正確無比のロボット技術で超速進化 植毛技術 最前線

2015.1.13

企業

0コメント

男性の永遠の悩み”薄毛”。このAGAと呼ばれる男性型脱毛症の治療が、近年、あるロボットの登場で大幅に進歩した。AGAを抑える内服薬治療はCMなどでもおなじみだが、ルネッサンスクリニックが日本で初導入したロボット「ARTAS」による”植毛技術”は画期的。植毛を専門に行う笠井ドクターに究極ともいうべきその技術を聞いた。

笠井 敬一郎 かさい けいいちろう

島根医科大学医学部卒業。脳外科医として東邦大学大橋病院勤務後、フランスマルセイユ大学神経放射線教室、シカゴ大学脳神経外科教室へ留学。2009年より湘南美容外科勤務。国際AGA・薄毛治療外科学会、日本臨床毛髪学会会員ほか所属。

生え際の後退に効果絶大な植毛施術

「髪の毛根は、一生で40回生え変わります。毛根によっても異なりますが、正常な生え変わりサイクルは2~6年。つまり、最短の2年でも80年は保たれるはずなんです」(笠井医師)

ところが毛髪の正常な生え変わりを乱す男性ホルモンの一種「ジヒドロテストステロン」の働きによってサイクルが早まり、若い内に40回を終えてしまうことがある。内服薬では”終わった”毛根に新たな毛髪を生やすことはできない。こうなった場合の対処法が植毛施術である。

「生え際やM字型脱毛でお悩みの方には、いわゆるおでこ、前頭部への植毛をおすすめしています。小さい面積でも人相が変わるほど絶大な効果をもたらしますよ」

ARTAS
ロボットを使った採取は間隔が均一で、術後の傷跡も目立たない。

素早く、キレイ 自然に仕上がるロボット植毛

「簡単にいえば、毛根が強い後頭部から毛根ごと持ってきて、増やしたい部分に移植するのが植毛です。10年前まで主流だったドナーストリップ法(FUT)は、皮膚を帯状に切り取るため傷跡が目立ち、移植部分が不自然になるというものでした」

その後、さらに細かい毛包単位で移植するようになり、近年では医師が毛根一つひとつを手作業でくり抜き、一株ずつ移す方法も登場。イングランドのサッカー選手、ルーニーもこの方法で植毛を行ったことが話題になった。

そんななか、2010年にアメリカで開発されたロボット「ARTAS(アルタス)」は、こうした植毛技術に革命をもたらした。

「通常、1回の植毛で採取する本数は1,000~2,000本。しかも曲がった毛根を傷つけないよう一本ずつ慎重に採取しなければならないため、採取だけで1日がかりでした。しかし、アルタスを使えば、毛穴の曲がりにも正確に素早く対応でき、約1時間半で採取が完了します」

アルタスは手術支援ロボット「ダヴィンチ」の開発者が考案。完全自立ではなく、医師の制御下で施術を行う。

「移植は植える向きを細かく判断する必要があるため、ロボットではなく手作業で行います。穴は以前より小さく開けられるようになり、術後の痛みや出血もほぼありません」

移植した毛髪以外はAGAが進行するので服薬が必要だが、植毛した毛は90%以上が定着し、前述の周期で力強く生え続ける。実のところ、移植後ある程度時間が経過した毛髪は、年間100症例を手がける笠井ドクターが見てもわからないほどだという。植毛術において、ロボットは人を超えたのかも。