政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は若い世代に向けて政治・経済の大切さを伝え、社会で役立つ情報を発信する佐藤尊徳(さとう そんとく)の個人メディア。歴代の政財界の知見と若い世代の感覚をぶつけて化学反応を起こし、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Mon, 26 Oct 2020 01:06:47 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 首相補佐官の役割とは? 菅内閣で初めて純粋な民間人を起用 https://seikeidenron.jp/articles/14690 https://seikeidenron.jp/articles/14690#respond Fri, 23 Oct 2020 10:21:30 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14690 発足から約1カ月がたった菅内閣。10月半ばの内閣支持率は50%を超え、行革における押印廃止やデジタル化など改革色の強い政策への期待感は依然として高い。人事...

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発足から約1カ月がたった菅内閣。10月半ばの内閣支持率は50%を超え、行革における押印廃止やデジタル化など改革色の強い政策への期待感は依然として高い。人事においては、二階俊博自民党幹事長や麻生太郎副総理兼財務相など安倍内閣の骨格は維持しつつ、自らの後任となる官房長官に実務型の加藤勝信前厚生労働相を据えるなど手堅い“菅カラー”随所に打ち出している。首相補佐官人事においても、9月末に元共同通信社の論説副委員長だった柿崎明二氏を起用すると発表され話題になったが、この首相補佐官というポジションはほかの閣僚と比べてなじみがない。どんな仕事なのだろうか。

“首相のブレーン”首相補佐官の給与は大臣政務官並み

内閣総理大臣補佐官、通称「首相補佐官」は内閣官房の官職の一つで、首相直属のスタッフとして首相肝いりの政策や広報などを担う役割。定員は5人で、国会議員でも民間人でも就くことができる。

歴代内閣では自らに近い側近議員や官僚出身者を充てることが多く、安倍晋三首相が退任する直前は衆院議員2人が「ふるさとづくりの推進及び少子高齢化対策」と「国家安全保障」を担当。国土交通省出身の和泉洋人氏が国土強靭化、経済産業省出身で内閣広報官などを歴任した長谷川榮一氏が広報や中小企業政策、同じく経産省出身で安倍首相の秘書官を務めた今井尚哉氏が政策企画の総括担当として首相補佐官を務めた。

首相補佐官は内閣官房参与と同じく“首相のブレーン”と呼ばれるが、内閣官房参与は純粋に政策に関するアドバイスを求められるのに対し、首相補佐官は政党や各省庁との連絡や調整役を担うことが多い。そのため、内閣官房参与には各分野の専門家が多いのに対し、首相補佐官には国会議員や官邸官僚が多い。民主党政権時代は全員、国会議員だった。

ちなみに、首相補佐官の給料は年収ベースで約2357万円。各省庁でいうと大臣、副大臣に次ぐ大臣政務官並みの給与で、官僚としては各省庁の事務次官に肩を並べる水準だ。

最初は首相の私的な相談役、1996年に法制化

首相補佐官のルーツは1993年の細川内閣が設けた首相特別補佐制度だ。特に根拠となる法律は無かったものの、後に経済企画長官となる衆院議員・田中秀征氏が首相の私的な相談役として官邸に常駐した。田中氏は細川護熙首相の日本新党ではなく、新党さきがけ所属だったが、細川氏に近く細川政権樹立の立役者の一人とされている。

1994年に発足した村山内閣でも首相補佐制度を設け、衆院議員3人を起用。続く橋本内閣で首相官邸の機能強化の一環として初めて首相補佐官が法制化された。当初の定員は3人で、2001年の法改正で定員が5人となった。

初期のころの補佐官として有名なのは元外交官で、2020年4月に新型コロナウイルス感染症により亡くなった岡本行夫氏だ。岡本氏は外務省で対米外交の中心役となる北米第一課長を務めた後に退官。親米派の外交評論家として活躍していた1996年、元総務庁長官の水野清氏とともに首相補佐官第1号に任命され、1998年まで沖縄担当、2003年~2004年まではイラク担当を務めた。特に沖縄担当として米軍普天間基地移設問題の最前線で活躍したとされている。

純粋な民間人の起用は初めて。柿崎氏とは

9月に発足した菅内閣の顔ぶれはどうか。菅首相は安倍政権時代の5人のうち、衆院議員1人と長谷川、今井両氏を交代させ、新たに阿達雅志参院議員と共同通信論説副委員長だった柿崎明二氏を起用。留任する木原稔衆院議員、和泉氏とともに4人体制とした。阿達氏は経済・外交担当、柿崎氏は政策評価、検証担当としている。

中でも注目を集めるのが柿崎氏だ。柿崎氏は毎日新聞社を経て、共同通信に入社。政治部記者として首相官邸や自民党、民主党、外務省などを担当し、政治部次長(デスク)や編集委員、論説委員を経て2019年から論説副委員長を務めていた。

首相補佐官制度の開始以来、マスコミ出身者の就任は初めて。そもそも国会議員や省庁出身者以外の、純粋な民間人自体の起用が初めてである。

しかも、柿崎氏は安倍政権に批判的な論調だったことで知られる。2015年に発売した著書のタイトルは『検証 安倍イズム――胎動する新国家主義』。出演したテレビ番組では安倍政権時代の桜を見る会の問題や森友・加計学園問題をめぐって政権の責任を厳しく追及していた。それが一転、安倍政権の中枢を担った菅義偉首相の側近に転身するというから驚きだ。

柿崎氏起用について、加藤官房長官は記者会見で「長年、報道機関で政治、行政分野の報道に従事し、論説副委員長などを歴任している。幅広い知識と経験を有しており総理大臣補佐官として適任だと菅総首相が判断した」と述べた。菅首相は安倍政権のスポークスマンを長年務め、広報やマスコミ対策の重要性を熟知していることから、マスコミへの根回しを担わせるのではないかとの見方がある。

また、柿崎氏を「政策評価、検証担当」としたことから「自民党政権に批判的な柿崎氏でも菅政権の政策をこれだけ高く評価した」というお墨付きを得るためではないかとの声が出ている。マスコミ関係者の中には「今さら政府側につくのか」と批判する声もある。

柿崎氏は菅首相と同じ秋田県出身で、菅首相が1996年に国会議員となった当時から親しくしていたとされている。秋田出身として初の首相のため、友人のために思想を捨て、協力しようと決意したのか。今後の柿崎氏の活躍、そしてマスコミが菅内閣をどう報じていくかに注目だ。

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DX推進は、誰もおいてけぼりにしないことが大事【東京DXシンポジウム】 https://seikeidenron.jp/articles/14682 https://seikeidenron.jp/articles/14682#respond Fri, 23 Oct 2020 07:51:21 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14682 政府は「デジタル庁」の新設など国家レベルでデジタル化を進めていく方針を示している。そんななか、東京都は2020年10月12日に「ポスト・コロナを見据えた東...

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政府は「デジタル庁」の新設など国家レベルでデジタル化を進めていく方針を示している。そんななか、東京都は2020年10月12日に「ポスト・コロナを見据えた東京のDXの推進に向けたオンラインシンポジウム」を開催。小池百合子都知事のほか、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長、“日本のインターネットの父”と呼ばれる慶応大学の村井純教授らが参加。これからのデジタルトランスフォーメーション(DX)について議論した。

デジタル化で後塵を拝する日本がすべきこと

新型コロナウイルスの感染拡大で露見した、世界と比べて日本のデジタル化が遅れているという事実。9月に発足した菅政権はデジタル改革担当大臣を新設し、行政のデジタル化を推進している。その動きに倣うように、東京都議会は10月に改正東京デジタルファースト条例を可決、行政手続きのデジタル化やワンストップ化を基本原則とし、「ペーパーレス」、「FAXレス」、「タッチレス」、「はんこレス」、「キャッシュレス」の5つのレスを行うとしている。

シンポジウムの開催に当たり小池知事は、「コロナ禍で日本のデジタル化は各国の後塵を拝していることが浮き彫りになった。これをチャンスとして世界から選ばれる都市として東京都がDXを徹底していく」と表明した。

