映画『探偵はBARにいる3』深みを増した人物描写とアクション撮影の舞台裏に迫る

2017.11.24

社会

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映画『探偵はBARにいる3』深みを増した人物描写とアクション撮影の舞台裏に迫る

主演・大泉洋、共演・松田龍平の人気ハードボイルド&エンターテインメント第3弾『探偵はBARにいる3』が12月1日に封切りを迎える。原作の東直己『ススキノ探偵』シリーズは累計発行部数160万を超える人気を誇り、2011年の映画化第1作は、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の受賞や、日本アカデミー賞で7冠の快挙 を達成した。前作から4年ぶりに満を持して登場する本作。興味深い制作秘話の数々から、映画の見どころを探る。

 

 『探偵はBARにいる3』

劇場公開:12月1日(金)/配給:東映

 

【ストーリー】

舞台は札幌・ススキノ。探偵(大泉洋)のもとに高田(松田龍平)の後輩から依頼が舞い込む。失踪した恋人の諏訪麗子(前田敦子)を探してほしいというのだ。探偵は、麗子が風俗店で働いていたことを突き止めるが、店のオーナー・岬マリ(北川景子)の手下たちに、高田ともども痛めつけられる。無敗だった高田を圧倒したのは波留(志尊淳)という美青年。さらに、マリのバックには北城(リリー・フランキー)という黒幕が……。

 

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フリではなく本当に当てる! こだわりの格闘シーン

シリーズの見どころの一つ、アクションシーンでは新しいチャレンジがあった。というのも、クランクインの前に殺陣を作り込んでおくだけでなく、これまではパンチやキックを当てずにフリで撮っていたが、今回は臨場感を出すために実際に当てて撮影。

ただし、スピードを抑えて演じ、編集技術で疾走感を加味する方法とした。当てる部分でカットを割ることがないため、1カットのアクションが長くなり役者には負担増のはずだが、大泉洋と松田龍平は共にイキイキとアクションをこなしていったという。

これまで屈強な男たちをまとめて倒してきた高田役の松田は、波留役の志尊淳と、シリーズ初の一騎打ちを演じた。高田が波留に蹴り倒される場面を、松田は「これまで派手にやられる場面がなかったから不安だったけど、やられてワイヤーで飛ぶアクションは意外に楽しかった(笑)」と振り返る。向かうところ敵なしだった高田と、そんな高田をKOするほどのツワモノ・波留の“頂上決戦”は、劇場でぜひ観戦を。

女優魂溢れる北川景子のアクションを見よ

ヒロイン・北川のアクションも見ものだ。特撮ドラマへの出演経験もあり、2015年には「探偵の探偵」(フジテレビ)で本格アクションを披露した北川。雪の上をハイヒールで疾走、派手なガンアクションなど、本作でも惜しみなく体を張っている。

唯一、動揺を見せたのがビルの屋上から飛び降りるシーン。高所恐怖症の北川、撮影前は「怖い!」と震えていたという。しかし、本番では平然とジャンプしてみせ、女優魂を見せつけた。

リリー・フランキー演じる北城に髪をつかまれて投げ飛ばされるシーンも吹き替えは無し。「こんな美人相手にそんな芝居、最初はお金を払ってでもやりたいと思ったけど(笑)、実際の北川さんは作りがどこも華奢で、とても緊張した」とリリー。対照的に北川は勢いよく床に転がり、カットがかかるとすぐ笑顔になるなど、ここでも気骨を見せた。

「本当にすばらしい女優さん。作品を見終わった後、彼女の印象が強烈に残るし、北川さんの新しい魅力が満載だと思います」(大泉)と主演俳優からも猛プッシュだ。

もちろん、主演の大泉も体当たりで撮影に臨んだ。地元・北海道が舞台、メジャー大作での初主演作シリーズとあって、意気込みは生半可ではない。撮影前の過酷なトレーニングで、ケガをしてしまうほどの力の入れようだったという。

大泉は初日に「死なない程度になんでもやる覚悟です!」と宣言し、2日目には、お約束の“探偵がヒドい目に遭う”シーンを撮影。予告編でも印象的な船上でなぜかパンツ一丁のシーンを、2月の小樽の海で収めた。大泉は「僕にできるギリギリのシーンだった」と述懐するが、現場では「探偵の美学として、靴下は履いていたい」とアイデアを出すなど、積極的な姿勢を貫いた。

ヒットメーカー古沢良太(脚本)×コメディの名手・吉田照幸(監督)

脚本は、第1作から手掛けている古沢良太。ドラマ「リーガル・ハイ」シリーズ(フジテレビ)や映画『ALWAYS 三丁目の夕日』『ミックス。』など、ヒット作を多数生んだ人気作家だ。その古沢が試行錯誤をくり返し、約4年をかけて練り上げたのが本作。最終的には、原作のエッセンスを随所に散りばめながらも映画らしさを求め、大胆にアレンジした台本が完成した。

脚本には大泉の意見も取り入れられた。「主演俳優とこんなにたくさんやりとりをしながら脚本を作れたことはなかった。僕にとっては幸せな時間だった」と古沢。原作の東も映画を心待ちにしているようで、その証拠(?)に、本作では意外な場面でカメオ出演も果たす。

原作者の東直己登場シーン

監督は、前作までの橋本一に代わって、吉田照幸。NHKのコント番組「サラリーマンNEO」や朝ドラ「あまちゃん」、映画『疾風ロンド』などを手掛け、いわゆる“キャラを立たせる”人物描写やコメディ要素に定評のある演出家だ。

吉田の参入により、登場人物一人ひとりのバックボーンに重みが増している。

最大の魅力はやっぱり“探偵と高田”

コミカル調の人間ドラマを得意とする古沢と吉田のタッグで、特に注力して描かれるのが、探偵と高田の魅力的な関係性。

シリーズ第1作から携わる企画・プロデュースの須藤泰司(東映企画製作部長)は、「このシリーズには魅力的な要素がたくさんあるが、一番の魅力はなんといっても探偵と高田のやり取り。いい年の大人になっても、男同士でつるんで遊んでいる2人。そんな関係へのあこがれが映画の支持につながってきたと思う。新作は、そこを一番大事にしたかった」と語る。吉田監督の起用も「2人のやり取りを絶妙に切り取れる人」との確信があったことが大きな理由だという。

演じる2人も、固い絆で結ばれていたようだ。大泉によれば「4年ぶりとは思えないぐらい、最初から良い雰囲気だった」。ロケ期間中には、2人で食事にも行ったそう。「2人きりで雪の降る札幌の街を歩いて帰ったりもしたなぁ。僕が雪道の歩き方を彼にレクチャーしながら。龍平くんが『あ、ほんとだ、これだと転ばない』なんて言って(笑)」。

今回、高田は探偵に依頼人を紹介するなど一歩踏み込んだ仕事ぶりを見せたり、ある重大な決断をしたり、前作までとは一味違った動きを見せる。予告編では探偵が高田に「お前はクビだ」と告げる場面もあり、名コンビにもいよいよ転機の予感が――。事件の衝撃的な結末はもちろんのこと、2人の行く末にも、ぜひ注目してほしい。なお、鑑賞の際には、エンドロールで席を立たないことを強くオススメする。

 

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