政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は、若い世代やビジネスパーソンに政治・経済・社会問題を発信するオピニオンメディア。ニュースの背景をわかりやすく伝えたり、時事用語の解説を通して、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Fri, 22 Oct 2021 02:21:40 +0000 ja hourly 1 中国と台湾がTPPで共存することは可能か 中国を歓迎する国、しない国 https://seikeidenron.jp/articles/19881 https://seikeidenron.jp/articles/19881#respond Fri, 22 Oct 2021 02:21:40 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19881

中国と台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を相次いで申請し、その帰趨が注目されている。中国は9月16日、正式にTPPへの加盟を申請した。これに慌てた台湾は同23日に加盟申請に動いたものだが、「TPP加盟に以前より熱心だったのは台湾の方で、中国の申請こそ寝耳に水だった」との指摘もある。政治的に対立する両国の加盟申請は、日本をはじめとするTPP加盟国を揺さぶる。果たして解決策は見いだせるのだろうか。

そもそもTPPとは

TPPは11カ国[日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ペルー、チリ、メキシコ、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア]が参加するFTA(自由貿易協定)の一つ。アジア太平洋地域の人口約5.1億人、世界のGDP(国内総生産)の13%弱(11.3兆ドル)を占める広域経済圏だ。お互いに関税をなくし、投資のルールを透明にするなどして貿易や投資を活発化させる狙いがある。

そのルーツは、シンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイの4カ国が2006年に発効したFTAである。そこにアメリカやオーストラリアが参加し、日本も2013年7月から交渉に加わった。「環太平洋地域で台頭してきた中国を封じ込める思惑から、アメリカが4カ国FTAをTPPに拡大させた経緯があった」(経産省関係者)とされる。しかし、その当事者であるアメリカはトランプ大統領の就任直後の2017年1月に離脱、その後を受けて日本がとりまとめ役となって2018年12月に発効にこぎ着けた。2021年2月からイギリスが加盟に向けて交渉に入っている。

TPP加盟にはデータをめぐるルールや知的財産の保護など高いハードルがある。例えば電子商取引では、外資企業に対しサーバーを自国内に設置することを義務付けることやソフトウェアの設計図にあたるソースコードの開示要求の禁止など、自由なデータ流通を担保する必要がある。投資では外資企業への技術開示要求や土地の不当収用を禁止。サービス分野では、金融機関の出資規制や小売店の出店規制の緩和、貿易円滑化では、通関の時間を短縮、書類の電子化などが求められる。また、労働分野では強制労働の撤廃や労働者の権利確保が加盟条件となっている。

TPPは名称の通り、自由貿易を担保する仕組みであり、参加国全体で関税を撤廃する品目は、工業品の99%に達する。また、TPP域内で一定割合以上の製品を生産すれば無関税で輸出できる「原産地規制」も盛り込まれている。例えば、人件費が安い東南アジア(非締約国)で原料や部品を仕入れ、ペルー(締約国)で組み立て、オーストラリア(締約国)に輸出する場合は関税が免除される。

戦略的な中国の加盟申請

中国の習近平国家主席は10月15日、シンガポールのリー・シェンロン首相と電話会談した。中国外務省によると、リー首相は「中国のTPPへの加盟申請を歓迎し、支持する」と表明したという。リー首相は中国のTPP加盟について「地域の繁栄と発展に有益」と評価したとされる。習近平はTPP加盟申請直後も9月24日には、ベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長と電話会談した。発表文にはTPPの文字は見えないものの、習氏は「双方は国際・地域問題での協調、協力を強化すべきだ」と強調しており、TPP加盟への協力を要請した模様だ。

また、中国の王毅国務委員兼外相は、メキシコのエブラルド外相、マレーシア、ブルネイの外相とそれぞれ電話会談し、協力を要請している。さらに、中国商務省幹部は9月28日にニュージーランド幹部とテレビ会議を通じ、「中国の申請は非常に重要な意義を持つ一歩で、今後のプロセスを積極的に推進する」との言質を得たとされる。中国はTPP加盟に向けてTPP参加国を個別に賛同者として口説いている様が見て取れる。

中国は交渉上手である。TPP加盟承認は既存加盟国の全会一致が前提である。そのためまず中国と貿易面で関係の深い国から懐柔していこうということであろう。その矛先はまず中国が核となる“メガFTA”と言っていい「地域的な包括的経済連携(RCEP)」の国々に向けられている。

RCEPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国を中心に日本、中国、韓国、オーストラリアの15カ国が参加する広域の自由貿易圏で、中国が参加する唯一の大型の自由貿易協定である。RCEPは世界の人口の約3割、22.6億人をカバーし、世界のGDPや貿易額の約3割(約26兆ドル)を占める巨大な経済圏であり、全体として工業製品を中心に91%の品目で関税を段階的に撤廃する。2022年1月までの発効を目指している。

中国は自国が事実上主導するRCEPに加え、TPPへの加盟申請することで、東南アジアおよび環太平洋地域で、いわゆるチャイナスタンダードのプラットフォームを構築する狙いがあると見られている。「中国にとって、今回の加入申請は絶妙。加盟できればよいし、できなくてもTPPの結束を乱せる」(チャイナウォッチャー)との指摘も聞かれる。「一つの中国」を唱える中国と台湾の政治対立に、加盟国が分断される恐れもある。

一つの中国原則(One China principle)

中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府であり、中国は分断されず、台湾は中国の不可分の一部であるとする、中国政府の見解。日本とアメリカは表向き中国の主張を“尊重”している。

中国と台湾、どちらが有利か

そもそもTPPはアメリカが主導して二段階方式で進められていたと指摘される。まず日米など12カ国が結束して協定を発行させ、それから中国の加盟をさせる、アメリカの中国封じ込め作戦だった。チャイナスタンダードの排除が狙いだ。そのアメリカが離脱後、もっとも加盟に熱心だったのが台湾である。だが、第一号にはしづらかった。そこにイギリスが2月に正式に加入申請し、二番手の有力候補として加盟環境は整っていた。そこにまさかの中国の割り込みで目算が狂ったというのが今回の構図だ。

では、どちらが有利か。TPPの加盟条件である「透明で公正なルール」でいえば台湾が有利であろうが、ポイントとなる経済効果でみれば中国が勝る。TPP11のうち9カ国は中国と自由貿易協定(FTA)を持ち、一方、台湾は2カ国にとどまる。

中国の武器は圧倒的な経済規模にある。新型コロナ前の2019年、TPP11と中国との貿易総額は1兆684億ドル(約120兆円)と台湾の7倍に達する。しかも台湾は中国との貿易に依存する割合は高い。

中国は加盟基準を満たせないとの見方もあるが、加盟国には例外扱いはある。

難しい日本の立場

TPPとRCEPの両方に加盟する日本の立場は重要かつ難しい。中国と台湾のいずれを支持するのか、旗色を鮮明にすることは容易ではない。

このことはかつての「角福戦争」と呼ばれた田中角栄氏と福田赳夫氏の自民党総裁選挙を想起させる。台湾重視の福田氏に対して、日中国交正常化を掲げた田中氏の戦いは、田中氏が勝利し、日中国交正常化へと突き進んだ。しかし、その後、田中氏はロッキード事件で失脚する。背後にはアメリカの思惑があったともいわれる。

歴史は繰り返し、中国、台湾問題は、尖閣問題や有事対応をめぐり現在も変わらない。

経済原則でいえば「中台同時」しかないが…

では、中国と台湾がTPPで共存することは可能だろうか。この点、下敷きになると思われるのがアジア開発銀行(ADB)のケースだ。ADBは1986年に中国の加盟を認め、すでに加盟していた台湾も残留させた。ADBは1966年創設で、台湾が中国代表の席を譲る必要がなかったためだ。一方、1971年の国連、80年の国際通貨基金(IMF)と世界銀行では中国政府が台湾にとって代わっている。

また、今回の中国、台湾の加盟の処方箋として浮上しているのが「2台目のバス論」だ。中国、台湾だけでなく、かねてTPPに関心を寄せる韓国、タイなどをまとめて交渉するパッケージ論だ。FTAは仲間が多い方がいい。経済原則でいえば「中台同時」しかない。

ただ、TPP11加盟国でカナダとメキシコは中国とのFTAを結んでいない。特に2020年7月に発足したアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)では、アメリカが「非市場経済国」とみなす相手とFTAを結べば協定を解消できる「毒素条項」がある。両国はアメリカとの協定を犠牲にしてまで中国の加入を歓迎しないだろう。

米中の接近

TPP11加盟国の2019年の貿易額は対米が1兆7215億ドルと対中より6割多い。しかし、10年前と比べた伸び率では対米が66%なのに対し対中は120%と2倍近く高い。TPP加盟国にとって中国の加盟は魅力的だ。

米中の通商協議の再開、年内の首脳会談開催など、米中は緊張緩和へ向かっている。この機をとらまえてアメリカを巻き込む形で日本はTPPの舞台回しを担える余地がある。アメリカ、中国、台湾の結節点に日本が位置する。いずれにしても中国、台湾のTPP加盟問題は、皮肉にも離脱したアメリカが鍵を握っており、米中対立の行方に左右される。長期戦は避けられないだろう。

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2021年ノーベル化学賞「不斉有機触媒の開発」を、身の回りの生活に関連させて解説を試みる https://seikeidenron.jp/articles/19827 https://seikeidenron.jp/articles/19827#respond Wed, 20 Oct 2021 08:29:43 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19827

2021年ノーベル化学賞が、「不斉有機触媒の開発」の業績に対し、ベンジャミン・リスト(マックスプランク石炭研究所/北大化学反応創成研究拠点・ICReDD)およびデヴィッド・マクミラン(プリンストン大学)の両氏に授与されました。わが国は、この分野の研究・「不斉有機合成化学」のメッカと言っても過言ではないのに、日本人受賞者がいなかったのは誠に残念です。したがってマスコミでは、ほとんど話題になりませんでしたが、この研究分野はわれわれの身の回りの生活と密接に関係しています。不斉有機合成反応、不斉有機触媒の「不斉」とは何か、今年の化学賞の意義を身の回りの化学物質などと関連させて、できるだけ易しく解説しましょう。

不斉の意味と不斉な身の回りのもの

不斉は「ふせい」と読み、「そろわないこと」を意味します。手には裏表があり、自分の左手と右手をぴったり重ね合わすことはできません。これを不斉の関係にあると言います。左手を鏡に映せば右手、右手を鏡に映せば左手になります。異性体とは格好は同じでも異なるものを指し、左手と右手は鏡像異性体の関係になっています。ヒラメとカレイの関係も同じです。

