【宮園泰人×近藤太香巳】新しいビジネスモデルを作るとき、経営者は何を考えるべきか

2018.08.28

ビジネス

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写真/片桐 圭

企業経営の神髄と醍醐味について語り合う経営者対談。投資向け不動産を販売するデベロッパーのNITOH株式会社は、元K-1ファイターの宮園泰人社長が2005年に設立、現在の社員数は60人を超え、年商60億円の企業に成長。宮園社長は、まったくの未経験で不動産業界に飛び込んで成功を勝ち取った。対するネクシィーズグループの近藤太香巳代表は、ユーザーのニーズを叶えるビジネスモデルで、携帯電話・衛星放送・ブロードバンド・LED照明などの普及に大きく貢献し、30年以上、経営者として数々の事業を成功に導いてきた実績を持つ。業界も、経営者としての経歴も異なる両者が語る経営者のマインドとは?

NITOH株式会社 代表取締役

宮園泰人 みやぞの やすと

1980年7月9日生まれ、東京都出身。元格闘家。2001年、WMC世界ウェルター級チャンピオン。2005年、K-1 MAXトーナメント3位。プロスポーツ選手として活躍後、個人投資家としてFXで大失敗をしたことをきっかけに23歳で起業。2006年、NITOHを設立し、代表取締役に就任。マンションの企画、開発、販売等を行う。

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株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長兼グループ代表

近藤 太香巳 こんどう たかみ

1967年11月1日生まれ。19歳の時、50万円を元手に起業。34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場し、37歳で2004年当時最年少創業社長として東証1部に上場。プロモーション&マーケティングを駆使したビジネスモデルでグループ各社を成長させ、エネルギー環境関連事業、電子メディア事業、経営者交流会「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模を誇る。常に新たな分野へ情熱的に挑戦し、ビジネスパーソンから若者まで幅広くリードし続けている。経営者交流会「パッションリーダーズ」代表理事。JAPAN VENTURE AWARD 2006 最高位 経済産業大臣賞受賞。

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それってバブルだよね?不動産市況の実際と今後の見通し

近藤 ワンルームマンションの売買に特化して、大きな収益を上げている僕の友人の不動産業者が、最近、社員数を減らしています。売上は右肩上がりで収益も申し分ない。一時は400億円ぐらいあった負債も50億円ぐらいになりました。

事業は好調なのに、なぜ社員を減らしているのですか?と聞いたところ、2020年のオリンピックが終わる頃をめどに、今の不動産の好況は落ち着くと読んでいると言われました。宮園さんも投資用不動産を売買しているから聞きますが、不動産市況は実際のところどうなのでしょうか?

宮園 今後の長期金利の動向次第ですね。金利も含め資金調達の影響を大きく受ける不動産は、一般消費財とは異なる値動きをします。不動産は、金利が低く買いやすいときは価格が高く、金利が高く買いにくいときは価格が安いという傾向を示します。

ゼロ金利政策に代表される低金利時代の今は、まさしく“買いやすい条件が整ったとき”でした。しかし、今後の日本経済の流れを勘案すると、長期金利の上昇が予測されるため、買いにくい状況が訪れるのではないかと踏んでいます。

近藤 地方の中小企業の中には、「審査基準が厳しくて銀行から融資を受けるのが大変」というところも少なくないようですね。ネクシィーズグループでは、企業や店舗向けにLED照明の導入を初期費用無料で提供し、5年間のレンタル期間中、削減された電気代の差額の一部をレンタル代金としてお支払いいただく、「ネクシィーズ・ゼロ」という事業を展開しています。直近では、地銀と販売パートナー契約を締結し、地銀が当社の代理店になりました。

宮園 地銀が代理店ですか?