シンポジウムはオンラインで行われた

参加者が基調講演を行うなか、村井教授は「DXとは何か?~デジタル技術が東京をどのように変えていくのか~」をテーマに登壇。「自宅ですべてのことをやる」「オフィスに行かなくても仕事をする」「3食家族全員が自宅で食事」などが新型コロナウイルスで経験した出来事とし、DXを進めていく上で「一人も置いてきぼりにしないことが大事」ということを挙げた。「今までは、ついてこられない人がいるかもしれないから気を使って“やらない”という感じで何度も繰り返されてきた。これからは置いてきぼりをさせない方法を頑張って考えて、完全デジタル化する」とした。

アマゾンジャパンのチャン社長は、「アマゾンのビジネスモデルそのものがDXといえる。これから大事なのはオンライン、オフラインの選択肢が消費者にあること。アマゾンのオフィスで働く社員の多くがコアタイムの無いフレックス勤務。在宅はコロナ前から行っていたが、感染拡大で2021年1月8日まで行うことを決め、実際9割近くが在宅勤務となっている」と実情を語った。「倉庫内ではAIを駆使して可視化する仕組みをつくり、倉庫内の安全対策も行った」とも述べた。

アマゾンのクラウドコンピューティングサービス「AWSクラウド」は大阪のコロナ追跡システムで使われており、教育分野では遠隔授業や講義が可能なコミュニケーションツール「Amazon Chime(アマゾンチャイム)」が利用されている。また、医療分野では規制が緩和されたことによりオンライン診療が広がったが、医療機関等の情報インフラやヘルスケアデータの連携基盤としてAWSクラウドのサービスを活用する例も増えている。

目的と意義を見える化できるかどうか

パネルディスカッションでは、各参加者から多数の有意義な提案・発言が。

ネットイヤーグループの石黒不二代社長は、DXにも種類があり、「働き方改革、ペーパーレスなど企業内部のことを行う“守りのDX”と、デジタルを使って企業の新しいビジネスモデルを作り出していくなど企業の成長に寄与するのが“攻めのDX”」と話す。

一方チャン社長は、「重要なのは人材の育成で、企業も行政もDXはITや開発部門に任せるだけでは成功できないと考える。経営者、政治家などいろんな分野の人たちが、DXを自分の世界の中でどうやって発揮できるのか? データを理解した上で自分の中でどう展開していくのか?というようなことを考えられる人材がすごく大事」とテクノロジーを生かせる人材の重要性を説いた。

オンラインで参加したアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長

シナモンの平野未来社長は、「AIの観点から言うと、政府の方々はコスト削減の手段と取られているがそれは違っている。競争戦略という視点から見ると、アメリカのレモネードという急成長している保険会社は90秒で保険に加入でき、事故に遭ったら数分でお金が返って来るというユーザーエクスペリエンスをAIによって実現している。これは人間では無理で、AIだからこそ可能なこと。こういった視点が欠けている」とコストが先に出てしまう風潮に異議を唱えた。

慶応大学医学部の宮田裕章教授は、「デジタルを導入するのが目的ではなく、どう生活を変えるのかという価値からのデザインが重要だ。給付金でみても、今までは個別化はコストがかかり過ぎる状況だったが、データとAIを使えば個別でサポートして誰も取り残さないことを、コストをかけなくても実現できるようになる」と語った。

デジタルに弱い人の中は、DXによる大きな変化について「変わりたくない」という防衛本能が働く人も少なくないだけに、DXをすれば何が良くなるのかというのを実感できる、目に見えるようにしないと進めることは難しい。そのためにも、どれだけ大勢の意志の人たちを巻き込めるのかが重要となりそうだ。

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香港デモ最終章へ 肉弾戦から紙の上での戦いに https://seikeidenron.jp/articles/14674 https://seikeidenron.jp/articles/14674#respond Fri, 23 Oct 2020 02:06:20 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14674 2019年の今ごろの香港は、「逃亡犯条例」改正案に端を発したデモが多発し、市街では催涙弾が飛び交っていた。しかし、2020年7月1日の「香港国家安全維持法...

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2019年の今ごろの香港は、「逃亡犯条例」改正案に端を発したデモが多発し、市街では催涙弾が飛び交っていた。しかし、2020年7月1日の「香港国家安全維持法(国安法)」が施行されるとデモは激減し、香港の街は様変わりした。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月1日に「香港には三権分立はない」と発言したほか、最高裁判所にあたる終審法院に在籍しているオーストラリア国籍の判事が国安法を理由に辞任。一連の法改正に伴う市民と行政との争いは“肉弾戦(=デモ)”から“紙の上(=法律)”へと主戦場が移っている。

「三権分立はない」と林鄭行政長官

香港にも日本と同様に教科書検定があり、その中には1992年に導入された「通識」という科目がある(2009年に必須科目化)。これは日本の科目でいえば「公民」に近いが、政治、経済、環境、社会などの問題についてグループで議論をさせる授業だ。

これまでは通識の教科書の中に「三権分立」という記述があり、その原則に従って個人の自由の権利などを保証すると書かれていたが、2020年から削除された。さらに、抗議デモに関する資料や写真も削除された代わりに、違法なデモをした場合は刑事責任を負うという文章が加えられた。

国安法第3条には「香港特別行政区の行政機関、立法機関、司法機関はこの法律及び他の関係法律の定めるところによって、国家の安全を害する行為と活動を効果的に防止し、阻止し、処罰しなければならない」と書かれている。つまり三権は「分立」ではなく「協力」するものという解釈を行い、法律を利用する形で分立を否定したともいえる。

これを受けて林鄭行政長官は9月1日の記者会見で「香港に三権分立はない」と発言。「香港では行政、立法、司法機関が相互に協力しバランスを取るが、この3つの機関は最終的には行政長官を通じて中国政府に責任を負う」と説明し、香港は「行政主導」のシステムであると明言した。また、中国政府の香港問題を担当する「国務院港澳事務弁公室」の報道官も「香港に三権分立は存在したことはない」という談話を発表し、香港政府をバックアップした。

林鄭行政長官 写真:香港政府新聞処

確かに香港はイギリスの植民地時代からの名残で“行政主導”の政治体制があったのは事実だ。また、イギリスと中国との返還交渉の過程では鄧小平が三権分立を否定し、その後、中国の政府高官も何度か三権分立を否定。香港基本法の理念としては三権分立を明示はしていないが、香港弁護士会は基本法第4章で三権の権限と機能を示しているという声明を出しており、三権分立は現実社会では存在し、運用されていると考えられてきた。

2014年には終審法院の首席裁判官が三権分立の原則が明示されているという見解を示していたほか、林鄭行政長官の発言の翌9月2日には香港弁護士会がその発言に懸念を示している。

これらの考えの相違は法治の根幹であることから、今後、大きな議論を呼ぶのは間違いない。

国際的な信用にかかわる外国人裁判官の辞職

香港政府は9月18日、終審法院のオーストラリア籍のジェームス・スピーゲルマン判事(74歳)が2年の任期を残して辞任したことを明らかにした。スピーゲルマン判事はポーランドに生まれ、その後オーストラリアに移り、シドニー大学で法律の学位を取得。1980年から弁護士として活動を開始した。その後、オーストラリアの法律改革の委員を務めるなどオーストラリアの法曹界で活躍。2013年に香港の終審法院の判事に就任し、2019年7月には期間を3年延長して2022年7月29日まで続けることが決まっていた。香港の前はフィジーの最高裁の判事を務めていたこともあるベテラン裁判官だ。

林鄭行政長官に辞任を申し出た際に理由を述べなかったが、オーストラリアの国営放送、ABCのインタビューには「国安法と司法の独立とその方向性について」と語っており、国安法が成立したことと、三権分立がないと香港政府が表明したことが関係していることを認めた。事実、同判事の辞任は林鄭行政長官が発言した翌日の9月2日だ。

香港の法制度を説明すると、イギリス統治下の影響から「コモン・ロー」の法体系をとる。コモン・ローの法体系を採用している国々は大英帝国領であったアメリカ、カナダ、オーストラリア、インドなどで、各国で積み上げられた判決は、コモン・ロー採用国すべてにおいて適用される。

判事はそれぞれの国の法律にもよるが、他国・地域の裁判所の判事を兼任することを認めている。それは上述のように採用国すべてに判例が適用されるからこそ成り立つものだ。コモン・ローにおける裁判官には法律家の間でも卓越した能力のある人のみがなれるため、非常に尊敬されている存在でもある。