ヒラメを鏡に映せばカレイになり、カレイを鏡に映せばヒラメになります。ヒラメは一般的にカレイより大きく、値段も高く、おいしいとされています。大きさが同じですと、その区別は難しくなりますが、目玉を上に腹を下にして置いたとき、顔が左を向いているのがヒラメ、右を向いているのがカレイで、左ヒラメ(ヒダリのヒ、ヒラメのヒ)、右カレイの法則(?)となります。稀にこの法則が成り立たない種類も発見されていますが、ヒラメとカレイも重ね合わすことができませんので、不斉の関係にあり、鏡像異性体です。

有機化合物になぜ不斉があるのか

さて、次に化学物質の不斉について解説しましょう。

昆布の旨味成分であるグルタミン酸は、「味の素」(グルタミン酸ナトリウム)として発売され、よく知られていますが、これにも“左手”と“右手”があり、一方は旨味を感じますが、もう片方は苦くて旨味を感じません。われわれが口にしている味の素は、当然、旨味を感じる方です。

両手やヒラメとカレイの不斉については理解できるとしても、有機化合物(※)であるグルタミン酸になぜ、左手と右手があるのかは理解が難しいでしょう。
※有機化合物:炭素を含む化合物。ただし、一酸化炭素や二酸化炭素のように簡単な構造の化合物は除く

海に行くと浸食を防ぐ消波ブロック、テトラポッドを見かけます。この構造は正4面体の中心から腕が4本伸びています。これと同じモデルを2つ作り、4本の腕の先に赤、白、黄色、緑のテープを貼りましょう。たまたま、この2つが重なる場合もありますが、その場合には、一方のモデルの色テープを2個入れ替えましょう。そうすると、これらの2つのモデルは重ねることができなくなり、お互いに鏡に映した関係になります。これが不斉です。不斉が生じるのは、化合物が平面ではなく立体的な構造になっているからです。

正4面体の中心が炭素原子、4頂点が水素とすると、これはメタンCH4で、メタンガスの構造は正4面体構造になっています。この4つの水素が違ったものに置き換わると、すなわち上述の赤、白、黄色、緑になれば、不斉が生じることになります。この中心の炭素を不斉炭素といい、高等学校の化学の授業で習ったことです。

不斉炭素が1個あれば2個の異性体が、2個あれば4個の、3個あれば8個の、すなわちn個の不斉炭素があれば2のn乗個の異性体が存在します。

サリドマイド児はなぜ生まれたのか

サリドマイドは、1957年ドイツの製薬会社から妊婦のつわり、不眠症改善のために発売され多用された薬です。ところが、妊娠初期に服用すると四肢の全部、あるいは一部が短いなどの障害のある子ども(サリドマイド児)が生まれるという不幸な薬害が起き、世界的に大きな社会問題となりました。このような薬害を二度と起こしてはならないのは当然です。

サリドマイドの化学構造式を見ればわかりますが、不斉炭素が1個存在しますので、“左手”と“右手”があり、一方は、鎮静睡眠作用がありますが、もう片方には奇形を促す催奇形性作用があることが後になって明らかになりました。当時、使用されたサリドマイドは不幸にも左手と右手の混合物だったのです。理由は、一方のみをつくる技術が当時はなかったためです。人間の身体の中で、鎮静睡眠作用のあるサリドマイドが催奇形性作用のあるサリドマイドに異性化することがわかり、この医薬品はその後、製造承認を失い消え去りました。

しかし現在は、研究によって血液のがん、多発性骨髄腫への有効性が明らかにされる等、ガイドラインの下で厳重な管理と監視とともに薬として使われている例もあります。

不斉有機合成化学の意義

上述のように、グルタミン酸もサリドマイドも、異性体によってその生理作用や薬理作用が異なるので、その作用に合うように物質を作る必要があります。自然界に存在する有機化合物や医薬品などは多くの不斉炭素を含んでいますので、多くの異性体が存在することになり、それらのうちで欲しいものだけを作るのは、不斉炭素が1個の場合より複雑になります。

ハッカ臭のメントールは、歯磨きやチューインガムなどの菓子類、口中清涼剤などに多用されるほか、局所血管拡張作用、皮膚刺激作用等を有するため、医薬品にも用いられています。不斉炭素が3個あり、2の3乗個の異性体、すなわち8個の異性体が存在します。天然のメントールは、ほぼ、これら8個のうちの一つの異性体で、このものが目的とする生理作用と薬理作用を有します。したがって人工的に、このもののみを作るには不斉有機合成反応が必要になります。

メントールの需要量は天然からの供給量を大きく超過、香料業界大手の高砂香料工業は高純度のメントールを年に40万トン生産、製造過程には2001年ノーベル化学賞を受賞した野依良治氏によって開発された不斉有機合成反応が使われています。

環境に優しいグリーンケミストリーへの高い貢献度

化学反応を促進させる触媒として、今までは主に酸素や水に不安定で高価な金属触媒(白金やパラジウムなど)や複雑な生体触媒(酵素)を用いるのが常でしたが、2021年ノーベル化学賞を受賞した2人の化学者は、第3の触媒として調製が簡単な「不斉有機触媒」を考案し、その実用性を汎用な不斉化学反応を行うことで示しました。少し専門的になりますが、不斉有機触媒としては、簡単な天然のアミノ酸やアミノ酸から誘導されたアミンを用いて、高い純度の不斉な生成物を得ることに成功しました。

SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれるなか、環境にダメージを与えない、優しい化学反応の開発が求められていますが、2人の化学者が発見した不斉有機触媒は、安価で安全、取り扱いが簡単な触媒で、これを用いる不斉有機合成反応は将に、環境に優しいグリーンケミストリーに匹敵するといえるでしょう。

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【衆院選】似通う与野党の公約、最重要の経済政策は「分配」の方法に違い https://seikeidenron.jp/articles/19863 https://seikeidenron.jp/articles/19863#respond Wed, 20 Oct 2021 07:35:06 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19863

49回目となる衆院選が10月19日に公示され、与党の自民、公明両党と、立憲民主党を中心とする野党との選挙戦が始まった。就任間もない岸田文雄首相率いる与党が勢力を維持するのか、それとも共闘体制を築いた立憲民主や共産党などの野党が勢力を伸ばすのかが焦点。政策面では新型コロナウイルス対策と、コロナ禍で打撃を受けた経済の立て直し策が最大の争点となる。31日に投開票され、11月1日の未明に大勢が判明する。

立候補数は史上最少、女性候補は2割弱

「成長と合わせ、果実を分配し、皆さんの所得を引き上げる経済対策を進めていきたい」。岸田首相は東日本大震災の被災地である福島市で第一声に臨んだ。9月の総裁選以来、首相は分配重視の考えを示してきたが、この日は野党を意識して“成長”を強調してみせた。

一方、松江市で第一声に臨んだ立憲民主の枝野幸男代表は安倍・菅両政権が進めてきた経済政策「アベノミクス」を大企業優遇と批判した上で「所得を再分配して1億総中流社会を取り戻す」と強調した。

衆院選の定数は小選挙区289、比例代表176の合計465。今回は9党が候補を擁立し、諸派や無所属を含めて1051人が立候補した。候補者数は前回2017年の1180人を100人以上下回り、史上最少。男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に求める法律の施行後、初の衆院選となったが、女性候補は23人減の186人で、全体の17.7%にとどまった。

候補者数が大幅に減ったのは野党が共闘体制を組んだからだ。前回の衆院選では選挙直前に最大野党だった民進党が希望の党や立憲民主などに分裂。野党系候補が票を食い合い、与党の大勝につながったことから、今回は立憲民主、共産、国民民主、れいわ新撰組、社民の5党で調整し、野党系無所属を含めて全体の7割を超える217選挙区で候補を一本化した。

その結果、全体の約半数となる140選挙区で実質的な与野党一騎打ちとなり、69の選挙区では野党5党と一線を画す日本維新の会の候補と三つ巴となった。ただ、5野党で候補者を一本化できず、複数の候補が並び立つ選挙区も76残った。

コロナ対策、司令塔強化は与野党で似通う

政策面で最も多くの国民が注目するのがコロナ対策だ。自民党は菅内閣で「説明不足」が批判されたことを踏まえ、公約に「国民の皆様にご協力を求める時には『対策の必要性』『決定のプロセス』について、科学的知見に基づいた『納得感のある説明』に努めます」と明記。国産の治療薬やワクチンの研究開発・生産体制への強化のほか、中小企業への資金繰り支援や非正規雇用や子育て世帯などへの経済的支援を盛り込んだ。与党は子育て世帯や困窮世帯への給付金配布も検討している。

ただ、野党の立憲民主も公約で国産ワクチン、治療薬の開発や住民税非課税世帯など低所得者への年額12万円の現金給付などを盛り込んでいる。給付対象や額は異なるが、与野党ともに給付金支給を盛り込んでおり違いはわかりにくい。

政府の司令塔強化も自民や公明、立憲民主などが掲げた。ただ、公約は似通っているが、自民党内には憲法改正や法改正で緊急時に私権を制限し、都市封鎖などをできるようにすべきとの意見が多い。緊急時にどこまで政府に強い権限を持たせるかは与野党、どちらが政権を担うかで対応が分かれる。

与野党ともに経済政策の「分配」は言葉だけが浮きがち

与野党の違いがよりわかりやすいのが経済政策だ。岸田首相は総裁選で「新自由主義からの転換」や分配重視を訴えたが、今回の衆院選では「分配を強調しすぎ」との党内の批判を踏まえて「成長重視」の姿勢を強調。積極的な公共投資を掲げる一方、持論だった金融取得課税の課税強化は封印するなど実質的にアベノミクスを継承する姿勢を打ち出した。

対する野党は大企業や富裕層への課税強化や中低所得者への再分配強化を掲げる。共闘する5野党のうち、国民民主を除く4党は共通政策に「消費税減税を行い、富裕層の負担を強化する」と明記。立憲民主は公約に「年収1000万円までの所得税ゼロ」と「時限的な5%への消費税減税」、国民民主は「経済が回復するまで消費税率5%」や社会保険料の猶予・減免を盛り込んだ。なお、岸田首相は消費税減税を明確に否定している。

与野党ともに「分配」を掲げるものの、与党はまずは経済成長させてその成果を分配につなげるトリクルダウンを目指すのに対し、野党は富裕層や大企業から税金を取り立てて中低所得者に分配すると主張する。ただ、与党の公約を見ても画期的な成長戦略が盛り込まれているわけではなく、野党の主張する富裕層や大企業からの課税強化は株価の暴落や景気の悪化につながりかねない。どちらがコロナ禍で疲弊する経済の再生につながるか、しっかり見極める必要があるだろう。

◇◇◇

岸田首相は勝敗ラインについて「与党で過半数(233議席)」と控えめな目標を掲げているが、実際には公示前勢力の305議席をどれだけ維持できるかが焦点となる。具体的にはすべての常任委員会で委員長ポストを独占し、過半数の委員を確保できる「絶対安定多数」の261議席(与党で44議席減)、すべての委員長と委員の半数を確保できる「安定多数」の244議席(与党で61議席減)、自民党で単独過半数割れ(自民で44議席減)が目安となる。結果によっては発足したばかりの岸田内閣の基盤が揺るぎかねない。

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脱炭素輸入エネルギーの主力は何? 水素の低コスト化で火花を散らす3方式 https://seikeidenron.jp/articles/19831 https://seikeidenron.jp/articles/19831#comments Mon, 18 Oct 2021 08:25:04 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19831

カーボンニュートラル(CO2の排出量と同等のCO2量を別の場所で削減・吸収、プラス・マイナス・ゼロにする発想)を実現するにあたり、水素(H)を燃料として利用できればエネルギー資源調達のリスク回避にもなるし、脱炭素の芽も大きい。しかし、現状ではコストが高いために自国生産だけで賄うのは難しく、まずは海外から調達しようという動きが進んでいる。鎬(しのぎ)を削る3つの方式を紹介しよう。

水素社会の実現は日本の悲願

2021年中に閣議決定予定の「第6次エネルギー基本計画」で初めてエネルギーの主力の一つとして名を連ねた「水素」に注目が集まっている。

グリーン、ブルーにターコイズ…7色で表す水素は何が違う?

