政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は若い世代に向けて政治・経済の大切さを伝え、社会で役立つ情報を発信する佐藤尊徳(さとう そんとく)の個人メディア。歴代の政財界の知見と若い世代の感覚をぶつけて化学反応を起こし、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Mon, 03 Aug 2020 11:57:29 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 「カルピスウォーター」夏季限定デザインパッケージが青春すぎる!イラストレーターのかとうれいさんに聞きました https://seikeidenron.jp/articles/14187 https://seikeidenron.jp/articles/14187#respond Mon, 03 Aug 2020 10:00:01 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14187 「カルピスウォーター」を飲み終えるとパッケージのイラストが完成する……! 7月14日に発売された「カルピスウォーター」の夏季限定デザインパッケージがSNS...

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「カルピスウォーター」を飲み終えるとパッケージのイラストが完成する……! 7月14日に発売された「カルピスウォーター」の夏季限定デザインパッケージがSNSで話題です。いつかのあの日を思い出す青春感たっぷりのイラストは、2019年の「カルピス」100周年スペシャルパッケージでも好評を博したイラストレーターかとうれいさんによるもの。例年にも増して鬱々とする今夏において、爽やかな気分を提供しています。かとうれいさんに「カルピス」とのコラボについて聞きました。

 イラストレーター

かとうれい

1992年生まれ、東京在住。青春を感じるような、甘酸っぱくロマンチックな世界観を描くイラストレーター。オリジナルグッズの制作をはじめ、広告、挿絵、CDジャケット等多岐に渡りイラストレーションを手がける。作品集『Our blue』(河出書房新社、2019/6/25)が発売中。

Twitter:@katorei_

Instagram:katorei_

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イラストは100周年パッケージも手掛けたかとうれい

「『カルピス』の100周年スペシャルパッケージのときも反響は多かったですが、今回はより大きな反響がありました」

そう語るのはイラストレーターのかとうれいさん。2015年に初画集『girl friend』(宝島社)を発表後、広告や挿絵、CDジャケットなど多岐にわたって活躍。作家・武田綾乃さんの『青い春を数えて』(講談社)の書影を担当したことでも知られています。

女の子の描写が秀逸で、一枚のイラストにキュートでどこかはかない青春のシーンが描かれます。「青色」の使い方に特徴があり、濃淡織り交ぜた色使いは、登場人物の淡く繊細な心の機微を表すかのようです。

「『青色』はいろいろな面を持っている色だと思います。『カルピス』のトレードマークの水玉模様に使われている青は爽やかですし、ほかにも涼しげな印象であったり、寂しい印象だったり、そういった多面性が好きです。自分の作品でも爽やかさを表すときに一番よく使いますし、それが『カルピス』さんのイメージとマッチしたのかなと思います」(かとうれいさん、以下同)

SNSで話題になったのは、「カルピスウォーター」の夏季限定デザインパッケージ。キレイなイラストもさることながら、ペットボトルの“透かし”を利用した仕掛けが「おしゃれ」「デザインが面白い」「エモい」と好感。中には「カルピス」のイラストを気に入ってかとうさんの作品集を買ったという人や、甘いものが苦手だけど思わず買ったという人もいるほど。

「バズるにつれて自分のところにも反響が届くようになりました。『カルピスウォーター』と一緒に作品も拡散されるのはとてもうれしいことです」

あこがれの放課後のシーンを再現

今回の夏季限定デザインパッケージは、アサヒ飲料が2020年4月から展開している「放課後『カルピス』」プロジェクトの一環として「きみの放課後が動き出す。」をテーマにした高校生の放課後のシーンが、イラストレーターのかとうさん(「カルピスウォーター」)と田中寛崇さん(「カルピスソーダ」)によって描かれた。

「放課後『カルピス』」 プロジェクトは、高校生活をより楽しんでほしいという想いからスタートしたオンラインコンテンツ。高校生を応援することを目指してYouTube、TOKYO FM、AbemaTV、Twitter、Spotifyなどでさまざまなエンタメを展開。夏季限定パッケージは、夏の目玉施策としてオンラインとオフラインをつなぐ架け橋的役割を果たす

かとうさんが描いたのは、海辺の踏切を渡る男の子と女の子、波打ち際ではしゃぐ2人の女の子、校舎(?)の屋上で管楽器を吹く2人の女の子、の3つのシーン。「夏」「海」「空」をイメージさせるまぶしい光景だ。

こんなドキドキする放課後ってない
波打ち際で“パシャパシャ”。幻想的ですらある
風やユーフォニアムの音が聞こえてきそう

「青を基調に爽やかな感じを全面的に出したイラストです。依頼時にシチュエーションは決まっていましたが、個人的にもこういったシーンはよく描きます。

今回は“透かし”のギミックがあるので、イラストを前後に分けたときに違和感のないようにする必要がありました。手前に来るイラストはどうしてもシンプルになるので、寂しくなりすぎないように端に草などを配置して、背景になるイラストは、反転しても違和感がないように気をつけました」

イラストは一方から“透かし”たときに完成するため、奥にあたるイラストはペットボトルに反転して貼られることになる。そういうイラストを描くのはかとうさんも初体験。仕掛けは面白いと思ったものの、イラストレーターとしては難易度の高さも感じたという。また、これまで楽器を描く機会が少なく、吹奏楽の2人を書くときには特に苦労したとか。

それぞれ放課後のさまざまなシーンを描いているが、かとうさん自身はどんな高校生でどんな放課後を過ごしていたのだろうか。

「地元が田舎で学校の周りにコンビニやファミレスもなく、このイラストみたいな青春は過ごしてなかったと思います(笑)。今回描いた青春のイメージは、自分の中にある青春像、あこがれのようなものです。カップルのやつは……特に」

「ホワイトボトル」は“透かし”の仕掛けのために存在していた?

「カルピス」の限定パッケージを毎回楽しみにしている人も多い。アサヒ飲料のマーケティング担当・前田遼さんによると、夏季限定デザインは2004年に初めて実施され、今回で10回目。近年は「カルピス」の爽やかなイメージを強化するために行っているそうだ。

“透かし”の仕掛けを導入したのは今回が初めてで、2つのきっかけで生まれたという。

「一つは『カルピスウォーター』ならではの要素。『カルピスウォーター』のボトルは、液色をキレイに見せるためにペットボトルの凹凸を無くしていまして、『ホワイトボトル』といって特別に開発したものです。また、ほかは丸形が多いなかで四角い形なのも特徴的で、もともと向こうが透けて見えるものでした。

もう一つは、ラベルを制作している会社からの提案です。正面だけ透明なラベルを使用すると裏側が透けて見えて面白くないですか?とご提案いただきました」

「カルピスウォーター」の真っ白な液体がキャンパスとなって、イラストも映える。また、液体が白いために向こう側が見えず、飲み終わってから見える“透かし”の仕掛けが生きた。もともと「カルピスウォーター」が持っている要素がまるで“透かし”のために用意されたかのようで、実に秀逸な仕掛けだといえる。

パッケージに垣間見る作り手の隠せない思い

今時分、こういった商品の仕掛けにSNSは敏感に反応するが、公式Twitterの「カルピス“水玉通信”」 は、限定パッケージを告知する投稿で“透かし”がわかる画像を使用していない。実際に商品を手にした消費者は仕掛けに気づき、ここぞとばかりに投稿するわけだが、こんなステキな仕掛けなら作り手側は言いたくて仕方がないはずだ。よく我慢できたなと思う。

「お客様に楽しんでもらいたいという思いのなか、仕掛けのすべてを伝えることはしておりませんでしたが、予想以上の反響でした」

ただ、実物のパッケージには「飲みきると、新しいイラストが完成!」の文言が。「パッケージに書くか書かないかの議論は、正直ありました。作り手の『気づいてほしい』という意思が入ったのだと思います」と前田さんは笑う。

販売開始当初は限定パッケージを求めてコンビニをはしごした、という声もあったが、現在ではほとんどのコンビニで手にすることができ、8月上旬にはほかの販売チャネルでも入れ替え完了予定だ。

コロナ禍の落ち込んだトーンのなか、今回の「カルピスウォーター」の取り組みは実にすがすがしい。「カルピスウォーター」の消費者は全年齢層が揃っているが、今回の“青春イラスト”は、年齢や青春を謳歌した時代によって受け取り方は異なりそう。あなたは何を思いましたか?

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イージス・アショア中止でミサイル防衛体制に黄信号 微妙な政府代替案の、代替案 https://seikeidenron.jp/articles/14161 https://seikeidenron.jp/articles/14161#respond Tue, 28 Jul 2020 22:00:50 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14161 このところミサイル防衛政策の議論が盛んだ。きっかけは河野太郎防衛相が新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を停止したこと。平成30年版の...

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このところミサイル防衛政策の議論が盛んだ。きっかけは河野太郎防衛相が新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を停止したこと。平成30年版の防衛白書 で「わが国を24時間・365日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できる」と明記され、30年の運用コストも含め2基で4500億円といわれる費用をかける予定だった“陸地の盾”は宙に浮いてしまった。では、今後のミサイル防衛体制はどうなるのか? 相変わらず北朝鮮の挑発行動は読めないが、いざというときに国民を守る体制がなければ国の義務は果たせていないことになる。

イージス・アショアは特殊部隊の秘密上陸作戦で簡単に破壊可能

2020年6月15日、河野太郎防衛相がアメリカから導入予定の地上配置型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の「配備プロセスを停止する」ことを発表。突然のちゃぶ台返しに世間はびっくりだが、「ミサイル発射後に分離されるブースターの落下位置の制御が難しく、周辺住民の安全が保障できない」との理由に2度びっくり。

制御方法の研究開発には手間暇・コストが莫大にかかりとても割に合わない、との補足説明だが、それは以前から百も承知のはずで、逆にブースターの落下位置を制御するミサイルなど聞いたことがない。敵がまさに日本に核ミサイルを発射という状況下で、迎撃ミサイルのブースターが住民の頭上に落ちたらどうしようと悠長に心配することが、果たして本当に国民の利益にかなうのか理解に苦しむ。

イージス・アショア配備計画停止について記者たちに語る河野防衛相 写真:AP/アフロ

イージス・アショアの導入が決まった経緯に関しては、2017年にアメリカの新大統領に就任した“ミスター・アメリカ・ファースト”トランプ氏に対する安倍晋三首相の思いつき的な“貢ぎもの”との見方が大方で、無用の長物になること必至のイージス・アショアには運用する陸上自衛隊も辟易、との指摘も。

このため「純軍事的に考えると、河野防衛相の決定は英断だ」と皮肉交じりに評価する軍事専門家も多い。なぜならイージス・アショアは固定式で動かず、最初から場所がわかっているので、相手側の攻撃で簡単に破壊されてしまうからだ。弾道ミサイルによる飽和攻撃(対応できないほどのミサイルを撃ち込む)はもちろんのこと、日本に侵入した特殊部隊がイージス・アショアの数km程度まで接近、ここから迫撃砲で砲撃するだけでも致命的ダメージを与えられる。

北朝鮮が日本に核ミサイルを撃ち込まなければならない状況とは、金正恩委員長の側に立って考えればよくわかるはずで、まさに“最後の手段”の状況であり、自滅も覚悟したものとなる可能性が大。撃ち込んだ瞬間、日米安保条約に基づきアメリカが即座に核で報復、北朝鮮全土は焦土と化し金正恩体制も消滅すること確実だ。

それほどの覚悟で北朝鮮は核ミサイルの発射ボタンを押すのだから、その効果を最大限にしたいと思うのが自然で、露払いよろしく、日本に潜伏中の工作員や日本海側の海岸に上陸した特殊部隊でイージス・アショアを襲撃し破壊する可能性が非常に高い。

実際、イージス・アショアの配備予定地だった秋田と山口の陸自施設内は、どちらも日本海を望む場所。北朝鮮特殊部隊にとってこれほど容易な破壊目標はむしろないくらいだろう。北朝鮮工作員がやすやすと上陸を果たし、白昼堂々日本人を誘拐し続けたいわゆる「拉致被害者問題」の事実を考えれば、日本の防衛の脇がどれだけ甘いか、詳しい説明などいらないだろう。

政府では、イージス・アショアの代替案としてすでにアメリカに代金の一部を支払っている高性能レーダー「SPY7」 を地上に配備してミサイルを探知し、洋上に展開するイージス艦で迎撃する案を想定しているが、上記理由によって迎撃する前にレーダーの機能が失われる可能性は否めない。

イージスに気を取られている間に「尖閣」をとられる?