香港の終審法院にはオーストラリア以外にもイギリスなど外国人裁判官がいるが、今後、外国人裁判官の“辞職ドミノ”が起これば、法体制の維持が危機にさらされるほか、コモン・ロー適用諸国から別の裁判官の採用も難しくなる可能性がある。そうなれば、三権分立の問題とのダブルパンチで香港の国際的な信用問題にかかわってくるだろう。これは、ある意味、国安法よりも深刻な問題になる可能性がある。

有名海外メディアすら排除も。マスコミへの取材制限

さらに香港警察は9月22日、「警察通例」(警察官の行動などを規定する内規)を改正し、メディアの定義を修正すると発表した。今後は、香港記者協会や香港撮影記者協会などが発行した会員証を認めず、香港政府の広報機関である「香港政府新聞処」に登録したメディア、または、国際的に認められた有名な海外の新聞、通信、雑誌、テレビ、ラジオの各社が発行した証明書をもつ記者および社員のみとするとした。

例えば、香港のデモ現場においては大勢の学生新聞の記者がおり、彼らは若さと機動力を生かしてデモ現場の動画をずっと撮影し、警察の過剰な暴力などの決定的瞬間をとらえてきた。今後は取材が制限される可能性があり、こういった場面が見られなくなるかもしれない。

これには予兆があった。8月10日に民主派寄りの論調を展開する新聞、「蘋果日報(アップル・デイリー)」の創始者の黎智英(ジミー・ライ)氏が逮捕された際、香港警察は同紙の家宅捜査も行い、屋外に封鎖線を張った。その際、ロイター、AP通信、AFP通信といった海外の通信社、香港の立場新聞(Stand News)、香港獨立媒體といったメディアが封鎖線の内側に入るのを拒否されている(交渉の末、数時間後に入るのを認められた)。

警察の強制捜査を受けたアップルデイリーの社屋

これまでは封鎖線の内側にほとんどのメディア関係者が入れたが、今後は封鎖線の内側については、香港警察が恣意的にメディアを選別する可能性が出てきており、フリーランスどころか香港政治に批判的であれば海外の有名メディアでも拒否されかねない。すでに香港では、8月頃からアメリカの報道機関の外国特派員への労働ビザの発給が遅延気味になるなどしており、香港の報道の自由がより締め付けられる状況になったことは間違いない。

香港よ、死にたまふことなかれ

このように、香港はデモ(=体)から法律(=頭)の戦いに移行した。三権分立や法律の安定性、報道の自由は、海外企業が香港に進出し、ビジネスをする上で大きな要素となっており、これらが失われていくことは経済的にネガティブな印象を持たれる方に働くことはほぼ確実だ。

中国政府としては、香港から中国の政府体制の維持を脅かす力を奪えるのなら、香港の強みである金融機能やフリーポートとしての都市機能を失うことは仕方ないと覚悟を決めたというだろう。

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国際社会で韓国の孤立が止まらない https://seikeidenron.jp/articles/14665 https://seikeidenron.jp/articles/14665#respond Thu, 22 Oct 2020 10:15:38 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14665 アメリカ政府は2020年8月、通信網や携帯電話用アプリ、クラウドサービス、海底ケーブルなど通信関連の5分野で、中国企業を排除する「クリーンネットワーク」計...

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アメリカ政府は2020年8月、通信網や携帯電話用アプリ、クラウドサービス、海底ケーブルなど通信関連の5分野で、中国企業を排除する「クリーンネットワーク」計画を提唱し、各国に協調を呼び掛けたが、日本政府は現時点で参加を見送る方針を米国側に伝えたという。新型コロナウイルスが米中緊張に拍車を掛けるなかでも、日本政府は安全保障と経済という天秤の狭間でバランスをとった外交を展開せざるを得ない現状がうかがえる。しかし、今日、米中のはざまで日本以上に難しい立場にあり、国際社会で孤立しているのは韓国だ。

“対中けん制”色を強めたクアッド会議

10月上旬、東京では日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国外相による安全保障会合「クアッド会議」が開催された。アメリカのポンペオ国務長官が冒頭から、「共産党の搾取、腐敗、威圧からパートナーを守らなくてはならない」と習政権を強く非難するなど、クアッド会議はこれまでになく“対中けん制網”としての色合いが濃くなっている。

安全保障上、韓国はアメリカの同盟国であり、これまで韓米同盟が北朝鮮を抑止する極地同盟として機能してきたことは間違いない。だが、地域の主要国が集るクアッド会議に韓国は参加していないどころか、今回ポンペオ国務長官はクアッド会議後に韓国を訪問する予定(トランプ大統領の新型コロナ感染が原因とも言われるが)を急遽キャンセルした。

そして、クアッド会議の様相はこれまでとは異なる。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、香港国家安全維持法や中印国境での衝突なども影響し、オーストラリアとインドがこれまでになく反中包囲網で米国に接近するなか、クアッド会議は多国間安全保障協力の様相を呈している。最新の情報によると、インド国防省は10月19日、日本や米国が参加する今年の共同軍事訓練「マラバール」にオーストラリアが参加すると発表した。2017年にオーストラリアがマラバールへの参加を打診した際、中国を考慮してインドはそれを拒否した経緯がある。

また、日本の防衛省でも同日、日豪防衛相会談が開催され、自衛隊が豪軍の軍艦などを防護するいわゆる「武器等防護」の実施に向けて調整していく方針が表明された。実施されれば米国に次いで2カ国目となり、日豪は“準同盟”化しているとの見方もある。これら二つは大きな変化がであり、インドとオーストラリアが中国への懸念を強めている証であろう。

対中においてクアッドの結束が顕著になるなか、浮き彫りになる韓国の孤立。そもそも米韓関係はなぜこじれてしまったのか。

米韓関係悪化の背景、二つの事情

これまでのアメリカを中心とするハブ・アンド・スポーク型の安全保障体制では中国の海洋覇権は止められないとの声も上がるなか、アメリカにはクアッド会議を軸としてインド太平洋地域で多国間安全保障協力を制度化したい狙いがある。そうなると、同盟国である韓国にも一定の役割が求められるが、韓国は悪化する日韓関係を問題に挙げ、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄をちらつかせるなど、米国の強い不信感を買うことになった。

最近では10月14日、ペンタゴンで第52回米韓安保協議会が行われたが、両国は防衛費分担金問題などを巡って激しく衝突するだけでなく、共同声明からは、昨年とは異なり「在韓米軍の現水準を維持」という表現が取り除かれ、予定されていた両国国防トップの記者会見も中止される事態となった。

韓国がクアッド会議に積極姿勢を示さず、近年米韓関係が悪化する背景には二つの特有の事情がある。一つは韓国経済の対中依存だ。韓国の全国経済人連合会は9月上旬、コロナ禍において輸出と投資の両面で韓国の中国への依存度が高まり、韓国の輸出全体に占める中国向け比率が25.8%(2020年1月~7月)に及び、前年同期比で1.5ポイント上昇したと明らかにした。

そして、経済安全保障の重要性が増すなか、8月下旬には、中国の楊潔篪共産党政治局員が釜山で韓国の徐薫国家安保室長と会談し、新型コロナウイルスの問題が落ち着き次第、習近平国家主席の訪韓を調整することで一致した。さらに、香港国家安全維持法が6月に国連人権理事会で審議され、米国の同盟国である日本やオーストラリア、ニュージーランドが不支持に回るなか、韓国はその是非の判断を棄権した。

もう一つは、北朝鮮である。米朝関係改善がいっそうに進まないなか、仮に現状のままで韓国がクアッド会議へ積極的に関与すれば、中国だけでなく北朝鮮も難色を示すことは想像に難くなく、6月の南北連絡事務所爆破のような挑発的な行動を見せる可能性もある。一方、文在寅政権下では北への融和政策が維持されることから、同政権がクアッド会議と距離を置く姿勢を取ることは十分に想像できる。文在寅大統領としても、米韓同盟の重要性は分かっているはずだが、それによって南北融和が遠のくことは避けたいとの思惑が働いている。

方針変更がない限り韓国の孤立は止められない

11月3日のアメリカ大統領選では、バイデン候補が有利な状況である。このままいけばバイデン候補が勝利するが、韓国が現在のスタンスを維持するならば米韓関係の改善は見られないだろう。トランプ大統領もオバマ前政権の継承を宣言するバイデン候補も、同盟国の役割拡大では同じ考えであり、ポスト文在寅時代で“対北強硬、対米重視”の指導者が誕生しない限り、米韓関係の改善は期待できず、クアッドの枠組みに韓国が加わることは想像し難い。米中対立が激しくなり、クアッドの結束が顕著になる中、韓国は安全保障上、孤立化への道を歩み進んでいるともいえる。

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食中毒や次亜塩素酸も…生活に関わる「化学」に関心を https://seikeidenron.jp/articles/14653 https://seikeidenron.jp/articles/14653#respond Wed, 21 Oct 2020 10:54:04 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14653 化学・化学技術の進歩により、人類の生活は格段に便利になり豊かな生活を享受し、身の回りは多くの化学製品や化学物質で溢れています。これらの恩恵を受けつつも、し...