近藤 そう。地銀は借り手を探すのに苦労しています。地域の商店や中小企業には融資できなくても、一部上場企業であるネクシィーズグループのLED事業になら融資できる。ローリスクでリターンが臨めるビジネスモデルなら融資可能と判断しているのでしょうね。当社のLED照明を導入する商店や企業をご紹介いただく、“商品付き金融”のようなビジネスを広めています。

宮園 信用力の問題ですよね。私も苦労しましたが、銀行はなかなか融資してくれません。普通は、企業の業績や財務内容で信用力を判断して融資の可否を決定するのでしょうが、「ネクシィーズ・ゼロ」のように秀逸なビジネスモデルがあれば、銀行も喜んで融資してくれるでしょうね。

不動産業の場合、融資の可否だけでなく、不動産の評価額もある程度、金融機関にハンドリングされています。金融庁の「積極的に融資を!」の号令の下、例えば、2000万円の価値があると想定される物件を、3000万円の担保価値があると査定して貸し付ける。銀行で不動産を担保にお金を貸す際に、担保査定金額を多めに見積もることで優良な顧客により多く貸し付けているのだと思います。

多めに借りた側は、手元資金が潤沢になれば、多少高くても物件を買ってくれます。すると不動産市場は活気づきます。銀行は不動産評価額を査定基準に融資先を決めていましたが、不動産が将来生み出すと予測される純収益の現在価値で不動産価値を決定する「収益還元法」でも査定するようになって、金融機関の評価額が金利に大きな影響を及ぼすようになりました。

近藤 そんなことが起こっているなんて知らなかった。それはいわゆるバブルですよね。

宮園 そうですね。路線価も軒並み高止まりしていますし、今の状況が過度になれば、バブルが弾けてしまうかもしれません。私どもの会社がビジネスにしている投資用不動産は、資産価値の上昇を狙ったものではなく、家賃収入を目的にした資産運用です。不動産の価値が上がっても、上昇率に応じて家賃の上昇が起こりづらいと、最終利回りが悪化してしまい、投資先としての妙味が薄れます。

ビジネスは“劇的”かつ“圧倒的”に!理想は終着点ではなく出発点

近藤 不動産価格が上がれば、不動産業者は喜ぶという単純な図式でもないのですね。ならば、宮園さんの会社も今後の金利上昇を見据えて動かないといけませんね。

宮園 そうですね。日本人は現金主義で、投資よりも預貯金で資産を守ってきました。しかし、投資へのニーズは着実に上がっていると感じています。投資はしたいけれども、信用できる投資先と知識や機会がない。それが日本の現状だと思います。だから、リスクマネジメントを徹底した金融商品があれば、日本にも投資を活用した資産形成が根づくと考えています。

近藤 僕が新しいビジネスモデルを作る際に心掛けているのは、“劇的”かつ“圧倒的”なものを作ることです。マンションを例にとると、従来のマンションへのニーズは3つあると思います。「とにかく安いアパート」「ちょっと高いけどオシャレなデザイナーズマンション」「家賃を考慮しない人たちが済む超高級マンション」。その中で、僕ならどこに投資するかと考えたのですが……。

宮園 薄利多売のアパートか、収益率の高い超高級マンションか、その中間のデザイナーズマンションかの選択ですね。

近藤 そう。でも、僕がビジネスを考えるときは、既存のやり方以外の道を模索する。僕ならボロボロのアパートを買って、内装を“劇的”に変えて、超高級マンション並みの設備が整ったボロアパートを売るね。外装に予算を割かない分、内装をゴージャスにできる。そうすることで、消費者に圧倒的な価値を提供できる。

宮園 それは逆転の発想ですね。誰でもオシャレなマンションに住みたいものだと考えてしまいがちですが、あえて外装にはこだわらず、居住性、快適性に一点集中させるわけですね。耐用年数の問題さえをクリアできれば、面白い試みかもしれません。

近藤 今の例はわかりやすくするために極端にしただけですが、要するに“劇的”かつ“圧倒的”なものを作れば、人は集まる。それが僕の持論なんです。不動産業を営む中で、“劇的”かつ“圧倒的”な理想は何なのか? ビジネスモデルを構築する、あるいは新商品を開発する際には、この理想を出発点にするべきだと思うんです。すると他社には真似できない独自の強みになります。

