印象派の絶対アイコン、クロード・モネ 理想の絵を描くために庭まで造った男

2016.9.12

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印象派の中でも特に長生きし、晩年には白内障を患い、失明寸前になりながらも絵を描き続けた画家クロード・モネ。生涯をかけて絵を描くために研究を重ね、理想の庭まで造ったという。代表作『睡蓮』にも、そんなこだわりの庭で生まれた作品が多い。没後90年にあたるこの秋、アサヒビール大山崎山荘美術館では、モネの作品とともに彼が生きた時代を振り返る展覧会を開催。日本でも人気が高い画家モネの、知られざる一面に触れられるかもしれない。

睡蓮クロード・モネ≪睡蓮≫1907年 油彩 90x93cm アサヒビール大山崎山荘美術館蔵

2016年はクロード・モネの没後90年

2016年は、モネ没後90年にあたるとともに、アサヒビール大山崎山荘美術館の開館20周年でもある。同館では20周年を記念し、2016年3月~2017年3月にかけて記念展を開催中。9月17日からは、同館所蔵品の柱である印象派の巨匠クロード・モネ(1840-1926)に焦点を当てた「うつくしいくらし、あたらしい響き -クロード・モネ」が開かれる。

ここで簡単に、モネの生涯に触れておこう。

1840年、フランス・パリに生まれたクロード・モネは、アトリエで描いた写実的な歴史画・神話画などが模範的な芸術とされていた当時の美術界に不満を抱き、ルノワール、シスレー、ピサロなど、志を同じくする画家たちとグループを作る。

そして1874年に初めてのグループ展を開催。しかし、モネが出品した《印象、日の出》は評価を受けられず、それを皮肉った批評家の言葉から”印象派”という呼び名が生まれている。この展覧会がのちに「第1回印象派展」と呼ばれる歴史的展覧会となるのだった。

創造の源泉を求めて旅に明け暮れたモネだが、40代に入り、パリ近郊のジヴェルニーに居を定める。アサヒビール大山崎山荘美術館が所蔵する《睡蓮》連作5点は、このジヴェルニーの庭で生まれた作品。ジヴェルニーの庭は、モネが絵を描くために造った庭で、草木の配置や花の配合を細かく研究し、庭師を雇い、自身のイメージを現実に再現したものだ。

エトルタの朝クロード・モネ《エトルタの朝》1883年 油彩 65x81cm アサヒビール大山崎山荘美術館蔵

モネの画業が俯瞰できる展覧会

今回の展覧会では、同館が所蔵するモネ作品全8点を一堂に公開。モネ晩年の連作《睡蓮》全5点に囲まれる空間が創出されるほか、国内美術館等のコレクションから厳選された、初期から中期に至る作品を公開。絵画の新しい時代を切り拓くと同時に、晩年には庭を造り、食を楽しみ、美しい暮らしを追い求めたモネの画業をふり返る。合わせて約20点の絵画作品で構成した、モネの画業が俯瞰できる内容となっている。

開催期間中、関連イベントも開催。西洋美術史の研究のみならず、広範な活動でその啓蒙と普及に多大な貢献をされてきた千足伸行氏(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)や、印象派絵画をはじめ多数の絵画修復を手がけてきた森直義氏(修復家/森絵画保存修復工房代表)、アートと食の関係を中心に展覧会企画や書籍を刊行し、多方面で注目を集めるキュレイターの林綾野氏を講師に迎え、特別講演会を予定。

さらに、開催期間中の第2、第4土曜日には、同館の学芸員が展示品を解説するギャラリートークも開かれる(9月24日、12月10日を除く)。

チャリング・クロス橋クロード・モネ《テームズ川のチャリング・クロス橋》1903年 油彩 73x100cm 吉野石膏株式会社蔵(山形美術館に寄託)

屋外の光をカンバス上にとどめた印象派の画家たち。印象派の旗手として、《睡蓮》をはじめ数多くの風景画を残したモネに至っては、理想の絵を描くために自ら庭まで造ってしまった。そんなモネの絵に対する思いを知れば、何度も目にしてきた彼の作品も、これまでとは違った風に見えてくるかもしれない。

»展覧会の情報はコチラ「うつくしいくらし、あたらしい響き -クロード・モネ」【アサヒビール大山崎山荘美術館HP】

開館20周年記念展の最後を飾るのは”現代のユトリロ”クートラス
「ロベール・クートラス 僕は小さな黄金の手を探す」

開館20周年記念展の最後を飾る第4弾は、2015年に没後30年を迎えた、フランス・パリ生まれの画家ロベール・クートラス(1930-1985)を紹介する展覧会。2015年に渋谷区立松濤美術館で回顧展が開催され、大きな反響を呼んだクートラスの本格的な個展としては関西初となる。

“現代のユトリロ”と評されたクートラスの作品には、一見ユーモラスななかに静かな悲しみを湛えたものが多い。独特な神話のイメージや抽象的な模様で彩った小さな紙面のカルトや、人間と動物の間のような生物が佇む静謐なグアッシュなど、日本未公開作品を含むクートラスの創造世界が楽しめる。

クートラスロベール・クートラス《僕のご先祖さま》1977年 個人蔵 撮影:片村文人