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化学・化学技術の進歩により、人類の生活は格段に便利になり豊かな生活を享受し、身の回りは多くの化学製品や化学物質で溢れています。これらの恩恵を受けつつも、しかし、負の遺産ともいうべき化学物質の危険性や取扱注意喚起が高まっています。ここでは身の回りの化学のうち、最近発生した食中毒事件や、新型コロナの感染拡大で話題になった「次亜塩素酸」の事例を紹介し、少しでも化学と身の回りの生活の密接な関係性への気づきにつながればと思います。

やかんの水あか中毒、原因は銅

2020年7月6日、大分県臼杵市の高齢者施設で、湯冷ましの水が入っているやかんにスポーツドリンクの粉を溶かして作った清涼飲料水を飲んだ入所者13人に、吐き気や嘔吐の症状が出たとのニュースが流れました。

大分県食品・生活衛生課によれば、このやかんの水あか中毒の直接の原因は、やかんの内部に付着していた水あかに、水道水に含まれる微量の銅が長期間に渡って蓄積し、その銅が酸性のスポーツ飲料と反応して溶け出した銅中毒とのこと。ちなみに、飲まれたスポーツドリンクを調べたところ、1リットルあたり200mgの銅が検出され、水道水の水質基準では銅は1mg以下となっているので、かなり高濃度であったことは間違いありません。ただし、銅以外の原因物質はなかったのかは不明で、この辺りは詳細な分析が必要な気がします。

この事故のそもそもの原因は、毎日同じやかんで10年以上もの長期に渡ってお湯を沸かしたこと、そしてスポーツドリンクをそのやかんで作ってしまったことの二つの操作による化学反応が偶然にも重なったことにあります。この時どのような化学反応が起こっているのかに関しては、ほとんど知られていません。

水道水に含まれる代表的なミネラルはカルシウムで炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)として水に溶けています。水道水を温めると、炭酸水素カルシウムから二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)が空気中に放出され、炭酸カルシウム(CaCO3)すなわち軽石となります。これが水あかの正体です。

ですから、同じやかんや電気式ポットを使って長期間お湯を沸かしますと底に水あかが溜まり、この水あかはスポーツドリンクなどの酸性物質と反応すると溶解します。したがってその水あかに付着していた銅も一緒に溶けだしたという訳です。

水あかが溜まるのは防ぎようがありません。今回の水あか中毒事故はかなり稀なケースと言えますが、問題なのは、水あかを溶かしてしまったこと、そして飲んでしまったことです。化学的知識があれば(そうは言っても難しいことですが)、この事故は防げたかもしれません。

なお、この水あか中毒事故で起こっている化学反応は、鍾乳洞や鍾乳石が生成される反応と全く同じで反応です。また、硬水を軟水にするには、水を熱することにより達成できるのも同じ反応です。このように、身の回りの現象は化学的につながっていることが分かります。

新型コロナで注目された「次亜塩素酸水」とは何だったのか

新型コロナウイルスの消毒液として、にわかに脚光を浴びた次亜塩素酸水。新聞、テレビ、インターネット上では、次亜塩素酸水を販売している会社、その評価をしている独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)、その使用等の通達を出す経済産業省・厚生労働省、それをすでに使っている・使っていない一般市民、そして医師などの間で、効く? 効かないの? の激しいバトルが繰り広げられました。

2020年6月11日には、販売会社が反論の記者会見をするに至りましたが、6月26日に「次亜塩素酸水の使い方・販売方法等について(製造・販売事業者の皆さまへ)」との通達文書が経済産業省・厚生労働省・消費者庁から発せられ、これを境にこの熱い論争は終焉したかのようで、その後、報道はほとんどなくなりました。いったいこの騒ぎは何だったのか、何があったのかはいまだに理解できません。

次亜塩素酸(HClO)、その水溶液・次亜塩素酸水、そしてよく似ている次亜塩素酸ナトリウム(NaClO、カビキラーやキッチンハイターの主成分)は化学物質で、それぞれ化学的性質を有しています。一般市民にとって、この詳細を理解することは困難にせよ、ある程度の知識を持つことは大切です。

次亜塩素酸は不安定で、塩化水素(HCl)と原子状酸素(O)に分解するため、この活性酸素が消毒・殺菌作用を有すると言われています。この水溶液である次亜塩素酸水は結構高い値段で市販されていましたし、まだ市販されているかもしれませんが、これが消毒・殺菌に効くとのふれこみを信じていいのかは分かりません。その理由は、上述のとおり次亜塩素酸がすでに分解・失活している可能性があるからです。スーパーの出入り口にもあれだけ置かれていた次亜塩素酸水、自治体や学校でも使われていましたが、今はほとんど見かけなくなりました。消費者はしかるべき化学的知識を持つことが必要です。

次亜塩素酸水の作り方には、大きく分けて2種類あります。電気分解法(ここでは説明を省略)と混合法です。混合法とは、次亜塩素酸ナトリウムに塩酸や炭酸を作用させる中和法のことで、ネット上にはその作り方までが掲載されていますが、極めて危険が伴いますから、絶対にやってはいけません。次亜塩素酸ナトリウムは、強酸性条件下では塩素ガスを発生させます。したがって溶液のpHを誤ると極めて危険です。また、次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性なので、手につけると皮膚を侵し、目に入れば失明の危険もあります。

古い話ですが、1987年と1989年に、カビキラーを使ってトイレやふろ場を清掃中の婦人が死亡する事故が起こりました。理由は、上述のとおり、カビキラー(アルカリ性)と酸性洗剤を同時に使用したことによる塩素ガス中毒だったのです。化学反応を理解すれば当たり前なのですが、一般的にはなかなか分からないこと。この事故後、「まぜるな危険」の赤文字が挿入されたのです。

上述の二つの事例は、身の回りの生活と化学が密接に関係していることを示しています。冒頭にも述べたとおり、我々は、多くの化学製品や化学物質に囲まれて生活をしていますので、少しでも化学的視点から身の回りの生活を見ていただければと思います。現在、プラスチックごみ、化学汚染物質、地球温暖化をはじめとする多くの環境問題がこれだけ叫ばれていますが、そのすべてが化学の問題であると言っても過言ではないのです。

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ワクチン入手で経済回復を急ぐ日本と、感染対策で時間を稼ぐ香港 https://seikeidenron.jp/articles/14642 https://seikeidenron.jp/articles/14642#respond Mon, 19 Oct 2020 14:27:45 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14642 世界中にまん延した新型コロナウイルスは本格的な冬を前に欧米で再び感染拡大、行動制限をかける地域も出ている。近い将来の終息は見込めず、ワクチン完成が唯一の拠...

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世界中にまん延した新型コロナウイルスは本格的な冬を前に欧米で再び感染拡大、行動制限をかける地域も出ている。近い将来の終息は見込めず、ワクチン完成が唯一の拠り所という状況だ。ワクチンの開発競争は世界中で活発化しており、実用化はアメリカの最も早い開発プロジェクトで年内にいけるかどうかというところ。

2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)を経験した香港は、その経験を生かして新型コロナ対策でも感染を抑え込んでいるが、実はワクチンに関しては他国と差はない。SARSの原因となるSARSコロナウイルスは約半年で姿を消し、世界中に感染が広がらなかったためSARS用のワクチンが完成することはなかったのだ。香港は一体どのようなワクチン政策をとっているのか?

