政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は、若い世代やビジネスパーソンに政治・経済・社会問題を発信するオピニオンメディア。ニュースの背景をわかりやすく伝えたり、時事用語の解説を通して、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Wed, 21 Apr 2021 05:33:18 +0000 ja hourly 1 警備ロボの実用化で人手不足を解消 画像・動作認識AIでデータベースの活用へ https://seikeidenron.jp/articles/18583 https://seikeidenron.jp/articles/18583#respond Tue, 20 Apr 2021 22:00:20 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18583

少子高齢化は社会保障費を圧迫するだけでなく労働人口の減少をもたらす。生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8716万人をピークに減少し続けており、2020年には7500万人を下回った。総務省の試算によると2050年には5000万人になるとみられている。産業界は将来的な人手不足に対処すべくロボットやAIの導入を進めており、特に厳しい警備業界は業界をあげて精力的な取り組みを行っている。今後、セキュリティ分野でどのような新技術が研究されているか見ていきたい。

空港に導入が進む巡回型警備ロボット

人手不足が著しい警備業界は8倍を超える有効求人倍率を推移しており、通常は1.0~1.3を推移する全体平均と比較すると、すでに壊滅的な状態にあることがわかる。さらなる状況の悪化が予想されるなか業界にとって新技術の導入は喫緊の課題である。

怪しい人物を追い回す技術には至っていないが、警備ロボットはすでに実用化されている。2019年に開発されたALSOKの自律型警備ロボット「REBORG-Z(リボーグゼット)」がその一例だ。REBORG-Zは高さ150cm・重量180cmの車輪駆動型で、施設を自律して巡回するロボットである。悲鳴などの異常音や火災を探知する機能を有しており、異常は本部の警備員に伝えられることになる。顔認識機能もあり、事前に登録した不審人物の特定も可能だ。また、正面に取り付けられたタッチパネルはフロアマップの表示など、施設利用者への案内として使うことができる。

警備ロボット「REBORG-Z」(ALSOK)
「REBORG-Z」の仕様(ALSOK)

すでに静岡空港で使われており、今後は大型施設での導入が進むとみられる。同様のロボットとしてセコムが「セコムロボットX2」を投入しており、こちらは熱・金属探知機能を有するアームによってゴミ箱内の不審物を探知できる点が特徴的だ。第1号機は成田空港で活躍している。

現段階ではロボット単体で警備を完結させることはできないが、異常を通知する機能を通じて協働型ロボットとして働くだろう。巡回要員の代わりとなることで本部要員のみで警備が可能になる。アフターコロナでは再びインバウンドの増加や都心部への一極集中が予想されるものの、警備業界の人手不足は深刻だ。今後、警備ロボットは大型施設で頻繁に見かけるようになるかもしれない。

画像認識AIで広範囲をカバー

監視カメラ(イメージ)

警備ロボットも人手不足に対応できるが、それだけでは不十分だ。ロボットが巡回する範囲しか異常を探知できないため広範囲の警備にはロボットの台数を増やす必要がある。資金力の乏しい設備での導入は難しいかもしれない。全体を俯瞰する監視カメラとAIを組み合わせればより低コストで広範囲の監視が可能になるだろう。

日立製作所が提供する「高速人物発見・追跡ソリューション」は顔検知機能や服装からの人物検知機能、侵入検知機能を有する画像解析システムだ。あらかじめリストに記録した人物を特定できるほか、映りこんだ怪しい人物を指定することでカメラに自動追尾させることができる。事前に写真を登録しなくても服装の色を指定して人物を特定できるため迷子の捜索にも使えるだろう。日立はハードに頼る製造業からIT・ソフト事業へのシフトを進めており、本サービスは脱製造業の一環といえる。

カメラとAIを組み合わせた技術はさまざまな用途への応用が可能だ。例えば商業施設内の人の動きを探知して客層のデータベースを構築できるほか、作業員の動きを探知して最適な人員配置を提案するシステムが構築できる。そして単にサービスを提供するだけでなく、そこから得られた情報を蓄積すればデータベースを基にしたソリューション事業が展開できるだろう。日立以外に各社もAIとカメラを組み合わせた提供しているが、得られた情報を基に新たな事業創出を見込んでいるのかもしれない。

動作認識AIで犯罪を未然に防ぐ

画像認識に近い技術として動作認識AIを使った技術があり、同技術は犯罪を未然に防ぐのに役立つだろう。2017年設立のベンチャーVAAK社が提供する「VAAKEYE(バークアイ)」は店内の万引きや窃盗、トラブルなどを判定し管理者に知らせるシステムだ。異常行動が見られた際に警備員を派遣すれば犯罪を未然に防ぐことができ、すでに三菱地所が運営する高層ビルや自治体などで導入されている。

「VAAKEYE」のような動作認識AIの精度は機械学習が肝となる。万引き犯の場合、「周囲をキョロキョロ気にする」、「狙っている棚の近くに人が居ないか歩いて確認する」などの行為が見られるため、これらの動きを万引き犯の特徴としてAIに学ばせることで判定が可能になる。学習対象となる映像が多いほどAIの精度が向上するため、サービス提供を通じて万引き犯の映像を入手できればさらに精度が磨き上げられることになる。

万引き以外にも応用でき、泣いている子どもの特徴を機械学習の対象にすれば迷子を見つけるのに役立つだろう。一見難しそうだが、機械学習は人がいちいち教えるのではなくAIが大量のデータを基に“自分で”学ぶため構築には手間がかからないといわれている。

次世代のセキュリティ技術から見える雇用の未来

警備ロボット、画像認識、動作認識などの次世代技術によって警備業界の人手不足は解消されるかもしれない。現場に配置する人員を削減でき、本部にだけ人員を配置すれば警備体制は機能することになる。だが今回紹介した新技術は警備業界にとどまらずさまざまな業界への応用が期待されており、本格的な導入が業界を問わず進んでいる。

ユニクロやGUではすでにレジが自動化されており、サポート要員1人で5、6台以上のレジを回すことができる。製造業でも人と一緒に作業する「協働ロボ」が導入され、人員削減につながっている。今後は単純作業を中心とした求人は少なくなり、ロボットを扱える人材が重宝されることだろう。

また、こうした自動化や画像認識技術などの新技術は大手に限らず中小企業でも需要が増すと思われる。資金の乏しい中小企業が自前で揃えるのは難しいため、月額制でロボット類を貸し出すソリューション企業が伸びるのではないだろうか。一方で新技術によって淘汰される企業も現れるはずだ。自分の職業、ひいては自分の勤め先が新技術の波を乗り越えられるか今のうちに考えておくといいだろう。

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ポテンシャルは原発600基分、洋上風力発電の可能性を考える https://seikeidenron.jp/articles/18576 https://seikeidenron.jp/articles/18576#respond Tue, 20 Apr 2021 04:22:48 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18576

福島第一原子力発電所から排出された汚染水を処理して海洋放出することについて、国際的な物議を醸している。東日本大震災から10年を経ても日本にとっては依然として大きな問題だ。一方、震災での同原発の事故を機に、日本の電力エネルギー事情は変化し、環境負荷の大きい火力発電への依存体質がより強まった。現在は原子力の割合が一桁台にまで減るなか、火力や原子力に変わる発電方法が模索されている。日本の国土の特徴からすると、洋上風力が有力視されているが、果たして現実的だろうか。各国の例を参考にしながら日本での可能性を考えたいと思う。