そこで、イージス・アショアの代わりに「さらにイージス艦を建造すればいいのでは」との声も少なくない。現在、海上自衛隊には「こんごう」型4隻、「あたご」型2隻、「まや」型2隻、計8隻のイージス艦が就役している。建造費は1隻あたり1500~1700億円で、乗員は約300人、8隻で計2400人が必要だ。

イージス艦は常に洋上を移動するため、北朝鮮がこれを狙い撃ちにすることは非常に困難。しかし問題なのがマンパワーとランニングコストで、特に前者が悩ましい。ただでさえ自衛隊は長年“兵員不足”にさいなまれており、実際海自の充足率は定員約4万5000人に対し現在約4万2000人と9割ほど、約3000人足りない状況。

少子高齢化を考えれば今後はさらに悪化すること必定で、仮にイージス艦を新造した場合、既存の海自隊員の中でやりくりしなければならず、他の既存艦艇の運用にも支障が出かねない。しかもイージス艦ばかりに気を取られ、普通の護衛艦の稼働率低下や隻数自体が減った場合、今度は中国がその状況を看過せず、海軍艦艇や海警局の船舶を日本周辺で跳梁跋扈、最悪の場合、尖閣諸島に上陸し実効支配、という悲喜劇も起こり得る。

「敵基地攻撃能力」の是非。トンネルに潜む北朝鮮のミサイルは狙い撃ち不可能

イージス・アショア配備の事実上中止を受けて、さっそく政府・与党内では自衛隊に「敵基地攻撃能力」を付与する案が急浮上、衆議院安全保障委員会で議論も始まった。専守防衛の国是から考えると果たして「自衛」の範囲なのか、国際法で禁止される「先制攻撃」との線引きはどうなのかなど、今後論議は紛糾しそうな雲行き。しかしそれ以前に、長距離対地ミサイルでのピンポイント攻撃で北朝鮮のミサイル発射基地を本当に事前攻撃できるのか自体、ははなはだ怪しいのが実情だ。つまりは皮肉にも前述したイージス・アショアの立場と全く逆の立ち位置となる。

「敵基地攻撃能力」を喧伝する政治家の多くは、北朝鮮側がしばしば公開する同国北西部、東倉里(トンチャンリ)でのミサイル発射実験の映像からイメージして、「ここを狙い撃ちにすればいい」と考えているフシがある。だがここはあくまでも実験施設で、「火星」シリーズを始めとする同国の弾道ミサイルの大半は移動式。発射台とミサイル本体が大型軍用トラックに載せられ、中国国境に近い北部の山岳地帯に網の目のように構築されたトンネル陣地網に潜み、発射命令が出されると数百台ものミサイル搭載大型トラックがトンネルから這い出し、即座に準備を整えミサイル発射。この間時間は数十分に過ぎず“5分以内”との観測も。

2019年8月に北朝鮮が行った移動式(大型トラック搭載)短距離弾道ミサイルの発射試験 写真:朝鮮通信

北朝鮮上空に無数の偵察機やドローンを飛行させ、同じく長距離空対地ミサイルを装備した戦闘攻撃機多数を24時間体制で飛行、核ミサイル発射と同時に即応……というフォーメーションなら話は別だが、仮に自衛隊が長距離対地ミサイルを持ち、数百km先からでもピンポイント攻撃が可能だとしても、トンネルから飛び出し発射するまで数十分に過ぎない目標を破壊するのは不可能に近い。もちろん相手側は“おとり”も多数盛り込むハズで、対象目標は下手をすれば数百単位になる可能性も。

「イージス・アショア」も長距離対地ミサイルによる「敵基地攻撃能力」も、“平和ボケ”国家の手前ミソ的なファンタジーに過ぎないと言えそうだ。ただし今回の白紙撤回の決定には、アメリカが目下開発中の対空レーザー兵器(ランニングコストは格段に安く連続発射も可能)がいよいよ実用化秒読みとの感触を受けたため、こちらに乗り換えようと考えたからでは、との憶測も。

目には目を。北朝鮮のみならず中国や同盟国にも意気込みを見せつける

北朝鮮が「いつ、どこから、どこに、どれだけ」弾道ミサイルを撃ち込んで来るかはまったく未知数。極めて高価な対空ミサイルで対抗するとなれば天文学的数字の費用が必要で、国家財政は破綻する。北朝鮮にとってはまさに「戦わずして敵に勝つ」という孫氏の兵法そのもの。

それよりは、「敵基地攻撃能力」→「反撃・報復する能力」という解釈に切り替え、ピンポイント攻撃が可能な長距離対地ミサイル(巡航ミサイルも含む)や、さらには弾道ミサイルを独自開発・調達、大量のミサイルを潜水艦や護衛艦、戦闘攻撃機、さらには地上発射型(大型トラックに積載し山間部のトンネルに秘匿)に装備して大量配備、「自前による報復手段」の存在を相手側にアピールした方が得策ではないだろうか。

もちろん核攻撃されれば被害は甚大で、また、アメリカの核報復を期待するのだが、ひょっとすると北朝鮮は日本の人口希薄地帯に核弾道ミサイルを1、2発だけ撃ち込んで“様子見”を決め込み、自らリスクを抱え込むことを嫌ったアメリカが報復攻撃を土壇場でためらうことだってないとは限らない。つまり「攻撃したらタダでは済まないゾ」という意気込みを北朝鮮はもちろんのこと、中国やさらには同盟国のアメリカにも見せつけることが重要だと考える。「ヘタに手出しすると日本は怖いな」と思わせるのも、いわば外交・国家安全保障の基本だ。

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初心者の資産形成はインデックス運用で平均点を狙え https://seikeidenron.jp/articles/14146 https://seikeidenron.jp/articles/14146#respond Tue, 28 Jul 2020 03:58:40 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14146 コロナショックで将来への不安が強まり、この機に資産形成を始めようかと考えている人も多いだろう。そんな人にまず始めに伝えたいことが、資産の運用は「平均点を狙...

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コロナショックで将来への不安が強まり、この機に資産形成を始めようかと考えている人も多いだろう。そんな人にまず始めに伝えたいことが、資産の運用は「平均点を狙え」ということ。子どもの頃、多くの人たちはテストで平均点よりもいい点数を取ることを求められたのではないだろうか? そのせいか、「資産運用では平均点の成果を狙うのが合理的」と言われて、首を傾げる人が少なくない。 今回は、インデックスファンドやETF(指数連動型上場投資信託)によって、“着実に平均点を取る運用”について考えてみたい。これら2つの投資信託は、どちらも特定の指数(日経平均株価のように市場の平均的な推移を示す指標=インデックス)に運用実績が連動するように設計されている。これから投資を考えている初心者ならばなおさら、今回紹介する“平均点運用”を押さえておこう。

投資信託の運用手法は「アクティブ」と「パッシブ」に大別できる

具体的な話に入る前に、まずは投資信託の“キホンのキ”から説明しておこう。投資信託の運用手法は、「アクティブ運用」と「パッシブ運用」に大別できるという話だ。

「アクティブ運用」とは、ベンチマーク(目標値)を上回る成果を目指し、その原動力となりそうな有望銘柄を厳選して投資するという手法である。日経平均株価やTOPIXなど特定のベンチマークを上回るための、言わば“平均点超え狙い”の運用が行われているわけだ。

※あえて特定のベンチマークを設けず、最善の運用成果を追求しているアクティブ運用の投資信託も存在している。

これに対し、特定のベンチマークと同様の成果を目指すのが「パッシブ運用」である。リターン・リスクをできるだけそのまま実現することを目指す運用のことだ。ベンチマークを上回るのではなく、連動することを目指す、いわば“平均点死守”の運用がモットーとなっている。

なお、特定の指数と連動する成果を目指すことは、“指標”という意味のインデックス運用と呼ばれている。前述したように、パッシブ運用のベンチマークに特定の指標を基準にするため、「パッシブ運用≒インデック運用」と意味合いで用いられている。

誰しも“平均点超え”を期待したいが、容易くないのも事実

さて、ここまで読んであなたは、“平均点超え”のアクティブ運用と“平均点狙い”のパッシブ運用のどちらに惹かれただろうか? おそらく、多く人たちは“平均点超え”に魅力を感じたはずだ。

そのほうがより資産を大きく増やす可能性が広がってくるが、あくまでそれは、“平均点超えを達成した場合”に限られた話なのも確かだ。現実には、意に反して“平均点以下”の成果にとどまっているアクティブ運用の投資信託も少なくない。

子どもの頃のテストなら、勉強に励んで知識やスキルを身につければ高得点を得られた。しかし、運用の世界は一筋縄ではいかず、プロであっても銘柄の選別や市場動向予測などで判断を誤ることが多々あるものだ。

公約通りに“平均点超え”の成果を上げているアクティブ運用の投資信託もあるが、先々もその状況を維持できるとの確証はない。その点、特定の指数(平均点)と同じ成果を達成するのは比較的容易である。

たとえば日経平均株価をベンチマークとするパッシブ運用なら、同指数に採用されている東証一部市場の225社すべてに投資すればいいのだ。したがって、パッシブ運用の投資信託がベンチマークから大きく逸脱した成果に甘んじるケースはまず考えられない。

つまり、パッシブ運用の投資信託なら堅実に平均点を確保できるということだ。改めてあなたに質問するが、“不確かな平均点超え”と“ほぼ間違いなく得られる平均点”では、どちらを求めるだろうか?