2021.9.25

水素社会にこだわる日本だが、それはなぜか。理由は簡単で、エネルギー資源が乏しい反面、周囲に「水=H2O」の形で水素が溢れ、燃やしてもCO2を出さず、貯蔵可能なエネルギーだから。このため日本の水素研究の歴史は長く世界最先端を行く。

ちなみに経済産業省/資源エネルギー庁の試算では、水素の国内供給量(2017年)は約0.02万tだが、2030年に1000倍以上の30万t、2050年には1000万tへと急拡大。既存の石炭/LNG(液化天然ガス)火力発電の燃料に数十%混ぜる「混焼」で、CO2削減と水素の消費拡大=価格低下を期待する。

これにより価格は現行の100円/Nm3(N/ノーマル=0℃・1気圧の意味)から2030年に30円/Nm3、2050年に20円/Nm3まで引き下げる計画だ。ちなみにLNGは2017年時で輸入量8500万t、価格は16円/Nm3。

タダ同然の化石燃料からブルー水素を造る

では、大量で安価な水素をどうやって安定調達するのか。「周りを海に囲まれた日本だから洋上風力発電を近海に林立させて、ここで得た電力で海水を電気分解し水素ガスを造ればいい」と、考える向きも多いだろう。だが、現状では洋上風力発電の設置・運用コストが極めて高く、ここで得られる電力がどれだけクリーンで見かけ上タダだと言ってもトータルで考えるととても採算が合わない。まずは化石燃料由来の安価な水素を海外から調達、これを呼び水にして水素の国内市場を拡大、将来訪れる“夢の水素ガス自給自足”に備える、というシナリオを描いた方が現実的だろう。

すでに日本は主として3方式を実用試験中で、肝は“タダ同然の化石燃料からブルー水素を造る”点。

水素と炭素(C)が主成分の石炭や石油、天然ガスを高温高圧で処理すると比較的低コストで水素ガスが取り出せ、これらはもちろん水の電気分解よりもはるかに安い。しかもこれまで廃棄対象だった未利用の油分・ガス分や低価格な褐炭(後述)が原料ならば、さらに安く上がる。

排出される大量のCO2が気になるが、これはCCS/CCUS(CO2の回収・貯留/CO2の回収・利用・貯留)技術を駆使し、当面は地下の奥底に注入して貯蔵し、将来的にはこれを原料にセメント原料の炭酸カルシウム(固体)やメタンガスなどを合成したり、大規模野菜工場で“植物の餌”として消費したり再利用も視野に。ただしあくまでも採算に乗せることが必須だ。

CO2原料の合成燃料が未来のエネルギーの主役!? 日本が有利な「カーボンキャプチャー」

2021.2.17

オーストラリアの褐炭を液体水素化

ではさっそく実用試験中の3方式を見ていこう。

オーストラリア南東部で産出される豊富な褐炭を原料に水素を造って現地で液化、専用大型タンカーで日本に輸送する構想で、「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA=ハイストラ)」の下、川崎重工業や岩谷産業、シェルジャパン、Jパワー、丸紅、ENEOS、川崎汽船が参画。世界初の液化水素運搬専用大型タンカー「すいそ ふろんてぃあ」(約8000総トン)も竣工し、現地のガス化・液化プラントも稼働。これだけ大規模な液体水素輸送実験はもちろん世界初だ。

液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の着岸試験の様子(2021年1月) 写真:HySTRA
豪州褐炭ガス化・水素精製実証設備(NEDO助成事業/豪州補助事業) 写真:HySTRA, J-POWER/J-POWER Latrobe Valley

「褐炭」は熟しきっていない石炭で、通常の石炭より熱量が低く30~60%もの水分を含み、乾燥させると自然発火するなど面倒な代物のため、国際取引はまれで自国の火力発電用として消費されるのがもっぱら。ただし価格は石炭の10分の1程度と安価。

輸送効率アップのため、水素ガスはマイナス253℃に冷却して液化、体積を800分の1に圧縮して輸送する。日本到着後は再びガスに戻し発電用やFCV(燃料電池自動車)用として使う。

日本とは準同盟国のオーストラリア、しかも地政学的にリスクの高いペルシャ湾や南シナ海を全く通らないエネルギー・ルートのため、安全保障の面でもメリット大だろう。

サウジの未利用油をアンモニア化

一大産油国サウジアラビアの製油所から排出される残渣(ざんさ)油(成分の悪い残りかすの油類)や、油田から出る副産物のガス(産出量や成分が不安定)は半ば邪魔者。安価のためこれを原料に水素ガスを抽出し窒素(N。大気中から採取)と反応させてアンモニア(NH3)を合成するというもの。NH3は通常気体だがマイナス約33℃で液化、冷却にさほどコストがかからず、しかも1300分の1にまで圧縮するので「水素キャリア(水素分子を運ぶための物質)」としては非常に魅力的。

猛烈な刺激臭と急性毒性、腐食性に要注意だが、アンモニア自体は肥料や各種工業の原料として昔から世界で広く使われ、インフラは既存のものを利用でき、取り扱いのノウハウも十分なため、サプライチェーン的にも有利。さらに、よく燃えるのでそのまま燃料として利用可能でもちろんCO2も出さず( NH3+O2=H2O+NOx)、既存の石炭火力発電所で「混焼」したり、アンモニア専焼火力発電の燃料として利用したりできる。

サウジ国営石油会社(アラムコ)やエネルギー経済研究所(IEEJ)、三菱商事、日揮、三菱重工業、宇部興産などが参画、すでに世界で初めて本格的な専用タンカーを使った日本への液化アンモニア大量輸送を達成している。

ブルネイの未利用ガスをMCH化

東南アジアにあるブルネイのガス田から産出される未利用の炭化水素ガス(主役の天然ガスとは成分が異なる、いわば不純物)は、これまで大半が廃棄対象だった。この未利用ガスに着目し、塗料などに使われるトルエン(C7H8)と水素を反応させてMCH(メチルシクロヘキサン:C7H14)を合成、水素は実質500分の1に圧縮され、これを水素キャリアとして専用タンカーで日本まで運ぶ仕組み。

MCHは聞き慣れないが、通常液体である点がミソで、前述の2方式に比べ冷却コストが無用な点が有利。だが、反面原料のトルエンが猛毒な上、日本に到着後MCHを元の水素とトルエンに分離(脱水素)するコストがバカにならない(トルエンはブルネイに返送され再利用)など手間やエネルギー効率が少々悪い。

「次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD:アヘッド)」が結成され、三菱商事、日本郵船、千代田化工建設、三井物産などが参画、こちらも2020年に世界初の、製造から輸送まで一連の工程をトータルで行った国際サプライチェーンの実証実験が続けられている。

◇◇◇

このように、主に3方式が国際水素サプライチェーンの有力候補として名乗りを挙げるが、「かつてのVHS対ベータのビデオテープ戦争と同じく、最終的にはどれがデファクト・スタンダード(事実上の標準)を握るかの話」(業界関係者)との見方もあり、すでに水面下では互いに火花を散らしているという。

今年10月に発足した岸田政権では経済安全保障担当大臣のポストが新設、米中対立を念頭に最先端技術の流出など“経済戦争”を意識した対策に動き始めたが、経済安保の一丁目一番地はなんといってもエネルギーで、「水素」は今後の主軸になるだろう。そして日本は同分野で“今のところ”世界のトップを走るが、EUや中国、韓国などが何兆円規模の資金を投じて巻き返しを図っているのも事実。いつものように「気がつけば世界の半周どころか3周遅れ」とならないことを祈るばかりだ。

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衆議院解散、コロナ収束後の国のあり方を問う総選挙へ https://seikeidenron.jp/articles/19815 https://seikeidenron.jp/articles/19815#respond Thu, 14 Oct 2021 08:33:03 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19815

岸田文雄首相は10月14日午後の衆院本会議で、衆院解散を宣言した。政府はその後の閣議で19日公示、31日投開票の選挙日程を正式決定。実質的に選挙戦がスタートした。岸田首相は勝敗ラインについて「与党で過半数」としているが、安倍政権での2度の衆院選では自民党単独で過半数、自公両党で3分の2超の議席を獲得しており、どこまで勢力を維持できるかが焦点となる。

任期満了後の投開票は現行憲法下で初

「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」。静まり返った衆院本会議場に、大島理森議長の宣言が響き渡った。直後、慣例通りに与党議員が万歳三唱。衆院議員の任期は10月21日に満了となるため、現行憲法下で初めて任期満了後に選挙が行われる。

衆院議員の総定数は465。このうち289人を小選挙区、176人を比例代表で選ぶ。小選挙区の定数は1、全国を11のブロックに分ける比例代表の定数は6~28。仮に小選挙区で敗れても、比例代表に重複立候補していれば惜敗率の高い順に“復活当選”することもできる。読売新聞の9月時点の調査では、全国で900人超が立候補を予定しているという。

※全国の選挙区別定数はページ後半に

過半数を維持できるか? 自民党と公明党の公約

今回の総選挙で自民党が作成したポスターや政策パンフレットの表紙は、笑顔の首相とともに「新しい時代を皆さんとともに。」というキャッチフレーズ。前回の総選挙では真剣な表情の安倍首相と「この国を、守り抜く。」というキャッチフレーズだったのと対照的だ。岸田首相の持ち味である優しさや親しみやすさを前面にアピールしたのだろう。

