政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は若い世代に向けて政治・経済の大切さを伝え、社会で役立つ情報を発信する佐藤尊徳(さとう そんとく)の個人メディア。歴代の政財界の知見と若い世代の感覚をぶつけて化学反応を起こし、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Mon, 22 Apr 2019 11:33:26 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 F-35A墜落事故が純国産戦闘機F-3開発の“対米カード”に https://seikeidenron.jp/articles/10601 https://seikeidenron.jp/articles/10601#respond Mon, 22 Apr 2019 10:00:49 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10601 訓練中に墜落したF-35A機の捜索が続くなか、原因が明らかにならないことでF-35Aというアメリカ製の戦闘機自体に疑問が出てきている。日本は現在、老朽化し...

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訓練中に墜落したF-35A機の捜索が続くなか、原因が明らかにならないことでF-35Aというアメリカ製の戦闘機自体に疑問が出てきている。日本は現在、老朽化したF-2機の代わりに純国産機F-3の開発を目指しているが、日米共同での開発は、アメリカの言いなりになってしまったF-2の二の舞になってしまう可能性も高い。もしF-35Aの機体に問題があるとしたら、この交渉も絵が変わってくるのだが……。

アメリカはある程度の情報開示をせざるを得ない

2019年4月9日、航空自衛隊が配備を進める最新鋭ステルス戦闘機F-35A、1機が青森県八戸沖の太平洋に墜落。パイロットの消息は4月22日現在も不明だが、とにかく無事を祈りたい。

本機の墜落は世界初のケース。しかも事故現場は陸地から100㎞以上離れた太平洋の遥か沖合、かつ水深1500mの深海だけに機体の捜索・回収には困難が伴うだろう。

ただし、“最高軍事機密の塊”だけに日本はもちろん、開発を主導したアメリカからは焦りさえ感じる。とりわけアメリカ側の調査は異例なほど大掛かりで、三沢基地から米海軍第7艦隊所属のP-8Aポセイドン哨戒機、横須賀基地から「アーレイバーク」級ミサイル駆逐艦(イージス艦)「ステザム」を現場に急派、また、韓国の烏山(オサン)基地からU-2高高度偵察機も上空からの捜索任務に当てた。極めつきはB-52戦略爆撃機の投入で、機密奪取をうかがう中露の動きを牽制する意味合いがあるのだろう。

捜索任務から三沢基地に帰還した米海軍のP-8ポセイドン哨戒機(米第7艦隊)

墜落原因については機体が未回収のため不明だが、仮に本機の構造的・システム的な不都合が原因だとしても、それ自体が“国家安全保障上の機密”であるため、F-35Aのブラックボックスを管理するアメリカが真相を公にする可能性は低いだろう。しかし、日本を始めF-35シリーズの導入を決めた同盟国の政府には、守秘義務を条件に、ある程度の情報開示をせざるを得ないはずだ。

ちなみにF-35シリーズ(標準型の「A」、短距離離陸/垂直着陸=STOVLの「B」、空母艦上機の「C」の3タイプ)の開発には程度差はあるものの採用国の大半が経費を負担、多国籍による共同開発(国際協同)の機体であるため、いくらアメリカ主導といえども“完全黙秘”を貫くのは難しい。

これを強行すればアメリカに対する同盟国の信頼は地に堕ち、さらに「危ない戦闘機に自国の大事なパイロットを乗せられない」との理由で導入をキャンセルする国が続出しかねない。

F-3の独自開発は時間的にも予算的に無理がある

さて、こうしたなか、「今回の事故で日本が研究中の国産戦闘機F-3(将来戦闘機)をめぐるアメリカとの駆け引きで、日本が優位に立てるかもしれない」と、一部でささやかれ始めている。F-3とは、空自が運用する“準”国産戦闘機F-2の後釜となる“純”国産のステルス戦闘機のこと。詳しくは以下の記事に説明しているので参照してほしい。

»次期戦闘機F-3の日米共同開発案に“F-2のデジャブ”との恨み節

F-2は老朽化のため2030年代に退役予定で、これとバトンタッチするかたちでF-3を配備、というのが防衛省や空自の構想だが、独自開発は時間的にも予算的にも無理がある、との声が多い。

戦闘機開発は「最低でも10年の歳月と数兆円の費用が必要」が世界の常識。もちろん戦闘機の“命”であるエンジンの国産については目鼻を付けているものの、開発期間もさることながら、F-2との交代分だけでは100機にも満たず、また戦闘機の輸出実績も無い日本が海外に売り込みをかけても、まじめに耳を傾ける国はまず現れないだろう(国連制裁を受けている国などは別だが)。

となれば、価格はF-35Aの2倍以上の300億円規模になること必至との推測もされている。そこで、「日本側の本音は“日米共同開発”に持ち込むことだが、F-2と同じ轍を踏むことだけは回避したい」と指摘する向きも。

アメリカの技術とノウハウは欲しいがF-2の二の舞は嫌

共同開発は日米同盟を考えれば無難な発想で、開発コストやリスクを分散でき、しかも戦闘機開発と量産化で世界最高のノウハウを持つ天下のアメリカを味方につければ鬼に金棒、2030年代の完成も夢ではない。仮にアメリカもF-3の大量採用に傾けば量産効果で価格もぐんと下がる。事実、「F-3はアメリカの別の戦闘機F-22ラプターのステルス性能と、F-35のネットワーク性能(クラウド・シューティング)の融合を目指すようだ」との“アドバルーン”すら上がり始めている。

クラウド・シューティング

戦闘機は通常複数機編隊で作戦を担うが、個々の機体がセキュアな回線を通じて、燃料や爆弾、ミサイルの状況、位置、敵機の発見といった情報を共有し合い、編隊がまるで1つの機体のように有機的に作戦を展開すること。例えばA機が敵機を発見、有利な位置にあるB機の対空ミサイルを使って隊長のC機が撃墜……といった芸当が可能。将来的には有人機が母体となり複数のドローン戦闘機を従えて出撃、あるいはドローン戦闘機だけで編隊を組み、遠方の基地から指令、という戦い方への発展を見込んだ技術。

だが日本側としては先のF-2開発で苦杯をなめただけに、それを繰り返すことには神経を尖らせる。“苦杯”とはアメリカの横槍だ。

F-2開発は1980年代に本格化し、「次期支援戦闘機(FSX)」として独自開発を目指した。だが途中からアメリカの圧力が加わり、結局アメリカ製F-16戦闘機をベースにした日米共同開発の“国産機”となってしまったのである。アメリカが絶対的優位を誇る航空宇宙分野で日本の台頭など許さないこと、そして戦闘機を大量購入する日本市場の喪失を恐れたことが主な理由のようだ。

F-35Aの事故の原因次第では日本が有利に

つまり日本側は「アメリカの横槍」の再来を警戒しているわけで、さらに「アメリカ・ファースト」を叫ぶ米トランプ大統領の存在を考えれば、“デジャブ”となる可能性は極めて高い。となればF-2のときと同様、共同開発とはいうものの実際はアメリカの言いなりで「開発は俺に任せろ。日本は黙って必要な技術とカネさえ出せばいい」という格好となりかねない。コア技術は当然ブラックボックス化され、日本側は触れることすら難しいはず。

だが、今回のF-35Aの事故が“機体由来”だとすれば、日米共同開発の交渉の場で日本側はがぜん優位に立てるだろう。

例えば「欠陥機のF-35を147機も買わされたとなれば、日本国民の怒りは収まらず、世界最大の親米国・日本が嫌米に傾きかねず、アメリカの世界戦略上極めて由々しき事態ではないか」といった牽制や、「日本の産業界からも『不利な条件でF-3を共同開発するくらいなら、多少高くなっても国益を考えて独自開発を目指すべきだ』との圧力が政府にかかるのは必至」といった論法をアメリカ側に畳み掛け、交渉を有利に持ち込むシナリオだ。

さらに、イギリスやフランスなども共同開発に触手を伸ばしている模様で、これも日本側にとっては有効な交渉カードとなるはず。

後は肝心の“タフネゴシエーター”が果たして日本側にいるかどうかだが、案外これが最大の難関かも知れない。

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[衆院2補選]自民与党、無党派層の不人気鮮明に 参院選で野党はまとまれるか https://seikeidenron.jp/articles/10599 https://seikeidenron.jp/articles/10599#respond Mon, 22 Apr 2019 03:00:17 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10599 衆院大阪12区と沖縄3区の補欠選挙が4月21日に投開票され、いずれも与党候補が敗れた。2012年の第2次安倍政権発足以来、与党が国政の補欠選挙で敗れるのは...

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衆院大阪12区と沖縄3区の補欠選挙が4月21日に投開票され、いずれも与党候補が敗れた。2012年の第2次安倍政権発足以来、与党が国政の補欠選挙で敗れるのは、不戦敗だった2016年の京都3区を除けば初めて。大阪は「都構想」、沖縄は「米軍基地問題」という特殊事情を抱える地域だが、ともに与党は無党派層からの支持が極端に少なく、夏の参院選への課題を残す結果となった。

大阪は地盤弱体化、沖縄3度目の「移設反対」

自民党の北川知克元環境副大臣の死去に伴う大阪12区補選には、自民党が北川氏の甥である北川晋平氏(32)を擁立。日本維新の会の新人藤田文武氏(38)、旧民主党政権で総務相を務めた無所属元職の樽床伸二氏(59)、共産党元職で今回は無所属で立候補し、立憲民主党や国民民主党の支援を受ける宮本岳志氏との激戦となった。

結果は日本維新の会の藤田氏が初当選。自民の北川氏は約1万3000票の大差で敗れた。知名度が高く、公明党支持層の一部から支持された樽床氏や、“野党共闘候補”となった宮本氏も及ばなかった。投票率は47%。

維新候補の勝利は4月7日の“ダブル選挙”の勢いと見ることもできるが、与党の勢いの陰りと見る向きもある。共同通信の出口調査によると、自民党支持層のうち、自民党公認の北川氏に投票したのは53.5%。残りのうち23.1%が藤田氏、21.3%が樽床氏に投票し、公明党支持層の一部も樽床氏に流れたという。これまで盤石だった与党支持層をしっかり固めることができなかったことがわかる。

玉城デニー氏の沖縄県知事転出に伴う沖縄3区補選は、自民党が沖縄選出の元参院議員、島尻安伊子氏(54)を擁立。普天間基地の辺野古移設反対派の政党や団体で組織する「オール沖縄」が支援する無所属新人の屋良朝博氏(56)との一騎打ちとなり、屋良氏が約1万8000票差で制した。投票率は43.99%。

沖縄では辺野古移設への反対運動が広がっており、昨年9月の県知事選、今年2月の県民投票に続いて3回連続で「移設反対」の民意を表した格好。安倍政権は引き続き移設工事を進める構えだが、沖縄県は今回の選挙結果を踏まえて改めて計画を見直すよう政府に求めるとみられる。両者の溝が一層、深まりそうだ。