国内における陸上風力発電の限界

日本の電力エネルギーについて電力量に占める割合をみると2010年は火力62%・原子力29%・その他9%であったが、福島第一原発の事故以降は脱原発が進み、2014年は火力88%・原子力0%・その他12%となった。2014年は原発稼働以降で初の原子力ゼロ年である。2019年には原子力が7%まで増え火力の割合は75%まで低下したが、それでも火力の占める割合は大きい。

脱炭素を考慮するなら太陽光・風力などの再生可能エネルギーに頼りたいところだが、狭い国土・電力の安定供給という面から主力とするのは難しいといわれている。だが、洋上風力発電はどうだろうか。陸上風力より供給の安定性に優れており、海岸線の長さが世界6位という日本において陸上のように設置場所を制限されることもない。

まずは風力発電の原理をおさらいしよう。風力発電は、文字通り風力によってタービンを回し発電する仕組みであり、風力エネルギーの3~4割を電気エネルギーに変換できる。理論上は風速の3乗に比例して発電量が増えるため風速が1.5倍になると3.4倍、2倍になると8.0倍の電力が得られる。もちろん燃料は不要で、風車の耐用年数は20年もある。

風力発電はCO2を排出しないクリーンな電力源であるが、陸上は原発同様に立地条件が限られてしまう。第一に風が安定的に吹く場所が必要であり、設置・保守点検コストからも山岳部ではなく平地が好まれる。次に騒音も考慮しなければならず、近くに集落があると容易に設置はできないだろう。音量自体は大きくないがシューというような音が聞こえ、煩わしさを感じることもある。人が認識できない超低周波音を発生させることがあり、場合によっては窓ガラスを振動させてしまうだろう。

日本ではこうした条件が足枷となって陸上風力発電が普及せず、現状は発電量全体の1%にも満たない。風力発電の目安といわれる年間平均7m/s(メートル毎秒)の地域は東北・北海道に集中しており、その上で周囲に集落が無い地域は限られているからだ。

洋上風力発電の仕組みと可能性

だが、洋上風力発電であれば上述の条件を克服できるだろう。洋上風力発電は既存の風力発電を洋上に設置するものであり、着床式の場合は設備全体が海底に固定され、電力は海底に埋められたケーブルを伝って陸に届けられる。メンテナンス用の着船設備や塩害対策の設備が取り付けられるほかは陸上のそれとほぼ変わらない。

実用性の問題から水深が最大で40mまでの水域に設置可能で、陸上のように周辺集落を考慮する必要はない。水深の浅い沿岸部かつ風速7m/s以上の海域で限定すると日本における設置可能箇所は東北・北海道のほか、関東・東海沿岸、福岡・鹿児島沿岸にまで広がる。現状の風力発電の規模は3900MW(メガワット)だが洋上風力発電のポテンシャルは4万MWと試算されており、これは原発40基分に相当する規模である。

発電量と時間あたり総発電量

[W][kW][MW]はその瞬間(1秒間)の発電量を表す。[Wh][kWh][MWh]は単純にそれらにh(時間)を足したもので、1時間当たりの総発電量を表す。イメージとして川に例えると、[W]が水流の勢いを表すのに対し、[Wh]が1時間で流れた水の容量となる。

そして“浮体式”が実現できればポテンシャルはさらに広がることになる。浮体式は設備全体が浮くように設計され、海底には複数のケーブルによって簡易的に固定されるため水深200mの範囲まで設置可能だ。現状は揺れによる故障やケーブルの摩耗といった問題を抱えており、福島県沖の実証機が故障するなど実用化には至っていないが、日本の洋上風力発電は浮体式の可否によって運命が決まるとされている。着床式と浮体式を合わせればポテンシャルは60万MWになると試算されており、それは実に原発600基分に相当する。

洋上風力先進国、イギリス

洋上風力に関して、残念ながら日本は海外に比べて大きく遅れをとっている。現状は試験的運用のみで0.002~0.003MW程度の発電量しかない。一方で洋上風力先進国のイギリスは1万MWを超え、2位に7700MWのドイツ、3位に7000MWの中国が続く。

そもそもイギリスは発電に適した強い風力が得られる地域であり、島国であることが洋上風力発電の導入を容易にしてきたが、それ以外にもEUの環境規制強化が政府の積極的な姿勢をもたらしたといえる。同国では洋上風力発電の設備が2003年から設置され、今では国内電力需要の10%を賄うようになった。ドイツも同様の理由で導入が進んできたことからEUのCO2削減に向けた動きは本気であることがわかるだろう。

そしてここに来たのが中国である。コスト競争おける優位性から同国は太陽光パネルの製造で圧倒的なシェアを握っているが、洋上風力発電でも補助金を駆使して導入を進めてきた。政府は買取制度を実施することで洋上風力発電のコストを下げ、設置を進めた。2019年からは補助金を縮小しているが、初期における補助は実用化への呼び水となり2020年単体でも4400MWの設備が新設されている。総発電量でイギリスを抜くのも時間の問題といえるだろう。

洋上風力設備のメーカーはシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー(40%、スペイン)やMHIヴェスタス(15%、デンマーク)がシェア上位を占め、中国勢各社はそれぞれ2~10%に過ぎないが国別では中国がトップである。日本の本格的な導入にあたっては中国製を使わざるを得ないかもしれない。

インセンティブをもたらす必要がある

現状では洋上風力発電のコストがネックであり、電力会社が自主的に整備することは考えられない。昨年末に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づく着床式洋上風力の入札が進められたが、上限価格34円/kWhを下回らず落札されなかった。つまり国が高額で買い取らなければ普及しないということだ。

1kWhあたりの発電コストは30円以上もあるとみられ、これは12~14円の石炭・天然ガス火力や11円の水力、10円の原子力よりも高い。経済産業省と国土交通省、そして民間を交えた官民協議会では洋上風力のコストを10円弱にまで抑えることを目標としており、2030年までにイギリスと同様の1000万kW達成を目指している。

洋上風力発電の導入とともに供給網が整備され産業界で低コスト化が実現できるとの思惑だが簡単にはいかないだろう。本気で導入を目指すのであれば低コスト化が実現できない初期の段階で補助金を駆使すべきだ。企業が恐れているのは莫大な資金を投入したものの発電コストを回収できず発電設備が金食い虫になってしまうことである。発電コストと多少の利潤を国が保証することで、企業による投資へのインセンティブをもたらさなければならない。中国のように産業界が安心して参入できる買取価格を保証すれば一気に普及することになる。

資金調達は環境債の発行で

社会保障費が圧迫するなかで財源はどうすべきかと聞かれそうだが、資金調達手段として環境債の発行を提案したい。環境債は調達した資金の用途先を再生可能エネルギー事業など環境分野に限る債券のことで、海外ではポーランドやフランスが先行している。日本でも省エネルギー住宅への融資を目的とした政府保証の環境債が発行されており、実績はある。積極的に宣伝すれば内部留保を抱えた企業がイメージアップを目的に購入し、日本でのESG投資が活発になるだろう。

近年では家計による投資も増えていることから「個人向け環境国債」も発行すれば一定の需要は呼び込めるはずだ。環境債は資産運用・イメージアップの面で購入者・企業にインセンティブもたらし、それを基にした導入補助金は開発を進める企業に安定した利潤をもたらす。誰もやりたがらない政策を進めるにはインセンティブをもたらす仕組みをつくり、市場から風が吹くようにしなければならない。