政策の中身を見ると、安倍・菅両政権への国民の批判を意識して「信頼と共感」を掲げ、アベノミクスの「成長」に加えて、総裁選時から主張する「分配」も強調している。具体的には8つの政策の柱として、新型コロナウイルス対策や経済安全保障の強化、防衛力の強化、憲法改正などを列挙している。総裁選で岸田首相が掲げた政策に加え、安倍元首相が全面的に応援し、3位につけた高市早苗自民党政調会長の主張が多く盛り込まれた印象だ。

自民党総裁選投票締め切り直前、一目でわかる4候補政策比較

2021.9.27

連立与党を組む公明党は「日本再生へ新たな挑戦。」と銘打ち、新型コロナ対策を前面に掲げた。PCR検査の拡充やGO TOキャンペーンの再開に加え、高校3年生までのすべての子どもに一人あたり10万円を支給する「未来応援給付」を盛り込んだ。

また、福祉や社会保障を重視する公明党らしさとして社会的孤立の防止や非正規労働者への支援、選択的夫婦別姓制度の導入を掲げたほか、与党内で政治とカネの問題が相次ぎ批判されたことから国会議員が当選無効となった場合に、それまで支払われた歳費や手当等を国庫へ返納させる制度の創設を盛り込んだ。

非自民の受け皿になれるか? 立憲と共産が候補者一本化

対する野党の最大勢力は立憲民主党。前回2017年の衆院選では直前に結党したばかりだったにもかかわらず、小池百合子都知事らが結党した希望の党を抑えて野党第1党に躍進。その後、いったん解党して、旧民主党や無所属の議員らが合流して2020年9月に今の立憲民主党を結成した。今回の総選挙では「変えよう。あなたのための政治へ。」と掲げ、自公政権への対決姿勢を示している。

具体的には安倍・菅両政権が推し進めたアベノミクスが「競争ばかりをあおり、『自己責任』を強調し過ぎた」と批判。「表紙(首相)を変えただけでは変わらない」として、「支え合う日本」を目指すとしている。新型コロナ対策では患者に対応した医療・介護従事者への20万円支給や年収1000万円程度まで実質免除となる時限的な所得税減税、低所得者への年額12万円の現金給付などを明記。税率5%への時限的な消費税減税も盛り込んだ。

また、富裕層や大企業への課税強化や脱原発依存、選択的夫婦別姓制度の実現やLGBT平等法の制定、カジノ解禁の撤回など比較的リベラルな政策を並べた。「批判ばかり」との批判を意識してか、議員立法の提出件数などもアピールしている。

野党第2党の共産党は「なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく」と題し、野党4党(立民、共産、社民、れいわ)の共通政策を武器に、政権交代を目指すと掲げた。新型コロナ対策では無料のPCR検査の大幅拡充や医療機関への財政支援、一人10万円の「暮らし応援給付金」の支給などを列挙。経済政策ではアベノミクスで格差が拡大したとして、最低賃金の1500円への引き上げや正規と非正規雇用の格差是正、残業時間の上限規制などを打ち出す。消費税の5%への引き下げや法人税、株取引の税率の引き上げも盛り込んだ。

立憲民主と同じく旧民主党の流れをくみながら、野党連携には参加しないこととした国民民主党は「停滞するこの国を動かすため 私たちは『対決より解決』を選ぶ 動け、日本。」と提起。立憲民主と異なり、採算的な議論で政策を前に進めるとアピールしている。ただ、具体的な政策として掲げた一律10万円の現金給付や消費税の5%への引き下げ、最低賃金の引き上げなど立民、共産との共通点は多い。

一方、リベラル系の政党とは一線を画すのは日本維新の会。「日本は、もっと強くなることができる。」と題し、これまでと同様に定数や報酬を削減する「身を切る改革」や減税と規制改革、地方分権、憲法改正の実現などを訴えている。新型コロナ対策では他の政党のような現金給付ではなく、都道府県知事への権限移譲や危機対応を強化するための法改正・憲法議論などを掲げたのも特徴だ。

主要政党が公約を発表するなか、現役の財務次官が「ばらまき合戦」を批判するという異例の事態にも注目が集まっている。目先のメリット・デメリットだけでなく、新型コロナ収束後の国のあり方をどう描いているかにも注目しなければならない。

岸田内閣の経済政策 成長も分配も実現し、さらに財政健全化も目指す?

2021.10.12

全国の選挙区別定数[総定数465:小選挙区289/比例代表176]

※表記:■比例代表ブロック、・ブロック内の小選挙区

北海道ブロック8

  • 北海道12

東北ブロック13

  • 青森3
  • 岩手3
  • 宮城6
  • 秋田3
  • 山形3
  • 福島5

北関東19

  • 茨城7
  • 栃木5
  • 群馬5
  • 埼玉15

南関東22

  • 千葉13
  • 神奈川18
  • 山梨2

東京都ブロック17

  • 東京25

北陸信越ブロック11

  • 新潟6
  • 富山3
  • 石川3
  • 福井2
  • 長野5

東海ブロック21

  • 岐阜5
  • 静岡8
  • 愛知15
  • 三重4

近畿ブロック28

  • 滋賀4
  • 京都6
  • 大阪19
  • 兵庫12
  • 奈良3
  • 和歌山3

中国ブロック11

  • 鳥取2
  • 島根2
  • 岡山5
  • 広島7
  • 山口4

四国ブロック6

  • 徳島2
  • 香川3
  • 愛媛4
  • 高知2

九州ブロック20

  • 福岡11
  • 佐賀2
  • 長崎4
  • 熊本4
  • 大分3
  • 宮崎3
  • 鹿児島4
  • 沖縄4
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プラスチックごみ削減に加速 企業&自治体の取り組み https://seikeidenron.jp/articles/19784 https://seikeidenron.jp/articles/19784#respond Thu, 14 Oct 2021 03:00:27 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19784

プラスチックが開発されてほぼ100年、軽くて丈夫、安価に作れることから大量生産・大量消費・大量廃棄が常態化し、プラごみが世界中で大きな社会問題になっています。海に流れたプラごみは、さながらスープ状態(これをプラスチックスープという)、やがてマイクロプラスチックとなって生態系にまで悪影響を及ぼします。わが国は、一人当たりの使い捨てプラごみの発生量がアメリカに次いで2番目に多い「プラごみ大国」です。そこで、プラごみの削減方策を、2022年4月から施行される「プラスチック資源循環促進法」を念頭に考えてみましょう。

“空気のようなプラ”を使わない生活は可能か?

プラスチック(プラ)とは、石油から得られる一つの化合物[単量体、モノマー(Monomer)、monoは分子が一つという意味]を人工的にいくつも繰り返しつなげた物質[高分子重合体、ポリマー(Polymer)、polyは分子が多数という意味]を指し、高分子合成樹脂とも呼ばれる。

セルロース、デンプン、綿、たんぱく質などは天然の高分子化合物で、これらは自然界で分解されごみにはなりません。しかし、人工物のプラは自然界ではほとんど分解されず、これがごみになります。

化学技術の進歩により、人類は多くのプラを作り使用してきました。このプラが日常生活の中で幅広く使われているのは周知のとおりです。少なくとも、50年前にはこれほどの使い捨て食品容器や包装材(シングルユースやワンウエイ商品)は、ほとんど見られませんでした。

2020年7月1日からレジ袋が有料化され1年強が経過しました。コンビニでのレジ袋辞退率は75%と有料化前の25%の3倍にもなっていますので、プラごみの削減につながっているように見えます。しかし、わが国で年間排出されるプラごみは約900万トン、そのうちレジ袋はわずか2~3%、環境負荷を減らす効果としては限定的で、その他のプラの削減が重要となります。

環境対策が叫ばれて久しいですが、一般的にはプラごみ問題は関心があるようで関心がありません。理由は空気のように当たり前に使ってしまっているからです。

プラごみをなくすには、プラの製造・使用を禁止することですが、ここまで便利に使ってきてしまったプラの使用を止めることは不可能でしょう。そもそもプラの製造は石油化学工業と密接に関係、多くの製造会社や関連会社があり、製造・使用禁止となれば経済的な影響は計り知れません。プラの無い生活や社会は今や考えられないのです。となればプラと共存しながら、その削減方法を考えざるを得ません。そのためには、言い古された3R(Reduce・Reuse・Recycle)の推進しか方法はないでしょう。

プラスチック資源循環促進法とは

背景がわかったところで、2022年4月に施行される「プラスチック資源循環促進法」(プラ新法)とは何か考えてみましょう。プラごみ削減の世界的動向に刺激を受け、わが国でも2021年6月にプラ新法が成立。2030年までにワンウェイプラを累積25%削減、プラ製容器包装(後述)の60%をリユース・リサイクル、35年までに使用済みプラを100%リユース・リサイクルし有効利用するなど、その中身はかなり意欲的です。

6月23日に開かれた環境省と経済産業省合同の審議会で、プラ新法に基づき、企業や自治体に求めるプラごみ対策案が示されました。

  1. 製造過程で出る端材の発生を抑え、流通で使う包装材を簡素化する。
  2. 年間250トン以上のプラごみを排出した事業者に、翌年度、排出量をどの程度減らすか、リサイクルの推進などについて目標を作成するよう義務づける。
  3. 目標の達成状況はインターネット上などで公表、取り組みが著しく不十分な場合は国が行政指導を行う。
  4. 削減対象とする使い捨てプラ製品は12品目、コンビニ、スーパー、ファストフード店で配られるスプーンやストロー、マドラー、ホテルが提供するヘアブラシや歯ブラシ、クリーニング店のハンガーなど。食品を販売する百貨店や配達飲食サービスなどの事業者にも削減を求める。
  5. 上記製品の有料化、無料提供の受け取り意思の確認、提供を辞退した人へのポイント還元、回収再利用、プラを薄くして使用量を削減など事業者に要請。
  6. コンビニやスーパーなど使用量が年5トン以上の事業者には削減を義務化し、取り組みが不十分な場合は社名を公表。命令に従わない場合は50万円以下の罰金を科す。

以上が、プラ新法の概要の一部です。

コンビニでの回収を促進

プラ新法を先取りして、プラごみ削減に向けて、企業・自治体の動きが加速していますので紹介しましょう。

我が国は、プラごみの分別・回収が進んでいるとはいえ、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルといった再生樹脂などへのリサイクル率は25%です。その他は、火力発電、RPF(廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料)、セメント燃料などの熱回収率が57%、焼却・埋め立てが18%と、結局7割程度が焼却(二酸化炭素が発生)されています。

使用済みプラの回収・再利用とリサイクルが一番進んでいるのは、ペットボトルのPET(Polyethylene Terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)です。2019年のペットボトルの回収率は93.0%、リサイクル率は85.8%と世界最高水準。