アクティブ運用はパッシブ運用よりもおのずとコストがかさむ

もう一つ、運用を担う側の苦労も知っておいたほうがいいだろう。

金融市場は絶えず振幅を繰り返しているが、アクティブ運用の運用担当者は相場全体が下落基調を続けている局面であっても、上昇が見込まれる銘柄をつねに発掘し続けなければならない。当然、そのようなシーンでは選定に失敗する可能性も高くなってこよう。

対照的に、パッシブ運用の運用担当者はとにかく運用成果がベンチマークの指数と同等であればミッションを果たせる。機械的に指数の構成銘柄に投資しておけばそれで済むし、相場全体の動きに翻弄されることもない。

実は、こうした両者の労力の違いが投資信託を利用する側にも影響を与えている。一般的にパッシブ運用は運用にかかるコストがアクティブ運用よりも低く、私たちが負担する手数料(販売手数料や信託報酬)が割安な設定となっているのだ。

投資信託は中長期的な運用を心掛けるのが定石であり、手数料の差はけっして軽視できない。手数料が割高な上、期待外れで運用成果もパッとしないアクティブ運用の投資信託を選んでしまったら、まさしく踏んだり蹴ったりなのだ。

パッシブ運用の具体的な選択肢は「インデックスファンド」か「ETF」

こうしたことから、平均点超えを達成するアクティブ運用の投資信託を確実に選び抜けるという人以外は、平均点死守のパッシブ運用に目を向けたほうが合理的だと言えよう。そして、パッシブ運用の具体的な選択肢としては、冒頭でも触れた「インデックファンド」と「ETF」が挙げられる。

「インデックスファンド」は特定の指数に運用実績が連動するように設計された投資信託で、証券会社や銀行などの金融機関を通じて購入するのが一般的だ。税制優遇が受けられて少額ずつこつこつと資産形成を行える「つみたてNISA」の対象となっているものもある。

「ETF」も特定の指数に連動する点は同じだが、市場で取引されているため、日々刻々と動く時価で売買できる点がメリットといえるだろう。難点を挙げるとしたら、「つみたてNISA」の対象となっているETFが限られていることだ。

さらに言えば、インデックスファンドの多くは分配金が自動的に再投資されていくサービスを利用できるが、ETFは自分自身で行う必要があるうえ、その際にコストも発生する。こうしたことから、積立投資ならインデックスファンド(その中でも特にコストが安いもの)、まとまった資金を投じるならETFといったように使い分けるといいだろう。

なお、念のために結びで述べておくが、けっして筆者はアクティブ運用の存在を全否定しているわけではない。少数派とはいえ、長く平均点超えを果たしてきたアクティブ運用の投資信託や、個別銘柄で指数をはるかに凌ぐ成果を継続的に得ている投資家が存在していることは紛れもない事実である。

ただし、そういった「当たり」を選べる確率は高くない。だから、大半の人はパッシブ運用のものを選んだほうが無難だという話なのである。これから投資を始めようという人は、ぜひともアクティブ運用・パッシブ運用の概念を念頭におき、欲張らずに“平均点狙い”の運用から始めてみよう。

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経済力で世界を席巻? 52カ国が中国の「香港国家安全維持法」を支持する理由 https://seikeidenron.jp/articles/14114 https://seikeidenron.jp/articles/14114#respond Wed, 22 Jul 2020 06:23:11 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14114 「香港国家安全維持法」をめぐって中国と自由主義諸国との間で亀裂が深まり、世界の金融センターとしての香港の地位が揺らいでいる。米国商工会議所が行った調査によ...

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「香港国家安全維持法」をめぐって中国と自由主義諸国との間で亀裂が深まり、世界の金融センターとしての香港の地位が揺らいでいる。米国商工会議所が行った調査によると、香港に進出する米企業の78%(回答企業183社)が国家安全維持法を「懸念している」と回答した。特に、同法の適用範囲や基準が明確でなく、米中関係の悪化など政治的思惑で外国権益も処罰の対象になることを懸念してという。 最近、日本のJETRO も在香港日系企業に向けて同様のアンケートを実施したが、8割以上が同様に懸念していると回答した。6月30日にジュネーブで開催された第44回国連人権理事会 では、日本、イギリス、フランスなどの27カ国は中国に対する懸念を示す共同声明を発表。このように、欧米や日本では、同法を可決した北京や今後の香港情勢を懸念する声が圧倒的だ。一方、国家安全維持法をめぐっては別の世界も見える。同理事会での審議では、なんと52カ国が賛成に回り中国を支持する形になったのだ。

52カ国が中国を支持する理由

6月30日、スイス・ジュネーブで開催された第44回国連人権理事会では、中国による国家安全維持法をめぐる審議が行われ、結果は以下のようになった。

  • 支持国
    中国、東アジア(北朝鮮)、東南アジア(カンボジア、ミャンマー、ラオス)、南アジア(パキスタン、ネパール、スリランカ)、中央アジア(タジキスタン)中東(イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、バーレーン、オマーン、レバノン、パレスチナ、イエメン、シリア、UAE)、アフリカ(エジプト、モロッコ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ジブチ、赤道ギニア、エリトリア、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、レソト、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、シエラレオネ、ソマリア、南スーダン、スーダン、ザンビア、ジンバブエ、トーゴ、ブルンジ、コモロ)、欧州(ベラルーシ)、オセアニア(パプアニューギニア)、中南米・カリブ海(キューバ、ニカラグア、ドミニカ、ベネズエラ、スリナム、アンティグア・バーブーダ)
  • 不支持国
    日本、欧米諸国(イギリス、スイス、スウェーデン、スロバキア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、アイスランド、アイルランド、ドイツ、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、オーストリア)、南太平洋(マーシャル諸島、パラオ)、中南米(ベリーズ)

まず、不支持国の多くは自由主義陣営で欧米諸国だ。南太平洋ではマーシャル諸島、パラオが不支持に回ったが、両国は台湾と外交関係を維持しているという背景がある。元々、南太平洋には台湾と国交がある国々が多かったが、その数は年々減少している。中国には、台湾が持つ国交をどんどん潰し、台湾に外交をできなくさせたい狙いがあり、近年は中国が南太平洋で多額の経済支援を武器に影響力を拡大し、一部の南太平洋の国は外交関係を台湾から中国に移すなどしているからだ。

ちなみに、アメリカはトランプ政権になってから2018年に国連人権理事会から脱退しており、今回カウントされていない。

そして、国家安全維持法を支持する立場に回った国々は、中東やアフリカが多くなったが、それにはどういった背景があるのだろうか。各国にはそれぞれ理由や事情があるだろうが、ここでは以下4つを考えてみたい。

まず、独裁的であり、国民を絶対的な統制下に置く北朝鮮だ。民主的な選挙がなく、国民を統制下に置いているという状況は中国も北朝鮮も変わるものではない。しかし、もっと差し迫った事情がある。新型コロナウイルスの感染拡大で、中朝国境は1月から閉鎖され、北朝鮮は経済的にも物資的にも厳しい立場にあるのだ。

物資の9割以上を中国に依存する北朝鮮にとって、国家安全維持法が世界的な物議を醸すなか、反対に回ることは政治的にも厳しい。北朝鮮としても中国のご機嫌を逆なですることは避けたい。

また、中東諸国を中心に、エジプトやパキスタンを含め、独裁的、権威主義的でイスラム過激派など反政府勢力の問題を抱える国々が多い。エジプト、イラン、イラク、パキスタン、シリア、サウジアラビアなどは国家権力が強く、イスラム過激派などの問題を抱えている。

反政府勢力の脅威を抱えるという点では、ウイグルやチベットの問題を抱える中国と状況は似ており、特にエジプトやシリア、パキスタンなど深刻なイスラム過激派の問題を抱えている国々は、ウイグルのイスラム過激派問題との関連上、中国のウイグル族への弾圧については北京を支持する立場をとる。

2019年7月、イギリスや日本など22カ国は、新疆ウイグル自治区で続く人権侵害で中国を非難する共同書簡を提出したが、ロシアや北朝鮮、パキスタン、シリア、アルジェリア、サウジアラビアやエジプトなど37カ国は中国を擁護する立場に回った。

チャイナマネーで影響力を増す中国

そして、最も大きな背景は、「一帯一路」による莫大な資金提供である。カンボジア、ミャンマー、ラオス、パキスタン、ネパール、スリランカ、カメルーン、モザンビークなど中国から多額の支援を受けるアジアやアフリカの国々が入っており、多額のチャイナマネーによって国内でインフラ整備や都市化を推し進めている。

中国のこのやり方は“債務帝国主義”などと揶揄されることもあるが、こういった国々としては、中国支援の立場に回らければ、援助資金を減額される、停止されるといった政治的プレッシャーがあることだろう。オーストラリアのシンクタンク・ローウィ研究所(Lowy Institute)によると、中国は2006年からの10年間で、パプアニューギニアに6億3200万ドルもの資金提供を行ったとされる。

ちなみに、日本や欧米と同じ自由主義陣営にあるはずの韓国は、今回の共同声明に参加しなかった。韓国は中国との経済関係が深く、おそらく不支持に回ることで何かしらの圧力を掛けられるのを避けたかった狙いがある。韓国政府は国家安全維持法には懸念を表明しているものの、経済的な理由からそれ以上踏み込んだ行動は取らなかった。

こういった状況を見ると、中国の影響力が拡大し、世界の多極化がいっそう進んでいることを想像させる。世界経済に占める欧米のシェアが縮小するなか、経済を基軸とする中国の影響力はアジアやアフリカの発展途上国に広く浸透している。

当然ながら、行き過ぎた浸透は地元からの抵抗や反発を生むことは間違いなく、一部の国々からは反一帯一路の声も聞かれる。しかし、今回の国家安全維持法をめぐる各国の反応は、中国が対立する欧米諸国と向き合う上で大きな擁護となる。国家安全維持法をめぐるもう一つの世界を知ることも、日本の国益を維持・発展させる上では重要なことである。

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次の政権の目玉政策は「デジタル・ガバメント庁」の創設による「デジタル遷都」 https://seikeidenron.jp/articles/14093 https://seikeidenron.jp/articles/14093#respond Tue, 21 Jul 2020 22:00:27 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14093 デジタルトランスフォーメーション(DX)は政治や行政において強く求められています。自治体と中央省庁の情報のやり取りはFAXで行われ、オンラインで申請された...

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デジタルトランスフォーメーション(DX)は政治や行政において強く求められています。自治体と中央省庁の情報のやり取りはFAXで行われ、オンラインで申請された情報を紙で突合する……。海外のスピードと比べて日本の手続きが遅い理由は明らかです。これを機に抜本的なデジタル化を進めなければなりませんが、何が妨げになってきたのか。内閣府でIT政策やサイバーセキュリティを担当する平将明副大臣は、「デジタル遷都」の必要性を訴えます。

「地方創生2.0」&「デジタル田園都市国家構想」

今回の新型コロナウイルスは、テクノロジーが進化するなかで、それに合わせて仕組みを作ってこなかった行政や企業の怠慢をあぶりだしました。

日本においては天然痘などの疫病、飢饉、自然災害などに苦しめられた歴史があります。過去、そういったことが起きると、当時の支配者は、例えば元号変える、大仏をつくる、都を移す(遷都する)といったことをやってきました。

私は今回も過去の例に倣って“遷都”すべきだと考えています。

ただ、昔は疫病がはやっている場所を捨てて都を移しましたが、今回の世界的なパンデミックのなかでは人の移動によって新型コロナウイルスを避けることは難しい。今やるべき遷都は、行政機能をリアルな空間からサイバー空間に都を移すこと、つまり「デジタル遷都」です。

これらはスピード感をもって進めなければなりません。デジタルガバメントで有名なエストニアが急速にデジタル化を進めたのは、ロシアの脅威が関係していると聞いています。政府がサイバー空間にあって国民一人ひとりとつながっていれば、たとえ他国に本土を占領されてもエストニアという国家は存続するという危機管理の視点です。

その視点で考えれば今回の新型コロナウイルスも大変な危機です。また、終息するのはワクチンができ、治療薬ができたときだと思いますが、次の危機が襲ってくる蓋然性は高いわけです。

日本特有の問題としては、首都直下型地震や南海トラフ地震が想定されていますので、今回を機に急速にサイバー空間に政府機能を移すのは待ったなしでしょう。また、政府機能をリアルからサイバー空間に移せば移すほど国家としての強靭性が増し、サスティナブル(持続可能性)だと言えると思います。

今後の社会は、「密」から「疎」に転換していきます。1970年代には大平正芳内閣の「田園都市国家構想」というビジョンがあり、現在の安倍晋三内閣においては「地方創生」があります。いずれも分散型ですが、分散することによって低下する生産性を、今はテクノロジーを使って補うことができます。永田町(政治)や霞が関(行政)に来なければできないことが、それらをサイバー空間に置くことによって、どこにいてもアクセスすることができるようになるのです。