与野党ともに結束が乱れている

今回の補選のポイントをまとめると3つに集約できる。「与党に対する無党派層の支持の少なさ」と「与党の結束の乱れ」、そして「野党の結束の乱れ」だ。

共同通信の出口調査によると「支持する政党はない」と答えた無党派層のうち、自民党候補に投票したのは大阪12区で13.6%、沖縄3区では23.8%にとどまった。与党からは「(敗因には)それぞれの地域事情があった」(公明党の斉藤鉄夫幹事長)との声が聞かれるが、それにしても13.6%、23.8%というのは極端に低い。地域事情とは別に、塚田一郎前国土交通副大臣や桜田義孝前五輪担当相の問題発言による辞任など“長期政権のおごり”とも取れるような政権の不祥事が相次いでいることが影響している可能性がある。

2補選では与党の結束の乱れも目立った。大阪12区で公明党は自民党候補を推薦したが、朝日新聞の出口調査では公明党支持層のうち、自民党候補に投票したのは65%。25%が樽床氏、8%が藤田氏に流れた。樽床氏が民主党時代に公明党の地方議員と良好な関係を築いていたり、ダブル選を制した大阪維新の会が、公明党が候補を出している衆院の小選挙区に対抗馬を擁立する可能性を示唆したりしていることなどから、支持層をまとめきれなかった。

沖縄3区でも公明党支持層の2割強が野党系候補に流れた。国政では与党として普天間基地の辺野古移設を推進する立場だが、沖縄の地方組織は移設反対を掲げているためだ。今回は地方組織でも自民党候補を支援する立場を明確に示したが、組織を固めることができなかった。

とはいえ、統一地方選と同じく補選でも野党は存在感を示すことができなかった。大阪12区では共産党元職の宮本氏があえて無所属で立候補し、共産党のみならず立憲民主や国民民主、自由党、社民党などがこぞって支援したが、宮本氏の無党派層からの支持は9.0%にとどまった。“共産党色”を拭い去ることができなかったこと、そして大阪維新の発足以来、旧民主系の勢力は大阪でかなり存在感を低下させたことが影響している。

沖縄3区では野党系候補が勝利したものの、既成政党の勝利というよりは、玉城知事や辺野古移設に反対する市民団体の勝利と言った方が正しい。野党共闘が成果を挙げたとはとても言いがたい。

野党がバラバラなら与党優位は変わらない

結果的に、夏の参院選に向けて与野党ともに課題が明らかになった。与党は閣僚辞任などで有権者が抱いた“政権のおごり”のイメージを払しょくすること、そして自民・公明両党の協力関係を修復することが急務。一方の野党は単なる数の野合ではなく、政策の一致点を見出して与党と政策で対抗すること、そしてそれを踏まえて参院選の「一人区」をはじめとする選挙区調整を急ぐことだ。

一人区(いちにんく)

定数が「1」の選挙区のこと。激戦区になることが多い。2016年の参院選では、民進、共産、社民、生活(現自由)の野党4党は32ある「一人区」のすべての候補を一本化し、11選挙区で与党に勝っている。

衆院2補選と同時に行われた統一地方選後半戦では、首長選、地方議員選ともに自民、公明の与党は安定した勢力を確保した。衆院補選では敗れたとはいえ、国政選挙で集票マシーンとなる首長や議員を多く抱える与党は、地力は大きく上回る。与党の勢いに限りがあるとしても、今のまま野党が小粒でバラバラなら無党派層の受け皿が無く、投票率が下がって与党が優位となるだけだ。

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米LNG売却先探しに東芝メモリ上場延期…不幸重なる東芝・車谷CEOは“再建の神様”になれるのか https://seikeidenron.jp/articles/10584 https://seikeidenron.jp/articles/10584#respond Fri, 19 Apr 2019 04:00:01 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10584 米液化天然ガス事業「フリーポート」を中国民間ガス大手ENNへ売却する計画がとん挫し、新たな売却先を探すことになった東芝。再建に向けた中期経営計画「東芝Ne...

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米液化天然ガス事業「フリーポート」を中国民間ガス大手ENNへ売却する計画がとん挫し、新たな売却先を探すことになった東芝。再建に向けた中期経営計画「東芝Nextプラン」がスタートしたばかりだったこともあり、改めて東芝の不運を感じざるを得ない。ほかにも、東芝メモリの上場延期や新たな中核事業の育成など、課題は山積みだ。車谷暢昭CEOは“再建の神様”土光敏夫さんになれるのか。

米中経済摩擦の影響で許可が下りない

三井住友銀行の元副頭取だった車谷暢昭氏をCEOに迎え、再出発した東芝が窮地に陥っている。東芝は昨年11月に、2018年4~9月期の決算発表と合わせ、2023年までの5カ年の中期経営計画「東芝Nextプラン」を発表したが、この中で最大の懸念材料と見られていたアメリカの液化天然ガス (LNG)事業「フリーポート」を他社に売却することが決まったと打ち上げた。だが、実際に4月から中期経営計画がスタートした矢先にこの売却計画がとん挫したのだ。

LNG(液化天然ガス)

天然ガスを冷却し液化した液体。メタンやエタンといった天然ガスはマイナス162℃まで冷却すると液体になり、気体の状態に比べて体積が約600分の1になるため効率的な大量輸送が可能。ガスに戻す際には海水をかけて気体に戻す。天然ガスは世界的に埋蔵量が豊富で、石油や石炭などに比べて燃焼時に発生する二酸化炭素量が少ないことから供給量は上り続け、過去40年で最も拡大したエネルギー源といわれている。2015年頃から供給過剰が続いていたが、近年アジアからの需要が高まっているという。

イメージ

売却契約を結んでいたのは、中国の民間ガス大手の「ENNエコロジカル・ホールディングス」たが、4月10日夜にENN側から契約解除の申し入れがあった。ENNは4月29日に開く臨時株主総会で「フリーポート」の買収を正式に中止する予定だ。

背景にあるのは米中経済摩擦の影響だ。「状況が一変した」というのがENNの解約理由だ。だが、中国資本であるENNへの売却については以前から、アメリカの対米外国投資委員会(CFIUS)がノーを突き付けるのではないかと懸念されていたことは事実。実際、当初、売却手続きは3月末までに完了する予定だったが、2018年12月22日~2019年1月25日にかけて米政府機関が一時閉鎖したことで対米外国投資委員会の審査手続きは遅れていた。

また、母国の中国国家外貨管理局(SAFE)の認可も完了しておらず、ENNが先行きを不安視したことは確かだ。身も蓋もなく言えば、「本国の認可もアメリカの認可も望み薄なので止めた」というのがENNの本音だろう。

20年間で最大1兆円の損失リスクはそのまま

東芝にとって今回の売却とん挫の影響は深刻だ。当初の売却計画では、東芝は「フリーポート」に親会社保証(売却を担保するための信用を供与する)を入れる一方、購入するENNも信用補完として約5億ドルの銀行保証状を東芝に差し入れることになっていた。

「交渉過程で本命視されていた米ガス大手のテルリアンや石油メジャーへの売却ではこれだけの好条件は引き出せなかった」(東芝関係者)と胸を張ったほどだった。

東芝は一時金費用として当面損失が見込まれる約930億円をENNに支払うが、今後20年間で1兆円規模の損失リスクから解放されるメリットは計り知れなかった。落胆するのも無理はない。

東芝は今後ENNから正式な通知を受け取った上で、契約を解除する条件を満たしているか精査して対応するとしているが、損害賠償請求なども望み薄だろう。そもそも今回の売却は4月からの新中期経営計画スタートに合わせられるよう3月末までの売却を急いだ。しかも、欧米の石油メジャーなどから断られたあげく、LNGを爆買いする中国資本に落ち着いた経緯がある。契約の解除条件は甘かったとみられている。

フリーポートを売却できなかったことで、東芝は引き続き20年間で1兆円規模の損失リスクが残ることになる。市況の動向に左右されることから、実損がどれだけ出るのかは未知数だが、「アメリカのシェールガス開発が進んでおり、2020年まで供給が需要を上回る状態が続く」(石油アナリスト)と見られている。また、外資系証券会社の試算では、このまま事業を継続すれば「年間2億ドル(約222億円)前後の損失が生じる可能性がある」とされている。

東芝メモリの上場は年内に?

誤算はこればかりではない。半導体大手東芝メモリの上場延期だ。東芝は半導体事業を手掛ける東芝メモリを日米韓の企業連合に売却した。東芝の全体収益の9割、年5000億円近い営業利益を稼いでいたメモリ事業を失った穴は大きいが、売却後も4割の株式を保有しており、持ち分法適用会社となっているため、その業績は営業損益には反映されないものの最終損益には影響する。

東芝メモリの上場はキャピタルゲインを得られる可能性が高く、当初は9月にも上場させる意向で、3月中には計画を発表する予定だった。だが、半導体市況の下落から、企業連合間の調整が難航、9月上場は延期された。それでも年内には上場を実現させたい意向だが、半導体市況がいつ落ち着くのか予断を許さない。「東芝の経営はツキがない」(メガバンク幹部)と、同情する声も聞かれるほどだ。

車谷CEOの経営戦略、リストラが先行してはいずれ縮小均衡に

車谷CEOは東芝を立て直した土光敏夫さんを強く意識しているといわれるが、第2の土光さんになるのは簡単ではない。4月からスタートした「東芝Nextプラン」の資料冒頭には、ヘルメット姿で現場を回る車谷氏の写真とともに「現場従業員との対話で『東芝DNA』を再確認」とのキャプションが付されている。現場を重視する車谷氏だが、中計では1400人の希望退職を含め、今後5年間で7000人の人員を削減する。

一方、「東芝Nextプラン」では成長戦略として、あらゆるモノがネットにつながるIoTを中核に据え、車谷氏の肝いりプロジェクトとして取り組むが、この分野では日立製作所や独シーメンスなど競合がひしめく。競争に勝ち抜くのは容易なことではない。

リストラばかりが先行するようでは、いずれ縮小均衡に陥りかねない。また、LNGや半導体という価格が大きく変動する事業がポートフォリオにかなりのウェートで残ったままでは、市場に経営が振り回されかねず、不安定なままとなる。再度「フリーポート」の売却先を探すことが先決だろう。

東芝はENNへの売却が白紙に戻った4月17日に、LNG事業の売却先探しを再開すると発表。すでに新たな売却先候補が浮上しているというが、ことはそう簡単なものではなかろう。

「ENNの正式決定を待たずに、東芝側から売却の契約解除を通知したのは、市場の評価への懸念と同時に、この問題を早く決着させないとまずいという東芝の危機意識があってのことだろう。東芝経営陣の意地が感じられる」(メガバンク幹部)。紆余曲折が予想される。

ダメなときには不幸が重なる

LNGの価格が今後跳ね上がれば逆に利益になるだろうけど、今のままでは将来発生するであろう1兆円の損失を抱えることになった東芝。

2006年の米ウエスチングハウス(WH)の買収は、当時、西田厚聰社長が社運を懸けて買収した。PC部門出身の西田さんもPCでは稼げなくなって焦っていたのかも。高値だとは思うけど、原発建設で世界の主導権を握りたかったんだろう。その後起きた東日本大震災は東芝にとっても不幸な出来事。そこで出た損失を何とか回避しようと不正会計に手を染めてしまった。

悪循環だよね。西田さんと佐々木則夫さん両トップの不仲(どちらが先かはわからんが)も東芝の崩落に輪をかけた。ダメなときには不幸が重なる。

車谷さんも銀行出身だからね。日立の川村隆さんにはなれなかった。

かつてのJTもNTTドコモも失敗しているしM&Aは難しいが、M&Aが下手かどうかは歴史が示すもの。どんなに想定外なことが起こったとしても、経営者は結果がすべてだからな。東芝経営陣は経営者としては無能だったということだろう。

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尿酸値上昇の対策はプリン体を控えるだけでは不十分 日本初“高めの尿酸値を下げるサプリ”研究者が教える3つのポイント https://seikeidenron.jp/articles/10457 https://seikeidenron.jp/articles/10457#respond Mon, 15 Apr 2019 22:00:24 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10457 中年男性は尿酸値の上昇を避けるために「プリン体を摂取しない方がいい」などとは言うものの、なぜ、どう気をつけるかはいまいちわかっていない人も多いのではないだ...