サントリーは2019年に「プラスチック基本方針」を策定し、「2030年までにサントリーグループが使用するペットボトルの原料をリサイクル素材、または植物由来素材のみにし、化石由来原料の新規使用をゼロにする」という目標を掲げました。

しかし、このペットボトル回収・再利用・リサイクルには大きな問題が潜んでいます。日本のペットボトルは仕様が統一されており、リサイクル工場で何度もボトルに再生できるボトル・トゥー・ボトルに向いています。ただ、街中の分別回収箱にはごみを捨てる人もいて、不純物が再生の妨げになっています。

こうしたなか問題解決のために登場したのが、トムラ等が手がける自動回収機です。ラベルが付いたままのボトルや缶を機械がはじき、再利用に適した状態のボトルだけを集める。一方、利用者は回収機に入れたボトルの本数に応じてポイントを受け取ることができます。

セブン・イレブンは関東を中心に730台を店頭に設置、最近は川崎市と連携して増設を急いでいます。西日本にも広げ、2022年2月末までに追加で約800台増やす計画。工場で再生した樹脂は自社企画飲料のボトルに使います。現状では回収ボトルを資源として活用するには自治体ごとに相談する必要がありますが、プラ新法では一定の条件を満たせば自治体ごとの相談が不要になり、22年度以降はさらにリサイクルに力を注ぐ方針のようです。

都内のセブン・イレブンに設置された自動回収機。
操作画面

キリンホールディングスが横浜市内のローソンに設置した回収機は、使用済みボトルを逆さにして飲み口から差し込み、飲み残しの混入を防ぐようになっています。回収したボトルはローソンから購入し、自社製品のボトルに再生。横浜での実験結果を見て回収機の仕様を調整、全国のローソンに設置する計画です。

大手を中心とする飲料7社は、2027~30年までにペットボトル原料の再生樹脂比率を50~100%に高める計画とのこと。2020年の業界平均値は、12.5%ですから、再生樹脂の確保が課題です。

文具やオフィス家具メーカーのプラスは、素材の70%をプラスチックから紙に置き換えたクリアーホルダーを開発、一部の製品の包装をプラから紙に切り替えています。

世界的なおもちゃメーカーのマテルは、海洋プラごみを再生した素材を90%使用した人形を初めて作り、2021年8月中旬から日本でも販売を開始。商品の包装にもプラではなく紙が使われ、マテルは、2030年までに、すべての商品と包装に再生素材などを使用するとのことです。

一方、ブロックのおもちゃで知られるデンマークのメーカーのレゴグループは2021年6月、ペットボトルを再利用したブロックの試作品を公開。1リットルのペットボトル1本から平均で10個分のブロックの原材料が確保できるようです。

また、ローソンはこの9月から東京、埼玉、千葉の約30店舗で、鍋などの容器を持参しておでんを購入すると5個ごとに39円割引になる「おでん鍋割セール」を開始、10月から全国展開を予定しています。環境破壊につながるプラごみを削減する“脱プラ”の動きがコンビニおでんにまで影響を及ぼしています。

プラごみ削減に消費者ができること

増えすぎたプラをどう削減すか、人類は大きな課題を背負っています。削減を実現するためには、政治・法律による国の規制、自治体の行政指導、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への転換、企業・メーカーの取り組み改革などが必要です。また、並行して消費者の意識改革・モラル向上が求められ、私たちは今、暮らしの在り方を見つめ直すときにきています。以下は、消費者ができる事柄です。

  1. マイバック、マイボトル、マイ箸を持参する。
  2. スーパーなどで食品を小分けするポリ袋の過剰使用を減らす。
  3. 詰替用品を利用し、プラボトルの廃棄を減らす。
  4. 惣菜や弁当のトレーなどをすぐに捨てないで、繰り返しリユースする。
  5. 水は水道水を飲用。緑茶、コーヒー、紅茶は自宅で作りマイボトルに。スポーツ飲料は粉末を利用するなどペットボトルの利用を減らす。
  6. 食品保存は蓋付容器を利用し、ラップの使用を減らす。
  7. 買い物時は簡易包装を頼む。
  8. ごみは分別し、分別の精度向上と異物混入防止に努める。

最後に[8]のプラごみの分別について考えましょう。プラごみは、大きく分けると現在2種類あります。プラスチック製容器包装(プラ包装)とプラスチック製商品(プラ商品)、どちらもプラでできていますが、分別処理の仕方が異なります。

プラ包装とは、お菓子やパンの袋、食品トレー、ペットボトルのキャップやラベル、発泡スチロールなど、食品や商品を入れたり包んだりして、中身と分離した際に不要になる部分で、リサイクルのプラマークの表示があります。この表示が無いものが結構たくさんありますが、これもプラ包装です。これらは基本的にリサイクルされますが、現在の分別の仕方は、異なる素材ごとの分別になっていません。これは大きな問題です。

一方、プラ商品は、文具、おもちゃ、バケツ、サンダル、ホースなどこれも多数あり、これらは燃やすごみとなっています。

このように同じプラでありながら分別処理の仕方が異なるのは、現行法上の問題です。プラ新法によって、いずれはプラ商品もリサイクルされるでしょうが、各自治体によって事情が異なるようです。プラごみの削減は、結局のところ製造するプラの量を減らすこと、使用済みのプラを捨てずに、回収・再利用・リサイクルさせることにつきます。そのためには、消費者の高精度な分別作業が不可欠だということを今以上に浸透させる必要があるでしょう。

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岸田内閣の経済政策 成長も分配も実現し、さらに財政健全化も目指す? https://seikeidenron.jp/articles/19786 https://seikeidenron.jp/articles/19786#respond Mon, 11 Oct 2021 22:00:00 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19786

経済政策は自民党総裁選での政策論争でも常に焦点となってきた。発足した岸田内閣が打ち出すのは、「成長と分配の好循環」を目指す「新しい資本主義」の実現だ。聞こえはいいが、富裕層がより豊かになるこれまでのシステムからの脱却をしながらコロナ禍からの経済復興を目指すには、大規模な財政出動が必要としている。財政の立て直しは喫緊の課題とされるなか、“3A”が主導する半導体産業の強化でどうにかなるのか。

「新しい資本主義」の原点

「岸田ノートを見たいものですね」

あるメガバンクの幹部は10月4日に発足した岸田文雄内閣の経済政策に関してこう呟いた。岸田氏は自民党総裁選の最中から、折に触れてプラス製の手帳を掲げ、「国民の声を10年以上前からノートに書き留め、読み返してきており、私にとって大事な財産」と強調した。岸田氏の代名詞ともなっている“聞く力”の原点ともいえるノートは、1年で3冊分、10年間に30冊近くになるという。

その岸田ノートの一端を8日の所信表明演説で披露した。「一人暮らしで、もしコロナになったらと思うと不安で仕方ない。テレワークでお客が激減し、経営するクリーニング屋の事業継続が厳しい。里帰りができず、一人で出産、誰とも会うことができず、孤独で、不安。今、求められているのは、こうした切実な声を踏まえて、政策を断行していくことです」と語り、「新型コロナで大きな影響を受けている方々を支援するため、速やかに経済対策を策定します。その上で、私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。わが国の未来を切り開くための新しい経済社会のビジョンを示していきます」と強調した。

「経世済民」という言葉があるが、岸田内閣を特徴づける最大の要素は“聞く力”であり、それをどう政策に結実できるか、「新しい資本主義」の具体的な姿が問われることになる。「人の話をよく聞く男」。かつて岸田氏と私立開成高校で同期であった方の岸田評だ。岸田氏は開成高校では硬式野球部に所属し、最後はセカンドを守るレギュラーとなった。しかし、「野球部では目立つ存在ではなかった。俺が俺がというタイプではなく、チームを静かに支える、そんなパパのような信頼される男だった」(先の開成高校同期の友人)という。

その人柄は早稲田大学法学部を卒業し、就職した日本長期信用銀行(現新生銀行)のカルチャーとも通じるところがある。筆者は金融を長く取材してきた関係もあり、長銀の方々とは数多く接してきた。長銀のカルチャーは、一言で表現すれば“紳士”、同じ長信銀であった日本興業銀行(現みずほ銀行)や日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)の企業風土とは大きく異なる。

岸田氏は、この長銀に1982年から5年間勤めた。前半の2年半は外国為替を経験し、後半の2年半は四国・高松市に赴任し、地元の基幹産業であった海運担当となった。ここで取引先の倒産や夜逃げ、再建の相談なども経験したという。この銀行員時代の経験が政治家としての資質、そして首相としてうち出した「新しい資本主義」の原点になっていると感じる。岸田氏が目指す中小企業対策などのコロナ対応はその象徴であろう。

「令和版所得倍増計画」はアベノミクスと微妙な距離

総選挙を控えていることもあるが、岸田氏は数十兆円規模の経済対策を示唆しており、選挙後、すみやかに補正予算の編成が進められるだろう。「新しい資本主義の実現」は、岸田政権の看板スローガンになっている。

岸田氏が経済政策について、所信表明演説で繰り返し言及したのは「成長と分配の好循環」であり、岸田氏は“成長”のフレーズを15回、“分配”を12回も連呼した。その上で、「成長か、分配か、という不毛な議論から脱却し、成長も、分配も実現するために、あらゆる政策を総動員する」と強調した。

これまでのように成長と分配のいずれかに重点を置く二者択一の経済政策ではなく、両者のバランスのとれた推進と好循環を目指すという岸田イズムは、岸田内閣の経済政策を象徴している。その原点は、岸田派のルーツである宏池会の池田勇人元首相が提唱した1960年代の「所得倍増計画」にも通じる。まさに「令和版所得倍増計画」であり、「所得増と経済成長の両立」といっていい。

岸田氏の経済政策の特徴を決定づけるもう一方の要素は、アベノミクスとの微妙な距離感であろう。

両者には似て非なる側面がある。アベノミクスでは「3本の矢」が提唱され、成長戦略と大規模な金融緩和、そして積極的な財政政策が採られた。岸田氏の経済政策でも、金融緩和の継続と積極財政は継承されるだろうが、成長戦略については温度差が感じられる。

アベノミクスは規制緩和とマーケットメカニズムを通じた経済の活性化が軸に据えられていた。大規模な金融緩和と相まって株価は上昇し、結果として株式などのリスク資産を持つ“富裕層”をさらに富ませ、格差を広げた。岸田氏はこのアベノミクスの負の側面を強く意識している。その解消を国民に強く印象付けるため“分配”を強調しているといっていい。

富裕層への過度な富の分配を抑え、国民全般に富が行き渡るよう政策を誘導しようとしている。「国民の大多数が中流階級意識を持った」池田内閣が実現した「健全な中間層」の育成が目指される。