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システム障害で三振のみずほ、“あのとき”と状況は同じ https://seikeidenron.jp/articles/18568 https://seikeidenron.jp/articles/18568#respond Mon, 19 Apr 2021 09:51:54 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18568

2月末からのみずほ銀行のシステム障害は、カード・通帳の取り込みにはじまり、ネットバンキング不具合や外貨建国内送金の大幅遅延など計4度にわたって起きた。2002年の第一勧銀、富士、日本興業の3行統合時と、2011年の東日本大震災時と合わせて、みずほの大規模システム障害は今回で3度目になる。3メガバンクの一角を担うみずほだが、組織的な危機管理に問題があることは確かで、また経営問題にも波及しかねない。

経営問題にも波及しかねない重大事案

みずほ銀行の大規模システム障害の影響は予期せぬ方面にも波及し始めた。みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は2021年度に予定していた全国銀行協会の会長就任を辞退した。システム障害を受けこれまでは会長就任を“当面”見合わせるとしていたが、システム障害の再発防止の徹底を優先する必要があるとして辞退を申し出たとされる。

だが背景には「他行への配慮もあった」とメガバンク関係者は指摘する。坂井氏のピンチヒッターとして三菱UFJフィナンシャル・グループの三毛兼承会長が全銀協会長職を続投しているが、「このままコスト面の負担増のみならず、続投期間が長引けば三菱UFJの人事ローテーションにも影響を与えかねない」(メガバンク幹部)と危惧されていたのだ。

このため遅れても就任するのか、辞退するのか早く決める必要があった。結果、みずほは後者の辞退を選んだ。それはとりもなおさず、今回のシステム障害の影響が経営問題にも波及しかねない重大事案であることを物語っている。

原因究明には金融庁の入検検査も

みずほ銀行のシステム障害はまず休日かつ月末であった2月28日に発生した。全国のATMのうち約8割にあたる4300台が稼働しなくなり、キャッシュカードや預金通帳を取り出せなくなった顧客取引は累計で5244件に達した。続く3月3日と7日には一部のATM(現金自動預け払い機)やインターネットバンキングが使えなくなったほか、11日夜から12日にかけて外国為替のシステムで生じた不具合で263件の送金手続きが滞るなど、ほぼ2週間で4回のシステム障害が生じた。

みずほ銀行は発足直後の2002年、東日本大震災直後の2011年3月にも大規模システム障害を起こしており、今回で3回目となる。野球でいえば、「三振、バッターアウト」である。

みずほFGは、弁護士である岩村修二氏を中心とする第三者委員会「システム障害特別調査委員会」と社外取締役による「システム障害対応検証委員会」を設置し原因究明にあたるが、問題の解明にはシステム分野にとどまらず、ガバナンス(企業統治)の在り様にまで踏み込んだ検証が求められよう。

みずほFGの坂井辰史社長は3月17日、記者会見し、今回のシステム障害について謝罪した。「(新システムMINORI稼働から)2年が経過し、過信や気の緩み、体制の緩みがなかったか見ていく」と述べたが、なぜ、2週間にわたり立て続けにシステム障害が起ったのか、原因は判然としない。

坂井氏を夜回りしていた記者によると、当初は「(今回の問題は)お客様周りのことだからね」との弁を繰り返し、システム障害を持株会社とは一線を画す姿勢が透けて見えたという。システム障害への対応は記者会見も含め、もっぱらみずほ銀行の藤原弘治頭取が前面に出て謝罪に奔走した。

しかし、麻生太郎金融相や加藤勝信官房長官に叱責され、最後は金融庁の圧力もあり、謝罪会見を開かざるを得なかった。金融庁は徹底的に調査し、原因究明と再発防止を図るよう指示しており、お目付け役のために入検検査にも入っている。

組織的な危機管理に問題があった

今回、大規模障害を起こしたシステムは、銀行業務の根幹をなす勘定系システムを中心に最新鋭のシステムに移行させるものだった。「MINORI」と呼ばれる新システムへの移行作業は細心の注意が払われ、段階的に進められ2019年7月に終了した。だが、「三菱UFJが日本IBM、三井住友がNECを中核にシステム統合したのに対し、みずほは日本IBM、富士通、日立製作所、NTTデータの四社体制を生かして統合するマルチベンダー方式が採用されている」(メガバンク幹部)。それだけ移行作業は複雑化し、総投資額は4000億円超、開発工数推定35万人月に及んだ。システム障害を起こしかねない“混乱の芽”は、MINORIそのものに内包されていたと言っても過言ではない。

新システムへの移行が順調に終わり、みずほのシステムは、業務・機能別にコンポーネント化された最新鋭のものとなり、競争力が飛躍的に高まる。新商品・サービスへも柔軟に対応でき、開発期間やコストも3割程度削減されると見込まれた。「みずほグループにとって最大の課題である経費率の高さに改善余地が生まれる」(銀行アナリスト)と評価もされた。

同時にみずほFGは、2020年3月期決算で、システム統合に伴う償却負担額約4600億円を一括処理した。FGの坂井辰史社長は「これで後年度負担が一気に解消し、より柔軟で機動的な運営ができる」と強調した。

しかし、新システムは本格稼働から2年を経ずに、大規模障害を起こした。特にATMが止まり、長時間にわたり顧客の通帳が引き出せない状態が続いたことは痛恨事だ。

休日であったことで顧客対応が後手に回った点は否めないが、藤原頭取はじめ経営陣が障害の全体像を把握し、社員の出勤を指示するまでにかかった時間は長すぎた。組織的な危機管理に問題があったことは確かだ。

4月5日に2度目の記者会見を行った坂井FG社長も「顧客への影響の認識や危機対応プランが不十分で、影響拡大を招いた」「早期の把握と組織内での情報連携に課題があったと認識している」と陳謝した。

10年前と状況は同じ

みずほはシステム障害をめぐる一連の経緯や再発防止策をまとめた中間的な報告書を3月31日付けで金融庁に提出。5日の会見で「システム障害に係る対応状況について」と題する現状把握している原因分析資料を公表した。さらに第三者委員会「システム障害特別調査委員会」と社外取締役による「システム障害対応検証委員会」による調査・提言を踏まえて最終報告書をまとめる意向だ。

この最終報告書がまとまるまで、4月からみずほ銀行の新頭取に就く予定であった加藤勝彦氏の就任もペンディングとなり、一連の問題が片づけられないと金融庁は認めない意向。

10年前のシステム障害時では結局、みずほは全銀協会長職を辞し、みずほ銀行の西堀利頭取は辞任を余儀なくされた。金融界では、「あのときと状況が極めて似てきた」との声が強まっている。

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なぜいま「こども庁」? 幼稚園と保育園は所管も法令も先生の資格も違う https://seikeidenron.jp/articles/18553 https://seikeidenron.jp/articles/18553#respond Fri, 16 Apr 2021 04:31:30 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18553

政府の子どもに関する政策を統括する「こども庁」の創設案が政府・与党内で急浮上している。自民党は創設に向けた菅義偉首相直属の検討本部を設置。2022年度中の発足に向け、具体策の検討を始めた。少子化対策や待機児童の解消、いじめ対策などに期待がかかるが、子どもに関する政策は多くの省庁にまたがっており、実効性の伴う機関になるかどうかは不透明な面もある。