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中年男性は尿酸値の上昇を避けるために「プリン体を摂取しない方がいい」などとは言うものの、なぜ、どう気をつけるかはいまいちわかっていない人も多いのではないだろうか。実は、尿酸値上昇の対策は尿酸の合成抑制と排泄促進にかかわる3つのポイントを押さえることが大事。日本で初めて、高めの尿酸値を下げる働きを持つサプリメント「尿酸サポート」を開発したファンケル サプリメント研究第二グループの櫻田剛史さんに、尿酸値上昇のメカニズムを聞いた。

“尿酸値=おじさんが気にすること”ではない!若い世代も要注意

健康診断で尿酸値が気になったことはないだろうか。日頃、不摂生の自覚がある人なら、健診結果で一番先に尿酸値をチェックして、「今回もセーフ! これで堂々とビールが飲める」と胸をなでおろした経験が一度くらいはあるのではないか。中には、医師から「尿酸値が高めですね。気をつけましょう」と指導された人もいるかもしれない。

尿酸の値は血液検査の「血清尿酸値」で知ることができる。これは血液中に溶けた尿酸の量を示すもので、医学的には値が7.0mg/dlを超えると「高尿酸血症」と診断される。ただし、7.0 mg/dlを超えたからといって、たちまち病気になるわけではない。

「高尿酸血症は中年男性がなるイメージが強いですが、実は、近年は20代30代の若い男性にも増えていて、決して他人事ではないんですよ」と、櫻田さんは警鐘を鳴らす。

高尿酸血症は年々増えており、発症頻度を検証した大規模調査の結果から1000万人を超えると推定。男性の比率が圧倒的に多く、年齢でいえば、30歳以降の男性の30%が高尿酸血症だとされる。

尿酸値が高くなる4大原因は、飲酒・食事・ストレス・遺伝

そもそも、なぜ尿酸値が高くなってしまうのか。そのメカニズムについて、櫻田さんに説明をしてもらった。

「まず、尿酸はヒトがプリン体を代謝した際に最終的に生成される代謝産物となります。尿酸というと悪者のイメージが強いかもしれませんが、生体内の抗酸化成分という一面を持っており、生体内で生じた酸化ストレスを緩和する作用を持ちます。

血液に含まれている低分子の抗酸化成分の中でも尿酸は高濃度で存在し、血液の持つ抗酸化能の30~65%が尿酸によるものだと推定されています。ヒトが尿中に一度排泄した尿酸のほとんどをもう一度血液中に再吸収することからも、生体内で不可欠な成分であることがわかります。このような性質を持つため、尿酸は常に体内にある一定量蓄えられており、合成と排出によって調節されているのです。

尿酸の原料となるプリン体は、核酸やエネルギー物質(ATP)を構成している成分です。プリン体は、食事からの摂取が2~3割、体内での合成が7~8割。つまり、プリン体を多く含む食事をしたり、激しい運動をしてエネルギー代謝が一時的に上がったりすると、体内のプリン体が増え、多くの尿酸が作られることになります」(櫻田さん、以下同)

ファンケル総合研究所  サプリメント研究第二グループ 櫻田剛史さん

尿酸の生成を抑えるためには、ビールや白子、レバーなどプリン体が多く含まれる食品を避けたりすることでも効果が得られるが、それだけで十分とはいえない。

「プリン体は、旨味の強い食品に多く含まれています。それはイノシン酸やグアニル酸といった旨味成分がプリン体の構造を持っているからです。また、肉や魚介類の摂取量が多い人ほど尿酸値が高い傾向があります。

また、ソフトドリンクなど甘いものなどにも要注意です。特に果糖は代謝の過程でATPを消費するため、尿酸の合成を増加させます。また、果糖の代謝産物である乳酸は尿酸の排泄低下に関与するため、合成促進、排泄抑制と2面的に良くありません。

お酒好きの方の中には、プリン体フリーのビールや、ウイスキー、焼酎などのプリン体の少ないお酒を選んで飲んでいる人もいると思いますが、それで安心とはいえません。なぜなら、アルコールを代謝するときも果糖と同様、多くのATPを消費し、尿酸合成を増加させるとともに、尿酸の排泄を滞らせる乳酸の濃度が増加するためです。従って、お酒の種類を問わず、アルコール摂取量が多いと尿酸値が上がってしまう可能性が高いのです」

グルメな方や“のんべえ”にとっては非常に残念なお報せだが、美食や飲酒そのものをほどほどにするのが尿酸値対策としては重要なようだ。

「飲酒やプリン体の多い食事以外に、ストレスも尿酸値を上げる要因になります。ストレスを受けると尿酸を産生する酵素の活性が高まり、尿酸が多く作られるようになることが報告されています。働き盛りの世代は、ストレス管理にも気をつけたいですね」

尿酸の合成と排出のバランスが崩れても尿酸値は上がる

もし体内で多くのプリン体が作られても、過剰に作られた分が尿や便から排泄されれば問題はない。しかし、食生活や飲酒、ストレス等によってプリン体が過剰に作られてしまうと、排泄が追いつかなくなり、体内に尿酸がたまりやすくなる。これも尿酸が上がってしまう要因のひとつだ。

「高尿酸血症のタイプを分けると、[1]体内で尿酸が多く作られてしまう合成過剰型、[2]尿酸の排出が追いつかなくなる排泄低下型、[3]それら2つが混在する混合型があります。日本人の高尿酸血症患者は排泄低下型が多いといわれています」

尿酸値対策として食事や飲酒に気をつけてはいても、排泄まで意識している人はそんなにはいないはずだ。

「尿酸値が高めの人は、“合成を抑える”と同時に“排泄を促す”という両輪での対策が重要です。それらをサポートするサプリメントがあれば世の中の役に立つと考えて、今回『尿酸サポート』の開発をしました」

「尿酸サポート」(ファンケル、機能性表示食品)

高めの尿酸値を下げる働きを持つサプリメント。2月18日よりファンケルの通販サイトでの先行販売を開始。4月18日からは、カタログ通販と直営店舗、一般流通でも販売がスタート。高めの尿酸値に対する機能を臨床試験で確認し、「機能性表示食品」となったサプリメントは、日本初。

「尿酸サポート」(ファンケル、機能性表示食品)

尿酸を下げる作用を持つ「キトサン」と「アンペロプシン」

櫻田さんによれば、尿酸値を下げる方法は3つある。

  1. プリン体の吸収を抑制
  2. 体内の尿酸合成を抑制
  3. 体外への尿酸排泄を促進

「尿酸サポート」は、これら3つをカバーするよう設計されている。

「[1]のプリン体の吸収抑制に対しては、カニやエビなどの殻を加工して得られる食物繊維『キトサン』に着目しました。キトサンは過去に尿酸値対策の『特定保健用食品』として検討されたことがあり、プリン体の吸収抑制に関するエビデンスが豊富にあります。プリン体は食品由来の核酸などに含まれていますが、キトサンを摂ると、キトサンが核酸を吸着し、腸で消化されにくくなり、そのまま便として排出されることが報告されています」

また、[2]の尿酸合成を抑制する成分として、櫻田さんが目をつけたのが、“藤茶(とうちゃ)”だ。

「尿酸値を下げる効果がありそうな食品や成分を文献等で調査しているなか、藤茶という植物に着目しました。藤茶は中国の山奥に自生するブドウ科の植物で、中国では昔から健康茶として飲用されており、その効能から『保健食品』として国に認可されています。

藤茶には『アンペロプシン』というフラボノイドの一種が非常に多く含まれており、抗酸化作用をはじめ多くの機能性が論文で報告されています。アンペロプシンの化学構造を見ると、尿酸合成酵素の働きを抑える成分と非常によく似ていることに気がつきました。そこで、アンペロプシンにも同様の作用が期待できるのでは?と検証することにしました」

櫻田さんは、藤茶に多く含まれているアンペロプシンの機能性について研究を行った。

「機能性を検証した結果、私の期待通り、アンペロプシンにプリン体から尿酸を合成する酵素:キサンチンオキシダーゼ(XO)を阻害する作用があることがわかりました。アンペロプシンを摂ることで、食事由来や体内合成由来のプリン体から尿酸が合成されるのを抑える作用が期待できると考えています」

さらに、アンペロプシンにはもう一つ、[3]の尿酸の排泄を促す作用もあることがわかった。尿酸は血液中から尿細管に一度100%ろ過された後、一部が排泄されて、残りは血液中に再吸収される。その再吸収を阻害する作用が、アンペロプシンにはあったのだ。

「当初は尿酸の合成抑制作用にのみ期待して採用したのですが、排出促進作用まであったので驚きました。尿酸値が高めの人にとっては、まさに一石二鳥の成分です」

一般的に、サプリメントを開発するとき、サプリメント会社は原料を原料メーカーから仕入れ、調合のみを行うことが多い。しかし、『尿酸サポート』に配合されている藤茶エキスは、ファンケルと原料メーカーが共同で開発した独自原料である。また、藤茶に含まれているアンペロプシンに尿酸合成酵素の阻害作用、排泄促進作用があることも独自で見出したもの。

「原料の開発には費用・時間が多くかかる上、製品にならなかった場合のリスクもあります。そのため、企業としてはどうしても独自開発を敬遠しがちです。しかし、より良い製品をお客様に届けるためには重要なことです。そこで、ファンケルでは近年、研究開発に力を入れ、新しい独自原料の開発を進めています」

横浜・東戸塚にあるファンケル総合研究所

臨床試験で、高めの尿酸値を下げる機能を確認

キトサンとアンペロプシンを配合したサプリメント『尿酸サポート』は、臨床試験でも機能が確認されている。

「血清尿酸値6.0~7.mg/dlの20歳以上65歳未満の男性78名を対象に、『尿酸サポート』を摂取する群(39名)とプラセボ(機能成分を含まない粒)を摂取する群(39名)に分け、それぞれ12週間摂取をしてもらいました。すると、『尿酸サポート』群はプラセボ群に比べて、摂取12週間後の血清尿酸値の変化量が有意に低値でした」

この科学的根拠を基に消費者庁に届け出て、日本初となる“高めの尿酸値を下げるサプリメント「尿酸サポート」”が誕生した。最後に、日本初となるサプリメントを生み出したことについて、櫻田さんに感想を聞いた。

「私の研究のモチベーションは、“世の中にまだ存在しないものを一番最初に作り上げたい”というもので、以前から、高めの尿酸値を下げるサプリメントを開発をしたいと、会社にアピールしていたんです(笑)。会社が快くゴーサインを出してくれ、2015年から研究に着手しました。4年越しの研究が実を結び、自分の思いがひときわ詰まったサプリメントを世に送り出すことができて、うれしく思います。これからも果敢にチャレンジして、世の中にない新しい成分やサプリメントを開発していきたいですね」

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麻生派に緩み 尾を引く塚田前副大臣“忖度”発言 衆院2補選に影響も https://seikeidenron.jp/articles/10559 https://seikeidenron.jp/articles/10559#respond Wed, 10 Apr 2019 06:30:05 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10559 塚田一郎前国土交通副大臣が下関北九州道路の整備について、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度した」と発言した問題が尾を引いている。塚田氏は事実上の...