半導体産業に注力、3Aの存在感は鮮明に

岸田政権の経済政策を決定づける要素には別の側面もある。自民党幹事長に就いた甘利明氏の「経済安保政策」の影響だ。甘利明氏は、麻生太郎氏、安倍晋三氏とともに、いわゆる「3A」として岸田政権誕生を影で主導したといわれている。今後の経済政策においても3氏の影響は避けられない。なかでも甘利氏が重視する「経済安保政策」は対中国政策を含め注目点となる。アメリカの経済政策とも深く連携する部分だ。その一端が早くも芽をふき出した。

世界最大の半導体生産受託会社である台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループは、半導体の新工場を熊本県に共同で建設する計画を固めた。総投資額は8000億円規模で、日本政府が最大で半分を補助する見通しだ。TSMCの先端微細技術を使い、自動車や産業用ロボットに欠かせない演算用半導体の生産を2024年までに始める。日本政府が海外企業に巨額の支援をするのは異例だ。このTSMC誘致を主導したのは甘利氏にほかならない。

自民党総裁選前から「TSMCの誘致に各国は鎬を削っている」(経産省幹部)と指摘されていた。米政府の要請を受けTSMCは2020年、アリゾナ州で総投資額120億ドル(1兆3100億円)規模の工場新設を決めている。

日本も政官上げてTSMC誘致に力を入れている。その中核が5月に立ち上げられた自民党の「半導体戦略推進議員連盟」(甘利明会長)で、安倍晋三前首相、麻生太郎前財務相が最高顧問に就いている。甘利氏は、日本の半導体産業強化は「自前主義は絶対無理だ」とした上で、「半導体製造装置や素材といった日本の強みを海外勢の技術を合わせて拠点を作ることが大事だ」と指摘。組む相手は同盟国と同志国の企業であるべきとして、TSMCを最右翼に据えている。

半導体議連の安倍最高顧問は「(半導体は)一産業政策ではなくて国家戦略の政策になっていく」と語り、甘利会長は「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン」を目指して先陣を切っていきたい」と“日の丸半導体”の復活を強調する。半導体、台湾企業というキーワードの先に見えるのは中国の影であり、まさに“経済安保政策”といっていい。岸田氏は甘利氏の進言を受け、新内閣で「経済安保相」を置いた。ここでの3Aの存在は鮮明だ。

開成と財務省を中心とする“チーム岸田”

その経済安保相に就いたのは、小林鷹之氏だ。同氏は二階派に属するが、岸田氏と同窓の私立開成高校卒という側面がある。岸田政権の経済政策を占う上で欠くことのできないのは、こうした同窓や官僚出身者を要所要所に配した“チーム岸田”の存在だ。

開成高校出身者の筆頭は、2019年まで経済産業省の次官だった嶋田隆氏を政務の首相秘書官に起用したことだ。次官経験者が秘書官に就くのは極めて異例だ。開成高校出身の議員と官僚の約600人は2017年に同窓会「永霞会」を発足させ、会長に岸田氏を仰いだ。岸田氏を総理・総裁へ押し上げることが実質的な目的であった会とみていい。開成高校出身者は特に財務省に多く、岸田氏を影で支える存在となろう。

同じ開成高校出身者ではないが、7月まで国税庁長官だった可部哲生氏は岸田氏の義弟で、財務省で理財局長、総括審議官も経験しており、岸田氏のブレーンの一人と目されている。

また、岸田派の側近で、「新しい日本型の資本主義」などの政策立案を手掛けた木原誠二氏(当選4回)と、村井英樹氏(同3回)は、いずれも財務省出身で、木原氏は官房副長官に就いた。

財政の健全化はどうするのか

開成高校と財務省という2つの支援母体を配置したチーム岸田だが、そのおひざ元の財務省から思わぬ直球が投げられ、波紋を呼んでいる。新内閣発足早々に直球を投げ込んだのは財務省トップの矢野康治氏だ。月刊文藝春秋11月号には「財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」という刺激的な題が躍った。

記事の冒頭、矢野次官は次のように語っている。「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない。ここで言うべきことは言わなければ卑怯でさえあると思います。数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらに消費税率の引き下げまでが提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてきます」

岸田氏は2017年の著書『岸田ビジョン』で「政権としての指が、財政健全化に向かっていることを、内外に示しつづける必要がある」と、財政規律を重視した姿勢を示してきた。

しかし、所信表明演説では、「マクロ経済運営については、最大の目標であるデフレからの脱却を成し遂げます。そして、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努めます。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。経済をしっかり立て直します。そして財政健全化に向けて取り組みます」とやや後退した印象は拭えない。

財政が健全化しても日本経済が沈没しては元も子もないというのが岸田氏の主張であろうが、安易な財政のバラマキにならないことを祈るばかりだ。

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専門家は新型コロナの空気感染を認識 「エアロゾル感染」対策にシフトを https://seikeidenron.jp/articles/19771 https://seikeidenron.jp/articles/19771#respond Mon, 11 Oct 2021 06:35:54 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19771

新型コロナウイルス感染拡大が始まって以来、感染経路は主に飛沫感染と接触感染とされてきた。しかし、世界保健機関(WHO)は2021年4月30日に、アメリカ疾病対策センター(CDC)も5月7日に空気感染が感染経路の一つとしてウェブサイトに掲載。空気感染も含まれるとなると、これまでとは異なった対策が求められる。飛沫であればマスクをする等して自分の周りに気をつければいいが、空気の流れは自分ではコントロールできないからだ。8月27日には約40人の専門家が「最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明」という声明を発表し、空気感染にも眼目に置いた対策を訴えた。同声明に賛同し、室内の空気清浄に詳しい工学院大学工学部建築学科の柳宇教授に話を聞いた。

工学院大学工学部建築学科 教授

柳 宇 やなぎ う

1963年生まれ。専門は空調・換気設備、建築物衛生。1985年、中国同済大学機械工程学部HVAC学科卒。1992年、新日本空調技術研究所に勤務。2005年、国立保健医療科建築衛生部の建築物衛生室長、2009年、東北文化学園大学科学技術学部教授などを得て2010年より現職。著書に『オフィス内空気汚染対策』(技術書院)、『建築を“健築”に-建築学の広がり12分野からみる多彩な世界』(ユウブックス、共著)など。

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エアロゾル?マイクロ飛沫?

空気を介する感染経路でいろいろな言葉が飛び交っている。少し整理すると、「飛沫感染」は会話や咳、くしゃみ等で口から排出された飛沫を通して感染する。この飛沫は水分を多く含んでいるので、落下しやすい。2メートル前後のソーシャルディスタンスが呼びかけられているのはそのためだ。

一方、「空気感染」は飛沫の水分が蒸発し、さらに小さな粒子となって空気中を漂うなかで感染するもので、空気の流れがあれば理論上はどこまでも飛んでいく。極端な話、感染者から数十メートル離れていても感染する場合があるということだ。ただし柳教授によると、「新型コロナの場合では、同じ部屋にいれば感染する可能性がありますが、空調・換気設備などを介して隣の部屋の人にまでうつるという事例はまだありません」とある程度、感染が限定されるという。

よく出てくる「エアロゾル」については、「1ナノメートルから100ミクロンの粒子のことを指します。空気中を浮遊しますが、これによって引き起こされた感染が『エアロゾル感染』です。空気感染を含めた幅広い定義として使えるので、この言葉でコンセンサスが生まれ、一般的な言葉として使われていくでしょう」とのこと。

また、「マイクロ飛沫」は呼気から出された飛沫より小さい微粒子のことで、こちらも空気中を漂う。

「マイクロ飛沫というのは造語でこれはいずれ消滅していきます。一定の専門家は空気感染だとは認めたくない一方で、飛沫感染では説明できないために、その間をとって言われるようになったのだと思います」

工学院大学工学部建築学科・柳 宇教授

「空気感染」が認められるのは時間の問題

内閣官房が開設した「新型コロナウイルス感染症対策」 というホームページがある。そこにAIを使った「新型コロナウイルス対策FAQチャットボット(β版)」というのがある。そこに「空気感染」を入力すると飛沫感染と接触感染の言葉は出てくるが、「空気感染」という言葉は正式な感染経路とは認めていないので出てこない。

もし公的に空気感染を認めるとなると、「これまでは2メートルまでを対策してきましたが『その以上の距離は対策しなくていいの?』ということになります。そして対策を取らなかった結果が、第5波のようなことになったと思うのです」。つまり、現在は空気感染がメインであると考えていいのだろうか?

「もしマスクをしていなければウイルス量も多い飛沫感染が主になりますが、現実は皆さんマスクを着用しています。そうなると空気感染が多いというのが考えられますし、そのような論文も多いです」

9月15日の国会の閉会中審査の中で、共産党の宮本徹議員が「エアロゾル感染が主ではないか?」との質問に田村憲久厚生労働大臣(当時)は「飛沫感染の中にマイクロ飛沫、エアロゾルというものは基本的に入っているという認識だ。特にデルタ株になり、かなりそういうものに、以前よりもウイルス量が多く含まれるがために感染力が増しているのではないかという研究もある。非常に換気は重要だというふうに思っている。誤解を招かない表現の仕方をちょっと検討したい」と遠回しに回答。「空気感染」が感染経路の一つに組み込まれるのは時間の問題のようだ。

最適な換気とは? 今やるべきこと、知っておくべきこと

10月1日から緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が全国すべてで解かれた。落ち着きを見せている今のうちに国民がやるべきこと、知っておくべきことは何かを柳教授に聞いた。

第5波では家庭内感染も多かった。「換気の際の窓は1カ所ではなく2カ所、開けてください。1つだけ開けても空気の抜けるところがなく、詰まるだけだからからです」。自動車の運転席の窓を開けても空気はそれほど入ってこないが、後部座席の窓を一緒に開けると一気に空気が車内に入ってくるのと同じだ。家庭では窓とともに台所のガスコンロの上にあるレンジフードを使うと効果的だという。「スイッチを入れるとレンジフードの音は結構大きいですよね。それだけパワーが大きいということなんです」。また、お風呂の換気扇も効果があるそうだ。

ただ、冬場になると寒くて窓を開けるのを躊躇してしまう。「窓を大きく開ける必要はありません。握りこぶしぐらいの大きさだけ開けて、レンジフードを回すというのがいいでしょう。また、比較的新しい住宅では壁のどこかに丸や四角の換気口がついていると思いますが、窓を開けずにこちらを開けるといいですよ」。

では、空気清浄機はどうか? 「これは、WHOも、CDCも専門家たちも推奨しています」と、特に寒さが厳しいところは空気清浄機を使えば窓を開けなくてもよさそうだ。

多くの人が行き交うオフィスは何か落とし穴的なところはあるだろうか?