これからの社会ビジョンは、「地方創生2.0」や「デジタル田園都市国家構想」に変わっていくでしょう。

“構造”と“国民の意識”の問題

日本では、新型コロナウイルス感染症の発生や流行を把握するため、陽性患者が発生した際に医療機関から保健所への発生届を送るのですが、医師が紙に手書きで書いて、ハンコを押し、FAXで送るという方法が主でした。日本はデジタル化が遅れているということで、5月1日のロイターに“Fax-loving Japan”と書かれ揶揄されました。

しかしこれはテクノロジーではなく、“構造”と“国民の意識”の問題だと思っています。他国に比べて日本のテクノロジーが遅れているとは思いません。

構造には、2つ問題があります。一つは中央省庁の縦割り。各行政機関は情報を外部に漏らさないようにし、サイバー攻撃から守らなければなりません。そのため、セキュリティの関係上、独自のサーバーを持ち、壁を立てることになります。

そんななかで、政府全体で取り組もうとすると壁が邪魔をしてITの運用を統合できないという問題を抱えています。統合するとなったら、その縦の堅固な壁を壊すのか、どうするのか。

もう一つは、自治体と都道府県と国の間にある壁の存在です。

感染症などの対応は、基本的には自治体がすることになっています。新型コロナウイルスの発生届は[保健所→自治体→都道府県→厚生労働省]という順番で情報が伝わっていきますが、FAXを使って機関間の情報連絡を行っていたこと等から、厚生労働省はリアルタイムで数を把握することができませんでした。むしろFAXが送れていなかったり、二度送ったりしたことで二重計上も起きていた。

自治体・都道府県・国の“横の壁”と、中央省庁の“縦の壁”。この構造がある限り、ITの運用を変えることはなかなか進みません。

クラウド化で縦割りと横割りを機能的に無力化する

そんななかで、いくつか成功事例もあります。例えば、前述のFAX等で情報共有していた新型コロナウイルス感染症の発生情報については、厚生労働省は緊急的に対応をおこない、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム「HER-SYS(ハーシス)」を開発し、今年5月から導入が始まりました。

クラウドに発生届を提出する仕組みなので、集計も早くなり、情報の共有も即座に行うことができます。これによって中央省庁の“縦の壁”は越え、“横の壁”も機能としては実質無くなります。

つまり、クラウド技術を活用し異なる組織の機能を連携、統合させることによって、縦割り横割りの問題は解決するのです。セキュリティもクラウド全体に対してモニタリングするため、約1700の自治体が個々に対応する必要は無くなります。

問題もあります。各自治体が持っているサーバーとソフトは自分たちで用意して開発したもの。クラウド上でシステム統合するということは、それらを一度ナシにするということです。税金を使い時間をかけて構築してきたものを捨てることが政治的に可能かどうか。

ただ、それをやらなければ、行政全体で見たときにフレキシビリティ等の観点から最適でないシステムを使い続けることになりかねません。

厚生労働省は、今回、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム「G-MIS(ジーミス)」を、新たに整備しました。これは、全国のベッドが20以上ある約8000の病院の稼働状況や外来の状況、医師・看護師の人数やマスクや薬が不足していないかなどを一元的にリアルタイムで把握する仕組みです。

実は、厚生労働省には、医療機関の情報を集約するシステムとして、「G-MIS」以外にも、災害時に医療や救護などの情報を集約するレガシーの仕組みを持っています。しかし、これを変更するとなるとものすごいお金と時間がかかるため、今回は新しくG-MISを用意しました。そのほうがイニシャルもランニングコストも安いからです。結果的にレガシーと新しい仕組みが両並びになっています。

レガシーシステムを捨てられるかどうかは「デジタル遷都」において大きな課題になります。さまざまなステークホルダーがいるため、意見もたくさん出るでしょう。これらは行政の判断で行うことができないため、政治家が政治的権限をもって進めることが重要です。

なんとなく怖いという“国民の意識”

新型コロナウイルスの感染拡大対策として、6月19日から厚生労働省は「接触確認アプリ」の提供を開始しました。私が事務局長を務める官民の感染症対策テックチーム「Anti-Covid-19 Tech Team」が主導してつくったものです。

多くの人がアプリを利用すればするほど感染症対策の効果は高くなりますが、日本においては全国民にアプリのインストールを強制することはできませんので、ハードルをとても低くしました。名前や電話番号をはじめ位置情報等の個人情報は一切とりません。Bluetoothによるスマホ同士の距離を利用して、接触を記録します。にもかかわらず、SNS上には個人情報の流出を心配する声があふれています。

6月19日にリリースした「接触確認アプリ」のダウンロード数は1カ月たった7月20日時点で約770万件。陽性登録した利用者は27人となかなか利用が広まらない。

海外にも同じようなアプリはあり、そちらは個人情報を取得する仕組みになっていたりしますが、日本のものは全く異なります。それを、メディアが並列で報道することによるミスリードが起きていることは否めません。この“なんとなく怖い”という感覚を払拭することは、デジタル化の推進においてとても重要です。

アプリのリリース直後、SNSには不具合についての批判が相次ぎました。世のITのエンジニアの方たちは自分の意見をSNS上で発信することが多くあります。一方、これまで政府のITのエンジニアは、「わかる人はわかるよね」という考えからか、反論には消極的でした。

しかし、政府CIO(最高情報責任者)の下には能力の高い人たちが集まっているのですから、自らSNS上に出ていって、不安を払拭するためにわかりやすく説明することをしたほうがいい。これまではそういったことを、しなさすぎました。

先日、ある委員会でも驚いたことがありました。野党議員の方が「政府が信頼できないからマイナンバーカードを持っていない」というのです。国会議員なら、どういう懸念があるのかを明確に示してほしい。そうすればわれわれは説明しますし、その懸念が正しければ対応を検討します。「なんとなく」政府が信頼できないと言われてしまうと、どうしようもなくなってしまいます。

マイナンバーカードと口座の紐づけ

なぜ台湾ではマスクが国民に行き渡ったのでしょうか。なぜアメリカでは短期間で給付金が支給されたのでしょうか。それは、アメリカにはソーシャル・セキュリティナンバーがあり、紐づけられた銀行口座に自動で振り込むことができたから。台湾の健康保険証にはICチップが内蔵されており、それを使って購入をするようにしたからです。

一方、日本は「なんとなく怖いから」と思う人も居て、マイナンバーカードが普及していません。マイナンバーと銀行口座の紐づけもありません。そのため、給付するためには銀行口座の申請から始めなければならないのです。

今回、世界では当たり前なのに、日本はそうなっていないことが明らかになりました。その原因は、テクノロジーの遅れでもなければ行政機関の能力の低さでもありません。政府の努力ももちろん必要ですが、“国民の意識”を変えていかなければなりません。

国民の意識を変えるにはプレスカンファレンスや公式発表も重要ですが、やはりSNSを活用すべきだと思います。例えばTwitterは、情報収集機能が優れています。さまざまな批判に対して政府CIOのような専門家が逐一説明をする、政治家はそれをリツイートすることによって拡散を促す。また、特定の反応を示すセグメントされたグループには適切な情報を伝える。そうやってリテラシーを底上げしていくのです。

行政は仕組みをつくることはしますが、情報を広めることは得意ではありません。政府広報だけでは不十分です。そういう意味では政治家もSNSを活用すべき。世界で一番うまく使っているのは、ご存じの通りトランプ米大統領ですね。

デジタル化はETC方式で

やはり、デジタル化を進めるなかでは、デジタルがいくら便利でも苦手だったり嫌だという人はいるでしょう。デジタル化においても、僕は(高速道路の)ETC方式と言っていますが、多くの人がETCを利用するなかでも一部の人たちのために人の手による料金所も残しておきながらになると思います。

今後は、マイナンバーカードのマイナポータルに銀行口座を登録しておいてもらい、給付金などはそこから申請したものは登録された口座に振り込むことができるように、マイナンバーと口座の紐づけを義務化することを検討していきます。

2021年3月からはマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになります。医療機関や薬局の事務手続きが効率化され、顔写真の認証も付くのでセキュリティも向上するなどします。将来的にはもっと精緻な生体認証を入れる可能性もあります。

デジタルのほうが早いし、間違いが少なくなるのは明らかです。オンラインで申請された特別定額給付金について、デジタルデータをプリントアウトして突合するというような自治体もあったようですが、突然決まったことですし、不慣れなことでデジタルデータの活用ができなかったこともあったのだと思います。

基本はデジタルデータで突合しつつ、うまくできなかった部分は人の目で確認する、というようなのが本来のやり方だと思います。

「デジタル・ガバメント庁」の創設へ

ITは全体で標準化する必要があると思います。

マイナンバーの運用は総務省、マイナンバーカードは内閣府、デジタルガバメントをどう活用するかを考えるのは内閣官房のIT総合戦略室です。現在、菅官房長官が「デジタル・ガバメント閣僚会議」の下に「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」というのをつくっていますが、ベストは企画から調達まですべて一括でやる「デジタル・ガバメント庁」をつくることです。それは政府全体のみならず、自治体まで含めて標準化するものになるでしょう。

国の一般会計予算では、デジタルインフラの整備・運用に4000億円を計上しており、そのうち複数の府省で共有する700億円は内閣官房IT総合戦略室に一括計上されています。もっと強い権限を持つということでは「デジタル・ガバメント庁」ということになるでしょう。

デジタルガバメントやデジタル遷都というものは、行政に任せていても実現できません。政治主導で法律もつくり、予算もつけなければ進みません。

大きな災害や疫病で社会は変わりますが、今回の新型コロナウイルスは全国民の関心事、自分事になったことでこれまでにない大きな推進力になっています。

政府の情報通信技術(IT)政策担当にずっと同じ人物が長期間大臣を務めていれば、デジタル化はかなり進んだと思いますが、これまでは問題意識が薄すぎました。これからの政権の目玉政策は、いずれにしてもデジタルガバメントになってくるでしょう。

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45年ぶりに戦死者を出した中国・インド国境紛争は核戦争の危険をはらんだ“天空の争奪戦” https://seikeidenron.jp/articles/14078 https://seikeidenron.jp/articles/14078#respond Tue, 21 Jul 2020 10:14:44 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14078 戦死者を伴う核保有国同士の軍事衝突が半世紀ぶりに起きた。中印国境紛争だ。新型コロナウイルス対策で右往左往する日本ではそれどころではなかったようだが、世界の...