ワクチン確保は日本の経済力を発揮

日本政府は9月30日、国内外で開発が進んでいる新型コロナウイルスのワクチンの接種について全国民を無料とすることを明らかにした。そのために2020年度の補正予算で6700億円超の予備費を充てる方針だ。

ワクチンは資金力が豊富なメガファーマ、メガファーマには入らないが技術力が高い製薬会社、バイオテクノロジー企業、大学などがしのぎを削る。日本では塩野義製薬や第一三共、大阪大学発のバイオ企業アンジェスなどが開発に着手。世界を見れば、メガファーマで世界第2位の売上を誇る米ファイザー、イギリス第2の製薬会社アストラゼネカなどが先行している。

日本政府は7月31日にファイザーと2021年6月までに6000万人分のワクチン供給で基本合意し、8月7日にアストラゼネカと2021年初頭より1億2000万回のワクチン供給の基本合意書を締結した。

また、日本は世界保健機関(WHO)が主導する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを共同購入して分配する枠組みの「COVAX」にも参加する。156の国・地域が参加し、世界人口の64%をカバーするものだが、アメリカ、ロシアは参加を表明していない。2021年末までに20億回分の確保を目指すとしている。

これらの一連の動きは世界第3位のGDP(国内総生産)を誇る日本の経済力を表すものとも言えるが、世界を相手にマスクの調達で苦戦したことがいい教訓になった可能性がある。

日本に生まれて運が良かったと親に感謝するしかないが、接種する順位はまだ確定していない。2020年9月25日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策分科会には、ワクチン接種についての中間とりまとめ案が出されている。それによると優先順位は、「新型コロナウイルスに携わる医療従事者(救急隊員、保険師などを含む)」、「高齢者及び基礎疾患を有する者」としている。高齢者及び基礎疾患者が集団で居住している施設にいる従事者についても考慮するほか、妊婦は国内外の科学的知見などを踏まえて検討するとしている。

ワクチン開発で遅れる香港は、感染拡大予防に注力

SARSの経験を生かして対策をとっている香港は、第1波、2波を経て感染拡大が抑えられていることから、ワクチンの確保に関して香港人は関心が薄い印象というのが実情だ。

実際、10月17日現在の感染者数 は5242人、死亡は105人とSARSの経験を生かして感染拡大を最小限にとどめている。それは、一時期は最も厳しい措置としては、公衆の場で集まるのは最大で2人まで、飲食は終日店内での飲食禁止(テイクアウトは認める)などで、ある程度、経済的犠牲を払ってでも感染拡大を抑えるという方針を取ったことが功を奏した面がある。

香港の人口は約750万人と市場規模としては小さいため大規模な製薬会社はないものの、SARS以降の感染症の知見と経験を生かして香港大学がワクチン開発を行っている。ただ、大学の財政力には限界があり、研究開発競争において先行しているとは言い難いのが実情だ。一方で、1年間、歳入がなくても翌年度の予算を編成することができるほどの財政余剰金を抱える香港は、PCR検査の充実を図り、できるだけ検査をしていくことで感染拡大を防ぐ方針を取っている(なお香港ではPCR検査とは言わず、ただ新型肺炎の検査と呼ぶ)。

香港政府は9月1日から14日間、全香港市民を対象に任意での無料検査を実施。これは中国政府や企業の力も借りて行ったものだが、一日の検査数は日本製の機械を導入するなどして一時期、最大で50万件という、日本では考えられないような検査態勢 を整えた(日本では一日最大7万件程度)。

ただ、2019年からの逃亡犯条例改正案や香港国家安全維持法の一件で、香港政府と市民の信頼関係が崩れており、検査をすればDNA情報が中国本土に送られるという懸念が高まった。その結果、検査は全人口の32%にあたる178万人しか受けなかった(32人が感染していることも判明)。68%分の検査分が余ったこともあり、9月26日から10月15日までは感染する確率が高い飲食業界で働いている人を対象にした検査を実施する。

香港のワクチンは2022年頭でようやく人口の7割をカバー

香港の財政基盤が良いといっても、それは香港内で回すときの話で、ワクチン確保という国際間での交渉と競争になると財政力があるとは言えず、日本のように製薬会社と個別契約はしていない。そのため、香港政府は9月4日にCOVAXの枠組みに参加することを表明した。

COVAXによると、どこの製薬会社のワクチンとなるのかは未定だが、まず人口の35%分の量を確保。2021年第2四半期に入手できるだろうとした。そして、2021年末から2022年頭に全人口の60~70%をカバーできるとしており、ワクチン接種に関しては明らかに日本より時間がかかる。

中国が独自に開発を進めているワクチンの提供を受ける可能性もある。ワクチンに関しては、世界的にも急いで開発したものは副作用の懸念から「打たない、打ちたくない」という声が上がっているが、中国製のワクチン提供が実現した場合は、接種をする人が少ない可能性は十分にある。

接種の優先順位については食物及衞生局の陳肇始局長は記者会見で「医療関係者、長期疾患を持つ人、60歳以上の老人、老人ホームの入居者などになると思う」とコメントしているが、この辺は疫学的見地からどの国・地域も大差はないだろう。料金はPCR検査が無料であることから、最低限の価格を設定するものとみられる。

こう見ると、日本は経済と感染拡大防止の両立を掲げており、経済側にウェイトを置いているが、香港はその逆だ。財政力でワクチンを確保し経済を動かす日本と、多少の経済を犠牲にしつつもPCR検査や水際対策を徹底的に行うことでワクチン確保のハンデを補おうという香港。国や地域、国民や市民にとってどちらがいいのかがわかるのは、もう少し先になりそうだ。

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実は無かったVstar JapanとWeiboの指定代理店契約 親会社株価高騰の真実は https://seikeidenron.jp/articles/14629 https://seikeidenron.jp/articles/14629#respond Thu, 15 Oct 2020 04:36:54 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14629 リリース翌日は10倍の取引が 東証マザーズ上場のアライドアーキテクツ(6081)の出来高が9月30日、120万株を超えた。終値は2円高だったが、場中の値上...

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リリース翌日は10倍の取引が

東証マザーズ上場のアライドアーキテクツ(6081)の出来高が9月30日、120万株を超えた。終値は2円高だったが、場中の値上がり率は一時10%に迫った。10月14日の出来高が10万株程度なので、10倍の取引があったことになる。

前日(9月29日)、同社の連結子会社であるVstar Japan(以下V社)が中国最大のSNS「Weibo(微博、ウェイボー)」を運営する「北京微梦创科网络技术(北京微夢創科網絡技術)」とWeibo広告の指定代理店契約を締結した、と発表したことから株式市場がにぎわったと推察される。

これが事実なら何の問題もないのだが、Weibo側に確認したところ、そのような事実は無いとの回答だった。また、今後、締結の予定も無いとの情報も得た。

Vstar Japan側からは回答無し

不可解なことに(というか、事実でないから当然なのだが)V社のニュースリリース欄からは、この発表が今日時点で削除されている。本誌がV社に確認の電話をすると、「広報は不在でいつ戻るかは確認中、代わりに答えられる人もいない」と木で鼻をくくったような回答。まあ、予想はしていたのだが、今の時代携帯電話で連絡などすぐにつくだろうに。折り返しの電話も無い。

故意に虚偽の事実を発表したとしたら、明らかに金融商品取引法(金商法)違反の風説の流布に当たる。故意でなくとも、事実でないことならば、すぐにでも訂正して経緯を説明すべきだ。

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【10/16ニコ生配信】高齢ドライバー対策・GOTOドタバタ劇を考える https://seikeidenron.jp/articles/14618 https://seikeidenron.jp/articles/14618#respond Wed, 14 Oct 2020 06:07:21 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14618 相次ぐ高齢者ドライバーの事故。超高齢化が進む日本で今後ますます深刻化していきそうですが、いまだにコレといった解決策がない現状。年齢上限を設ける、“限定免許...

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相次ぐ高齢者ドライバーの事故。超高齢化が進む日本で今後ますます深刻化していきそうですが、いまだにコレといった解決策がない現状。年齢上限を設ける、“限定免許”制度にする、自動運転に期待……などさまざまな意見が挙がりますが、皆さんはどうすればいいと思いますか?