来年の国会に関連法案提出

「すべての子どもの未来に責任を持つのがわれわれ自民党だという覚悟を持ち、この問題に取り組んでまいりたい」。自民党の二階俊博幹事長は4月13日、自ら本部長に就任した「『こども・若者』輝く未来創造本部」の初会合で意気込みを語った。

同本部の常任顧問には厚生労働相や文部科学相の経験者らが就き、文科相経験者である下村博文政調会長ら党幹部もメンバーに名を連ねた。5月中に政府への提言をとりまとめ、政府は6月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む方針だ。2022年の通常国会に関連法案を提出し、2022年度中の発足を目指すという。

問題は“縦割りの打破”、民主党政権時には本末転倒な結果に

子どもに関する政策は不妊治療や妊娠・出産の支援、幼稚園と保育園の一体化、いじめや虐待、子どもの貧困など幅広い。現状は認定こども園や児童手当を内閣府、幼稚園を文部科学省、保育所を厚生労働省が所管しているが、縦割り行政の弊害で政策効果が落ちているとの指摘がある。待機児童解消が進まないのはその一例。法務省や警察庁にまたがる政策もある。

“縦割りの打破”を掲げる菅首相はこれらの政策をすべて「こども庁」に一元化し、政策効果を高める狙いだが、調整は容易ではない。

例えば子ども政策における縦割り行政の象徴ともいえる幼稚園と保育所。同じ未就学児が通う施設でありながら、幼稚園は「学校教育施設」、保育所は「児童福祉施設」と位置付けられ、所管する省庁どころか設置根拠となる法令や“先生”の資格までことごとく分かれている。幼稚園、保育所それぞれに「全日本私立幼稚園連合会」「日本保育協会」などといった業界団体もある。

2009年に発足した民主党政権でも、子ども関連政策を統括する「子ども家庭省」の創設構想や幼稚園と保育所を一体化する「幼保一元化」の議論が浮上。新たに内閣府が所管する認定こども園の制度を作り、幼稚園と保育所を統合する方向で検討したが、業界団体の強い抵抗で幼稚園と保育所の廃止は断念。結果的に2つの施設が3つになるという本末転倒な結果に終わった。

民主党政権では「子ども家庭省」構想も最終的に断念。民主党の流れをくむ立憲民主党は「民主党政権当時に検討されていた案では、関係する法律だけでも63本あった」(泉健太政調会長)と構想実現の難しさを明かす。

幼保一元化すら実現できないようでは…

今回の「こども庁」構想でも取り扱う政策の範囲をどうするか、何歳までを対象とするかなど課題は多い。内閣府や文科省、厚労省の権限を「こども庁」に移管するには強い抵抗が予想され、すでに水面下で主導権争いが発生しているとの報道もある。一部メディアは「幼稚園と保育園の一元化は見送る公算」と報じているが、幼保一元化すら実現できないようでは「子どもたちの政策を何としても進めることが政治の役割だ」という首相の意気込みとは程遠い。

少子化対策に向けて大胆に予算を振り分けられるかも課題だ。「こども庁」の創設に関し、首相は「社会保障費も含めて今まで高齢者中心だった。思い切って変えなければダメだ。こどもは国の宝で、もっと力を入れるべきだ」と意気込みを語る。

確かに、国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の国内総生産(GDP)に占める子育て支援策など家族関係社会支出の比率は2017年時点で1.58%。0.64%のアメリカよりは高いが、スウェーデンの3.54%やイギリスの3.46%、フランスの2.93%と比べると半分以下にとどまっている。

ただ、高齢者への社会保障給付の削減には大きな抵抗が予想されるし、コロナ過で財政が急激に悪化するなか、支出の削減無しに子育て世帯への給付を増やすことなど財務省が認めるはずがない。現実に、菅政権では待機児童対策費用をねん出するという名目で、子育て世帯に給付している児童手当の縮小(年収1200万円以上の対象世帯の特例給付を打ち切り)を決めた経緯がある。財源問題は大きな課題だ。

議論を急ぐのは選挙公約の目玉にするため

首相が二階幹事長に「こども庁」創設の検討を指示したのは検討本部を設置するわずか2週間前。議論を急ぐのは秋の自民党総裁選や秋までに行われる衆院総選挙で“目玉公約”の一つとしたいからだ。支持率の伸び悩む首相が総裁選で再選され、さらに衆院選を勝ち抜くために「子育て世帯の票が欲しい」という狙いが透けて見える。

ただ、議論を急ぐあまりに小粒な改革となっては意味がない。選挙の時期にこだわらず、じっくり検討し、首相が先頭に立って各省庁や業界団体を粘り強く説得し、実効性のある組織を作らなければ少子化対策も待機児童の解消もかなわないだろう。首相の本気度が試される。

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経営理論は実際の経営に使えない、は本当か https://seikeidenron.jp/articles/18517 https://seikeidenron.jp/articles/18517#respond Wed, 14 Apr 2021 22:00:25 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18517

5~6年前のことになりますが、ホリエモンこと堀江貴文氏が発案した「コンビニ居酒屋」に対し、一橋大学の楠木健教授らが否定的な意見を言ったことに端を発し、「経営したことのない人間が経営を教えるな」的な論争に発展したことがありました。このときも感じたのですが、会社経営と経営学には大きな溝があり、実際、経営を行う場面で経営学を活用する場面はほぼありません。私自身、会社を経営する人間として、また、学生に経営学を教える人間として、なぜ経営学が会社経営に活用できないのか考えてみたいと思います。

経営者は経営学を知らなくても経営できる

まず、経営学といってもさまざまな領域があります。代表的なところで、ファイナンス、マーケティング、戦略論、組織論、リーダーシップ論などです。「経営学者」は各々自分の専門領域に対して研究し、それらを体系化することにより学問として成立させています。経営学者には一定以上の学問的な素養が求められます。

これに対して、「経営者」は実際に会社を経営している人であり、経営学のような知識のほか、将来を予測して会社の方向性を定める力、従業員を引っ張る力、リスクを取る能力、会社の問題点を抽出し問題に対して集中・解決する能力、失敗しても回復できるメンタルなど人格面が大きく求められます。

以上から、経営学者に求められる能力と、経営者に求められる能力は全く別で、“経営したことがない人間が経営を教えるな”という論争は全く無意味だと考えます。会社経営者と経営学者は相互に補完関係にあるといえますが、学問として抽象的すぎる現場で使い物にならないケースなどがあり、今後はより経営者と経営学者の近接化が求められるのではないでしょうか。

知り合いの経営者と話していて思いますが、多くの経営者は経営学について、自分の専門領域や業界に関連する部分の知識は保有していても、体系立てた知識を持った経営者は本当に少なく感じます。

実際に会社経営をしていて、日々の業務をこなして回っているのであれば、経営学の知識が必要とされる場面は数少ないですし、必要な場合にはその問題に関する専門家から助言を得れば済みます。日本で99.7%(2020年度版中小企業白書)を占める中小企業のその大部分が該当するのではないでしょうか。フォード自動車の創設者のヘンリー・フォードが新聞社に無知だと批判された際、「私が知らなくても、それを知っている優秀な部下がいる」と反論したことは有名な逸話ですし、経営者として共感できます。