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戦死者を伴う核保有国同士の軍事衝突が半世紀ぶりに起きた。中印国境紛争だ。新型コロナウイルス対策で右往左往する日本ではそれどころではなかったようだが、世界の外交・軍事筋は核戦争の可能性を含むこの争いの行方を不安視している。

1950年代から続く中印の小競り合い

2020年6月15日、インド北端カシミール地方のラダック地区にあるカルヴァン渓谷に引かれた“国境”(正確にはLAC=実効支配線)で対峙するインド、中国両軍が衝突、前者に死者20人、負傷者76人以上(後者は死傷者不明だが一説に死者40人以上とも)の死傷者が出た。

“世界の屋根”と評されるヒマラヤ山脈の尾根伝いに西のカシミール高原まで東西にざっと4000kmに達する中印国境。その間ネパールやブータンが緩衝国として存在するが、富士山を優に超す標高4000m以上の急峻な山岳地帯で、酸素も住民も希薄な“不毛の地”だけに、国境線の大半はいまだに未確定。

そのため1950年代から両国の小競り合いは続けられ、1962年には「中印国境紛争」と呼ばれる大規模な軍事衝突が勃発、両軍合わせて戦死者は1000人超に及ぶ。その後も小規模な衝突は何度となく発生するが、1975年にインド東部アルナーチャル・プラデーシュ州の国境地帯で発生した紛争(インド側に4人の死者)を最後に戦死者は出ておらず、今回、45年ぶりの戦死者となった。

人口世界1・2位、総合軍事力3・4位が激突する意味

インドのモディ首相は制裁とばかりに2020年6月末、国家安全保障を理由に動画投稿アプリ「TikTok」など中国製アプリ59本の国内使用禁止を実施、中国製品の輸入規制や関税アップなどの報復措置も検討するなど強硬の構えを見せる。だが一方の中国・習近平政権は事態の拡大を望まない雰囲気で、冷静な対応に終始する。

今回の国境紛争は、“核兵器保有国同士の激突”という点、そしてともに10億人超の人口大国で兵力には事欠かないという点で、世界に数ある領土争いとはまるで次元が異なる。

中国

  • 人口:14億2800万人
  • GDP:13兆3700億ドル
  • 軍事費:2611億ドル
  • 総兵力:[正規軍]203万5000人、[準軍隊]70万人(うち陸軍97万5000人)/予備兵力51万人
  • 主力戦車:5800両
  • 潜水艦59隻
  • 空母1隻
  • 大型水上戦闘艦86隻
  • 戦闘機/攻撃機3550機
中国軍のDF-21A準中距離弾道ミサイル(MRBM)(中国国防部)

インド

  • 人口:13億5300万人
  • GDP:2兆7200億ドル
  • 軍事費:711億ドル
  • 総兵力:[正規軍]144万4500人、[準軍隊]158万9000人(うち陸軍123万7000人)/予備兵力:249万6000人
  • 主力戦車:3563両(他に予備1100両)
  • 潜水艦:16隻
  • 空母:1隻(他に1隻が間もなく就役)
  • 大型水上艦:27隻
  • 戦闘機/攻撃機:730機以上
インドの空母「ヴィクラマーディティヤ」(インド国防省)

(人口:国連2019年、GDP:IMF2019年、軍事費:SIPRI 2019年、兵力:ミリタリーバランス2019などを参考)

これまで核保有国同士の戦死者を伴う軍事衝突は歴史上1件だけ。1969年3月の中ソ国境紛争(ダマンスキー島/珍宝島事件)で、中国東北地方(旧満州)と旧ソ連・沿海州を隔てるウスリー河(アムール河/黒竜江の支流)の中州をめぐり激突、双方で戦死者60~70人を出した。

1950年代後半からの中ソ対立(社会主義の盟主をめぐる一種の権力闘争)が最高潮の時期に起きた共産圏同士の衝突。中国は1964年に独力で原爆実験を実施し核保有を達成、一時は中ソともに原水爆使用を真剣に検討したほど。これを考えると“戦死者が出た核保有国同士の軍事衝突”は半世紀ぶり。

翻って今回の紛争に関し、中印両国の経済的結びつきが非常に強く、国境を接しているとはいえ、“世界の屋根”と呼ばれる高山地域で陸軍の大部隊が展開できる物理的な場所がほとんどないことから、全面衝突へと今後発展する可能性は極めて低い、との見立てが大方。

だが、そもそも第1次大戦、第2次大戦は経済的つながりが非常に強かったドイツと英仏との間で勃発しており「極めて低い」との予断は禁物。総合的な軍事力はアメリカ、ロシアに次いで中国は世界第3位、インドは4位と目され、通常戦力による激突は前述のとおり難しいものの、反面一気に核戦争へとエスカレート、という悪夢を想像するのも無根拠とはいえない。

国内の保守派・国粋主義者による扇動で国論が開戦へと傾いて政権側も応じざるを得なくなったり、偶発的事件が引き金となったりして、ついに核のボタンを押してしまう――という可能性もゼロではないのだ。

悪夢を引き起こすに十分な核戦力

事実、両国の核戦力は悪夢を引き起こすのに十分なレベル。とりわけあまり目立たないインドのラインナップぶりに驚かされる。

中国

  • 地上発射型弾道ミサイル
    ICBM(大陸間弾道ミサイル:射程6400km以上)70基以上:東風4(DF-4)、東風5A(DF-5A)、東風31/31A(DF-31/‐31A)、東風41(DF-41)
    IRBM(中距離弾道ミサイル。射程2000~6000km)30基以上:DF-26
    MRBM(準中距離弾道ミサイル。射程800~1600km)158基(うち通常弾頭型78基):DF-21A/E(東風21A/E)
  • SLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)
    弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN):「晋」級4隻(JL-2/巨浪2SLBN12基搭載)

インド

  • 地上発射型弾道ミサイル
    ICBM:アグニⅤ(射程6000km以上)
    IRBM:アグニⅢ(同3200km)、アグニⅣ(同3500km)
    MRBM:アグニⅡ(同2000km)
    SRBM(短距離弾道ミサイル。射程800km以下):プリットヴィーⅡ(同250km)、アグニⅠ(同700km)
  • 超音速巡航ミサイル
    PJ-10ブラモス(ロシアと共同開発。マッハ2・8、射程300km)
  • SLBM
    SSBN:「アリハント」1隻。K-15(射程600km)またはK-4(同3500km)12基
ロシア・インドが共同開発した超音速巡航ミサイル「ブラモス」(インド国防省)

以上が両国の核戦力の概要で、このほか通常の爆撃機や戦闘機/攻撃機に搭載できる核爆弾も多数保有する。

インドは1974年に初の核実験に成功、このときはあくまでも平和利用を喧伝したが、1998年に兵器としての原爆実験を強行、「核兵器保有国」の仲間入りを果たす。何度も戦火を交える隣国パキスタンと、これを軍事支援する中国への対抗措置で、すでに弾道ミサイルで北京を直接狙えるほか、原子力推進の核ミサイル搭載型潜水艦(SSBN)「アリハント」も1隻保有、仮に相手側の先制攻撃で地上配備型の核戦力が全滅した場合は“最後の切り札”としてこれを使い報復するのが目的だ。

にわかにキナ臭くなった“天空の争奪戦”、第2幕が開かないことを祈るばかりだ。

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コロナ禍の食糧難、停滞する米朝交渉…窮地で高まる北朝鮮のストレス https://seikeidenron.jp/articles/14068 https://seikeidenron.jp/articles/14068#respond Tue, 21 Jul 2020 05:42:10 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14068 6月16日、北朝鮮は南北友好の象徴だった南北共同連絡事務所を爆破し、そのシーンを世界に公開した。南北関係の改善に力を注いできた韓国の文在寅(ムン・ジェイン...

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6月16日、北朝鮮は南北友好の象徴だった南北共同連絡事務所を爆破し、そのシーンを世界に公開した。南北関係の改善に力を注いできた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権にとっては顔に泥を塗られた格好となり、朝鮮半島の緊張はさらに拡大。さらに7月上旬、アメリカのミドルベリー国際大学院の研究チームが、衛星写真からの分析で北朝鮮が平壌近郊の施設で核弾頭を製造している可能性があると明らかにした。北朝鮮がここまでの強硬姿勢を続ける理由と、次に打ち出すであろう一手について考えてみたい。

南北関係悪化の3つの原因

北朝鮮が南北友好の象徴を爆破したきっかけは、韓国の脱北者団体が5月31日、金正恩氏を批判する内容のビラを気球に乗せて飛ばしたことにある。ビラには、「金正恩は偽善者だ」、「2017年にクアラルンプール国際空港で殺害された金正男氏は、弟である金正恩によって暗殺された」、「長男である金正男氏こそが本物の血統一族であり、そうでない金正恩はコンプレックスを持っている」などの内容が書かれていたという。

このようなビラの散布は、何も今始まったものではなく、少なくとも2003年あたりから繰り返し脱北者団体が行ってきた。では、なぜ今回のビラ散布にここまで過激な反応を見せるのか。これには少なくとも3つの理由が考えられる。

一つ目は、停滞する米朝交渉だ。トランプ米大統領は就任当初から金正恩氏を「ロケットマン」などと非難し、米朝の政治的緊張が非常に高まったが、それ以降両者は3回も顔を合わせ、朝鮮半島の雪解けが期待された。しかし、核の完全廃棄を譲らないトランプ政権の姿勢が変わることはなく、今日まで米朝関係でそれ以上の進展は見られない。

それに不満を強める北朝鮮は、「太陽政策」を堅持して融和路線を進める文在寅政権に仲裁役を期待したが、思うように進展が見られないことから韓国への不満も強めていた。要は、北朝鮮は文在寅政権が強硬姿勢に転換することはないと判断し、文在寅政権は北朝鮮に足下を見透かされているといえる。

2つ目は、新型コロナウイルス感染拡大による中朝国境の閉鎖だ。中国で新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、北朝鮮は1月から中国との国境を封鎖しているが、それによって中国との貿易が9割も減少し、国内で食糧難や失業者の増大が深刻化している。昨年、北朝鮮の対中貿易依存度は過去最大の95.2%に上ったが、今日ではほとんど物資が北朝鮮国内に入っていないことになる。北朝鮮では、国民の4割以上が“不安定な食糧供給”という厳しい状況にあるのだ。

そして、3つ目が国内からの反発・抵抗である。これは2つ目の食糧難問題にも関連するが、国民や兵士が生きていく上で必要な食糧やカネにたどり着けなくなると、その不満や怒りは必然と政府に向かう。これまで9割を依存してきた中国からの輸入が9割も減るということは、金正恩政権にとって、また歴代政権も経験したことがない危機なはずだ。

そのようななか、韓国の脱北者団体が現体制を批判する内容のビラを巻き、それが国民や兵士に知られるとなると、金正恩氏が国内からの反発・抵抗を恐れることは想像に難くない。今回のビラ散布によって、北朝鮮メディアからは市民が強く憤るシーンが流されるが、金正恩氏としては怒りの矛先を外に向け、現体制の威信を守りたいはずだ。

鍵は11月の米大統領選

今後の北朝鮮の行方では、やはり11月の米大統領選が大きなポイントだ。現在、同大統領選ではバイデン氏が支持率でトランプ大統領をリードする展開となっているが、金正恩氏はトランプ大統領の再選を望んでいることだろう。

米朝交渉は停滞しているが、金正恩氏にとってトランプ大統領は“3回も会ってくれた米国大統領”である。当時のブッシュ大統領(2002年)は、北朝鮮をイラク、イランとともに“悪の枢軸”と名指しして非難し、オバマ前大統領は北朝鮮が核開発を放棄するまで無視し続けるという“戦略的忍耐”政策を採り、北朝鮮のリーダーと会うことはなかった。そして現在、大統領選の支持率でリードしているバイデン氏は、オバマ政権の元副大統領であり、同氏が勝利すれば、米国は再び戦略的忍耐に回帰する可能性がある。

今日、北朝鮮はトランプ再選後のシナリオ、もしくはバイデン勝利後のシナリオなどいろいろと考えているはずだ。例えば、大統領選が近づくにつれバイデン氏有利な状況が鮮明になると、自らが望む状況ではないとして、日本海に向けてミサイルを発射したり、韓国を軍事的に威嚇するなど、再び緊張を高める行動に出てくる可能性も排除できない。

6万人の在韓邦人を保護できるか

一方、北朝鮮情勢の件でもう一つ大事な問題がある。それは在韓邦人の保護だ。韓国には現地に住んでいる人と旅行者を加えると約6万人の日本人がいるといわれる。大規模な衝突に発生する可能性は低くても、偶発的な衝突や攻撃が起こる危険性は十分にある。

2010年のヨンピョン島砲撃事件 (市民や兵士4人死亡)のように、北朝鮮からの複数の砲撃によって在韓邦人が被害に遭うリスクもある。そして、在韓邦人の多くが軍事境界線に近いソウル周辺にいることを意識しないといけない。

また、韓国の国土面積や地形上、国内には空港が少なく、有事の際には各国とも航空機での避難を優先させることから、邦人を航空機で安全に日本へ退避させられない可能性も高い。韓国に駐在員を置くある企業は、大邱(テグ)や釜山(プサン)などに南下できるように前もって自転車を用意しておくとの話も聞いたことがある。

2017年の北朝鮮危機の際には、日本政府内でも在韓邦人をとりあえずはプサンから南50キロほどの長崎・対馬に移動させる議論があったらしい。現在、北朝鮮情勢は再び悪い方向へ走り出している。何かあってからでは遅い、今のうちから朝鮮半島有事の際の邦人保護を官民一体となっていっそう進めたい。

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【7/17ニコ生配信】激論!是か非か、日本のベーシックインカム https://seikeidenron.jp/articles/14051 https://seikeidenron.jp/articles/14051#comments Thu, 16 Jul 2020 08:29:48 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14051 政府がすべての人に最低限の生活ができる現金を支給する「ベーシックインカム」。コロナ影響で仕事を失う人が急増し、一律10万円給付がされたこともあって、いま再...