また、この問題に関連して池袋暴走事故についても議論の予定。無罪を主張し、日本中からバッシングされている89歳の被告。遺族の気持ちを考えるといたたまれませんが、法事国家の日本において推定無罪の現状、バッシングを煽るメディアの報道はいかがなものか、考えてみたいと思います。

さらに! 全然関係ないトピックスをもうひとつ。ルールの二転三転で大混乱のGO TOキャンペーン。イートを悪用する錬金術が横行したり、トラベルの割引上限が引き下がったり戻ったり、結局追加配分がされることになったり???

もうよくわからんドタバタ状態のGO TO、いったいなんでこんな状態になったのか……その問題点を斬りまくります。

ということで、10月16日(金)17:30からのニコ生・Youtube生放送では、高齢ドライバー問題やGO TO大混乱について、編集長・佐藤尊徳と編集部員すずきが熱く議論を交わしまくる予定。皆さまも是非、思ったこと・疑問・質問・意見をじゃんじゃんコメントしてくださいませ!

今回もニコ生とYoutube、同時に配信します(コメント見たい方はニコ生がおすすめ。会員登録やログイン不要で視聴できます)。

<ニコニコ生放送>

「佐藤尊徳の俺にも言わせろ!」チャンネル

2020年10月16日(金)17:30~

視聴はコチラから!

※会員登録・ログイン不要で視聴できます

 

<Youtubeライブ配信>

「政経電論」公式チャンネル

2020年10月16日(金)17:30~

視聴はコチラから!

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日本が香港人の移住先になりにくい理由 https://seikeidenron.jp/articles/14611 https://seikeidenron.jp/articles/14611#respond Mon, 12 Oct 2020 13:41:22 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14611 香港は今、中国とアメリカの間に挟まれて窮地に陥っている。香港国家安全維持法によって1国2制度は崩れ、民主化への道は閉ざされようとしている。また、中国に対抗...

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香港は今、中国とアメリカの間に挟まれて窮地に陥っている。香港国家安全維持法によって1国2制度は崩れ、民主化への道は閉ざされようとしている。また、中国に対抗するアメリカが香港に対する優遇措置を停止ことによって、経済的な特別扱いはされなくなり、香港に進出する企業のメリットはどんどんなくなっている。日本が彼らの受け入れ先になれないかと考えてもみるが、それは難しいかもしれない……。日本が香港人の移住先になりにくい理由とは。

旧宗主国イギリスに香港人を受け入れることはできるか

香港の旧宗主国イギリスのボリス・ジョンソン首相は7月1日、香港国家安全維持法が施行されたことを受けて、「イギリス海外市民旅券(BNOパスポート)」を持つ香港市民に対して、2021年1月からイギリスでの市民権取得 を促す方針を表明した。

BNOパスポートとは1997年の香港返還以前に生まれた香港市民を対象にした旅券で、イギリスにビザなしで最長6カ月間滞在でき、約35万人が保有している。

ジョンソン首相が表明した新しい方針では、イギリスに5年間住むことができ、5年間たてば永住権が与えられ、その1年後に市民権も得られる仕組みだ。扶養親族も対象となる予定で、300万人が対象になることから香港の人口の約4割が適用されることになる。

一見、イギリスから香港に対する、慈愛に満ちた破格の受け入れ態勢に見える。優秀な金融人材であれば、ロンドンのシティで働けるだろう。しかし、そうではない人はそうは甘くないのではないか。

まず、外国で働き口を見つけるのは容易ではない。もし香港で医師をしていたとしても、国が違えば資格も違うため香港人がイギリスの病院で働けるという保証もない。そうなると彼らは、ウエイター、建設作業員等の職業につく可能性が高まる(日本に住む外国人もこういった現場にたくさんいる)。そしてイギリスでは、出稼ぎの東欧の人たちがすでにそういった仕事に就いている。そこに割りこんでいかなければならない。

イギリス人はヨーロッパとのつながりをある意味絶ちたくてブレグジットを決断した。そんな彼らが文化的にも、距離的にも遠い香港の人たちを受け入れる心の準備ができているだろうか? 筆者は甚だ疑問だ。

現実的な移住先はシンガポール&台湾だが…

よく香港のライバルとして比較されるのがシンガポールだ。東南アジアの金融の中心、ハブ空港を持つなど都市機能が似ているからだ。そして英語が使え、中華系の人々が多く住む。

筆者の知り合いで日本人の妻を持つ日本在住香港人がキャリアアップでシンガポールに仕事を見つけ数カ月前に移住している。ライバルといっても香港とシンガポールの経済の結びつきは強いので、香港人にとってシンガポールへの移住は現実的な選択肢だといえる。

また、現時点での香港人にとってベストの選択が台湾だ。台湾の内政部移民署によると、2019年に台湾への居留許可を得た香港人 は前年比4割増の5800件。2020年はさらなる増加が見込まれている。

蔡英文政権も民主主義を重要視する観点から香港の人々を助けるという方針を打ち出しているほか、地理的に近い。香港‐台北間は約1時間半程度。羽田‐新千歳と変わらない。政治体制が民主主義で、どちらも繁体字と呼ばれる旧字を使う。香港人は普通話(北京語)を話すことができ、旧正月を祝うなど“中華”という文化を共有できる。

台湾は医者、弁護士などの高度人材であれば長期滞在を認める制度も整備されている。また、7月1日から台北市内に、台湾移住や修学などの支援、香港からの高度人材の受け入れや投資の窓口となる「台港服務交流弁公室」という事務所を設置し、香港受け入れの意思を示した。

ただし、台湾は地政学的には米中冷戦の総本山ともいえる場所。リアルな話をすれば、アメリカは香港に関しては経済的な制裁を加えるだろうが、軍事行動はありえない。しかし、台湾に関してはゼロとはいえない。香港人がどれだけ楽観しようが、未来は神のみぞ知る。

優秀で親日家の香港人は日本が求める人材ではないか

日系金融機関の香港支店で働いている日本人の知人は、「香港でビジネスを続けられることが一番です。シンガポールから香港の案件をこなすことはできますが、やりにくい。とはいえ、リスクヘッジとして一部の機能の移転を考えないといけないでしょう」と話す。

彼はニューヨークのウォール街、ロンドンのシティでも働いたことのある金融のプロ中のプロだ。その言葉は、今の香港が置かれた状況の厳しさを表している。働く場所に海外を選ぶ香港人は今後増えていくだろう。

そんななか、人口減に拍車のかかる日本は労働人口の獲得に課題を抱えており、根本的な解決策は今のところ見つかっていない。2019年4月の入管法改正で、製造業を中心とした14業種の単純労働に対して外国人労働者の受け入れ条件は緩和されたが、業種の限定は、単純に日本で働きたい優秀な外国人人材に広く門戸を開いているとは言い難い。

香港人はとても優秀だ。中国、韓国並みの超がつく受験競争社会を生き抜いてきており、各種世界大学ランキングを見ると香港大学は東大より上位に、香港中文大学は京大より上位に位置する。もちろん、英オクスフォード、英ケンブリッジ、米ハーバードといった世界の名門に入る人もたくさんいる。また、高学歴の上に広東語、北京語、英語と最低3つの言語を話せる(広東語と北京語はほぼ別言語と思っていい)人も少なくない。

そして香港人は年間200万人以上が日本に訪れる親日家だ。であるならば、日本は香港を脱出したいと考えている香港市民を積極的に受け入れるべきではないだろうか。日本の国際的競争力向上にもつながる話だ。

しかし、大きな問題が一つある。香港人が日本に引っ越そうと思っても言葉の壁にぶつかるのだ。

日本で働きたいと思っても雇い入れる環境がない

香港在住のフランス人アニメーターというのが知り合いにいる。彼は日本文化好きのフランス人の典型で、日本のアニメの影響を受け日本で働きたいと思ったのだが、日本語が話せない(勉強中ではある)。香港で働いているのは、「香港にはアニメの仕事があり、英語が通じるので……」と。

また、香港人男性と結婚した日本人女性の友人は、「夫婦で日本に行きたいと思うけど、夫の就職の問題がどうしても壁になる」とため息をつく。

楽天やファーストリテイリング、ホンダなど日本にも英語を公用語化する大手企業はあるが、まだ多くはない。中小企業でも英語が使えるところはあるだろうが、企業の規模によっては入国管理局が定める在留資格の審査が厳しいカテゴリーに区分されることが多く、就労ビザの申請にかかるコストも無視できない。

