では具体的に自民が56~65議席、公明が12~15議席、立憲民主党が12~20議席、日本維新の会が10~16議席と予想した。これが正しければ与党は68から80議席を獲得できることとなる。

毎日新聞は序盤に比べて、野党が少し盛り返してきているとみる。自民の獲得議席は56以上から53以上、公明党は13以上から10以上に減ったという。ただ、与党の数字を足し合わせると64から80議席で、読売の調査と変わりない。立民は11~24議席、維新は11~17議席で、こちらも大きく違いはない。

岸田首相が勝敗ラインに設定した「非改選を含めて与党で過半数」は、具体的には非改選を含めて125議席。与党の非改選議席数は最近、自民党に復党した橋本聖子氏を含めて70なので、今回の選挙で55議席獲得すれば届く。各社の調査を見る限り、軽くクリアしそうな情勢だ。
そこまでは与野党ともに織り込み済み。それよりも、実際にはより高いハードルである「改選議席で過半数」「改選議席の維持」が勝敗ラインとなる。改選議席で過半数は具体的に63議席、改選議席の維持は69議席。調査によれば前者は超えそうな勢いで、後者を超えるかどうかは微妙な情勢となっている。

選挙結果を左右するのが改選定数1の「1人区」。朝日新聞によれば全国に32ある1人区のうち、28選挙区で自民が野党系候補をリードしているという。毎日新聞によると自民が21選挙区で優勢だが、序盤と比べると福島、福井、宮崎が優勢から接戦に転じたという。産経新聞によると新潟では立民が優勢となり、長野は自民と立民が互角の戦いとなっている。

参院選の鍵を握る「1人区」 与野党一騎打ちは32分の11選挙区

2022.7.4

堅調な与党が警戒するのが“緩み”だ。自民党の山際大志郎経済再生担当相は7月3日に青森県で自民党候補の応援演説をした際「野党の人からくる話は、われわれ政府は何一つ聞かない。生活を良くしようと思うなら自民党、与党の政治家を議員にしなくてはならない」と発言。野党の反発を受け、翌日、松野博一官房長官は山際氏を注意した。一つの失言が選挙全体の流れを変えることも少なくないため、与党内には警戒感が広がっている。

注目の選挙区は東京、神奈川、京都、愛知

与党の獲得議席とともに、注目されているのが「改憲勢力」の行方だ。憲法改正に前向きな与党と維新、国民民主党の4党で改憲の発議に必要な参院の3分の2議席を維持することができるかどうか。具体的には今回の選挙で82議席を確保できればいいが、朝日の調査によると4党の予想獲得議席数は80~103。国民民主は2~7議席にとどまりそうだが、与党と維新の勢い次第では82議席を超える可能性がある。すでに衆院では3分の2を確保しているので、参院でも超えれば改憲議論が進む可能性が高まる。

3つ目の注目が野党の比例第一党だ。参院選の比例代表は全50議席で、前回の2019年では自民19、公明7で、野党は立民8、維新5、共産4という順だった。今回の参院選では維新が「比例で第一党」を目指しており、各社調査では維新が立民を上回る勢いだという。非改選議席数では立民が大きく上回るが、維新が地盤の大阪以外でも支持を広げ、比例第一党となれば今後の野党間の勢力図に変化をもたらす可能性がある。

個別の選挙区を見てみると、改選定数6の東京では、自民党が2議席を獲得する勢いで、立民と公明も安定しているという。残り2議席を共産、維新、れいわ新撰組、立民が争う展開で、特に維新の新人とれいわの山本太郎代表の戦いに注目が集まっている。

定数4に欠員補充1を加えて計5議席を争う神奈川では、自民2人と維新、公明が安定し、残り1議席を共産と立民の2人が争う展開。立民では共倒れを防ぐため、終盤戦では党幹部の応援を1人の候補に絞る方針だという。支持基盤である労働組合の票も1人に寄せる可能性がある。

定数2の京都では自民が抜け出し、立民と維新が横一線の戦い。立民の候補者は前幹事長の福山哲郎氏だが、同じ民主党出身である国民民主党の前原誠司代表代行が維新の新人を支援するという複雑な構図。立民にとっては泉健太代表の地元で落とせない戦いだが、維新にとっても大阪から周辺地域に支持を広げる好機。両党とも党を挙げての応援体制の行方に注目が集まる。

定数4の愛知では自民、立民、公明が優勢で、残り1議席を維新と国民民主が争う展開だ。製造業を中心に労働組合の強い愛知はこれまで「民主王国」と呼ばれ、定数が3だった時代も民主系が2議席を確保することが多かったが、最近では国民民主の支持が低迷。現職が議席を維持できるか微妙な情勢となっている。対する維新は河村たかし名古屋市長率いる「減税日本」との統一候補で、県内では初めてとなる参院での議席確保を目指す。

投開票まで残り数日。日本列島は「戻り梅雨」のような涼しい天候となっている地域もあるが、各党、各候補の戦いはますます熱を帯びそうだ。