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塚田一郎前国土交通副大臣が下関北九州道路の整備について、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度した」と発言した問題が尾を引いている。塚田氏は事実上の更迭とみられる辞任をしたが、野党は国会で首相の関与を厳しく追及。4月9日には石井啓一国土交通相が謝罪に追い込まれた。9日に告示された衆院大阪12区、沖縄3区の補欠選挙にも影響する可能性がある。

“忖度”発言が招いた自民党候補惨敗

塚田氏は北九州市で4月1日に開かれた集会で、首相と副総理の地元をつなぐ「下関北九州道路」の整備について、自民党の吉田博美参院幹事長から「総理と副総理の地元事業だ」と言われたとした上で、「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度した」と発言した。

塚田氏は麻生氏の秘書出身で、現在は麻生派所属。発言のあった集会は、福岡知事選で麻生氏が現職を追い落とすために担いだ新人候補を応援するための集会で、塚田氏は麻生氏の権勢をアピールするためにリップサービスしたつもりが、発言が大々的にマスコミに取り上げられ、辞任に追い込まれた。

実際、2019年予算には10年以上も計画が凍結されていた下関北九州道路の調査費4000万円が盛り込まれた。副大臣にそれを決める権限があったかどうかは不明だが、政権の有力者に“忖度”する空気が政府内に蔓延していることを改めて国民に印象づけた。4月7日投開票の福岡知事選で麻生氏の支援する自民党推薦候補が惨敗したのは、国民による忖度政治への嫌悪感も影響したのだろう。

麻生派全体に緩みが伝播している

塚田氏が師と仰ぐ麻生副総理兼財務相も、これまでたびたびその発言を問題視されてきた。福田淳一前財務次官によるセクハラ騒動の際は「セクハラ罪という罪はない」。少子化問題をめぐっては「子どもを産まなかった方が問題」――。問題を指摘されるたびに謝罪はしているものの、「誤解されたとすれば」などと仏頂面で、不貞腐れながら。塚田氏の発言について記者会見で質問された際も、記者に恫喝ともとれるような態度を見せている。

それでも麻生氏が政権内で安定した地位を築けているのは、首相経験者であり、党内で2番目に大きい派閥を率いるからだ。福岡知事選では惨敗の責任をとって自民党福岡県連の最高顧問を辞任する考えを示したが、副総理兼財務相の立場は揺るがない。「安定した地位から生まれる緩みが麻生派議員にも伝播しているのでは」との指摘もある。

7日に投開票された統一地方選の前半戦では“自民一強”に陰りが見られた。野党も受け皿となっていないことから全般的には自民党の勝利と言えそうだが、9日に告示された衆院の2補選は事情が異なる。

大阪12区は大阪ダブル選で勢いを見せた日本維新の会が、沖縄3区では米軍普天間基地の辺野古移設に反対する政治勢力「オール沖縄」が立ちはだかる。“忖度”発言問題が早期に断ち切られないと補選に悪影響を与える可能性がある。

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“自民一強”陰りも、民主系存在感なく 統一地方選2019前半戦 https://seikeidenron.jp/articles/10549 https://seikeidenron.jp/articles/10549#respond Mon, 08 Apr 2019 07:57:48 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10549 11道府県知事選や41道府県議選などの統一地方選前半戦が4月7日、投開票された。大阪府知事と大阪市長の辞職に伴う“ダブル選”は、「大阪都構想」の実現を目指...

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11道府県知事選や41道府県議選などの統一地方選前半戦が4月7日、投開票された。大阪府知事と大阪市長の辞職に伴う“ダブル選”は、「大阪都構想」の実現を目指す大阪維新の会がいずれも圧勝。“保守分裂”となった4つの県知事選では、自民党の推薦候補が2勝2敗。これまで“一強”といわれてきた自民党の勢いに陰りが見えるが、旧民主党勢力も存在感を発揮することはできなかった。

“大阪ダブル選”は“野合”批判で自民党票が維新へ流れる

平均投票率は44.08%で2015年の前回を下回り、過去最低を記録。“大阪ダブル選”や“保守分裂”で注目度の高かった選挙区以外は、埼玉、千葉、愛知、兵庫、広島、香川、宮崎など40%を割る地域もあり、有権者の関心の低さが目立った。

さて、前半戦で最大の見どころは“大阪ダブル選”。大阪都構想をめぐる政党間協議の決裂を受け、維新の会の松井一郎知事、吉村洋文市長が辞職。松井知事が市長選に、吉村市長が知事選に、立場を入れ替えて出馬するという異例の展開となった。本来、任期満了に伴い秋にやるはずだった選挙を統一地方選に繰り上げたのは、両氏がそのまま再選を目指すと任期が引き継がれ、秋に再び選挙となって選挙費用が膨らむとの批判を招く可能性があったからだ。

都構想に反対する自民党は、知事選に元副知事の小西禎一氏、市長選に元自民党市議の柳本顕氏を擁立。公明党や立憲民主党、国民民主党、共産党など維新以外の政党がこぞって応援するという“維新vs反維新”の一騎打ちとなったが、知事選は100万票、市長選も18万票差をつけて維新が制した。

ここまで大差がついたのは、自民党支持者の多くが維新の候補に票を投じたからだ。共同通信の出口調査によると、知事選、市長選ともに自民党支持層の約5割が維新候補に投票。立憲民主や公明党の支持層も一部が維新候補に流れた。自民党は二階俊博幹事長らが連日、大阪入りしてテコ入れを図ったが、政策の異なる政党が“反維新”だけでまとまっただけに、有権者の“野合”批判を招いた可能性がある。

ダブル選の勝利を受け、大阪維新の会は再び都構想の実現を目指すが、ハードルは低くない。朝日新聞の出口調査では有権者の約6割が都構想に「賛成」と答えたが、住民投票の実施には府議会と市議会の両方で賛成多数を得る必要がある。7日の府議選で維新は過半数を獲得したが、市議選は第一党となったものの過半数には2議席届かなかった。再び公明党など各党との水面下の折衝が激しくなりそうだ。

麻生副総理の推し候補惨敗、島根「保守王国」も敗北の衝撃

大阪以外での注目は島根・福岡・福井・徳島の4知事選の“保守分裂選挙”だ。福岡は過去の国政選挙での対応を問題視されて自民党の推薦を得られなかった現職の小川洋氏と、地元選出の麻生太郎副総理兼財務相が後押しする元厚生労働省官僚の武内和久氏の戦い。麻生氏らは自民党の推薦も取り付けて全面的に支援したが、麻生氏と距離を置く二階派の地元選出国会議員や古賀誠元幹事長、山崎拓元副総裁ら自民党の大物OBが小川氏を支援し、乱戦となった。

選挙戦は終始、現職の小川氏が優位に立ったが、今月1日に武内氏の応援演説で麻生派の塚田一郎国土交通副大臣(当時、4月5日に辞任)による「忖度」発言が飛び出した。これが決定打となり、約90万票の大差で小川氏が再選を果たした。知事選で自民党の推薦候補が対抗馬の3割以下の票しか獲得できないというのは異例で、麻生氏の責任を問う声も出そうだ。

同じく保守分裂選挙となった島根県でも自民党候補が敗れた。地元の国会議員やベテラン県議らが元総務省官僚の大庭誠司氏を自民党推薦候補としたのに対し、中堅・若手県議らは同じ元総務省官僚の丸山達也氏を支援。大庭氏陣営は従来型の組織選挙を繰り広げたが、約3万票差で丸山氏が制した。

島根県は竹下登元首相や“参院のドン”と呼ばれた青木幹雄元自民党参院会長らを輩出した「保守王国」。竹下首相の弟で竹下派会長の竹下亘氏や青木氏の長男である青木一彦参院議員らが大庭氏の支援に回っただけに、“王国崩壊”の衝撃は大きい。

極めて弱まる野党の存在感

一方で、ともに保守分裂となった福井県知事選では自民党の推薦を得た元副知事で元総務省官僚の杉本達治氏が、一部の県議らが支援した現職、西川一誠氏の5選を阻止。徳島県知事選では自民党推薦の現職、飯泉嘉門氏が元自民党県議の岸本泰治氏を退けて5選を果たした。

11知事選のうち、唯一の与野党対決型となった北海道知事選は、自民党推薦で前夕張市長の鈴木直道氏が、立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の5野党の推薦を受けた元衆院議員の石川知裕氏を退けて初当選を果たした。結果的には約60万票の大差。かつて「民主王国」と呼ばれた北海道ですら野党は存在感を発揮することはできなかった。

失速する自民党>受け皿になれない野党

前半戦全体を見渡すと、自民党の勢いに陰りが見てとれる。2012年に自民党が民主党から政権の座を奪い返し、安倍政権が誕生して以来“自民一強”といわれ続けてきたが、安倍政権のナンバーツーが地元で猛烈に後押しした候補が惨敗。かつての保守王国でも国会議員が支援した候補が地方議員の後押しする候補に敗れた。大阪では自民、公明の与党だけで戦うことすらできず、野党の手も借りたが維新に対抗することができなかった。

自民党の二階俊博幹事長の地元、和歌山県御坊市では定数1の県議選で、自民党現職が共産党新人に敗れるという珍事も起きた。与野党対決となった北海道知事選は制したが、自民党の組織力や人気というよりも、財政破綻した夕張を再生した鈴木氏の知名度や実績が大きかったというべきだろう。

とはいえ、北海道知事選に代表されるように、野党も存在感がない。前回統一地方選の41道府議選で旧民主党は264議席を獲得したが、今回は民主党の流れをくむ立憲民主と国民民主で合計201議席と大きく勢力を減らした。地方組織がうまく立ち上がっておらず、候補者の擁立に難航したほか、立憲民主と国民民主のつぶし合いも見られた。自民党の勢いに限りがあるものの、野党が受け皿となっていないというのが現状だ。

夏の参院選に向け、与野党はどう立て直すか。北海道知事選で機能しなかった野党共闘をめぐっても各党間の綱引きが活発化しそうだ。

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大阪クロス選、自民党分裂 統一地方選前半戦が4月7日(日)投開票 https://seikeidenron.jp/articles/10542 https://seikeidenron.jp/articles/10542#respond Fri, 05 Apr 2019 04:18:04 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10542 4年に一度、全国で一斉に首長選挙や議会選挙が行われる統一地方選挙。特に注目度の高い知事や政令指定都市の市長などを選ぶ前半戦は、4月7日(日)に投開票される...