要は日本には、日本語が話せない高学歴の外国人人材の働き口が根本的に少なく、情熱のある人でも企業側が雇い入れる環境にないということだ。

「金融機関は米中どちらを選ぶ? 究極の選択で揺れる香港」 でも書いたが、忘れてならないのは世界の基軸通貨は米ドルであるということだ。前述の日本人は「何だかんだで、金融の世界は英語なんですよ」と話す。この言葉が示すところは大きい。

そんな日本の状況を筆者は悲しく思う。サラリーも長年のデフレですっかり外国に抜かれてしまい、安月給の国なってしまった。加えて「横社会」の外国人には慣れない「縦社会」という社会構造もある。

テレワークの浸透で、仕事を労働時間ではなく、欧米のように成果で評価されるようになり、ワークライフバランスが向上すれば、香港上海匯豊銀行(HSBC)が発表した、外国の駐在員が働きたいランキングのワースト2位(2019年)からも脱出できると思うのだが……。

外国人がなじめる社会環境を

そもそも移民にはたくさんのお金がいる。生活水準が高い香港の中流家庭でも大変だろう。

本来、移民というのはより良い生活を求めてするもので、明るい未来が待っていると希望を持てるもののはずだ。しかし、今回の香港の問題はやむを得ず移民するという後ろ向きな考えによるものだ。そんな心構えで海外の水になじめるのだろうか? 香港人にとってはまずはそこが大きな壁だろう。

一方、日本は出生率が上がらず人口が減少している。これは働き手の減少だけではなく市場の減少という問題も抱えている。優秀な人材を受け入れるだけでも、少しは右肩下がりを緩やかにできるはずだ。

日本側にも香港側にも課題はあるが、まずは「外国人が来ると犯罪が増える」というステレオタイプがはびこる内向きな日本社会に対して、親日の香港人がなじめるような環境にする努力が必要だろう。

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菅内閣の目玉政策、「デジタル庁」新設で暮らしは変わるか https://seikeidenron.jp/articles/14593 https://seikeidenron.jp/articles/14593#respond Fri, 09 Oct 2020 00:00:37 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14593 9月に就任した菅義偉首相が打ち出した目玉政策の一つが「デジタル庁」だ。行政のデジタル化をけん引する組織として、2021年中に発足させる方針を明言した。コロ...

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9月に就任した菅義偉首相が打ち出した目玉政策の一つが「デジタル庁」だ。行政のデジタル化をけん引する組織として、2021年中に発足させる方針を明言した。コロナ禍で行政分野でのIT化の遅れが浮き彫りとなった日本。デジタル庁ができれば私たちの暮らしはどう変わるのだろうか。

菅政権の目玉施策「デジタル庁」の創設へ

「新しい成長戦略の柱として、我が国の経済活動を大転換する改革だ」。9月30日、デジタル庁創設に向けた「法案準備室」の立ち上げに際し、菅義偉首相は職員にこう訓示した。

デジタル庁創設の司令塔となるのは平井卓也デジタル改革担当相。大手広告代理店への勤務経験があり、自民党内ではITやデジタルへの造詣が深い議員として知られる。選挙活動でのインターネット利用の解禁でも党内で主導的な役割を果たした。2018年10月から約1年間は安倍内閣の内閣府特命担当大臣としてIT政策も担当した経験もある。

IT関連といえばサイバーセキュリティ担当にも関わらず「パソコンを自分で使ったことがない」などと発言し、世間の失笑を買った閣僚もいたが、平井氏にはその仕事ぶりに期待が集まる。平井氏は就任会見で「デジタル庁の設置法などを一気にやらなければならない。時間はタイトだが、スピード感をもって臨みたい」と意欲を示した。

準備室の職員は経済産業省、総務省、厚生労働省の職員ら約50人に加え、民間人を10人ほど追加する方針。準備室では年内に基本方針をまとめ、2021年1月に召集する通常国会に関連法案を提出する。より強い権限を持たせるために他省庁と横並びにするのではなく、首相の直轄組織とする案も検討するという。

デジタル庁構想の背景にあるのは新型コロナウイルスの感染拡大を機に、行政分野でのIT化の遅れが次々と明らかになったことだ。各国政府が収入減で苦しむ国民向けに早々と現金給付を進めるなか、日本ではマイナンバーカードの普及が遅れていることや、行政手続きのIT化が進んでいないことから給付の実現に多大なる時間とコストがかかった。

政府が経済対策の一環として全国民に配布した一人一律10万円の特別定額給付金の支給を決定したのは4月だが、自治体が振込口座を確認する作業などに手間取り、8月になっても届かないという声が全国で相次いだ。

平井氏は支給の事務作業に約1500億円を要したとして「デジタルの世界で考えるとありえないコスト」と指摘。菅首相からデジタルを前提として法律や規制など、あらゆる面での改革を行うよう指示されたことを明かしている。

省庁間の縦割り排除も大きな課題だ。中央省庁では省庁間ごとにシステムの調達をしており、データのやりとりがうまくいかないという現実がある。国の出先機関や地方自治体、各行政機関との間ではなおさらだ。デジタル庁が各省庁のシステムの一括調達を進めることができれば、データ様式を統一していくことが可能。中央省庁だけでなく、出先機関や地方自治体、各行政機関とのデータのやりとりをスムーズにし、行政の手続きを迅速化することが可能となる。

デジタル化による具体的なメリットは?

例えば会社を設立し、税金を納めようとすると国と都道府県、市町村にそれぞれ設立届けなどを出さなければならない。内容はほとんど同じだが、様式が微妙に異なる。しかも現状は紙の提出が基本で、いちいち書いて提出するのは非常に面倒で生産性が低い。

しかし、各省庁や自治体のデータ連携が進めばオンライン上で一括申請すれば国にも都道府県にも同じ情報が瞬時に届くことになる。紙でなく、データで受け取る方が行政側も処理が楽だし、わざわざ役所に出向く機会が減れば行政側の仕事もはかどるし、感染症が拡大するリスクも減る。引っ越しや社会保障の手続きなど、私たちの暮らしのあらゆる行政手続きにおいて同じことが言える。

行政手続きのオンライン化のカギを握るのがマイナンバーカードの普及だ。社会保障と税の手続きに活用する目的で、2016年に開始した12桁のマイナンバー。個人を認証し、あらゆる行政手続きなどに活用してもらうためにマイナンバーカードを無料で発行できるが、現時点での普及率は全国民の2割弱。政府は2022年までに大半の国民がカードを保有する目標を掲げるが、現時点では達成は見通せない。

政府はマイナンバーカードを発行し、キャッシュレス決済と紐づけた人に「マイナポイント」という特典を付与するキャンペーンで普及率の引き上げを図っているが、あらゆる年齢層の国民に浸透しているとはいえない。デジタル庁が音頭をとって行政のオンライン化を進め、マイナンバーカードを使えばどれだけ暮らしが便利になるか、具体的にメリットを示すことができればマイナンバーカードの普及にも寄与するだろう。

コロナ禍で働き方を見直す動きが一気に加速したが、行政分野のIT化の遅れは在宅ワークやリモートワークの普及の壁にもなっている。自宅にいながらパソコンやスマホを使ってあらゆる行政手続きを済ますことができ、民間の仕事も行政の仕事も生産性が上がる。そんな大改革につながるか、またもや省庁間の綱引きによって小粒な改革に終わるか。鍵を握るのは菅首相の本気度に他ならない。

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前代未聞の大統領選で“内戦状態”のアメリカ https://seikeidenron.jp/articles/14582 https://seikeidenron.jp/articles/14582#respond Thu, 08 Oct 2020 01:41:18 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14582 トランプ大統領は10月5日、新型コロナウイルスの治療のため滞在していた病院から退院した。「もう私は大丈夫だ、選挙戦に戻って勝利する」と元気な顔を見せ、ツイ...