「建築物衛生法でオフィスは基本的にちゃんと換気ができるようになっています。空調機にフィルターあり、風量もありますから普通にしていれば問題はありません。仕事が終わった後に飲みに行って感染したという例はあっても、仕事中にクラスターが発生したという事例はあまりありません。あえて言うならば、空気の滞留域を作らないことです。パーテーションで区切ることでウイルスの滞留域を作る可能性がありますから、会社は空気の流れを把握しておいたほういいでしょう」

会食を通じて感染拡大が広がったこともあり、防疫対策実施の“メインターゲット” になった飲食店については「厨房には大きなレンジフードがありますよね。店内の空気はほぼそこに向かって流れていきます。座るときは入口やレンジフードから離れた場所に座るといいですよ」と。

マスクに関しては、「布マスク、ポリウレタン製のマスクはエアロゾルにはほとんど効果がないのは皆さん知っていると思います。屋外なら布マスクでも感染リスクは極めて低いですが、屋内なら不織布のマスクをつけるべきです。国の専門家会議も推奨しています」と、理想はすべて不織布のほうが安全だが、見た目も気にする人がいるのでうまく使い分けが大事であると呼びかけた。

実証実験のデータは未来の感染症にも生かされる

政府は緊急事態宣言解除ということで、ツアー、スポーツ、ライブハウスなど行動制限の緩和に向けた実証実験を10月6日から13道府県で始めている。

「個人的には実証実験はやったほうがいいと思います。新型コロナウイルスに新たな変異がないことを前提として、飲み薬ができれば新型コロナは終息すると思います。しかし、この20年間でSARS(重症急性呼吸症候群)など短いスパンで感染症が発生していますから、コロナ後の新しい感染症に備えるためにも実施してデータを蓄積したほうがいいです」

実証実験は緩和ありきのようなところがあるが、緩和後も特に人流が戻る場所については特に、空気感染を意識した感染対策が必要になりそうだ。

「実証実験で使う建物を含め、日本の建築物の空調・換気設備のキャパシティは室内熱負荷や在室者数などに従って設計されていますから、自分で風量を倍にすることはできません。新型コロナでリモートワークなど人流を抑えることが始まりましたが、実証実験も今ある建築物の環境の中でどう人を動かしていくのかをしっかり考えていく必要があります」

第5波が収まったと思ったら、すでに第6波の懸念も出始めている。われわれの新型コロナ対策は前に進んでいるのだろうか?

「今後も、マスク着用や手洗いなどのこれまでやってきた基本的な対策は変わりません。日本人の約6割はワクチン接種を終えていますが、ワクチン接種をしない人が一定数いますから、その人たちが第6波の要因になる可能性があります。もちろんブレークスルー感染もあるでしょう。ただ、第5波ほどの大きな感染拡大にはならないはずです」

気を引き締め続ける必要はあるが、それでも少し希望が持てる柳教授のコメントだった。

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横綱白鵬を正しく評価する 大相撲への3つの功績 https://seikeidenron.jp/articles/19748 https://seikeidenron.jp/articles/19748#comments Sun, 10 Oct 2021 01:03:35 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19748

横綱白鵬が9月29日に引退届を提出した。膝の状態が悪いということは誰の目にも明らかではあったが7月場所も全勝優勝しており、健在をアピールした後だっただけにそのニュースは驚きをもって伝えられた。ただ、この大横綱の引退については相撲協会やファンとの対立という、功労者には相応しくない切り口とともに伝えられることが非常に多い。確かに白鵬自身に批判されるべき言動が多かったのも事実ではあるが、この先伝説として語り継がれることを考えると疑問が残る。そこで今回は客観的に見た白鵬の実績について振り返りたい。

名古屋場所のガッツポーズは「引退」でしかつながらなかった

白鵬引退の噂は、確かに7月の名古屋場所の頃からあった。千秋楽で勝っても負けても引退。

名古屋まで駆けつける家族は、取組前から涙を隠しきれない。そして運命の一番ではカチ上げが照ノ富士の顔面をとらえる。しかし優勢には進まない。動きの速さで主導権を握り、渾身の小手投げ。そしてガッツポーズ。

すべてが異常で、前代未聞の横綱のフィナーレに相応しいものだったように思えた。だが、優勝インタビューではそんな噂があるようなことを匂わせることなく次の目標まで、にこやかに答えていた。白鵬が「引退」を口にすることによってそれまでの流れがすべてつながると思い込んでいた私は拍子抜けしてしまった。

結局あの噂が何だったのかは今となってはわからない。ただ、9月場所は所属する宮城野部屋の力士が新型コロナウイルスに感染した影響で休場せざるを得なかったとはいえ、すでに限界だったと考えると7月場所の千秋楽のあの光景について納得できるものがある。

白鵬は、人の想像を超える言動を取ることで常に議論の対象となった。ラフな相撲のスタイルも、率直な発言も、そしてサービス精神によって行ったことでさえ物議を醸してしまう。われわれの定規では測れない何かがこの大横綱にはあるのだ。

白鵬の引退に際して気になったのは、見ている側が功績を正しく評価できていない点だった。第一に語られるのがトラブルや言動、取り口の話。史上最多の優勝回数を誇り、言動も相撲もすべてが規格外というとんでもない横綱を見てきた割に、好き嫌いという最も原始的な切り口が強く出過ぎているように思えてならない。

父親世代には王・長嶋という存在があった。数字で見れば長嶋茂雄より優秀な選手は存在するが、彼らが語り部となることによって長嶋が野球界に対して果たした役割の大きさ、スーパースターたる所以をわれわれ世代も知ることができた。

そういう意味では、今のままでは白鵬が嫌いな人は白鵬を捻じ曲げて伝えてしまうことになるだろう。同じ時代を歩んできた者として白鵬の果たした役割を整理し、正しく伝える義務があるのではないだろうか。

白鵬は、数字の面で史上最強

まず挙げねばならないのは、数字の面で史上最強力士だということだ。

  • 優勝回数45回
  • 年間86勝
  • 63連勝
  • 横綱在位14年
  • 幕内1093勝
  • 7連覇

際立った数字を挙げればキリがない。数字という観点で考えると、年6場所になって以降の白鵬は史上最強力士であると断言できる。どれだけすごいかと言えば、あれほど強かった貴乃花(22回)の倍以上優勝しているのである。

少し意地の悪いファンの方は「強いライバルが居なかった」と指摘するだろうが、これについては3つポイントがある。

まず一つ目は、白鵬が台頭してきたときに土俵を席巻していたのは当時史上最強力士になる可能性のあった朝青龍だったということだ。朝青龍は29歳で引退しているが、25回優勝している。白鵬は引退前直前の朝青龍に7連勝しており、この大横綱を二十代前半にして超えたと言っていいだろう。

二つ目は、外国人力士が数多く入門している時期だったということだ。2000年以降に多くの相撲部屋が外国人力士の獲得に動き、優秀な力士が数多く育った。2021年9月現在では幕内には10人の外国出身力士が居るが、一時は半数の20人ほどが外国出身だった。トップを席巻しかねないという懸念から一部屋1人までという外国人枠を設けたほどだったのである。日本人力士の質の低下という側面はあったかもしれないが、優秀な外国人同士で切磋琢磨してきた時代の頂点に君臨していたのが白鵬だった。

また、三点目に触れておきたいのは朝青龍引退後も決して低レベルではなかったということだ。優勝回数9回の日馬富士と6回の鶴竜は横綱として平均ラインには位置している。むしろほかの時代の横綱よりもレベルが高いといえることは忘れてはならないだろう。

史上最強といえる数字を残し、しかも過去との比較で見ても決してレベルは低くはない。その数字には確かな価値があるのだ。

白鵬は、相撲低迷期を支えた

白鵬が台頭してきた頃は、大相撲が下降線をたどる時代と重なる。朝青龍が巡業を休場中に母国でサッカーに興じていた2007年に白鵬は横綱に昇進している。土俵内外でトラブルを起こす朝青龍に対して品行方正な白鵬という対立構図が生まれ、荒れる朝青龍が相撲界の顔で居座り続けることに“待った”をかけた。仮にこのタイミングで朝青龍だけがクローズアップされ続けていたら、大相撲はさらに大きな批判を受けていたことだろう。

朝青龍が去って以降、白鵬は長い間一人で横綱としての務めを果たした。強い横綱として君臨することによって相撲の価値を高めた。相撲人気の回復には競技としての素晴らしさを伝えられる力士の存在が不可欠で、当時の白鵬は品行の面でも相撲においてもその役割を存分に果たしたといえるのではないかと思う。

白鵬が居たからこそ、その後の人気力士たちの台頭も際立つこととなった。中でも稀勢の里の人気は白鵬との闘いを経て高まっていた。白鵬の強さが稀勢の里を高め、大相撲に物語を生み出し、新しいファンが国技館に足を運んだ。稀勢の里横綱初場所で照ノ富士を下したときのテレビ中継の瞬間最高視聴率は33%で、これに匹敵する数字が出せるスポーツはオリンピックやサッカーワールドカップくらいだ。相撲復活とその後の人気の中心には間違いなく白鵬が居たのである。

白鵬は、相撲の新たな可能性を広げた

白鵬はもともと相手の強さを受け止めるいわゆる「後の先」と呼ばれるスタイルだったのだが、稀勢の里の台頭後これまでに誰も取らなかったようなスタイルで相撲を取るようになった。

カチ上げや張り差しといった戦法を批判する方は多いが、これまでの力士たちが多用してこなかったのはそれだけリスクある取り口だったからだ。カチ上げや張り差しは脇がガラ空きになり、隙を突かれるために白鵬のように大胆には使えなかった。

ただ、白鵬は立ち合いでほぼ完ぺきにこれを決めることにより、相手の動きを止めることに成功した。白鵬はもう引退してしまったが、結局誰も立合いで脇が空くという弱点を突ける者は出てこなかった。白鵬が戦術に取り入れて以降、張り差しとカチ上げを使う力士は前と比べると増えている。

それだけではない。立合いでタイミングを外して出し抜いたり、猫だましで動きを止めたり、土俵際で仕切って立合いの強烈な当たりを回避したりと、誰もが一度は思いつくかもしれないがリスク故に実行に移してこなかったような戦術を自らの相撲に取り入れてきた。

こうした取り口は今まで小兵や格下の力士に許されてきた部分はあるが、上位の力士、特に横綱が実行に移すことはそれほど無かった。横綱には横綱が取るべき相撲と美学があるとされてきたからだ。白鵬がこうした相撲を取るとファンはともかく親方や元力士、そして横綱審議委員会から苦言を呈されてきた。

白鵬の取り口に対して好き嫌いはあると思う。私自身本来は王道の横綱相撲が好きなので、白鵬が普通に勝てるような相手に対してラフに動きを止める相撲を観ると残念に思ったのも事実だ。そして、横綱が取るべきとされる相撲の美しさが大相撲人気を支えてきたという面もあるとは思う。