経験と勘の経営だけでは危うい

経営者は経験もありますし、さまざまな修羅場をくぐって勘に自信を持っている人も多いと思います。日常であれば、それでも十分、会社として回っていくでしょう。

しかし、大きな環境変化や、拡大成長、撤退、競争、雇用、組織変化などの経営環境の変化がある場合には、経験と勘だけでは対処できない場合も多く、今までしたことのないような大きな意思決定をする場合には、経験と勘だけでは失敗するリスクが高くなります。

会社倒産の事例を見ても、環境変化があるにもかかわらず、新しい環境に適応できず倒産するケースがたくさんあります。例えば、デジタル化の波を受けてフィルムメーカーのコダック社は倒産しましたが、富士フィルム社は医療、健康、美容方面に進出し存続を続けています。自分の会社を守り成長させるためには、理論と数値に基づいた経営判断が必要なときもあるのです。

一方経営学は、主に会社経営に関する過去の事例を研究しているため、過去の経営環境を前提とします。しかし経営環境は常に変化し、過去の成功事例が現在の経営環境に適応できるとは限りません。

かつて、競争の激しい市場をレッド・オーシャンンとし、競争の少ない新しい市場=ブルー・オーシャンを開拓するべきだとするブルー・オーシャン戦略でカナダのサーカス団のシルクド・ソレイユが成功事例として挙げられていましたが、実際にはコロナという変数の変化の影響で、日本でいう会社更生法の適用を申請しています。

経営者は過去の経営環境ではなく、現在の経営環境の中で戦い、常に未来の成長を考えているため、過去の情報が主となる経営学が“使えない”と感じてしまうのではないでしょうか。

要するに、経験や勘、理論や数値のどちらかに偏っている経営は危ういということです。経営者は経営学を、未来について予想できないから使えないと決めるのではなく、日露戦争で日本に勝利をもたらした戦略家である秋山真之の言葉「必ず古今海陸の戦史をあさり、勝敗のよって来たるところを見極め、さらには欧米諸大家の名論卓説を味読して要領をつかみ、もって自家独特の本領を要す」のように、経営学で過去を学び、そこから自分なりの経営の要領を打ち立て、将来に対して向かっていくのが経営者の本領ではないでしょうか。

経営理論を実際の経営に用いること、それが経営者の役割

たとえ経営学の理論を理解しても、実際の業務に落とし込むことは本当に難しい。アメリカの経営学者マイケル・ポーターの戦略理論では、「事業を成功させるためには、低価格戦略か差別化戦略のいずれかを選択する必要がある」と主張していますが、自分の事業ではどっちにすべきなのか、低価格ならいくらなのか、差別化をどのように行えばよいのか、経営上本当に必要なことは全く教えてくれません。

それ故、経営学を実際の経営に落とし込むための経営コンサルタントがいます。本当に経営学を駆使し業績回復や成長に寄与できるコンサルタントもいますが、そのようなコンサルタントやコンサルティングファームは価格が高く、大多数の企業は依頼できないでしょう。また、私の経験では、コンサルタントを名乗る多くが、企業からヒアリングをし経営学のツールに当てはめ問題点は指摘しますが、会社の実情に合わせて落とし込めていないため、解決策や業績回復、成長に寄与する提案ができないのが常です。

しかし、この点についても、「落とし込めないから経営学は不必要」とするのではなく、会社の実情を最も知っている経営者自らが落とし込む努力が必要だと私は考えます。おそらく、「経営理論は実際の経営に使えない」の正体は、「経営者が経営理論を実際の経営に使えない」でしょう。

現在、コロナ禍ですべての会社の経営環境が大きく変わり、多くの経営者が大きな決断をしなければいけない局面を迎えています。この初めての局面を打開するためには、今までの経験や勘に頼るだけではなく、過去の事例から抽出した事例を知り、現状を正確に把握した上での合理的な意思決定をしていくしかありません。

経営学は学問のため抽象的にならざるを得ない部分もありますが、具体的に経営に落とし込めるような経営学、具体的には経営学者が会社理論を適用して検証してみる経営学や、実際の経営者が自己の経験や自社のデータを基に経営理論構築に参加するような経営学の発展があれば、経営学と経営者のより望ましい関係が生まれるのではないでしょうか。

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【4/16ニコ生配信】菅政権の目玉政策?なぜ今「こども庁」なのか https://seikeidenron.jp/articles/18519 https://seikeidenron.jp/articles/18519#respond Wed, 14 Apr 2021 08:41:56 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18519 4月16日(金)18:00から、今話題になっているこども庁」についてニコ生やります!

デジタル庁に続き、菅政権が創設を目指す「こども庁」。子どもの貧困や虐待、少子化対策、待機児童などなど、子どもに関する政策を一括して担う役どころになるとのこと。

なぜ今「こども庁」なのかというと、日本は人口減にあって少子化対策が必要なこと、また、児童虐待や貧困等が問題視されるなかで、対応省庁が複数にまたがっていて実効性が不透明なこと。そんな“縦割りの打破”を目指し、諸問題の解消をスピードアップするのが目的なのだそう。

待機児童の解消やいじめ対策などにも期待がかかりますが、子育て世代の支持率を上げて衆院選を勝ち抜くための「選挙目当てじゃないの?」という狙いも透けて見えるのもまた事実。

また、子ども関連の政策でもうひとつ、政府が男性の育休取得を促進するために新設を予定している「男性産休」にも注目が集まっています。

実は、日本は男性の育休が世界一長く取れる国で、休業中は収入の実質8~9割が支給されるなど、補償の手厚さも世界でトップクラス。にもかかわらず2019年度の取得率は約7%。

男性の育休取得に励む企業も増えてきましたが、まだまだ「昇進に響くのでは」「そもそも周りが誰も取ってない」といった環境で働く人も多く、浸透には時間がかかりそうです。

そこで4月16日(金)18:00からのニコ生放送では、

・今なぜ「こども庁」なのか
・現状の子どもに関する政策の実態
・やっぱ選挙目当て?
・ネーミングはそれでいいのか
・どうしたら男性育休の取得率が上がるのか?
・そもそも問題、男性の育休はなぜ必要?
・取得率が上がったら社会はどう変わる?
・男女平等の先進国はどうしてる?

などなど、菅政権が創設を目指す「こども庁」や男性の産休・育休について、編集長・佐藤尊徳と編集部員すずきが熱く議論を交わしまくります。皆さまも是非、思ったこと・疑問・質問・意見をじゃんじゃんコメントしてくださいませ!

今回はニコ生でのみ配信します。会員登録やログイン不要で視聴できますので、お気軽にご視聴くださいませ! ※今回Youtubeは同時配信せず、放送後にアーカイブを公開します。

<ニコニコ生放送>

「佐藤尊徳の俺にも言わせろ!」チャンネル

4月16日(金)18:00~

視聴はコチラから!

