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水谷豊の初監督映画『TAP』感動のタップダンス群像劇、熱狂の舞台裏

2017年04月27日
読了時間: 06分00秒

俳優・水谷豊の初監督映画『TAP -THE LAST SHOW-』が6月17日に公開される。「傷だらけの天使」「熱中時代」「相棒」など、数々の人気ドラマや映画に出演し、国民的人気を誇る名優がメガホンを取り、主演も兼ねる注目作だ。構想およそ40年、タップダンスに夢を追い求める若者たちの姿を通じ、ショウビジネスの光と影を描く今作の制作風景を追う。

『TAP -THE LAST SHOW-』 劇場公開:6月17日(土)/配給:東映
【ストーリー】天才タップダンサーでありながら、舞台中の事故で足を痛め、引退を余儀なくされた渡真二郎(水谷豊)。事故後は振付師に転身したものの、酒浸りの毎日を送っていた。事故から30年、そんな渡を旧知の劇場オーナー・毛利喜一郎(岸部一徳)が訪ねる。劇場を閉める決断をした毛利は、最後のショウの演出を渡に託したいという。オーディションで渡は、若き才能・MAKOTO(清水夏生)に出会って......。
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細部まで水谷豊らしさが感じられる初監督作品

20代の頃にブロードウェーでサンディ・ダンカンの踊りに感銘を受けたという水谷。「彼女の踊りに高鳴った鼓動を、観客に伝えられるような映画を作りたい」と企画を温め続け、80枚にも及ぶ手書きのメモを遠藤英明プロデューサーに託した。水谷の初メガホンは、遠藤Pから「これを具現化できるのはご本人しかいない」と逆輸入的にオファーされたものだ。

TAP

脚本の両沢和幸が「監督と打ち合わせを重ねるなか、通ってきた映画や好きな映画、映画的境遇に共通項を見つけられてうれしかった。現場での監督のたたずまいには、助監督時代に仰ぎ見ていたベテラン監督たちの姿を思い出した」と振り返るように、水谷の映画への情熱や俳優業などで培われた映画的センスは、現場の求心力になった。

例えば、水谷が演じる主人公・渡のビジュアルや人物の描写。水谷は、過去の出演作では見せなかった白髪まじりのヘアスタイルを自ら提案。これに合わせて、眉やひげをキレイに整えないメイクが採用され、ワイルドな色気を醸す主人公像が出来上がった。

渡の部屋で流れる音楽も、「渡が抱えるつらさを前面には出したくない」という水谷の意向で、暗すぎない楽曲を選択。盟友・毛利(岸部一徳)とともに真っ赤なオープンカーで銀座の目抜き通りを行くシーンは、"往年の大スター"オーラが炸裂する冒頭の名シーンのひとつだ。

TAP
TAP渡と毛利のシーンは「多くは語らずとも、昔から続く2人の関係性を表現できたら、と思っていた」(水谷監督)。

日本初、本格タップダンス映画!

昨年の"恋ダンス"(ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)のエンディングで出演者が披露したダンス)や、映画『ラ・ラ・ランド』の大ヒットをきっかけに"ダンス"が脚光を浴びる今、タップダンスという題材は実にタイムリーだ。

TAP

タップダンスは、靴裏に金具が付いた専用のシューズを履いて踊り、動きだけでなく、足音でも観客を魅了するのが特徴。水谷自身もタップダンスの経験者で、本作の撮影では「タップとはこんなに豊かな表現のできるエンターテインメントなんだ!」とあらためて感動したのだとか。「地面を踏み鳴らし、音が重なり、リズムを作る。誰にでもできて、誰の中にもある音楽」を生み出すタップを「普遍的な感情表現」だと語っている。

ショウのメインキャストとなる5人のダンサーを演じるのは、500人を超える応募の中からオーディションで選ばれた本物の若手ダンサーたち。芝居経験のない彼らが、水谷監督に食らいつき、役者として成長していく様は、映画のストーリーともシンクロする。

TAP

タップダンスの監修振付は、映画『座頭市』でも振付・出演で携わった著名ダンサーのHIDEBOH。現場ではダンス指導のほか、実際のオーディションの様子をスタッフに伝えるなど、ダンサーの世界をリアルに表現するのにも一役買った。

ダンスの世界は、トップクラスの人材でも、自ら教室を開いて生徒を集めなければ安定的な収入を得にくいという。劇場の資金繰りに苦しむ毛利や渡、ダンスだけでは生計が立たず工事現場で働くMAKOTO(清水夏生)など、ショウビジネスの厳しさが本作の人間ドラマのベースになっている。

まさに圧巻、24分間の「ラスト・ショウ」

撮影現場は活気にあふれ、中でもタップダンスの稽古やショウ本番のシーンは、キャストもスタッフもこの上ない熱量で挑んだ。

MAKOTOのライバルとしてJUN(西川大貴)がレッスンに初参加するシーンは、前半のクライマックス。テストなし、長回しのぶっつけ本番で、ダンサー全員が自由に踊る。豪雨のように響きわたるステップの音は、打楽器専用のマイクで録音された。

TAP

撮影は一発OK。カット後、撮影監督の会田正裕は「魂を感じた!」と水谷監督に駆け寄ったという。

また、「ラスト・ショウ」を鑑賞する客席側の撮影には、キャスト30人、エキストラ140人が参加。撮影は朝7時半から深夜まで続いたが、ダンサーたちが実際にショウの一部を披露したり、監督が軽妙な語り口で次のシーンを説明したり、エキストラの表情が輝く仕掛けを用意した。

TAP

渡がPA席からダンサーを見守るシーンも同日に撮影。渡の顔ににじむ達成感について水谷は「芝居じゃなかった(本当の気持ちだった)」と語っている。

そして本作のクライマックス、24分にも及ぶ「ラスト・ショウ」。3日間にわたって撮影が行われた東映東京撮影所には、ショウが見たくて、あるいは撮影を応援したくて、立ち会う予定のなかったスタッフや、すでに撮了していた北乃きい(MAKOTOの恋人・森華役)も駆けつけた。

TAP

水谷は「妥協すると悔いが残りますから、やり直したいときは遠慮なく言ってください」とダンサーに呼びかけながら撮影を進めた。ダンサーの一人が本番で振りを間違えたときは「ほかの人が間違っているように見えましたよ」とちゃめっ気のあるフォローをしてみせ、現場の意気が揚がったとか。

ダンスシーンの最終日は、水谷監督からダンサーたちに「最後に一曲通して踊ってほしい」と過酷なリクエストが。限界に近い疲れを抱えながら、集中力は研ぎ澄まされるダンサーたち。ある種のトランス状態となって感情が高ぶり、涙をこぼす一幕もあったという。

TAP

しかし、水谷は、観客には涙ではなく最高のパフォーマンスを見せるのがエンターテインメントであるとの思いから「これほど哀しい笑顔はない、というくらいの笑顔を見せて」と妥協なく要求し、キャストもそれに応えた。そうして完成したのが、タップダンスに興味がない人でも、魂を揺さぶられる圧巻のステージだ。ぜひ劇場でその迫力を体感してほしい。

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TAP

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