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トランプ大統領は10月5日、新型コロナウイルスの治療のため滞在していた病院から退院した。「もう私は大丈夫だ、選挙戦に戻って勝利する」と元気な顔を見せ、ツイッター上では「コロナに恐れるな」とツイートするほどだ 。しかし、新型コロナウイルスへの感染が発覚して以降も車に乗って外に出るなど、他者への感染リスクを気にしない姿勢に国民の間では憤りの声が上がっている。トランプ大統領本人のほかにも、メラニア夫人やマクナニー報道官などホワイトハウス関係者の感染が相次いでおり、米メディアのよると、先月下旬の保守派裁判官の最高裁判事への任命式で感染クラスターが発生したのではないかと報じられている。果たしてあと一ヶ月を切った本選の行方はどうなるのだろうか。

トランプ大統領と新型コロナウイルスの関係

今となっては、トランプ大統領と新型コロナウイルスの関係は非常に複雑だ。今年1月以降、中国・武漢を初めとして新型コロナウイルスが世界中に広がり、アメリカは感染者数と死亡者数でその最大被害国となっている。新型コロナウイルスはこれまでの米中対立にさらなる拍車を掛けているが、トランプ大統領は新型コロナウイルスを“中国ウイルス”と呼んで中国への非難を強化した。現在でも中国は発生源の特定などで国際社会が納得する行動を取っておらず、トランプ大統領が中国への不信感を積もらせるのは当然だが、その当時、新型コロナウイルスは大統領選挙で再選を狙うトランプ大統領にとって、支持を維持・拡大させる上で一つのチャンスだった。近年、米国内で高まる中国脅威論のなか、新型コロナウイルス問題を対中批判の材料に上手く使いたいという意図はトランプ大統領の頭の中にもあったことだろう。

しかし、マスク着用を軽視する姿勢などに批判の声が高まるなか、トランプ大統領自身が新型コロナウイルスに感染したことが判明し、トランプ大統領にとって、新型コロナウイルスは支持率上昇どころか支持率低下を招く厄介なものに変化している。正に、中国発祥とされる新型コロナウイルスは、中国を最も非難してきた相手の政治生命に終止符を打とうとしているのである。

大統領選の行方はどうなるか

さて、トランプ大統領の新型コロナ感染が判明し、一ヶ月を切った本選の行方はどうなるのだろうか。まず、トランプ大統領としては、「まさか自分が感染するとは!」と思っていたに違いない。十分な治療を受けたかも分からないなか職場復帰するということからは、かなりの焦りを感じていることだろう。だが、本選まで一ヶ月を切るなか、できることには限りがあるというのが大方の見方だ。ホワイトハウスにも近い米国人研究者に聞いても、今回の感染判明によって、トランプ大統領もこれまでの新型コロナを軽視する発言や行動はできなくなり、仮にコロナ軽視を続ければさらなる支持率低下を招くという。

また、トランプ大統領支持者の中には白人至上主義を掲げるグループや個人も多くいるが、そういった白人至上主義者たちはトランプ大統領を同主義のシンボルと位置づけており、新型コロナに感染したからといって支持を止めるわけではない。それどころか、トランプ大統領の劣勢が今後さらに明らかになると、テロや暴力など過激な活動をエスカレートさせる恐れがある。

一方、トランプ大統領のコロナ感染によって、バイデン候補はさらに有利になった。最新の支持率では、バイデン候補が53となっているが、ここまで支持率で開きが出るのは初めてだ。第1討論会でのトランプ大統領の態度が酷かったことが影響したのだろうが、今回のコロナ感染でさらに開きが出る可能性もある。第2回討論会が15日、第3回討論会が22日にそれぞれ実施されるが、そもそもトランプ大統領が参加するのか分からないが、バイデン候補の対応はもっと“余裕じみた”ものになってくるだろう。

前代未聞の大統領選挙

現状はバイデン候補有利の展開で進んでいるが、ここまで候補者同士の話が噛み合ない大統領選挙を見るのは初めてだ。これまでも討論会で荒れることはあったが、理念やイデオロギーがなく、政策論争がここまで目立たない討論会はなかった。現在の大統領選挙から見えるのは、“米国の分断”である。トランプ大統領支持者の大多数は白人で、そういった白人は黒人やイスラム教徒など移民・難民を排除する姿勢を露骨に示し、外に出てはトランプ大統領を支持する集会を行っている。また、黒人男性の殺害などをめぐっては多文化主義を訴える非白人層を中心とするグループの抗議活動も活発になり、正に今のアメリカは“一種の内戦”状態にあるといえる。

また、今回の大統領選挙からは、世界のリーダーとしてのアメリカの姿はあまり見えてこない。これまでの選挙であると、“国際社会をリードするアメリカ”の姿が滲み出ていたが、特に、今のトランプ大統領からは“一国のリーダー”以前に、“トランプ支持者たちの中でのリーダー”しか見えてこない。まさに、前代未聞の大統領選挙だ。

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入国制限緩和がもたらした? レオパレスの危機脱出 https://seikeidenron.jp/articles/14607 https://seikeidenron.jp/articles/14607#respond Fri, 02 Oct 2020 13:05:31 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=14607 政府は10月1日から、全世界を対象に入国制限措置を緩和した。まず、3カ月以上にわたって日本に滞在する在留外国人の新規入国を認め、順次、対象者を拡大していく...

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政府は10月1日から、全世界を対象に入国制限措置を緩和した。まず、3カ月以上にわたって日本に滞在する在留外国人の新規入国を認め、順次、対象者を拡大していく。さっそく、1日からビジネス関係者などとともに外国人留学生の再入国が始まった。

人手不足にあえぐ企業のために

入国制限措置の緩和に際して、菅義偉首相は9月25日の新型コロナ感染対策本部で、「観光客以外については日本人、外国人を問わず、検査をしっかり行った上で、できる限り往来を再開していく方針で臨む」と示唆していた。これまで159カ国・地域からの外国人の入国を原則禁じていたが、感染状況が落ち着いているベトナムやニュージーランドなど16カ国・地域とビジネスに限定した往来再開について交渉を進めてきた経緯がある。

早期に決断した背景にあるのは、恒常的な人手不足にあえぐ企業の要望だ。日本で働く外国人の数は、コロナ禍が本格化する直前の2019年10月時点で約166万人に達していた。安倍政権下で約100万人増加した計算になる。主導したのは、官房長官であった菅氏にほかならない。

実際、建設業や食品製造業、農業など外国人労働者に頼っている業種は多い。念頭にあるのは「技能実習生」の受け入れ再開だ。2019年の出入国管理統計によれば、同年中の新規入国者のうち技能実習生は約18万人で最多を占めていた。新型コロナウイルス感染の拡大で、東南アジアからの技能実習生の受け入れが白紙となった中小・中堅企業、農業事業者は少なくない。

「自らも秋田県のイチゴ農家出身の菅首相だけに、これら企業の苦悩を肌で感じられたのだろう」(永田町関係者)という声が聞かれる。入国者が増加すれば、それだけ新型コロナウイルス感染リスクも拡大するが、検査能力を拡充するほか、宿泊施設などで14日間の待機を求めるなど水際対策を徹底することで解禁に踏み切った。

入国制限の緩和の思わぬ副産物

こうした入国制限の緩和が、市場に思わぬ好結果をもたらしたことも見逃せない。施工不良問題から債務超過に陥ったサブリース大手のレオパレス21が、米投資ファンドの支援を受け、債務超過を解消するメドがたったことだ。

レオパレスは施行不良問題にコロナ禍が重なり6月末で118億円の債務超過に陥った。現預金は6月末で420億円あり、すぐさま破綻する可能性は少なかったが、株価は急落し、信用リスクが顕在化していた。債務超過が長引けば、いずれ法的整理の可能性も棄てきれなかった。

一方、レオパレスは、債務超過を解消するため、増資支援をめぐり複数のファンドと交渉を進めてきたが、「手を挙げたファンドの多くは途中でドロップ(支援を降りる)した」(市場関係者)という。最後に残ったのはソフトバンクグループが筆頭株主である米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」だった。フォートレスは出資と融資を合わせ572億円の支援を行うことを決め、レオパレスは債務超過を解消できるメドがたった。

このフォートレスの背中を押したのは、実は今回の入国制限の緩和にほかならない。金融関係者によると、「レオパレスは改修工事の遅延が問題視されているが、改修を終えた物件の入居率は97~98%と非常に高い。価格が手頃なことから転居する顧客が少ないわけだが、それに加え、外国人就労者の受け入れを業とする法人との契約が高いシェアを占めていた」というのだ。

レオパレスの入居率はコロナ禍により5月以降、損益分岐点の80%を割り込む状態が続いていたが、入国制限の緩和に伴い、外人就労者を受け入れる法人との契約が復活し、入居率の大幅な改善が見込まれる。入国制限緩和の思わぬ副産物といっていい。

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