※会員登録・ログイン不要で視聴できます

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

続きを見る
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任期満了まであと半年、衆院総選挙はいつ? https://seikeidenron.jp/articles/18501 https://seikeidenron.jp/articles/18501#respond Tue, 13 Apr 2021 22:00:29 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18501

10月の衆院議員の任期満了まで残り約半年となった。通常であればいつ衆院解散・総選挙があってもおかしくないが、今回は新型コロナウイルス感染症の拡大という特殊事情が菅義偉首相の“解散権”を縛る。感染の再拡大により与党内で声の出ていた「春解散」も見送りとなり、首相の選択肢は狭まりつつある。

感染再拡大と「まん防」で春解散は見送り

「基本的に新型コロナウイルスの感染拡大(防止)が最優先だ」。菅首相は4月1日に出演した民法の番組で、新型コロナに関する「まん延防止等重点措置」期間中の解散を否定した上で、こう述べた。

政府は感染の再拡大を受け、緊急事態宣言に準じるまん延防止措置を宮城、大阪、兵庫の3府県に4月5日から適用。12日には東京都と京都府、沖縄県の3都府県を追加した。

対象地域では知事が飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請し、要請に従わない店には時短を命令できる。命令に応じない場合には20万円以下の過料を科す。適用期間は東京以外がゴールデンウィーク最終日の5月5日まで、東京はその週末の11日までとしている。

首相が重視する新型コロナウイルス対策をめぐっては、4月12日にワクチンの高齢者向け接種が始まる。16日には米ワシントンを訪問し、バイデン大統領と就任後初めて対面での首脳会談に臨む。さらに、首相の肝いり政策である「デジタル庁」の設置に向けたデジタル改革関連法が6日に衆院を通過し、5月中に成立する見通しとなっている。

与党内ではこれらの成果を掲げて4~5月に衆院解散・総選挙を行うべきだとの声が高まりつつあった。永田町では「5月23日が本命」などという具体的な説もまことしやかにささやかれていたが、感染の再拡大とまん延防止措置の適用によって白紙に戻った格好だ。

国会議員にとっては導火線に火がついている状態

国会議員が常に解散・総選挙の時期を気にするのは、自らの“首”に直結するからだ。国会議員は数年ごとの“テスト”に受からなければ在職し続けることができない。衆院議員の任期は4年だが、憲法解釈上、首相がいつでも解散できることとしているため、議員たちは突然の抜き打ちテストに怯えながら日々を過ごしているのだ。

現行憲法下で行われた25回の衆院選のうち、任期満了によって実施したのは1976年の1回だけ。残り24回はすべて解散によって行われており、投開票日から解散までの日数の平均は約1000日となっている。すでに200日以上上回っており、まさに「いつ解散があってもおかしくない」のである。

与党内で早期解散を求める声が出るのは、野党の支持率が低迷しているのも理由だ。読売新聞が4月2~4日に実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は前月比1ポイント減の47%、不支持率は2ポイント減の40%だった。内閣支持率はここのところ横ばい状態が続いているが、注目すべきは政党支持率。自民党は1%減の39%だったが、最大野党の立憲民主党は1%減の5%で、約8分の1の水準にとどまっているのだ。

さらに、同じ民主党を源流とする立憲民主党と国民民主党など、野党各党間の候補者調整も進んでいない。今後、新型コロナウイルスの感染急拡大やワクチン接種での不手際があれば支持率低下に直結しかねないため、特に選挙基盤の弱い若手議員が「今のうちに解散してほしい」と望むのは当然の心理だといえる。

結局、総裁選と衆院選はセットが濃厚

では、春解散を見送った場合、首相はいつ衆院解散・総選挙に打って出るか。考えられるタイミングは2つある。

一つ目は通常国会会期末(6月16日)に解散し、7月4日の東京都議選と同日選とするシナリオだ。野党は今国会での内閣不信任決議案提出を示唆しているが、首相は4月6日のテレビ番組で不信任案提出は解散の大義になると明言している。ただ、連立を組む公明党は都議選を重視しており、戦力が分散することから同日選に否定的。7月23日に始まる東京オリンピック直前に国政選挙をやることへの批判も想定されることから、このシナリオが実現する可能性は低い。

そうなると本命は9月の自民党総裁選直後に解散し、任期満了間際に衆院選を行うというシナリオだろう。一時は支持率が急降下し、長期政権に黄信号が灯ったかと思われた菅政権だが、その後は支持率も4割台を回復し、有力な「ポスト菅」も見当たらない。

残り半年の間に支持率が1~2割台に落ち込むほどの“失政”があり、かつ、特定の人気候補が現れない限り、総裁選で菅首相が再選される可能性は高い。4月25日に参院長野補選と同広島再選挙、北海道2区補選が投開票されるが、不戦敗となった北海道に加え、仮に長野と広島を落としたとしても今の状況なら乗り切れるだろう。二階俊博幹事長が不機嫌そうな表情で首相の責任論を一蹴する姿が頭に浮かぶ。

ただ、総裁選を難なく勝ち抜いたとしても必ず衆院選で勝てるわけではない。政権選択選挙にはならないとしても、菅政権の“信任”を問う選挙にはなる。いくら野党の支持率が低いといっても、政府の政策を信任できなければ消去法で野党候補者に票を投じる有権者は少なくない。政権は維持できたとしても、議席を大幅に減らせば与党内の“恨み”が募り、今度こそ本格的な菅降ろしが始まる可能性はある。

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実践知のプロを目指して 社会情報大学院大学、実務教育研究科の入学式挙行 https://seikeidenron.jp/articles/18486 https://seikeidenron.jp/articles/18486#respond Tue, 13 Apr 2021 05:54:58 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18486 学校法人先端教育機構 社会情報大学院大学(東京都新宿区、学長:吉國浩二)は4月10日に、実務教育研究科の第1期生の入学式を挙行。

新しい時代の教育システムの在り方を研究

入学式では、吉國浩二学長より祝辞が述べられ、「皆さんは第1期生として実践知のプロフェッショナルへの途を目指すことになります。わが国は、さまざまな分野で大きな転換点を迎えており、教育の分野も根本的な出直しを迫られています。新しい時代の働き方や生き方を模索する人たちを支援する教育システムの在り方を研究することで、サステナブルな社会創造への貢献の第一歩となるでしょう。大学院での2年間の学びで、皆さんが今後の活動の飛躍につながるような気づきを得られることをお祈りしております」とお祝いの言葉が贈られた。

また、入学生代表として入学院生宣誓を行った学校法人東京女子学園に勤務する立原寿亮さんは、「教育の現場も産業界や地域と連携しながら、既存の価値観を変容させていかなければならない。民間企業等で行っている人材育成のエッセンスや成果・学びの可視化について研究しながら、自身の組織に学びを持ち返りたい」と意気込みを語った。

入学生代表、立原寿亮さん。

入学式は、時期的な配慮に加えて、デジタル活用からオンライン・オフラインを併用したハイブリッドなスタイルで行った。

実践知を教育へ昇華する人材を育成

実務教育研究科は、自身の経験を体系化させることで新たな知識を確立し、それを社会へと実装するための教育・人材育成を行う高度専門職業人の養成を目的として、2021年4月より開設した。社会情報大学院大学としては、広報・情報研究科に続き2つ目の研究科となり、2つの研究科を有する専門職大学院は日本でも初めてとなる。

これからの社会に求められるメタ知識を身に着ける【社会情報大学院大学:実務教育研究科】

2020.12.9

現代社会はSociety5.0、人生100年時代などと表され、自らが実務領域の専門家となるだけではなく、実務経験を新たな知の体系へと昇華させ、伝承・承継する能力が、あらゆる領域に求められている。本研究科は、こうした今後の知識社会を支える基盤となる、実践知を教育へ昇華する人材の育成を行うことを目的としている。

また、知識社会学を基盤とした新たな知の形成と、教育・人材育成分野の最先端の知見について、理論と実践の両面を学びつつ、自らが新たな学びを社会に提供できるリーダーとなるための研究を行う。