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政府がすべての人に最低限の生活ができる現金を支給する「ベーシックインカム」。コロナ影響で仕事を失う人が急増し、一律10万円給付がされたこともあって、いま再び「日本のベーシックインカム」の是非が問われています。

働いている人も、生活に困っている人も、お金持ちも、子供や高齢者も、みーんな等しくもらえるベーシックインカム。皆さんはあった方がいいと思いますか?

7/17(金)17:30からのニコ生・Youtube生放送では、政経電論の佐藤尊徳編集長(反対派)と編集部員すずき(賛成派)が、日本のベーシックインカムの是非について激論を交わします。導入のメリット・デメリットは何なのか、他国の事例はどうなのかなど、皆さんの意見も拾いながら、激しいバトルを展開予定……!

皆さんもぜひ、

「もらえたら仕事やめるわ!」
「貧困者やワープアの救済にやるべき」
「ダメ人間量産されそう、絶対反対」
「財源どっからくるの? 増税?」
「どうせ日本じゃ無理でしょ~」
※真面目な意見も歓迎

などなど、思ったことをじゃんじゃんコメントしてください。 ぜひ一緒に考えながら語り合いましょう。

今回もニコ生とYoutube、同時に配信します(コメント見たい方はニコ生がおすすめ。会員登録やログイン不要で視聴できます)。

<ニコニコ生放送>

「佐藤尊徳の俺にも言わせろ!」チャンネル

2020年7月17日(金)17:30~

視聴はコチラから!

※会員登録・ログイン不要で視聴できます

 

<Youtubeライブ配信>

「政経電論」公式チャンネル

2020年7月17日(金)17:30~

視聴はコチラから!

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地方経済を支える地銀のこれから SBIが地銀糾合の台風の目に? https://seikeidenron.jp/articles/14044 https://seikeidenron.jp/articles/14044#respond Wed, 15 Jul 2020 09:10:11 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14044 8月に施行される改正金融機能強化法によって、地銀は公的資本を受けやすくなる。コロナ禍でダメージを負った地域経済を支える役割として地銀は欠かせないが、マイナ...

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8月に施行される改正金融機能強化法によって、地銀は公的資本を受けやすくなる。コロナ禍でダメージを負った地域経済を支える役割として地銀は欠かせないが、マイナス金利や人口減によって当の地銀が“もたない”という状況があるからだ。地銀再編が進むなか、金融分野から地方創生を取り組むSBIホールディングスの存在感が増している。

改正金融機能強化法で地域経済を円滑化

政府は先の国会で金融機関が公的資金を受け入れやすくする金融機能強化法改正案を成立させた。地銀や信金、信組など地域金融機関を念頭に公的資金で資本支援することで、地域経済への資金供給の円滑化を促すものだ。

改正法の最大の特徴は、金融機関の経営責任の明確化や収益目標の設定を省ける特例を設ける点にある。従来の金融機能強化法においても、金融当局は公的資金の申請がやりやすいよう、厳格な経営責任を求めない旨、口頭ベースでは表明してきたが、今回の改正法で法的に明確化されたことで、より安心して申請しやすくなる。

また、公的資金を申請できる期限も2022年3月から2026年3月まで4年間延長するとともに、資金枠も12兆円から15兆円に増額する。改正法は8月にも施行させたい考えだ。

金融機能強化法を改正する狙いは、いうまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大による地方経済の落ち込みを金融面から下支えすることにある。コロナ禍の経済への影響はどこまで拡大し、長引くか先が見えない。この間、経済の“血流”である金融に目詰まりが生じることになれば不測の企業倒産の急増を招きかねない。

その弊害を地域金融機関の資本面から除去しようというのが今回の改正案の肝と言っていい。公的資金で“地域金融機関の資本バッファ”を担保するというわけだ。

上場地銀の7割が減益・赤字決算

地域金融機関の置かれた現状は、超低金利の継続、人口減少などを背景に厳しさを増している。そこにコロナ禍が重なり収益環境はさらに悪化しかねない。それを食い止めるため、地域金融機関は必死になって地域経済、企業を支えるべく資金供給に努めている。結果、与信費用が増加することは避けられない状況だ。

与信費用

融資に際して設定する融資枠や債務保証等に関する費用全体のこと。融資先が倒産した際に債権を回収できなくなることに備えた「貸倒引当金」や、回収不能額を損失計上する「債権償却額」など。

すでに2020年3月期連結決算で、上場地銀78行・グループのうち、7割を占める57行が前の期に比べ減益もしくは赤字となっている。赤字が継続すればいずれ資本も食いつぶす事態に陥りかねない。改正法はそうした事態を想定して、期限も延長し、資金枠を増額したということであろう。

さらに、今回の改正金融機能強化法では、コロナ特例を使えば返済期限の無い公的資金の注入も可能だ。金融庁の遠藤俊英長官は、6月9日の衆院財務金融委員会で「返済のための財源を確保できる見込みがあることは確認する」と答弁、永久に公的資金を注入することは否定した。最初から返さなくてもいい公的資金を入れるようでは、金融機関のモラルハザードを招きかねないためだ。

実際、過去に公的資金を注入しながら返済できていない地銀や大手行もある。1998年の金融危機で一時国有化された旧日本長期信用銀行(現新生銀行)は未だに公的資金は完済できていない。

今回のコロナ禍で取引先の倒産や廃業が急増するのはこれから。しかし、地域金融機関の引当はそれほど進んでいないことも危惧されている。一部アナリストの試算によれば、地方銀行の与信費用の見込みは貸出総額の0.2%程度にとどまっている。経営環境が厳しく、思うように与信費用を盛り込めない地銀も少なくない。金融庁では9月の中間決算を控え、資本不足に陥る地域金融機関が出る可能性があると身構えている。

特例法で地銀の統合・合併は加速へ

一方、地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が5月20日の参議院本会議で可決、成立した。人口減少や超低金利が続き、収益減少に喘ぐ地銀の再編を後押しし、経営基盤の強化を促すもので、適用期間は10年間となる。

特例法には、統合・合併で市場占有率が高まった地銀が不当に貸出金利を上げないよう監視し、利用者保護を徹底する規定も盛り込まれた。借り手の不利益が大きいと判断された場合は、金融庁が業務改善命令などで是正する。こうした点を踏まえ、金融庁が統合・合併を目指す地銀の事業計画を審査し、収益力や金融サービスの維持につながることを条件に、公正取引委員会と協議して認可する。

プラットフォームかを狙うSBIの「第4のメガバンク構想」

こうした地銀再編にあって、その触媒となるのではないかと注目されているのが、北尾吉孝氏が率いるSBIホールディングスだ。SBIは6月8日、地方創生を効率的に具現化するための統括会社「地方創生パートナーズ」(東京・港区)を新設し、日本政策投資銀行、新生銀行、山口フィナンシャルグループが出資すると発表した。

新会社は地域経済の活性化や地域金融機関の収益力強化を目的にし、北尾氏が社長に就く。資本金は5億円でSBIが過半を出資し、残りの資本は参加金融機関が分担する。そして、地銀最大手の横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループが「地方創生パートナーズ」に合流することを決めた。出資額は少額にとどまるが、大手地銀の参画は大きな起爆剤となることは間違いない。背景には金融庁の後押しもあったと見られている。

新会社はSBIが進める「金融分野から地方創生への取り組み」の第3ステージに位置づけられている。第1ステージでは、SBIグループは3年超をかけてさまざまな分野で地域金融機関との提携関係を構築。そして次ぐ第2ステージで打ち上げたのが、提携先金融機関に資本参加し、各行の収益力向上を全面的に支援する「第4のメガバンク構想」だ。

「第4のメガバンク構想」は、SBIが過半を出資して持株会社を設立し、そこに全国の地銀やベンチャーキャピタル、運用会社などが出資して協力関係を築く。持株会社は参加する地銀等の業務システムやフィンテックなどのインフラや資産運用の受託ほか、人材の供給、マネーロンダリングの対応など幅広い商品・サービスを提供する、いわば“プラットフォーム”と言っていい。

すでに同構想の一環としてSBIは島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行の4行に出資した。また、SBIは新生銀行に出資し、第4位の大株主に躍り出たほか、大東銀行(福島県郡山市)の筆頭株主にもなっている。

ただし、金融界では、「地方創生に寄せるSBIの本気度がうかがえるが、同時に経営不振銀行の駆け込み寺化しつつあることも事実。『第4のメガバンク構想』は、共同持株会社を通じて傘下の地銀が経営危機に陥った場合に、間接的に公的資金を注入する受け皿ではないのか」(メガバンク幹部)と冷ややかな声も聞かれる。地銀糾合の台風の目となりつつあるSBIから目が離せない。

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反旗を翻せ! 過激に変化する50年目の頭脳警察【末永賢監督インタビュー】 https://seikeidenron.jp/articles/13983 https://seikeidenron.jp/articles/13983#respond Mon, 13 Jul 2020 22:00:42 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=13983 政治的で過激な歌詞で知られ、1970年代の学生運動に参加する若者から圧倒的な支持を得たロックバンド「頭脳警察」。“左翼のアイドル”に祭り上げられる一方で、...