ただ、白鵬の取り口が一つの契機となってさまざまな選択肢を力士たちが取るようになったとすれば、それは相撲が競技として進化を遂げることにもつながるだろう。白鵬の取り口が極めて有効な戦術だったとすれば、本来勝てないようなタイプの力士でも勝てるようになる可能性はあるし、すでに強い力士が勝つための選択肢をさらに増やすこともできる。

相撲の人気を支えてきた強い力士はこれまでも多く存在してきた。ただ、スポーツとしての相撲を技術や戦略の面から変えてしまった力士がほかに居るかと考えると少なくとも私には思い浮かばない。白鵬は人気低迷から相撲を救ったという意味で短期的な成果を残し、そして戦略面での問題提起がこれからの相撲を導くことになれれば長期的な成果を残すことになるだろう。

確かにすべてを賞賛することができない力士だったことは間違いない。そして、是非ではなく好き嫌いという側面で見ても真っ二つに別れる力士だったことも間違いない。それほど際立った存在だったということだ。ちなみに白鵬のことを嫌いだという人は居ても、弱いという人は皆無だ。強過ぎたことが客観性を奪い、評価を難しくしているといえるだろう。

改めて白鵬という力士を振り返るとその功績の大きさに気づかされる。すべてを許容することはできないし、好き嫌いはあってもよいが、同じ時代を生きてきた者として、これだけの大力士の残した功績には敬意を払うべきではないかと思うのだ。

白鵬を見られたことは好みを超えて財産になる。そう思える日が将来きっと来るだろう。

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若手を積極登用の岸田内閣発足、政策推進力は未知数 https://seikeidenron.jp/articles/19717 https://seikeidenron.jp/articles/19717#respond Mon, 04 Oct 2021 05:45:55 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=19717

10月4日午前、菅内閣が総辞職し、同日午後、岸田文雄自民党総裁は衆参両院で第100代首相に指名された。夕方に岸田内閣が発足する。政権の要となる自民党幹事長には、総裁選で岸田文雄氏の陣営幹部を務めた甘利明税制調査会長を起用。政府のスポークスマンであり、政権内の調整役を担う官房長官には松野博一元文部科学相を充てる。自民党役員や閣僚には若手を積極登用。総選挙を目前に控え、政府・与党のイメージ刷新をアピールする狙いだが、経験の浅い顔ぶれで政策を実現していけるか、実力が問われる。

党役員には若手を積極採用

自民党役員人事では、幹事長に次ぐ重要ポジションとなる総務会長に、今回の総裁選で若手の取りまとめ役として存在感を示した福田達夫氏を抜擢した。福田氏は祖父の赳夫、父の康夫両氏が首相を務めた政治の名門出身だが、2012年初当選で当選回数は3回にとどまる。岸田氏が総裁選で掲げた「党役員に中堅若手を積極的に登用」との公約を象徴するサプライズ人事だが、総務会長は党内で意見が割れた際などのとりまとめ役で、通常は派閥領袖クラスが務めるだけに、調整力を疑問視する声がある。

政調会長には安倍晋三元首相が全面的に支援し、総裁選で健闘した高市早苗氏を起用。高市氏は安倍政権以来、2度目の就任となった。総裁選の決選投票で争った河野太郎氏は広報本部長に起用。岸田氏は河野氏の発信力に期待するとしているが、安倍政権では外相や防衛相、ワクチン担当相などの要職を歴任しているだけに“冷遇”との見方が強い。

このほか、選挙対策委員長には遠藤利明元五輪相、組織運動本部長には小渕優子元経済産業相、国会対策委員長に高木毅元復興相を充てる。いずれも閣僚経験のある実力者を並べたイメージだが、甘利幹事長や小渕氏は政治とカネの問題で閣僚辞任に追い込まれた経緯があり、さっそく野党は追及の構えを見せている。安倍・菅両政権で副総理兼財務相として政権の重しを担った麻生太郎氏は党の副総裁に起用する。

閣僚には見慣れない顔ぶれ、13人が初入閣

自民党役員は国民にとって見覚えのある顔ぶれが多いが、閣僚名簿の方は逆に見慣れない顔が並ぶ。今後、政府の“顔”となる松野官房長官は安倍政権で約1年、文部科学相を務めたが、知名度が高いとは言い難い。岸田首相をはじめとして政権中枢に世襲政治家が多いなか、松野官房長官は一般家庭生まれ。早大卒業後、ライオン株式会社勤務を経て、松下政経塾に入って政治家への道を開いた。1996年に自民党千葉県連の候補者公募に合格。同年の衆院選に千葉3区から立候補して落選し、2000年に衆院選で初当選した。当選7回。

今回の組閣では岸田氏が当初、安倍元首相の側近である萩生田光一経済産業相(前文部科学相)の起用を検討したが、“安倍カラー”が強すぎることや、当選回数が5回と少ないことから異論が上がって撤回。代替案として浮上したのが松野氏だという。松野氏は安倍元首相の出身母体である細田派の事務総長を務めるが、安倍氏とは一定の距離を置いているとされる。萩生田氏に比べて特定の政治家の色は見られないが、主要閣僚としての実力も未知数。特に官房長官は一日に2回の記者会見をこなさなければならないため、発信力と安定感を発揮できるかどうかで政権の命運が左右される。

岸田内閣が直面する最大の課題は新型コロナウイルス対応だが、対策を主導する厚生労働相には後藤茂之元法務副大臣、経済再生相に山際大志郎元経済産業副大臣、ワクチン担当相に堀内詔子環境副大臣を充てる。後藤氏は党側でコロナ対策にあたっているほか、3氏とも副大臣を経験しているものの、入閣は初めて。直近は新規感染者数が落ち着いてきているとはいえ、初入閣で“未知のウイルス”との戦いに臨むこととなる。

このほかの重要閣僚のうち、財務相には麻生氏の義弟にあたる鈴木俊一元五輪担当相、総務相に金子恭之元国交副大臣を充て、茂木敏充外相と岸信夫防衛相は留任させた。官房長官に取り沙汰された萩生田氏は経済産業相に横滑りさせ、総裁選で競った野田聖子氏を少子化担当相に起用。新設する経済安保担当相には当選3回の小林鷹之元防衛政務官を抜擢した。

最年少はデジタル担当相に起用する牧島かれん氏で44歳。46歳の小林経済安保担当相と同じ当選3回で、衆院で5回、参院で3回が目安とされる大臣の適齢期には届かない。両氏をはじめとする初入閣は20人のうち半数を超える13人で、有権者から見れば新鮮に映る可能性がある。岸田氏がかねて公言してきた「老壮青のバランス」に配慮した人事であり、党内の重鎮や各派閥に配慮してバランスよくポストを配分しているように見える。

自民党役員[役職・名前・年齢・当選回数・選挙区・派閥]

  • 総裁 岸田文雄(64)衆⑨・広島1  岸田派
  • 副総裁 麻生太郎(81)衆⑬・福岡8 麻生派
  • 幹事長 甘利明(72)衆⑫・神奈川13 麻生派
  • 総務会長 福田達夫(54)衆③・群馬4 細田派
  • 政務調査会長 高市早苗(60)衆⑧・奈良2 無派閥
  • 選挙対策委員長 遠藤利明(71)衆⑧・山形1 無派閥・谷垣グループ
  • 組織運動本部長 小渕優子(47)衆⑦・群馬5 竹下派
  • 広報本部長 河野太郎(58)衆⑧・神奈川15 麻生派
  • 国会対策委員長 高木毅(65)衆⑦・福井2 細田派

内閣

  • 首相 岸田文雄(64)衆⑨・広島1 岸田派会長
  • 総務大臣 金子恭之=初(60)衆⑦・熊本4 岸田派
  • 法務大臣 古川禎久=初(56)衆⑥・宮崎3 無派
  • 財務大臣 鈴木俊一(68)衆⑨・岩手2 麻生派
  • 外務大臣 茂木敏充=再(65)衆⑨・栃木5 竹下派
  • 文部科学大臣 末松信介=初(65)参③・兵庫 細田派
  • 厚生労働大臣 後藤茂之=初(65)衆⑥・長野4 無派
  • 農林水産大臣 金子原二郎=初(77)参②(衆⑤)・長崎 岸田派
  • 経済産業大臣 萩生田光一(58)衆⑤・東京24 細田派
  • 国土交通大臣 斉藤鉄夫(69)衆⑨・比例中国 公明党
  • 環境大臣 山口壮=初(67)衆⑥・兵庫12 二階派
  • 防衛大臣 岸信夫=再(62)衆③(参②)・山口2 細田派
  • 官房長官 松野博一(59)衆⑦・千葉3 細田派
  • 復興大臣 西銘恒三郎=初(67)衆⑤・沖縄4 竹下派
  • 国家公安委員長 二之湯智=初(77)参③・京都 竹下派
  • 少子化担当・地方創生・男女共同参画 野田聖子(61)衆⑨・岐阜1 無派閥
  • 経済再生担当 山際大志郎=初(53)衆⑤・神奈川18 麻生派
  • デジタル担当 牧島かれん=初(44)衆③・神奈川17 麻生派
  • 経済安全保障担当 小林鷹之=初(46)衆③・千葉2 二階派
  • ワクチン担当・五輪担当 堀内詔子=初(55)衆③・山梨2 岸田派
  • 万博担当 若宮健嗣=初(60)衆④・東京5 竹下派

――――――――――――――――――

  • 官房副長官(政務) 木原誠二(51)衆④ 東京20 岸田派
  • 官房副長官(政務) 磯崎仁彦(64)参② 香川 岸田派
  • 官房副長官(事務) 栗生俊一(62)元警察庁長官

政策を推進する力はあるか

一方、この顔ぶれで岸田首相が掲げる政策を本当に推進していけるかは未知数な部分が多い。安倍政権や菅政権では各派閥への配慮より実力主義で一本釣りすることが多く、菅政権の発足時の初入閣は5人にとどまったが、今回はその2倍以上。ポストに対して実力や調整力が足りず、優秀な官僚を使いこなせない大臣も出てくるだろう。初入閣組の中には早速、週刊誌の見出しを騒がせる政治家もいるに違いない。

政権幹部の頭にあるのは、まず、どうやって目の前に控える衆院総選挙を勝ち抜くか、だろう。岸田首相は10月14日に解散し、19日告示、31日投開票というスケジュールを描いているとされる。ただ、衆院選が終わればすぐに2022年度予算編成が大詰めを迎え、年明けには通常国会が始まる。

若い、経験の浅い顔ぶれでどのように政府を率い、国会を乗り切っていくか。まずは船頭役となった岸田首相、甘利幹事長、松野官房長官の3人に注目したい。

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