実務家教員のほか、組織内での暗黙知を形式知化・体系化し人材開発や知識経営を担う者や、公教育に先駆け新たな学びを生み出す民間教育事業者なども、広く対象としており、2年間の課程を修了することで実務教育学修士(専門職)が授与される。

2018年より開始した短期プログラムの「実務家教員養成課程」などで、大学等の実務家教員輩出や、2019年に文部科学省のSociety5.0に対応した高度技術人材育成事業である「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」に中核拠点校として採択される等の実績もあり専門職大学院の認可へと至った。

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香港の1国2制度、約束より25年早く終わる https://seikeidenron.jp/articles/18494 https://seikeidenron.jp/articles/18494#respond Tue, 13 Apr 2021 02:36:01 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18494

中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は2021年3月30日、香港の選挙制度改革について全会一致で可決、翌3月31日から施行された。改革は行政長官選挙と香港の議会である立法会の選挙制度についてで、民主派を排除する内容になっている。中国政府はすでに2020年7月に香港国家安全維持法を制定して民主主義に対する制限を強化ており、今回の選挙制度改革によって香港の民主化の息の根をほとんど止めたことになる。事実上、「1国2制度」は終焉を告げた形となった。

閉ざされた普通選挙への道

今回の制定は香港国家安全維持法(国安法)と同じように付帯文書を改訂する形で行われた。

具体的にどういった改革がされることになったのか? 基本法は全9章で構成され計160条ある。付帯条項は3つあり、行政長官選挙について書かれた付帯条項1「香港特別行政區行政長官的產生辦法(Method for the Selection of the Chief Executive of the HKSAR)、立法会選挙について書かれた付帯条項2「香港特別行政區立法會的產生辦法和表決程序(Method for the Formation of the Legislative Council of the HKSAR and Its Voting Procedures)」、国安法を制定するときに使われた付帯条項3「在香港特別行政區實施的全國性法律(National Laws to be Applied in the HKSAR)」だ。今回は付帯条項1と2を改訂する形で実施される。

スケジュールとしては2021年12月に第7回立法会選挙、2022年3月に行政長官選挙が行われる予定で、香港政府は関連法を5月までには整備したい考えだ。

行政長官選は、「工商・金融界」、「専業界」、「基層・労工・宗教等界」、「各議会組織代表」という各業界から各300人の合計1200人からなる選挙委員会から構成され、この委員の投票によって決まっていた(林鄭月娥[キャリー・ラム]現行政長官は当選時777票を獲得)。

来年3月の選挙では最初の3つの区分は同じだが、「立法会議員、地区組織、代表等界」が300人と「港区人大代表・港区政協委員・有関全国性団体香港成員代表界」という中国政治に近い選挙委員300人が創設され、計1500人となる。なお、各議会組織代表には、区議会議員の代表として117人分が割り当てられていたが廃止される。2019年の区議会選挙では、民主派が圧勝してこの委員枠を獲得していただけに大きな損失だ。

なお、永久居民のみが委員になることができ、任期は5年。立候補するにはこれまでは最低150人の選挙委員の推薦が必要だったが、これからは188人に増加し、かつ5つの業界すべてから最低15人の推薦が必要となる。

2014年の雨傘運動は行政長官選の普通選挙を求める運動だったが、選挙委員会の構成、立候補の要件を勘案すると、普通選挙実現の目途は全く立たなくなった。

立法会選挙は民主派の立候補すら難しい

立法会選挙はこれまで70席で、業界団体から選出される職能別35議席、直接選挙が35議席の計70議席だったが、今後は職能別が30議席の5議席減、直接選挙が20議席の10議席減となる。さらに選挙委員会40議席が創設され、合計は90議席と定数は逆に20議席増える。ただし、選挙委員はほぼ親中派で、その彼らが立法会議員になり、かつ全議席の半分近くある40議席を占める。

そして、民主派が強さを発揮してきた地区選挙は、一人1票は変わらないが、議席数は大幅に減少。選挙区の区割りも前回までは全5区による中選挙区制だったが(比例代表制を採用)、これからは全10区となり、各区とも得票数が多い上位2人が当選となる。

立候補するには、最低100人、最大で200人の推薦が必要で、上述の5つある選挙委員会からそれぞれ最低2人、最大で4人の推薦も必要とすることから、民主派はそもそも推薦を集めるのも難しい。

また、行政長官と立法会選の立候補者について、中国政府は「愛国者でなければならない」と規定。つまり、中央政府を支持する人のみが立候補できるとしている。国安法に基づいて設置された警察の治安部門が、事前に調査を実施し、その結果を新たに設置される「資格審査委員会」に報告する。ここで政府への忠誠がない判断した場合、立候補は認めない。また、この判断に対して訴訟などで異議を申し立てることもできないというがんじがらめの内容だ。

付帯条項1、2は1990年4月4日に初めて全人代で可決され、行政長官と立法会の全議員について「最終的に、普通選挙で選出する目標に至る」と明記していただけに、約束を反故にした形となった。

民主派が当選できても最大で16議席

全人代常務委での法改正などは通常、可決までに何回かの審議を行うが、今回一発で改正させたことから、中国政府の“香港の民主化の道を塞ぐ”という強い意志が感じられる。その原因は2019年の区議会議員選挙で、民主派が全議席の85%を獲得したからだ(投票率は香港選挙史上最高の71%)。

中国政府は、チベット自治区、新疆ウイグル自治区、そして香港について、共産党による統治を脅かす発火点になると考えており、“国体”を脅かす芽は、どんなに小さくても徹底的に摘むということだろう。

かなり横暴な法改正に思えるが、これらは最終的には中国の主権の問題であり、国際世論が「香港の民主主義が機能不全に陥った」などと言おうが、各国政府は大きな口出しはできないと中国政府は認識している。仮に経済制裁を受けたとしても致命的なものにはならないはずだという計算もあるだろう。

巧妙なのは、100%民主派が立候補できない、当選できないわけではないという点にある。そうすることで、香港には「民主主義」というものがまだ残っているということを対外的にアピールできるからだ。とはいえ、香港中文大学政治與行政学部の蔡子強高級講師は香港の新聞『明報』の取材に対して「最も楽観的に考えて(民主派は)16議席程度しか議席を獲得できない」と厳しい見方している。

未来の立法会は親中派ばかりになることが想定され、審議機能は事実上、形骸化し、中国政府と香港政府が思い描く法律が容易に立法化されることになる。民主化への動きをけん制する法律を作ろうと思えばいくらでもできるはずだ。つまり、共産党の決定を追認する“全人代的機関”になる。

香港は政治的に中国の一都市へ

2020年の国安法制定と、今回の選挙制度改革で、中国政府は香港の民主化を止める総仕上げに入った。

現在、香港は依然としてアジアの金融のハブである。中国政府は一気に中国化させることは経済的うまみを消すことになるのでそれはせず、香港経済を中国経済とさらにリンクさせることで中国依存を加速させるふうにもっていくだろう。

ただし、今の香港は共産党の統治を嫌った中国人が香港に移り住み、経済都市として発展させる役割を担った部分がある。この歴史的背景を考えると、共産党は100%香港財界を信用できない一方で、香港財界も中国政府を100%信用していない。

一方で、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)収束後、疲弊した香港経済を救済するため中国政府は香港経済と一体化を進めてきた。それ以降、香港は経済面での中国依存が増え、中国資本も香港に進出してきた。香港は今後、中国の都市よりは経済的自由があるものの、政治的には完全に中国の1都市となるだろう。