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政治的で過激な歌詞で知られ、1970年代の学生運動に参加する若者から圧倒的な支持を得たロックバンド「頭脳警察」。“左翼のアイドル”に祭り上げられる一方で、日本語ロックの体現者として音楽シーンに大きな足跡を残した彼らは、2019年に結成50周年を迎えた。7月18日公開のドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50未来への鼓動』を製作した末永賢監督に、今の頭脳警察が現代に突きつけるメッセージを聞く。

 映画監督

末永 賢 すえなが けん

1965年生まれ、神奈川県逗子市出身。中央大学卒。バブル絶頂期に大学を卒業するも映画界に迷い込み鈴木清順、小沼勝らの助監督を経て監督活動を開始。監督作に『日本犯罪秘録・チ37号事件』『大阪ニセ夜間金庫事件』『長官狙撃』『河内山宗俊』など。『zk/頭脳警察50未来への鼓動』の撮影中に書かれた「ヤルタ・クリミア探訪記PANTAと仲間たち」では共同著者に名を連ねる。日活大部屋俳優の実録『人生とんぼ返り』が2020年秋に公開予定。

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頭脳警察

1969年12月、PANTA(写真左)とTOSHI(右)で結成。ファーストアルバム『頭脳警察1』(1972年3月)は過激な歌詞が原因で発売中止、続く『頭脳警察セカンド』(1972年5月)は9曲収録のうち3曲が放送禁止、さらに1カ月で回収・発売禁止。伝説的ステージと6枚のアルバムを残して1975 年に解散。1990年に再結成するも翌年で活動休止。2007年、再々結成し、70歳になった今でも現在もバンド、ソロ共に活発な活動を続けており、2019年に結成50周年を迎えた。

頭脳警察50周年を追ったドキュメンタリー映画

学生運動の嵐が吹き荒れていた1969年12月、いずれ“左翼のアイドル”となるロックバンドが産声を上げた。その名も「頭脳警察」。反戦・反体制運動が激化するなか、“革命三部作”と呼ばれる「世界革命戦争宣言」「銃をとれ」「赤軍兵士の詩」などの楽曲を筆頭に、政治や体制を批判する過激な歌詞と自由なメロディーによって人気を博す。グループ・サウンズ全盛期の当時にあっては特異な存在だった。

1960年代に盛んだった反戦・反体制の社会運動は、1970年代に入ってもベトナム戦争の反戦運動や安保闘争、あさま山荘事件などが続き、前衛的な日本語ロックを展開する頭脳警察も成田闘争の地・三里塚でのイベントに参加するなど、体制に逆らい続けた。しかし、頭脳警察は熱狂的な支持を得るなか、1975年に突如解散する。それ以降、幾度かの再結成と活動休止を繰り返しながらも、その歩みは止めていなかった――。

そんな頭脳警察が、2019年に結成50周年を迎えた。映画製作会社ドッグシュガーは、頭脳警察オフィシャルの全面協力を得て、“永遠の叛逆児”である頭脳警察の今を追いかけるドキュメンタリー映画の製作を開始。末永賢監督が、頭脳警察の50年目をカメラで追い、過去の映像を紐解き、『zk/頭脳警察50未来への鼓動』を完成させた。

「『頭脳警察』の名前はもちろん聞いたことがありました。けれども、私はロックキッズではなかったので、今回の映画でPANTAさんとTOSHIさんを撮るまで詳しくは知りませんでした。過激なバンドというイメージがあり“怖い人たち”と勝手な印象さえ抱いていました。しかし、撮影を通じて頭脳警察の2人と接して、こんなに面白いバンドは他にいないと思いました。世の中にはいろんなバンドがありますが、ほかのバンドとはトガり方が違います」(末永監督、以下同)

末永賢監督

とらえきれない存在。変化し続けるPANTAとTOSHI

「君達にベトナムの仲間を好き勝手に殺す権利があるなら、我々にも君達を好き勝手に殺す権利がある」(頭脳警察1「イントロダクション〜世界革命戦争宣言」より)

PANTAが「世界革命戦争宣言」を叫ぶように読み上げたことをきっかけに“左翼のアイドル”として祭り上げられ、いつの間にか反体制の象徴となった頭脳警察だが、実はその50年の歴史の中には“反体制”以外の顔もたくさんある。

今回のドキュメンタリー映画には、歌手の加藤登紀子、ミュージシャンの大槻ケンヂ、脚本家の宮藤官九郎、漫画家浦沢直樹といった、あらゆる分野、世代の表現者も頭脳警察を語る。彼らの証言とともに頭脳警察の現在と過去を追うことで、日本におけるカウンターカルチャーの歴史が浮き彫りになっていく。

「ドキュメンタリー映画とは、リアルな姿を映しとっていくことで、物事や人物の本質に迫るものです。しかし、頭脳警察の2人は、常に変わっていく存在で、とらえきれない人たちでした。劇映画でもドキュメンタリー映画でも、監督が思っているような展開になったときは面白くないんです。観客が次のシーンを予想できるようではつまらないですよね。

思い描いていたものとは違うけど、想像しなかった画が撮れたときのほうが、スタッフも面白いし、観客にとっても面白いものができます。今回の映画では、常にそういう驚きの連続でした。撮っても撮っても追いつけない。そこが頭脳警察の何よりの魅力でした」

とらえきれないのはなぜか。50年の歴史の中で解散・休止と再活動を繰り返してきただけでなく、PANTAとTOSHIの2人がそれぞれ自分の表現を求めてソロ活動を続けてきたことも関係しているかもしれない。

「撮影を通して、2人のように70歳を越えれば、変わり続けること自体が過激なことだと実感しました。偉大なキャリアがあって、あとは悠々自適に暮らせるのに、また新しいことにチャレンジする。周囲を黙らせる圧倒的な歴史があるのに、偉ぶることなく若い人たちと一緒に食事をしながら作品を作る。

スタッフに対してもファンに対しても、非常にフランクで丁寧に接します。自分のイメージをあえて壊しているのかな?とさえ思いました」

末永賢監督

若手を抜擢した“頭脳警察50周年バンド”のカッコよさ

2019年、頭脳警察は、ギター・澤竜次(黒猫チェルシー)、ベース・宮田岳(黒猫チェルシー)、ドラム・樋口素之助、キーボード・おおくぼけい(アーバンギャルド)という若きミュージシャンと“頭脳警察50周年バンド”を結成。『zk/頭脳警察50未来への鼓動』では、過去の貴重なライブ映像をはじめ、新たな血を入れ再始動した頭脳警察がNEWアルバム「乱破」を作り上げていく過程や、2019年4月7日に新宿花園神社特設テントで行われた頭脳警察50周年公演をリハーサルから追っている。

2列目左からギター・澤竜次(黒猫チェルシー)、ドラム・樋口素之助、ベース・宮田岳(黒猫チェルシー)、キーボード・おおくぼけい(アーバンギャルド)
新宿花園神社 水族館劇場天幕(テント)野外劇場にて行われた頭脳警察50周年バンドによる1stライブ

「今作で最も印象に残っているシーンは、PANTA&TOSHIと若手ミュージシャンとの場面。新しい頭脳警察には1990年生まれの若者を迎えています。ロック界のレジェンドがそんな若手を相手にすることも驚きですが、若いメンバーも物怖じすることなく、自分たちが持っている才能をいかんなく発揮していきます。それは、PANTAさんとTOSHIさんが“寛容”という言葉では言い表せない態度で接したからです。むしろ対等に勝負している感じがしました」

「乱破者」の楽曲製作シーン。PANTAのイメージに豊かなアイデアで返すおおくぼ

普通のバンドなら、50周年の記念イベントは昔を懐かしむような展開になりがち。しかし頭脳警察は懐メロ的なツアーをするのではなく、若い世代と組んで、新しいことにチャレンジする。「頭脳警察はやっぱり一味違う」と末永監督も唸る。

「若手ミュージシャンも言いたいことを言って、やりたいことをやっていました。昔の西部劇みたいに、若者と年輩者が互いの力を認め合って、世代を超えた友情というか、そんな関係が出来上がっていました。お互いに認め合っているからこそ、生まれる関係だと思います。最高にカッコいい関係だと思いませんか? 映画人としてシビれました」

上の世代に「ふざけるな!」と言っていい

『zk/頭脳警察50未来への鼓動』の撮影を通して、末永監督は「言いたいことは言おう! 言っていいんだぜ!」という頭脳警察から現在の若者へのメッセージを感じ取ったと語る。

「『悪目立ち』という言葉があるように、就職氷河期以降に社会人になった人は失敗を恐れることが多く、目立たないように生きている人が多い印象を個人的に持っています。一方で会社や社会は、人材を育成せず学生にまで即戦力を求めます。しかし、社会は大人だけでなく若者も含めて構成されるもの。上の世代の都合で形成されている今の社会に反旗を翻してもいいと思います。

親世代が戦争を経験している1960・70年代の学生は、歴史に対する責任を上の世代に求め、上の世代が決めたことに『ふざけるな!』と言った。頭脳警察を見ていると、そう言ってもいいんだと勇気をもらえる思いです」

末永賢監督

音楽で政治は語られるべきか

頭脳警察の思想は決して左翼的ではなく、社会運動に熱狂する大衆に応えていった結果、いつの間にか変節し“左翼のアイドル”になっていった面がある。結成から6年で解散に至ったのは、その大衆の支持が、やりたい音楽に対して次第に足かせとなっていったことも理由のひとつだったという。

頭脳警察が放つメッセージは確かに過激だが、しかしそれは時代が生んだもの。政治が時代の潮流であり、頭脳警察は純粋にそれに応えたにすぎない。では、現在の音楽シーンはどうか。

「初期の頭脳警察のころと違い、現在の日本のアーチストは政治的な発言をしません。スポンサーが物事を動かしているのが如実になりすぎているのではないでしょうか。資本主義社会だから当然だといえばそれまでですが、社会全体で、見えないものへの配慮が過度だと感じています。

誰も明快な答えを持っていないのに社会的な影響を忖度して、気を使い合った結果、くだらないものが生み出されています。頭脳警察とは、前時代のへの反発が生み出した異分子。ほかの人がやらないことをやるのは怖いものですが、勇気を持って動けば、続いてくれる人が現れると、彼らは行動を持って示してくれました。

映画の中でPANTAさんとTOSHIさんは、爆薬と起爆剤の関係だというシーンがあります。2人は時に入れ替わって、互いに支え合い、時に煽り合いながら、常に変化し続け前進してきたんだと思います」

どんな時代になっても常に“過激”に変化し続けてきた頭脳警察。『zk/頭脳警察50未来への鼓動』に映される70歳のPANTAとTOSHIの姿から、この閉塞された社会で自由に行動する勇気を感じて取ってほしいものだ。

『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』

劇場公開:2020年7月18日(土)より新宿K’s cinemaにて公開
出演:頭脳警察
監督・編集:末永賢
企画・製作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー、太秦  配給:太秦

»公式サイト

[2020年/DCP/モノクロ・カラー/スタンダード・ビスタ/5.1ch/100分]
©2020 ZK PROJECT

Twitter:@zk50th_movie

Facebook:@zk50thmovie

1970年代に“左翼のアイドル”として支持を得たロックバンド「頭脳警察」の50周年の活動を追うドキュメンタリー。頭脳警察と同じ時代を歩んできた者、その背中を追ってきた者、あらゆる世代の表現者の証言とともに、変わらぬ熱量を保ち続けるPANTA、TOSHIAらの現在と過去を追うことで、日本におけるカウンターカルチャーとサブカルチャーの歴史を浮き彫りにする。

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予算1兆6794億円の景気対策「Go Toキャンペーン」 わかりづらい内容とその経済効果 https://seikeidenron.jp/articles/13973 https://seikeidenron.jp/articles/13973#respond Mon, 13 Jul 2020 04:34:17 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=13973 かねてから注目されていた政府の景気対策「Go Toキャンペーン」が7月22日から先行実施される。現在、新型コロナウイルスの第2波が懸念されているなか、移動...

