野菜くずを良質な堆肥に還す「枯草菌C-3102株」 アサヒグループ独自の微生物活用技術で生ごみ処理に画期的解決策

2017.9.27

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野菜くずを良質な堆肥に還す「枯草菌C-3102株」 アサヒグループ独自の微生物活用技術で生ごみ処理に画期的解決策

飲料大手・アサヒグループのアサヒカルピスウェネス社は、独自の菌株「枯草菌C-3102株」によって野菜くずを効率良く分解し、良質な堆肥にすることに成功している。「枯草菌C-3102株」を含有する堆肥化促進材「サーベリックス」によって堆肥化された堆肥を利用することで、野菜の収量増加と質が向上することも実証。今後予想される世界人口増で浮上する、各種課題の解決に貢献するのではないかと期待されている。

ある食品加工メーカーからの相談

近年、日本における食糧の廃棄問題が取り上げられ、廃棄量削減に向けた取り組みが加速している。その理由は、世界の食糧供給に影響を与えるほどの膨大な食品廃棄物等の発生量である。

平成25年度で1927万トン(可食部は330万トン)、このうち食品製造業が83%を占めている(参考:食品ロスの削減とリサイクルの推進/平成29年3月・農林水産省)。残念ながら、その多くは再利用されることなく、埋め立てや焼却処分されているのが現状だ。

ある大手食品加工メーカーが、食品を加工する過程で発生する野菜くずを有効活用するため堆肥化の取組みを行っていた。しかし、野菜くずは水分が多いため、微生物の活動が活発になる温度まで上昇しづらく、うまく発酵しない。

そのような発酵が不十分なものを畑に撒くと、堆肥にならないばかりか、”根腐れ”といった生育障害を引き起こすこともある。専門家の協力が必要と判断した食品加工メーカーが相談を持ち掛けた先は、さまざまな微生物による研究実績を持つアサヒカルピスウェルネス社(当時カルピス社)の研究所だった。

アサヒカルピスウェルネス社研究所

アサヒカルピスウェルネス社は、かねてから食品工場から出る残りかすなどを微生物の力で良質な堆肥にして再利用する”循環型社会の実現”に向けた研究を行っていたが、食品加工メーカーからの相談をきっかけに、現場レベルでの堆肥化や作物への効果などの本格的な開発をスタートさせる。

アサヒグループの強みは、長年の研究で蓄積してきた「微生物ライブラリー」(さまざまな種類の菌のストック)である。その中から、野菜くずをしっかり発酵させ、ふかふかとした良質の堆肥を作る微生物として「枯草菌C-3102株」が選ばれた。

枯草菌C-3102株

野菜くずの堆肥化の救世主「枯草菌C-3102株」

枯草菌とは、自然界に広く存在する菌で、枯草や稲わら、落ち葉などに多数存在している。納豆づくりに欠かせない納豆菌もその仲間だ。

有機物に対する分解力が高く、特に植物に有害な病原菌の増殖を防ぎ、一方で植物に有用な菌をサポートすることから、日本では古くから土づくりに活用していたなじみのある菌でもある。この枯草菌の一種である「枯草菌C-3102株」は、アサヒカルピスウェルネス社独自の菌株で、野菜くずの堆肥化に有効であることがわかっている。

その理由は、「枯草菌C-3102株」は有機物を分解する能力が高い菌で、発酵熱がとても高いため。この熱で野菜くずの水分が蒸発し、効率よく発酵が進むのだ。

ちなみに、「枯草菌C-3102株」は、アサヒ飲料が販売する乳酸菌飲料・カルピスに由来する研究で発見された独自の微生物で、生きて腸まで届き、軟便者の腸内フローラの多様性を高めることや、腸内有用菌であるビフィズス菌を増やすことが確認されており、健康食品としても応用されている。

堆肥化促進材「サーベリックス」の実力

実際に野菜の堆肥化に使用する製品は、「枯草菌C-3102株」を含有した堆肥化促進材「サーベリックス」。使い方はとても簡単で、堆肥化装置(株式会社メリーズ・ジャパンが提供)に「サーベリックス」を加え、野菜くずと一緒にかき混ぜるだけ。24時間以内に95%以上の減量率で減量化できる。

堆肥化中の様子堆肥化中の様子

「枯草菌C-3102株」を含有した堆肥化促進材「サーベリックス」サーベリックス

毎日野菜くずを投入し、約1カ月で取り出し(1次発酵)、その後、2次・3次発酵(約2カ月)を経て、保水性がありながら排水性・通気性も備えた団粒構造の土壌を作ることに役立つ良質な堆肥となる。

この堆肥を農地で使うことで農作物の生育にも好影響を与えることがわかっていて、添加によりダイコンは51%、ニンジンは43%、収量が増加。味においても「苦味」「塩味」「渋味」が減り、おいしくなったという分析結果が出ている。

また、「枯草菌C-3102株」は、芽胞(がほう)菌と呼ばれる、過酷な条件(高温、乾燥、栄養不足など)下でも芽胞を形成して生き残ることができる非常に強い菌であり、過酷な環境に置かれても土壌の中で生き続けるため、「サーベリックス」によってできた堆肥を継続的に使用することで、農作物栽培に適した土壌の安定化なども期待できる。

堆肥をまいている様子堆肥をまいている様子

「サーベリックス」は、栽培した農作物の廃棄物を良質な堆肥にして自然に還し、さらに高品質の農作物を栽培する、まさにアサヒグループが目指す”循環型農業の実現”に貢献する画期的な農業資材だ。この開発は高く評価され、2015年に開催された「第24回地球環境大賞」において、「農林水産大臣賞」を受賞している。

世界人口増による課題にも貢献する可能性

2017年6月に国連が発表した「世界人口予測2017年改訂版」によると、2050年には世界人口が98億人に達するという。ここで危惧されるのが食糧危機だ。

農水省の資料では、世界人口が92億人を超えると、世界の食糧生産量を現在の1.55倍に引き上げる必要があると指摘(参考:2050年における世界の食料需給見通し/平成24年6月・農林水産省)。しかし、食糧増産にあたっては、開発途上国の工業化による耕作地の減少、地球温暖化による砂漠化、化学肥料等による土壌の劣化により、農作物の生産量が思うように伸びないといった問題点を抱えている。

これらの課題にアサヒカルピスウェルネス社の「サーベリックス」が貢献できるのではないか。

ほかにも、人口増や発展途上エリアの近代化に伴う畜肉生産の増加によって増え続ける家畜糞も世界的な大きな問題となっているが、将来的には「サーベリックス」によって効率良く、良質な有機堆肥にして、穀物など食物栽培の収率アップに貢献することも期待できる。

アサヒグループが扱う商材はビール・飲料から食品まで幅広く、また、展開エリアも世界規模。より高度な”循環型社会の実現”に向けて発信するアサヒグループの提案に、今後も注目していきたい。

»アサヒカルピスウェルネス社ホームページ