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4年に一度、全国で一斉に首長選挙や議会選挙が行われる統一地方選挙。特に注目度の高い知事や政令指定都市の市長などを選ぶ前半戦は、4月7日(日)に投開票される。見どころは、現職の大阪府知事と大阪市長が入れ替わって立候補し、維新と反維新の一騎打ちとなる“大阪ダブル選”。そして福岡など4県の“保守分裂選挙”で繰り広げられる自民党内の対立だ。

戦後に始まった統一地方選挙、現在の「統一率」は27%

統一地方選は戦後の日本国憲法施行を前に全国で一斉に地方選が行われたがきっかけで、事務コストを圧縮したり、選挙への関心を高めたりするために全国で一斉に地方選を行うもの。日程は前後半に分かれ、前半戦は都道府県知事選と政令指定都市の市長選、そしてそれぞれの議会選挙が、後半戦は政令指定都市以外の市や町村の首長及び議会選挙が行われる。

例年は前半戦が第2日曜日、後半戦が第4日曜日を投開票日としているが、今年は今上天皇の退位と新天皇の即位に配慮し、1週間ずつ早い日程となった。

ちなみに“統一”と名が付いているものの、全国の自治体の首長・議会選のうち、統一地方選で行われる選挙の割合、いわゆる「統一率」は27%ほど。首長の任期途中での辞任や議会の解散、市町村合併などによって選挙日程がずれる自治体は増加の一方となっている。

知事と市長、片方でも欠ければ「大阪都構想」はとん挫

今年の統一地方選で実施される選挙は11道県の知事選、41の道府県議選、6政令指定都市の市長選、17政令指定都市の市議選などとなっている。

11の知事選が行われる前半戦の最大の注目は大阪ダブル選だろう。「大阪都構想」の実現を目指して大阪維新の会の松井一郎前大阪府知事が市長選に、吉村洋文前大阪市長が知事選に出馬するという異例の展開。対する自民党は知事選に元副知事の小西禎一氏、市長選に元自民党市議の柳本顕氏を擁立し、公明党や立憲民主党、共産党など維新以外の政党がこぞって応援するという“維新vs反維新”の一騎打ちとなった。

中盤戦におけるマスコミ各社の世論調査ではいずれも維新の候補がリードという情勢が伝えられているが、各政党が組織をフル回転して追い上げを図っているという。知事と市長のどちらか片方でも欠ければ都構想はとん挫するだけに、選挙結果の行方には全国から注目が集まっている。

野党不在? 自民党内で争う“骨肉の争い”

もう一つの注目は、自民党内で対立する4つの保守分裂選挙だ。福岡県知事選では4年前に自民党などの後押しで初当選した現職の小川洋氏に対し、地元選出の麻生太郎副総理兼財務相らが対抗馬として厚生労働省出身の武内和久氏を擁立。麻生氏と距離のある地元選出議員らが現職の応援に回り、“骨肉の争い”の様相を呈している。

また、竹下登元首相らを輩出し、保守王国として知られる島根県では自民党の国会議員や県議らが2人の元総務官僚を担いで保守分裂選挙に。福井県では5選を目指す現職に対し、自民党が対抗馬として前副知事を擁立。自民党の県議団が割れる事態となっている。徳島でも自民推薦で5選を目指す現職と、元自民県議の対決構図だ。

保守分裂選挙ばかりが注目されるが、与野党の一騎打ちは北海道知事選のみ。全体的に野党の存在感は薄い。議会選挙でどれだけ勢力を伸ばせるかがカギとなるが、一部の地域では野党第一党の立憲民主党と第二党の国民民主党がつぶし合いをしている選挙区もある。

選挙イヤーといわれる今年は夏に参院選を控える。選挙区の広い参院選では各地域の地方議員がどれだけ有権者を囲い込めるかが勝敗を握るだけに、道府県議選や市町村議選の結果は参院選の結果を占うことになりそうだ。

与野党の対決でないというところが寂しい

地方選挙は、国政にも大きく影響する。それは、その結果というよりも集票マシーンとして、地方議員たちが国政選挙の時に走り回るからだ。ということで、特に知名度のある国会議員は、選挙の応援で地方行脚だ。

記事にあるとおり一番の注目は大阪や福岡首長選だが、与野党の対決でないというところが寂しい。維新も野党ではあるが、他の野党とは一線を画している。それだけ野党の存在感の低下が著しいということだろう。辞任の意向を示した塚田一郎国土交通副大臣の忖度発言など、与党にも失点は多いのだがいかんせん野党の信頼度が薄い。

それもそうだが、相変わらずの選挙カーからの名前の連呼はどうにかならないもんか確かに移動中に政策を訴えたところで聞く人は少ないかもしれないが、耳に届く名前の連呼は騒音以外の何物でもない。

それでも、なるべく多くの人が投票所に足を運ぶことを願う。

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TTP(徹底的にパクる)の法則 倍速で成長するための行動様式 https://seikeidenron.jp/articles/10475 https://seikeidenron.jp/articles/10475#respond Thu, 04 Apr 2019 08:00:48 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10475 競合がしのぎを削る美容外科業界で、屈指の知名度と顧客満足度を誇る湘南美容外科クリニック。同クリニックを手掛けるSBCメディカルグループが通常の倍速で成長で...

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競合がしのぎを削る美容外科業界で、屈指の知名度と顧客満足度を誇る湘南美容外科クリニック。同クリニックを手掛けるSBCメディカルグループが通常の倍速で成長できた理由のひとつに、“TTPの法則”がある。TTP=徹底的にパクる、つまり成功者のまねをすることで“成長にかかる時間をワープする”、究極ともいえる時短成長術だ。

※本企画は2018年にSBCメディカルグループ内行われた講演を基にしています。

SBCメディカルグループ 代表

相川佳之 あいかわ よしゆき

1970年生まれ、神奈川県出身。1997年、日本大学医学部卒業後、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。大手美容外科を経て、2000年に独立、湘南美容外科クリニックを開院。料金体系の表示、治療直後の腫れ具合の写真を公開するなどの美容業界タブーを打ち破り、わずか18年で全国に75拠点80院を構えるまでに成長。さらに、審美歯科や頭髪治療、不妊治療、眼科、血管外科、整形外科、がん免疫療法など多分野に進出。2019年中には100拠点を予定。

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人の良いところを徹底的にパクると倍速で成長できる!

かつて美容整形といえば、芸能人や接客業など、外見的な美しさや若さが求められる一部の職業の人が受ける“特別なもの”というイメージが強かった。しかし近年は、メスを使わないヒアルロン酸注射やボトックス注射、レーザーによるシミ取りなどの施術が登場し、いわゆる“プチ整形”が一般人にも身近になった。

その分、美容外科医院の生き残りは激化している。国内での同業他院との価格競争やサービス競争はもちろんのこと、韓国を筆頭に美容整形先進国との競争もある。

そんな競争・淘汰の著しい業界において、SBCメディカルグループは常に急勾配の右肩上がりで拡大を続けてきた。相川佳之代表が第1号院を神奈川県の湘南で開業したのが2000年。そこから19年で、SBCメディカルグループは全国100院に到達しようとしている。事業拡大に伴い、直近の2年で組織は3000人規模になった。2020年には5000人規模になる見込みだ。

なぜ、SBCメディカルグループはこんなにも急成長できたのか。その理由のひとつとして、相川代表は「TTP」を挙げる。

「TTPとは、“徹底的にパクる”の略です。例えば外科医の世界では、上手な先生の手術を見て、その手技を完全にパクった人が一番早く上手になっていきます。これは、どんな職業や仕事でも同じです。ぜひ仕事ができる人を見つけてよく観察し、そのやり方を丸ごとパクってください」

人のまね事は良くないという意識がある人にとっては、“パクる”ことに抵抗を感じるかもしれないが、「自己流でやるより、TTPのほうがずっと理に叶っている」と相川代表は力説する。

「むやみに自己流でやると、どうしても失敗が多くなります。失敗→反省→学習というその一連の手間と時間が、私に言わせればもったいない! せっかく先達が失敗の中から見つけた“正解”があるのに、どうしてわざわざ自分も同じ失敗をしにいく必要があるのですか? 仮に先達が10年かかって手に入れた正解をパクることができたら、自分は10年分を一足飛びできるのです。私はそうやって“時間をワープ”することで、人の倍速で成長できました」

パクると決めたら、とことんパクるのが流儀

「私の手術や仕事のやり方も、遠慮なくどんどんパクって役立ててほしい」という相川代表だが、パクり方には流儀があるといい、「パクるなら中途半端はダメ。とことん完璧にパクることが大事です」と釘を刺す。

徹底的にパクることの重要性を強調するのは、インテリア家具のニトリの例を知っているからだ。相川代表は、ニトリの会長・似鳥昭雄氏とは普段から交流があり、尊敬する経営者としてたびたびアドバイスをもらう仲だ。

「似鳥さんはアメリカの研修で、“家や部屋全体をコーディネートして売る”というスタイルを学び、それを日本に持ち込んで、ニトリを今の大成功に導きました。成功した一番の秘訣は何かと尋ねたら、『他の研修参加者は中途半端にアメリカ流をパクって、うまくいかなかった。自分だけが完璧にパクって成功できた』と笑って話してくれました」

上辺だけ適当にパクって、それらしく見せても底が知れている。本質や神髄まで理解して徹底的にパクることが、パクらせてもらう相手へのリスペクトでもあるのだ。

仕事で成功したいなら、“教えたい人”になれ

では、より効率的に上手にパクるには、どうすればよいか。

「“教えたい人”になるのが一番の近道ですね。物事を教えるには、忍耐力も時間も要ります。その労力を払ってでも教えてあげたいと思ってもらえる人間になりましょう」

相川代表自身も研修医時代、知識と技術を身につけたくて、先輩から「相川に教えたい」と思われるよう意識して努めた経験がある。

例えば、朝10時始業のところを、9時20分に医局に来て誰よりも早く出勤。それを続けていると、いつも9時半頃に出勤してくる5年先輩の医師から、「今まで俺より早く出勤する若手はいなかった。お前、やる気あるな」と認められるようになった。それ以来、始業までの20分間、先輩医師からマンツーマンでさまざまなことを教わることができた。

「毎朝、先輩から5年分の知識や経験を注入してもらえました。休日もいろいろな病院に手術の見学に行っては、行く先々で先生たちの技を片っ端からパクりまくりました(笑)。おかげで、同期の中では一番の成長株になれました」