宮園 理想は終着点だと思っていましたが、むしろスタート地点にするべきなんですね!「ネクシィーズ・ゼロ」も「初期費用無料で電球をLEDに交換して電気代を下げる」というユーザーにとっての理想を形にしたビジネスモデルですね。

近藤 ブロードバンドも衛星放送も、これまでに当社が手掛けた商品はすべて、ユーザーが理想的だと考えている状況を作ることで圧倒的な支持を受けてきたんです。

グランドデザインを描いて社員と共有。それが経営の基本であり神髄

宮園 理想をスタート地点にする場合、それを周囲の仲間にどのようにして伝えればいいのでしょうかね。理想を実現するためには、とても一人では戦えません。

近藤 経営者のやることは、グランドデザイン(全体構想)を描くこと。サービスの全体像を作れば、あとは社員がそこに色を付けたり、形を少し変えたりしてくれる。ビジネスモデルの概観というか、進むべき方向性を示すことができるのは経営者だけですからね。

宮園 その描いたグランドデザインが社員に伝わらないときがあるんですよね……。経営の難しさでもあり、面白みでもあるのですが。

近藤 当社でも、通信事業からエネルギー事業に舵を切った際、社員はみんな反対しました。僕は頭の中にあるグランドデザインを一生懸命に社員へ伝えました。自分も新しい事業に乗り出すのに不安でいっぱい。夜も眠れない状態なのに、そんなことは一切おもてには出さず、エネルギー事業のメリットを説きまくった。

宮園 事業が成功すると、そこに安住したくなる気持ちがあるのは、社長も社員も同じなんですけどね。

近藤 そう。でも、社長は常に社員の2歩先を歩かないといけない。だから、社員はついてきてくれる。現状維持で満足する経営者は、必ず退化します。

宮園 恐ろしい言葉ですね(笑)。確かに、現状維持ほど難しいことはありません。現状を維持したいと思って守りの姿勢に入ると、本人にその気はなくとも、知らず知らずのうちにずるずると後ずさりをはじめてしまうものです。

私は長い間、格闘技をしてきましたが、ポイントで上回っているからといってKOを狙わずに守りに入ると負けますし、例え勝っても次につながりません。そう考えると、経営も進むか退くか、2つに一つしかないのかもしれませんね。トライ&エラーを繰り返しながら、進化を目指す姿勢が大切です。

近藤 会社のフェーズによって、エラーの質は変わってきます。今のネクシィーズグループは、多少のエラーならば会社の大勢には影響がない。でも、創業当初ならば、1回のミスが倒産に追いやられるような、命取りになる状態でした。今は“竹刀”で戦っているけど、昔は“真剣”で戦うぐらいの覚悟が必要でした。

宮園 私どもの会社はまだまだ“真剣”で戦わなければいけないフェーズです。だから、社員には覚悟を持って生きて、働いてほしいと願っています。社員にも本音と建前があるから、どこまで覚悟を持って仕事に臨んでくれているのかはわかりませんが。

近藤 その気持ちはわかります。社員とコミュニケーションをとっていると、温度差を感じることはあります。でも、社長はあきらめずに、社内に向けて発信し続けなければならない。何度言ってもわからない社員がいれば、それは言い足りないんですよ。経営者がすべきことは、ビジネスのグランドデザインを描いて、到達地点を示して、納得するまで説き続けること。それは1万回でも。ただそれだけです。

宮園 理想をスタート地点にビジネスのデッサンを描いて、それを社員と共有するために自らの思いを発信し続ける。簡単なようでいて難しいことですが、経営の基本と神髄はそこにあるのでしょうね。

近藤 そうですね。これからも、社員の成長のためにも宮園さん自身がチャレンジし続けて、頑張ってください。