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かねてから注目されていた政府の景気対策「Go Toキャンペーン」が7月22日から先行実施される。現在、新型コロナウイルスの第2波が懸念されているなか、移動自粛が要請されている地域もありタイミングとしては少し微妙かもしれない。ただ、コロナ禍による経済の落ち込みは甚大で影響は拡大しており、その経済効果は大いに期待するところ。キャンペーンの内容がわかりづらい面もあるので概要の説明もあわせてしていく。

航空会社・旅行会社にとって移動自粛は何よりも痛い

来春採用の学生にとってショックなニュースが相次いでいる。ANAホールディングスは7月10日、グループ37社で進めていた3200人規模の来春採用を中止すると発表した。コロナ禍により人の移動が極端に低下したことを受け、5月に採用を一時中断していたが、第2波ともとれる感染拡大から長期化は避けられないとして決断した。同様にJALも来春採用を一時中断している。

また、大手旅行会社のJTBは、2020年の冬のボーナス支給をしないことを決めた。エイチ・アイ・エスも今夏のボーナス支給を見送っている。「JTBは学生の就職人気ランキングトップの常連企業だけに、ボーナス支給中止はコロナ禍の深刻さを浮き彫りにした」(エコノミスト)と言っていい。

航空会社や旅行会社にとって国内外の人の移動自粛は致命的である。6月末時点で今夏休み期間中の国内旅行の予約数は、昨年の同じ時期に比べ5分の1にまで減少しているほか、海外旅行は8月出発分まですべての国・地域で取扱いが中止されている。7月以降も航空各社では国内線で約5割、国際線の約9割で運休や減便が計画されている。影響は甚大と言わざるを得ない。

予算1兆6794億円「Go Toキャンペーン」が開始

コロナ禍によるこれら業種の苦境に政府も強力なテコ入れに乗り出している。

当初、8月上旬から予定していた「Go Toキャンペーン」を、7月22日から前倒しで実施することを決めた。同キャンペーンは、新型コロナウイルス感染拡大により甚大な被害が及んでいる国内の観光・運輸・外食・イベント産業等に対し、1兆6794億円もの予算を配分し、かつてない規模の需要喚起を促すもの。

「Go Toキャンペーン」には、「Go To Travel」「~Eat」「~Event」「~商店街」の4種類及び、「一体的なキャンペーンの周知」がある。

国土交通省が管轄する「Travel」が1兆3500億円と最も予算が大きい。旅行業者等経由で、期間中に旅行商品を購入した消費者に対し、代金の2分の1相当の宿泊代金割引や地域共通クーポン等(地域産品購入、飲食店・施設利用費、交通費などとして利用可)を、最大一人1泊あたり2万円を上限(日帰り旅行は1万円を上限)に補助する。

「Go To Travel」の補助イメージ

Go To Traveのイメージl

補助のうち7割が宿泊代金の割引、3割分は旅行先での買い物などで使えるクーポンとなる仕組み。宿泊代金割引は、宿泊と交通費がセットになったプランの場合は交通費も割引対象。個人で宿泊手配した場合も割引対象だが、交通費は割引対象外となる。

クーポンは一枚1000円(釣りなし)の商品券やアプリなど電子媒体のかたちで発行され、旅行先の周辺地域で旅行期間中のみ利用可能。事務局が一括発行したものが、旅行代理店や宿泊施設で配布される。

わかりづらいので付け加えるが、例えば一人1泊4万円の旅行の場合、1万4000円の割引と6000円のクーポン発行が受けられるわけだ。なお、連泊や利用回数に制限はないが、7月22日の事業開始時点では代金割引のみ適用し、クーポンは9月以降に導入される。
※キャンペーン実施前に予約している場合は、申請により割引分を還付

農林水産省が管轄する「Eat」では、オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した消費者に対し、飲食店で使えるポイント等を最大一人当たり1000円分付与するほか、登録飲食店で使えるプレミアム付き食事券(2割相当分の割引等)を発行する。

経済産業省が管轄する「Event」では、チケット会社経由で、期間中のイベント・エンターテイメントのチケットを購入した消費者に対し、2割相当分の割引・クーポンを付与する。なお、バウチャー・前売り券等がある場合は上乗せして割引。

同様に経産省管轄の「商店街」では、商店街等によるキャンペーン期間中にイベント開催、プロモーション、観光商品開発等をする。

なお、「Go Toキャンペーン」の期間終了日は現在未定となっている。

先行実施のタイミングは微妙だが経済効果の期待値は高い

いずれも“大盤振る舞い”と言っていい内容で、その効果についてエコノミストは「実質的に旅行商品価格を最大5割、外食とイベントの価格を2割程度引き下げる効果がある」と分析する。これが消費を喚起し、「旅行で約55%、外食で約20%、イベントで約45%の市場規模増加に寄与しよう」(先のエコノミスト)と試算している。

数値でいえば、キャンペーン期間中の半年間で、旅行は最大2兆1000億円、外食は最大1兆4000億円、イベントは最大2兆7000億円もの市場規模拡大が見込まれることになる。

緊急事態宣言の解除、営業自粛要請の緩和に伴い、コロナ感染の第2波が懸念されるなかの「Go Toキャンペーン」の実施であり、感染拡大に留意した取組みを余儀なくされるが、「安倍政権は財政再建を棚上げしても、足下のコロナ禍による景気の落ち込みを食い止めようと必死だ。かつてない規模の予算も配分されており、高い効果が見込まれる」(中央官庁幹部)という。

現在、感染者の増加に伴い各都道府県知事から移動の自粛要請が発せられるなか、前倒しの効果がどれほどあるかは不明だが、キャンペーンとしての期待値は高い。

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レジ袋有料化の本当の狙いとは? https://seikeidenron.jp/articles/13953 https://seikeidenron.jp/articles/13953#respond Thu, 09 Jul 2020 06:29:20 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=13953 7月1日から日本でもレジ袋の有料化がやっと始まりました。他国ではすでに有料化され、あるいは使用禁止になっている国もありますので、今回の我が国の措置は遅かっ...

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7月1日から日本でもレジ袋の有料化がやっと始まりました。他国ではすでに有料化され、あるいは使用禁止になっている国もありますので、今回の我が国の措置は遅かったように思います。この背景には、我が国の環境に関する意識の低さがあるかもしれません。 レジ袋の“レジ”は、事務機の一種で金銭登録器・キャッシュレジスター(Cash Register)のレジから由来するのか、一般的に樹脂の英語名レジン(Resin)からなのか、それとも両方をかけているのかわかりません。余談はともかくとして、本稿では、レジン(Resin)由来のレジ袋として、すなわち化学物質としてのレジ袋の削減、環境問題に焦点を当てて述べたいと思います。

便利なレジ袋は「ポリエチレン」という化学物質

現在使われているレジ袋はポリエチレンという化学物質です。ポリは高分子・ポリマー(Polymer)のポリ。原料のエチレンは気体で自然界にも存在し、果物が熟す時の植物ホルモンで、輸入したばかりの青いバナナを黄色くするときに使われます。このエチレン分子をいくつもつなげた(重合)ものがポリエチレンです。

常温・常圧で、ある種の触媒を用いると、目に見えないエチレンガスが雪のような白い粉末となってパラパラと落ちてくることが発見されたのは今から60年以上前のこと。この画期的な化学反応を見つけた2人の化学者に1963年ノーベル化学賞が授与されました。

これを薄いフィルムにしたのがレジ袋です。成形しやすく、軽くて丈夫、水濡れにも強いことから、1970年頃から紙袋に代わって買い物袋として大量に使われてきました。

ポリエチレンはその用途により、さまざまな機能を有するものが作られています。買い物袋以外にも、包装材(ラップフィルム、食品チューブ、食品容器)、農業用フィルム、電線被覆、牛乳パックの内張りフィルム、シャンプー・リンス容器、バケツ、ガソリンタンク、灯油かん、コンテナ、パイプなど、いろいろな製品として私たちの生活を豊かにしています。

これが化学の優れた一面ですが、一方で環境汚染問題のように“負の遺産”もあることに注意を払うべきです。

ごみとなっているレジ袋

レジ袋は便利に使われてきましたが、一方で廃棄物、海洋プラスチックごみ、地球温暖化などの問題を抱えていることは、よく知られています。それゆえに私たちは、いわゆるプラスチック類の過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要があるのです。

原油はさまざまな炭化水素の混合物であり、沸点の違いによって分けることが可能で、ナフサ、灯油、軽油、重油などが得られます。

ナフサは沸点の低い炭化水素の混合物で、これを精製するとガソリンになりますが、ガソリンも混合物で単一の化合物ではありません。ナフサをクラッキング(分解)するとエチレンガスが得られます。エチレンガスは、現在このように大量につくられており、日本はエチレンの輸出国でもあります。

これがポリエチレンの原料で、レジ袋は炭素と水素からできている炭化水素ですから、よく燃え、完全燃焼すれば二酸化炭素と水になります。したがって、燃やすと地球温暖化の原因になるわけです。基本的には燃やすべきものではありませんが、レジ袋は家庭の可燃物のごみ袋として使われ、燃やされてしまっています。

また、燃やされずに捨てられたポリエチレンは、自然界、例えば土の中や水中の微生物などで分解せず、半永久的に安定なままに残留、これがごみとなってしまいます。海に流れると、紫外線や波の作用などで微粒子に変化してマイクロプラスチックとなってしまい、現在、大きな問題になっているのです。マイクロプラスチックが魚貝類に入り、食物連鎖によって人間の身体にも侵入していることは脅威です。以上のことからしても、レジ袋は結局ごみになっています。

抜け道のあるレジ袋有料化

レジ袋有料化の目的の一つはレジ袋の削減ですが、レジ袋有料化に抜け道があるのが気になります。植物に由来するバイオマス素材の配合率が25%以上のバイオポリエチレン製のレジ袋は無料で渡せるため、有料化を回避することが可能です。

植物は、二酸化炭素と水から光合成により澱粉などのバイオマスを合成しています。したがってこのバイオマスが入ったレジ袋を燃焼させた場合、結局のところ大気中の二酸化炭素の濃度を上昇させないことにつながり、地球温暖化の防止や化石資源への依存度低減にも貢献するとの解釈です。

これが、バイオマスのもつ“カーボンニュートラル性”ですが、こんな抜け道を作るのではなく、初めからレジ袋を使用禁止にすべきではないかと思います。バイオマスが含まれていたとしても、プラ製品が環境への負荷が高いことに変わりはありません。新型コロナウイルスの影響でテークアウトが伸びる外食産業では、バイオポリエチレン製のレジ袋の導入が相次いでいるのは残念です。

使い捨てプラスチックごみの削減

日本は、一人当たりの使い捨てプラごみの発生量がアメリカに次いで2番目に多く、“プラごみ大国”です。レジ袋以外にもたくさんの使い捨てプラ製品が身の回りにあふれており、ポリエチレン以外にも多くのポリマーが開発され使用されています。

プラごみの分別・回収が進んでいるとはいえ、再生樹脂などへのマテリアルリサイクル率は25%。その他は、火力発電、RPF(廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料)、セメント燃料などの熱回収率が57%、焼却・埋め立てが18%と、結局75%は焼却されています。

焼却すれば、上述のように二酸化炭素が発生するのは当たり前です。問題はそればかりではなく、塩素原子を含んだプラスチック(ラップやパイプ、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン)を焼却することの是非です。かつて大騒ぎしたダイオキシン類発生の懸念は、当時よりは対策されているとはいえ、まだ解決していません。

ライフスタイルの転換を

日本で排出されるプラごみは年間約900万トンで、そのうちレジ袋は2~3%程度。したがってレジ袋の有料化だけではごみ削減につながらないのは当たり前です。

環境省は、プラごみの削減に向け、2030年までの数値目標として使い捨てプラスチック排出量の25%削減を打ち出しています。今回のレジ袋有料化は、自然環境保全の立場から言えばまだ道半ばで、不十分もいいところ。それなのに、遅れたとはいえレジ袋有料化に踏み切ったのはそれなりの理由があります。

経済産業省のホームページには、レジ袋有料化の目的について、「普段何げなくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとする」と書かれてあります。レジ袋有料化とプラスチックごみ削減は、あくまで別問題だということでしょう。

プラスチックを使い捨てる習慣そのものを変えなければなりません。人間の心を変えることはなかなか難しいことですが、長いこと金科玉条のごとく続いてきた“大量生産・大量消費・大量廃棄”の悪循環をどこかで断ち切る勇気が必要な気がします。

災害には、「天災」と「人災」がありますが、もう一つ、文明の進歩による災害「文明災」を忘れてはなりません。プラごみによる環境汚染は、化学の進歩による「文明災」、とりわけ「化学災」と呼んでもいいかもしれません。コロナパンデミックを経験している現在、「新しい生活様式」が求められているなか、人間のライフスタイルを変えることが必要な時代を迎えています。

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