そんな相川代表が考える“教えたい人”の特徴は、次の5つだ。

[1]素直

  •  失敗やミスした時に言い訳をしたり、人のせいにしたりをしない=自分の落ち度を認めて、すぐに謝ることができる
  •  人のアドバイスや忠告に耳を傾け、受け入れることができる

[2]やる気がある

  •  遅刻や欠席をしない人=人より先に来て準備をしている
  •  「何かできることはありませんか」と自分から仕事を求める
  •  メモを取って忘れないようにする

[3]明るい笑顔

  •  笑顔で応える
  •  姿勢がよい
  •  目と目を合わせて話したり聞いたりする
  •  血色がよく健康
  •  話していて、こちらも楽しくなる
  •  ポジティブな言葉を使う

[4]挨拶や礼儀ができる

  •  はっきり話す
  •  笑顔で挨拶する
  •  みんなに分け隔てなく礼儀正しい
  •  身だしなみが清潔

[5]感謝ができる

  •  小さなことでも「ありがとう」や「すみません」を忘れない
  •  相手の目を見て伝える
  •  人にしてもらった恩を忘れない
  •  恩人に恩返しをする

こういった“教えたい人”のところには、協力や支援や有益な情報が自然と寄ってくる。人の知恵と力を借りられるので、倍速といわず倍々速での成長もしていける。それに比べて、“教えたくない人”は、自分の力だけで頑張らねばならず、その歩みは孤独で遅々としたものになりがちだ。どちらが得な人生か、答えは明白だろう。

ちなみに、相川代表が今も“教えたい人”であることがわかるエピソードがある。

今から数年前、ニトリの似鳥会長から「湘南美容外科クリニックのテレビCMを見たぞ。あれは最低のCMだな」とダメ出しをもらった。そのCMは、相川代表の好きな言葉「情熱」を前面に打ち出す内容だったのだが、似鳥会長は「お前が、情熱が好きとか、患者さんにはどうでもいい話。もっと患者さんが気になる商品と価格を伝えろ」と一刀両断。そこで、相川代表は、翌日すぐに「二重術、〇円。脱毛、〇円」という内容に作り替えた。

「新CMを流したところ、脱毛のオーダーが3倍になってビックリ! 素直にアドバイスを聞いて大正解でした。もちろん、その場で似鳥さんに電話して、感謝を伝えました」

結果にこだわれ、やり方にこだわるな

このようにTTPで時間をワープし、最短で成長してきた相川代表が常日頃からスタッフに言っているのは、「結果にこだわれ、やり方にこだわるな」ということ。この言葉には、次のメッセージが込められている。

「美容外科医療のゴールは、安全な医療を提供し、患者の悩みを軽減して笑顔になってもらうことです。安全と患者の満足には大いにこだわってほしい。でも、そのためのやり方にこだわる必要はなく、各自が考えて自由にやっていいよということです」

わかりやすい例で言えば、麻酔のかけ方は医師によって少しずつ異なり、どれが正解というのはない。言い換えれば、安全に手術ができれば、どのやり方も正解である。そういう意味で、やり方にこだわる必要はないと相川代表は言うのだ。

人の良いとこどりを積み重ねると、自分流ができていく

人のまねばかりしていては、いつまでたっても自分のやり方ができないのではないかという根本的な問いに対しては、「TTPを積み重ねるなかで“自分流”ができていくから心配無用。むしろ、徹底的にパクればパクるほど、自分のものになっていきます」と、相川代表は太鼓判を押す。

TTPのコツは、手本を一つに絞らず、自分の方向性に合いそうな手本はすべて試してみることだ。

「Aのやり方、Bのやり方、Cのやり方といろいろなやり方をパクっていくと、それぞれの良いところが見えてきます。全部の良いところだけを集めていけば、CDのベスト盤と同じで、自分なりのベストに近づいていけます。自分なりのベストこそが即ち“自分流”なのです」

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米トランプ大統領がぶち上げた「ブラジルNATO加盟」の裏でうごめく虚々実々 https://seikeidenron.jp/articles/10530 https://seikeidenron.jp/articles/10530#respond Thu, 04 Apr 2019 01:30:21 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10530 米トランプ大統領はNATOに加盟する欧州諸国に対して軍事費の負担増を求める一方、たびたび離脱に言及し周囲を動揺させている。設立から70年たった世界有数の軍...

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米トランプ大統領はNATOに加盟する欧州諸国に対して軍事費の負担増を求める一方、たびたび離脱に言及し周囲を動揺させている。設立から70年たった世界有数の軍事同盟は近年、加盟国の思惑が複雑に絡み合い、足並みを揃えるのが難しくなっているという。そんななか、トランプ大統領は南米・ブラジルのNATO加盟を示唆し、加盟国の反感を買っている。“ディール好き”なトランプ大統領の狙いとは?

南大西洋の国であるブラジルのNATO加盟はおかしい

アメリカのトランプ大統領がまたしても、世界の常識を覆す爆弾発言を放った。2019年1月にブラジルの新大統領に就任した、親米・右派のジャイール・ボルソナノ氏が同年3月ホワイトハウスを表敬訪問、このとき、ブラジルのNATO域外協力(グローバルパートナー:正式加盟ではなく防衛分野で協力するメンバー)入りの話に及ぶと、トランプ大統領はこれを支持し、さらに(将来)NATO加盟国になる可能性がある」ともぶち上げ、周囲を驚かせた。

NATO(North Atlantic Treaty Organization、北大西洋条約機構)

1949年に、北大西洋地域における集団安全保障を定めた北大西洋条約に基づいて設立された集団防衛機構。加盟国はアメリカを中心にカナダ、イギリス、フランス、ドイツなど、大西洋を挟んで北米と欧州諸国。ソ連崩壊に伴って東側諸国の軍事同盟であったワルシャワ条約機構が消滅し、東ヨーロッパ各国が1999年以降相次いで加盟。旧ソ連構成国のロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバなど一部の国以外はNATOに加盟した。日本もグローバルパートナーのうちの一国。ちなみに、新規加盟には既存加盟国すべての承認が必要。

だが、NATOはその名が示すとおり「北大西洋」、とりわけ欧州地域での運用を想定して結成された、集団的自衛権を柱とした軍事条約である。もともとは冷戦の激化に伴い、共産主義国家・ソ連の脅威に対抗するため、第2次大戦直後にアメリカの音頭取りで西欧の自由主義国家を結集したもの。

そして早速、NATO主要国のフランスが「地理的な適用範囲が決められている」と、トランプ大統領に釘を刺した。やはり南大西洋の国であるブラジルのNATO加盟はおかしい。

とは言うものの、冷戦終結でNATOの立ち位置も随分変化したのも事実で、現に2001年の「9.11」に対し初の集団的自衛権を発動し、アフガニスタンに攻撃を行うアメリカに加勢するためNATO軍が欧州域外のアフガニスタンに出撃している。

今回の暴言は、大げさな“社交辞令”に過ぎないのかもしれない。だが、国際情勢のタイミングを考えると、“ディール好き”の彼だけに何かメッセージが込められているとしても不思議ではない。

ちなみに世界の主要メディアは、「反米・親中露のベネズエラ・マドゥロ政権への揺さぶり」だと推測する。

ベネズエラの南に控える南米の大国・ブラジルが西側軍事同盟であるNATOに加盟か……とにおわし、加えて同じく西隣にある親米のコロンビア(すでにNATOグローバルパートナーに加盟)とも連携、マドゥロ政権を圧迫し、さらに同政権を支持する中露も牽制するという、まさに“新冷戦”を意識した陣地取り合戦、という見立てだ。

一方、トランプ大統領を支える米国内の保守勢力・軍産複合体の思惑が大きく働いており、二重底、三重底も隠されている、と深読みする向きもある。

「ブラジルの核保有」を押さえ込む

まずは、ブラジルの核保有を完全に断念させる狙いではという見方だ。実は同国は軍事政権時代だった1960年代~1980年代、対立する隣国アルゼンチンに対抗するため、密かに核兵器開発を推進していたという過去がある。その後、1980年代半ばに民政移管され、同時に「核兵器開発は停止」を宣言したが、北朝鮮と同様にあくまでも“停止”であって“全面廃棄”ではない。アメリカにとっては気になるところだ。

しかも2000年代に入るとブラジルは原子力潜水艦の開発に着手、原潜は長期間の潜航が可能なのが最大のウリで、核弾頭搭載のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)を積載する方向へと発展することは、現在の核保有5カ国(米英仏露中)の例を見れば明らかだ。

ブラジルをNATOに加盟させれば、アメリカはチェックしやすくなり、「集団的自衛権」を担保に核開発を完全に断念させることができると考えているのでは、という“深読み”だ。

不協和音目立つNATOへのショック療法

また、昨今目立つNATO内の足並みの乱れに対する“ショック療法”の意味も込めているのかもしれない。

トランプ大統領は以前から「NATO加盟国がアメリカに“おんぶに抱っこ”は許されない」と叫び、欧州加盟国の国防費の少なさを批判、アメリカのNATO離脱さえちらつかせている。しかも近年は“仮想敵”の中露にNATO主要国が接近、トランプ政権をさらに逆撫している。

例えば、ドイツはロシアからの天然ガス供給強化のため、バルト海を縦断する海底パイプライン「ノルドストリーム2」の建設を推進。イタリアは2019年3月に中国の「一帯一路」構想に正式参画を表明。さらに、トルコ・エルドアン政権は人権問題やクルド人問題でアメリカと対立、当てつけとばかりにトルコ はロシアから最新型地対空ミサイル「S400」の導入を進めるなどロシアに急接近している。

ちなみにトランプ大統領の再三にわたるNATO離脱発言に対し、米国内でも国家安全保障上の危機との声が上がり、米下院が2019年1月、NATO離脱阻止を狙う法案 を圧倒的多数で可決した。これは前代未聞の珍事だ。

一方「『モンロー主義』の再来をトランプ大統領は画策しているのでは」と見る向きも。「モンロー主義」とは19世紀始めにアメリカがとった一種の孤立主義で、「アメリカは欧州に干渉しないから、欧州も南北アメリカ大陸に手を出すな」という内容だ。

つまり今回のケースに当てはめると、「『ブラジルのNATO加盟』を提案しても、西欧各国が反対するのは明らか。そこでアメリカは防衛努力を怠る欧州の面倒は見きれない、と開き直ってNATOと距離を置き、代わりにブラジルやコロンビア、他の親米の中南米諸国と新たな軍事同盟を構築する」という、壮大なシナリオを夢想しているのでは、との説だ。(ただし、中南米にはすでにアメリカ主導で設立された軍事同盟「米州相互援助条約」が存在し、ブラジルも加盟する)

日本にもNATO正式加盟を打診?