いずれにしろ、香港の返還に際して1984年に中国とイギリスの間で交わされた中英共同声明に記された「(50年の間)社会主義の制度と政策を実施せず、従来の資本主義制度と生活様式を保持」は反故にされ、香港の1国2制度は25年も早く終了したといっても過言ではない。

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男性産休新設で育休取得に一歩前進~元ダメ夫が家事を始めたら https://seikeidenron.jp/articles/18456 https://seikeidenron.jp/articles/18456#respond Mon, 05 Apr 2021 04:36:41 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=18456

政府は2月男性の育児休業の取得を促すことを目的とした育児・介護休業法の改正案を閣議決定、今国会に提出予定です。新たに男性限定の特別な枠組みを作り、通常の産休とは別の「男性産休」を新設することとしています。ご存じの通り、日本における男性の育休取得率は上昇傾向にあるとはいえ女性の10分の1以下。なぜ今、法制化してまで男性の育休が必要なのかを解きほぐします。

男性の育休の現状と日本の労働力

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2019年度の育児休業取得率は男性が前年度比1.32ポイント増の7.48%、また日本商工会議所の2020年の調査によると「男性社員の育児休業取得の義務化」について、「反対」と回答した企業の割合は70.9%に達した。現実にも、育休を取得した後に配置転換されたり、始末書を書かされるという報告もあり、まだまだ日本では男性の育児休暇の取得は難しいのが現実です。

日本は、人口減少、少子高齢化を迎えています。1950年には20歳~64歳が12.1人で65歳以上の一人の高齢者を支えていましたが、2025年には1.8人で一人の高齢者を支えると推計されます。つまり、過去のような一般的な労働者が、高齢者などの非労働者を支える社会構造の維持は困難な状況を迎えています。

そのため、今まで労働力として期待されていなかった、高齢者、女性、障がい者、外国人といった方々に生産に関与してもらわなければわが国は成長どころか、維持も難しいでしょう。これが今、多文化共生社会が求められる大きな理由のひとつだと考えます。

さらに、経済学的には経済成長率=技術進歩率+労働分配率×労働力増加率+資本分配率×資本増加率で表せますが、技術力・テクノロジーも優位が見いだせず、資本力も停滞する日本で、労働力増加率がマイナスに転じた場合、それは経済成長のマイナスを意味します。そのため経済成長の観点からも、女性をはじめ、障がい者、高齢者、外国人などの生産への参画で労働力を増強する必要があります。

男女平等の先進国スウェーデンとの比較

日本では、男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法などを定め、政府も女性の雇用や社会参加を促しています。しかし女性の、15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合を表す労働力率を、日本と男女平等の先進国といわれるスウェーデンで比較してみると明らかな違いが見えます。

独立行政法人「政策研究・研修機構 データブック国際労働比較2019」より作成

年々改善されているものの、日本の曲線はM字カーブを描いており、20代後半から落ち込み、40代で回復するもののスウェーデンの水準までは回復していません。一方、スウェーデンは逆U字型を描き、結婚・出産の時期も労働を維持し、その後も高い水準で推移しています。

この違いは、文化、生活、歴史などさまざまな要因が挙げられますが、実は、スウェーデンはもともと日本と同様に男女間で労働条件に格差があった国で、大きな改革を経て現在に至ります。ですので、日本でも女性が今以上に社会に参画し雇用を維持できる社会づくりはできると私は考えます。そのためには何が必要か、制度と日本人の生活スタイルに着目してみたいと思います。

女性が働くための制度は不十分

まず、スウェーデンは、所得税の課税方式を夫婦合算制から個人単位に移行させ、年金も個人単位で計算するよう税制改革を行いました。また、育児休業制度を採り入れ育休中の所得を法律で補償し、さらに男性の育休も法律で定め、労働時間短縮制度や一時看護休業制度を採り入れ、育児をしながら柔軟に働ける体制を構築しています。

一方、日本は、税制に関しては扶養控除制があるため、子育てを終了した女性が精いっぱい働けない状況を作り、年金も専業主婦専用の第3号被保険者制度があり、なかなか専業主婦から抜け出せないようになっています。さらに育休中の給与保証はなく、前述のようにやっと男性の育休も法制化されようとしている段階です。

昨今の働き方改革とコロナ禍のテレワーク等で柔軟な働き方ができるようになったものの、まだまだ女性が働くための制度としては十分なものとは言えません。育児・介護休業法の改正は一歩前進と考えられますが、税制・社会保障(追加)なども含めさらに制度改革を行っていく必要があるでしょう。

育休とれって無理だろう!

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)の時代は力仕事が中心だったため、力のある男性が働き、女性が家で家事・育児をするという負担が合理的だったでしょう。日本においても、人口増とともに建設や製造が盛んだった高度経済成長期にはマッチしていたかもしれません。

しかし、情報社会(Society 4.0)を経て、AIなどテクノロジーが発展したサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society5.0)の現在、男性と女性の生産性に違いはなく、女性が家で家事・育児をするという前提は意味をなさない時代が来ています。

社会的にも少子高齢化を迎え、優秀な女性を家庭にとどめておくことは社会的な損失であり、日本の維持・成長を阻害する要因ではないでしょうか。

現実には、若い世代は柔軟に対応しているものの、年齢が上がるにつれて、女性が家事と育児をするものと思い込んでいる男性が多く存在すると感じています。そのため若い世代の男性の育休取得を難しくする最も大きな要因となっているのではないでしょうか。

いくら、男性政治家が育休をとってみたり、政府が育休をとれと言っても、制度がしっかり作られていなければ、現段階で男性に育休をとれと言われても、それは「無理だろう!」としか言えません。この点においても、今回の育児・介護休業法の改正は一歩前進したと感じています。

さらに、日本的な、女性が家事・育児をするものという前提で男性が育休をとっても女性の負担が増すばかり。実際に働く女性の声を聴くと、ご主人が家にいることにより負担やストレスが増えたという声を多く聞きます。今後は、本当に女性の負担を軽減し、ストレスを感じないような、時代に適合した一歩進んだ制度改革が必要ではないでしょうか。

元ダメ夫の家事・育児のススメ

余談ではありますが、実は私も昔は家事をやらない夫でした。しかし、学生に教えているうちに考えが変わり、皿洗いや料理など積極的にやるようにしてみました。すると、妻の笑顔と「ありがとう」が増え、家庭が驚くほど円満になりました。会話が増え、より家庭が居心地の良い大切な場所になったことは言うまでもありません。笑顔で「俺がやる、休んでな!」は魔法の言葉です。

上手くやるコツは、手伝ってやるのではなく、家事をやるのが当たり前、やってもらったらありがとうと考えることです。自然と家庭に「ありがとう」が増えていきます。そして、家事は女性の方が師匠です。弟子になったつもりで、しっかりやり方を聞き、彼女の方法を踏襲することを忘れずに。

さらに、自分で家事をやりさまざまなことにも気づけました、例えば、食事をしたとき「いただきます」と「ごちそうさま」だけでは足りません、「おいしい」が絶対必要です。

家庭円満を勝ち取りたい男性は、積極的に家事・育児にチャレンジしてみましょう、私の経験では、家庭内にとどまらず、なぜか会社や家庭外でも良いことが起こりますよ。

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