さらには、グローバルパートナーをNATOの正式加盟国に格上げし、「適用範囲を一気に世界に広げ親米諸国を結集し中露包囲網を構築、“新冷戦”に備える」「加盟国の国防費をアップさせ米製兵器を売り込む市場を固める」「2期目の大統領戦に向け米国内向けに外交的得点を上げる」という“一石三鳥“”も狙っているのでは……という憶測も。

だがこうなると、グローバルパートナーに加盟する日本にも“格上げ”要請がトランプ大統領から打診されるかもしれない。果たしてこのとき、日本はルビコン川を渡るのだろうか。

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新大関貴景勝には、ちょうどよく期待したい 稀勢の里の轍を踏ませないために… https://seikeidenron.jp/articles/10520 https://seikeidenron.jp/articles/10520#respond Wed, 03 Apr 2019 02:00:42 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10520 大相撲大阪場所が横綱白鵬の全勝優勝で幕を閉じた。千秋楽の取組中のケガや三本締めの是非についても議論を呼んでいるが、明るいニュースも世間をにぎわわせている。...

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大相撲大阪場所が横綱白鵬の全勝優勝で幕を閉じた。千秋楽の取組中のケガや三本締めの是非についても議論を呼んでいるが、明るいニュースも世間をにぎわわせている。関脇貴景勝の大関昇進だ。九州場所は13勝2敗で初優勝、初場所は11勝4敗。そして大関獲りのかかったこの3月に、横綱・大関が非常に元気ななか、10勝5敗で終えたことが評価される形で昇進を勝ち取った。本場所が終了してから1週間以上経過したが、新聞やニュースでは貴景勝の話題が絶えない。だが、そこに感じる不安とは……?

大関獲りは実力以上のものを発揮して成される

貴景勝の大関昇進は、ドラマチックな形で成し遂げられた。9勝4敗の貴景勝と7勝7敗の大関栃ノ心が大関一つの枠をめぐって闘うという、人生を賭けたデスマッチだったからだ。

ひょうひょうとした貴景勝と、緊張がテレビ越しにも伝わる栃ノ心。若手の貴景勝と、大けがを乗り越えて大関を勝ち取った栃ノ心。突き押しの貴景勝と、四つ相撲の栃ノ心。芦屋出身の貴景勝と、ジョージア出身の栃ノ心。

後で考えてみると何もかもが対照的だった。意地と互いのアイデンティティがぶつかり合う一番だったのだ。だが、貴景勝が立合いで栃ノ心を後退させ、そのまま押し切る形であっけなく終わった。

思えば苦しい大関獲りだった。若手の大関獲りというのは、実力以上のものを発揮して成されることが多い。3場所で33勝という基準を上回るのは、強い大関でさえ難しいことなのだ。大関を維持するのと、大関を獲るのではまったく異なる適性が求められる。極論を言えば、2場所連続で負け越さなければ大関の地位は保たれるからだ。
貴景勝は横綱・大関に必要な、高いレベルで安定した成績を残せる力士だ。突き押し相撲にしては珍しく、連敗をあまりしないところに特徴がある。この手のタイプの力士は大抵良いときは良いが、悪いときは悪い。悪いサイクルに入ると強く当たれない。

当たりの強さが生命線なので、どうしても劣勢の形で取らざるを得ず、立ち回りのうまさでリカバリーをするしかないのだが、貴景勝は前傾にならずに突き押しが出来るので、変化で落ちる危険性が少なく、しかも突き押しの威力が保てる。突き押しの弱点をカバーできる相撲が取れる力士なのだ。

だが、「安定」している反面、大関獲りに必要な「良いときは良い」という、実力以上の相撲が取れないということも事実だ。だからこそ、本来は初場所のうちに大関昇進しておきたかったところではないかと思う。

いくら貴景勝が安定して実力を出せる力士だといっても、22歳の若者だ。大阪場所は上位が皆揃うという逆風もあり、大関獲りはかなり厳しい状況だったことは間違いない。だが、貴景勝はこの逆境で、しかも序盤に2敗するというピンチを中盤の連勝で凌ぎ、横綱鶴竜、大関高安を破り、さらには栃ノ心との歴史的なデスマッチを制した。こうして貴景勝は大関昇進を決めた。これだけの試練を乗り越えたからこそ、貴景勝には期待するところも大きいのだが、不安に感じていることがある。貴景勝に、“背負わせ過ぎているのではないか”と感じるのだ。

大相撲の枠を越えた存在に注目集まる

貴景勝の報道が増え、期待が高まる理由。それは、貴景勝による土俵上の劇的なドラマを共有したことが大きいのは言うまでもないことだが、貴乃花をめぐる土俵外のドラマが尾を引いていることもまた疑いようのない事実だ。そしてその2つが重なることで、貴景勝を大相撲の枠を越えた存在にしているのである。もともと貴景勝は、有望な若手の一人だった。高卒入門力士として十代で関取になった、近年では稀な存在で、壁らしい壁に直面して停滞することなく番付を駆け上がってきたことは間違いない。だが、“期待の若手”というだけでワイドショーが注目してくれるほど、元号が変わろうとする今、大相撲はメジャーな競技ではない。

貴景勝の初優勝や大関昇進がこれほど多く報じられているのは、大相撲の興味の無い人にも響く話題だと報道関係者が認識しているからだ。結局のところ、この一年での騒動によって追放に近い形で相撲界を去った師匠・貴乃花の意志を継ぎ、相撲部屋は変われども試練を乗り越えて成長していくというストーリーが非常に大きな役割を果たしている、ということである。

実際のところは表に見えないさまざまな事情もある。そして貴乃花にもさまざまな失策がある。すべての事情を考慮すると善悪という構図にはできないほど複雑な騒動ではあったのだが、「改革」という旗印と被害者である貴ノ岩の師匠という立場が貴乃花を「善」ととらえる報道を加速させ、相撲協会ナンバースリーからの転落を悲劇的なものとして見せるに至ったのではないかと思う。

そんな貴乃花を慕って入門した、「貴を信じる」という名を背負った佐藤貴信が貴景勝として成長し、貴乃花が角界を去った今、試練を乗り越えて大関昇進を決めたというドラマは、大相撲に興味が無くても伝わる話だからこそ、これだけ注目を集めている。

元横綱稀勢の里と同じ状況

現在の大相撲の世界にはこれだけ注目を集められる力士がほぼ居ない。それに成り得る存在だった遠藤はひざのケガで当初の期待には応えられていないし、アクロバティックな取り口で注目を集めた宇良は2度の大ケガでキャリアの危機に遭遇している。大相撲が将来のスターとして頼れるのは今、貴景勝だけなのである。

私は過去にこのような形で世間から大きな期待を集めて、潰すような形で最近引退した力士のことを知っている。そう、元横綱稀勢の里だ。

»それでも求めてしまう、稀勢の里の物語

稀勢の里は、モンゴル人やヨーロッパ系力士が全盛のなか、日本出身力士のナンバーワンとして彼らに向き合い、闘い、素晴らしい相撲と目を覆うような相撲を繰り返しながら優勝に届かないなかで過剰な期待を集めた結果、勝負どころで敗れる弱さを作ってしまった。

そして、ようやく弱さを乗り越えて横綱に昇進した後で負った大ケガ。横綱としての期待に応えようとするがために強行出場を繰り返し、結局、昇進したときの素晴らしい稀勢の里に戻ることはなかった。つまりは、稀勢の里という力士の可能性を閉ざす一因が、“過剰な期待”にあったのではないかと私は思うのだ。

そしてそれと同じ状況にあるのが、今の貴景勝なのだ。

期待は人を成長させる。ただし、能力に見合わず、タイミングの悪い過剰な期待は人を苦しめ、潰してしまうことがあることを私は稀勢の里を観ながら知った。

繰り返しになるが、今の大相撲には貴景勝しか居ないのである。今の報道と期待度を見ると、これは成長させるレベルの期待ではない。出身地の「芦屋ふるさと大使」への任命や昇進の口上、そして“美人過ぎる母”まで報道されている現状を見ると、ひいきの引き倒しをしかねないレベルにまで加熱していると言わざるを得ない。

過剰にならず、ちょうどよく期待する

貴景勝は突き押しに徹底的にこだわったスタイルを確立している。突き押し相撲の生命線はひざだ。近年の突き押しをスタイルとする力士たちは、劣勢で攻めを受けてその生命線であるひざを壊し、治療をせぬまま強行出場を繰り返し、攻めることは出来るが守りに難を抱えた状態で、能力を発揮し切れぬまま現役を続けているという事例が非常に多い。

まずはケガをしないように相撲の形を見直すことも大事なのだが、強行出場を繰り返すのは番付を落とせないという制度上の問題もあるし、期待に応えたいという思いによるところも大きい。

故障した力士の保全という課題に対する施策が相撲協会に求められていることは確かだ。一方で、期待という観点で考えると、観ているわれわれもまた、この魅力的な力士の魅力的なストーリーを追いかけていくなかで過剰になりすぎないようにすべきではないかと私は思うのである。

既に巷では貴景勝のスタイルをめぐって“四つ”を覚えるべきではないか?という、彼の根幹を成すデリケートな部分に踏み入ったトピックが議論の的だ。貴景勝を惑わし、壊しかねない状況であることに不安を覚えながらも、大相撲の枠を越える力士であることは素直に喜ばしいことだ。

観ている側も報じる側も、この逸材に対する思いを抑えながら素晴らしい将来を期待するくらいがちょうど良いと、稀勢の里に対する後悔が覚めない今だからこそ私は訴えたいのだ。

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「号外~!」って案外のんびり!?「令和」発表後の大手新聞「速報」ぶり https://seikeidenron.jp/articles/10485 https://seikeidenron.jp/articles/10485#respond Tue, 02 Apr 2019 05:27:19 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10485 号外求めて大手新聞各社をはしご 4月1日の新元号「令和(れいわ)」発表後、記念すべき号外を入手すべく大手新聞各社の本社が軒を連ねる東京・大手町界隈へと自転...

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号外求めて大手新聞各社をはしご

4月1日の新元号「令和(れいわ)」発表後、記念すべき号外を入手すべく大手新聞各社の本社が軒を連ねる東京・大手町界隈へと自転車をとばし、各紙の“速報ぶり”を拝見。

まず発表予定の午前11時半頃に「毎日」に向かうと、すでに社員が受付でスタンバイ。だが「印刷に時間がかかるので、号外配布は12時半~13時ですね」とのこと。仕切り直しで12時半に改めて出向くと、すでに受付は100人ほどの人間でごった返す始末。

ようやく13時少し前に号外が到着。なぜか歓声とともに拍手が巻き起こり、後は我先にとばかりの争奪戦。気合いを入れて毎日のシンボルカラーである青い法被をまとった社員もタジタジのご様子で、もちろん手にした号外は誰しもクチャクチャだ。

毎日新聞本社にて

次に急ぎ近くの「読売」本社入口に向かうと、すでに20~30人が遠巻きに待つ。こちらは本社内での“立ち待ち”は厳禁の雰囲気。このときすでに13時だが、号外はまだ。しばらくすると、すぐそばの「産経」本社でも配られたらしく、何人かが産経の号外を握り締めてこちらに猛ダッシュ。掛け持ちで読売の号外もいただこうとする面々だ。幸いなことにその1人に状況を聞くと見知らぬ人ながら「これどうぞ」と「産経」の号外をゲット。

その後、読売の社員が現れ「本社ビルの裏で配布します」とのこと。正面玄関の群衆はすでに50人ほどに膨れ上がっていたが、記者子と同様速歩きで向かうと、3列に整然と並ぶ人々が約200人。「毎日」と比べて対応は天晴れだ。果たして、「読売」本社の号外は設置されたテーブルの前に並んだ順番に“一人1部ずつ”、理路整然と手渡された。このとき時計の針は13時15分を回っていた。

読売新聞本社にて

速さの「毎日」、安全の「読売」

「令和」の号外争奪をめぐる狂想曲。「幻の『平成』スクープ」(発表前に情報をつかんでいたが、過去に誤報「光文事件」した懸念からスクープを断念)を誇る「毎日」の速報性への執念(と言っても約1時間後だが)と、群衆の“暴徒化”阻止を第一に考えた「読売」との対応の違いが際立った。

しかし今回の号外は発表される日時が以前から決まっており、各紙とも予定原稿を用意してスタンバイしているはず。もっと早く配布できないものかと腑に落ちない面もあるが、今や各紙とも印刷所は都心の外だけに致し方ないらしい。

今回の戦利品

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気軽さの無い社会での子育ては息苦しい【児童虐待を取材してきたルポライター杉山春さんインタビュー】 https://seikeidenron.jp/articles/10357 https://seikeidenron.jp/articles/10357#respond Fri, 29 Mar 2019 06:00:56 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=10357 数年前と比べて、明らかに多くの「虐待」が取り上げられるようになった。非道な虐待親が糾弾される様子に溜飲を下げつつも、親としては少し息苦しい。でも、その理由...

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数年前と比べて、明らかに多くの「虐待」が取り上げられるようになった。非道な虐待親が糾弾される様子に溜飲を下げつつも、親としては少し息苦しい。でも、その理由がよくわからない。数々の虐待事件を取材し、子育てや親子について考察を重ねてきたルポライターの杉山春さんは、昨今の虐待事情をどう見て、何を感じているだろうか。

 ルポライター

杉山 春 すぎやま はる

1958年生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。雑誌記者を経てフリーのルポライターに。子育てや親子関係をテーマに取材し、数多くの児童虐待事件を取材。著書に、『児童虐待から考える 社会派家族に何を強いてきたか』(朝日新書、2017年12月)、『自死は、向き合える 遺族を支える、社会で防ぐ』(岩波ブックレット、2017年8月)、『ルポ 虐待 大阪二児置き去り死事件』(ちくま新書、2013年9月)、『満州女塾』(新潮社、1996年5月)などがある。
Twitter:@sigraprimavera

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虐待親もかつては虐待を受けて育った子どもだった

連日のように虐待死事件が報道され、虐待親のことを「極悪非道」と、今日も人々は断罪している。

私も、その“人々”のうちの一人だった。

わが家には、2人の幼子がいる。彼らを育てる親としては、虐待する親の気持ちが知れないし、知りたくもないと思っていた。子どもたちの痛ましい事件を見るたびに自分が消耗するような気分がして、虐待親のことを罵ることでなんとかバランスを保った。

そんなときに出合ったのが、ルポライター杉山春さんの著書だ。これまで、愛知・武豊町3歳児餓死事件や大阪2児置き去り死事件などの虐待死事件を取材してきた杉山さんは、著書『児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか』(朝日新書)で、読者にこう問いかけている。

――「虐待は許せない」という、メディアが後押しして生み出された市民感情は、誰かを断罪しないではいられないのか。

――虐待は、それを行った個人にモンスターのようなイメージを貼り付けて社会から葬りされば解決できる問題ではない。

読んでいてハッとした。虐待親を罵り、社会の枠の外に置けば、未来の虐待が起こらないわけではない。そこに至ってしまった社会構造を理解し、分解するようにしてひとつずつ向き合っていかなくては解決できない問題なのではないか。

杉山さんの著書を通して見えてきたのは、虐待親がそうなるまでの経緯だ。日常的に虐待を繰り返した末に、子どもを虐待死させてしまうほどのひどい事件では、虐待親もかつては虐待やネグレクトを受けて育ってきたことがわかっている。

「どの事件を見ても母親の力が弱く、10代から20歳前後で若年出産しています。もちろん、若年出産=虐待と結びつけるのは早計です。若くて、子育ての力が乏しくても、人を頼ったりできれば違ったのでしょうけれど、若くて出産する女性たちの中には、さまざまな理由で、自我が育っておらず、社会に向かってコミュニケーションをきちんと取れず、困っているときに『困った』と言えない人たちも少なくありません。それは、実は社会の構造の中から生まれている現象ですが、そのことに社会が十分に気づいているとはいえません。

私は2012年~14年まで、NPOの職員として生活保護家庭の子どもの支援をしていたことがあります。その中には、親が困難を抱えており、子育てをする力が乏しかったために、自我が十分に育っていない10代の子どもたちがいました。自分を大切な存在だと確信できない。困ったときに『困った』と伝える、習慣そのものを持っていない。親が子どもをコントロールする。そのために、自我を育てることができなかったのではないかと感じました。

我が子を虐待死させた親たちにも、そういうところがあったのだろうと容易に想像できました。自分のことを主張しないし、大人からケアを受けたこともあまりない。そして将来を切り開いていく職業に従事するために必要な力を育ててもらっていない。妊娠・出産以外で、自分の未来を作る道筋がないのです」(杉山春さん、以下同)

家庭内で虐待がエスカレートする構造は

全国の児童相談所(児相)の虐待相談対応件数はこの10年で3倍以上になり、過去最多を記録(平成29年度、厚生労働省)。家族というのは本来、子どもを守る装置だ。しかし、その最小単位での子育てに、無理が生じてきているのではないか。

「子育てにはお金も時間も必要です。経済的に困窮することは、家庭を壊す理由のひとつになります。親の不安や、『うまくいかない』という思いは、最も力の弱い子どもに向けられやすくなる。そういう意味では、経済状況の悪化のなかで、ひと昔前とは違うタイプの虐待も増えているのではないでしょうか」

虐待には、生きづらさや、社会の行き詰まりが反映されている――。

最近騒がれた、東京・目黒区や千葉・野田市の虐待事件では、父親の暴力を母親が止められなかったこと、長距離を移動することで情報の連携がうまくとれなかったことが要因になっている。これらの事件を杉山さんはどう見ているのか。

「DV問題が虐待問題と家庭内の暴力として、一緒に語られるようになったのはよかったと思っています。家庭の中の暴力そのものが大変なことなんだという視点がないと、解決に結びつかないですから。

終身雇用制度がまだ力を持っていたひと昔前までは、仕事に就いている父親が、仕事を放り出してまで長距離を移動するような転居はしにくかったはずです。現代社会では非正規雇用が増加していますが、それと無関係ではないと思います。

つまり、父親たちが、職場の共同体を失っている。そこでは、自分自身のアイデンティティを育むことができない。その代わりに、家族のあり方や自分の子どもの教育にアイデンティティを持とうとしているのかもしれない。ある意味、男性たちが社会の中で力を発揮できていないから、家族をコントロールすることで自分の存在を誇示しているようにも見えます」

力を持った者が、家族をコントロールする。そして、家族の中だけに閉じこもってしまう。密室化する家庭内で虐待がエスカレートする。そんな悪循環が生まれているのではないか。

「家族内の暴力は、いったんエスカレートし始めると、自分だけでは止められない。野田市の事件で父親が子どもを閉じ込め始めた理由は、『子どもにあざをつけてしまったから、人に会わせられない』というものだと言われていますよね。

この事件に限らず、子どもを亡くしてしまうような事件を見ていて思ったのは、親は子どもをアイデンティティにしない方がいいということ。また、一人の人間には、たくさんのアイデンティティを支える要素があった方がいいのではないかということを感じます。その上で、何かがうまくいかないときに、簡単に社会に助けを求められることが重要だと感じます。助けを求めるハードルが下がることが必要だということです」

これまでの虐待事件の取材を通して杉山さんは、「大きなSOSが潜んでいても助けを求めることができないのは、他者を信頼できないことが原因のように思う」と話す。「助けて」と言ったら、必ず助けてくれる人がいると思えるかどうか。

虐待は家族や親、貧困の問題だけでなく、社会の基盤が揺らいでいることも問題なのではないか。もっと気軽に、「社会の福祉に助けを求めていい」という認識が広まっていった方がいい。そのためにも、社会のインフラが整うことが重要だ。

「地域の行政にさえ行けば最低限は保障されるというセーフティネットが、今は弱まっているのではないでしょうか。虐待事件などを通じて、“家族”は、時には恐いものでもあるという認識も広まっている。実際、家族だけに子育てを頼ることは、難しい。

確かに、お互いに頼り合う資源が豊かにある家庭もある。しかし、家族の助け合いが機能しない家もある。だからこそ、行政が子育ての足りていないところに適切に力を発揮してもらうことが大事だと思うんです」

この日のインタビューは3時間に及んだ。杉山さんには丁寧にお答えいただき感謝しています。

虐待親を子から切り離して終わりではない

虐待をする悪い人間は社会から追い出せばいい、悪い親は子どもと引き離せばいい――。果たして、それで万事解決となるのだろうか。

児相の機能のひとつに、問題のある家庭の子どもを保護するというものがある。しかし、問題を起こした親が外でいつも通りに暮らしているのに、一時的に子どもを保護して、また親元に戻すことが何の解決になるのだろう。この虐待親に対して、加害者プログラムなどのケアをすることが大事に思える。

何より、「人は変わることができる」という認識が広まっていかないと、助けを求めることができないし、手を差し伸べることもできない。そうでなければ、虐待をしてしまった親は行き詰まった末に取り返しのつかない事件を起こして、彼らが社会から排除されるだけだ。

「暴力的な反応が出てしまう人たちが、それでも支援を受けることで、更生することができるという前提が社会に広まっていかないと、自分の中に暴力性を感じたり、行き詰まりを感じていたいりする人たちが、気軽に相談できなくなるのではないかと心配しています。本人が、相談に行ったら逮捕されてしまうと思いつめてしまうことも起きています。暴力やネグレクトの仕組みは、専門家によってかなり解明されてきているので、どのように外部から密室化した家庭に介入するかは鍵になってくるでしょう」

今年1月、宮城・仙台で中学1年生の息子を暴行してしまった父親が、「このままだと、もっとひどいことをしてしまうので子どもを保護してほしい」と自ら児相に名乗り出た事件があった。自分の力では止めることができないから、外へアプローチする。こんな、助けを求めることができてよかったという雰囲気や、認識が社会に広まってほしい。

「児童虐待防止というと、児童相談所の力の強化が注目を集めますが、地方自治体や地域の力が重要です。2017年夏に厚労省が発表した、『新しい社会的養育ビジョン』は、社会的養育の対象者を“すべての子ども”としています。家庭で育てられている子どもも、代替養育を受けている子どもも、胎児期から自立までが対象になっています。これは重要なことです。

2022年度までに、市区町村子ども家庭総合支援拠点が全市町村に設置され、児童相談所には、市区町村支援の担当児童福祉司が配置されます。また、親が育てられない場合には、児童養護施設ではなく、養育里親に預けることを推進する方針が出ています。例えば、小学校区、中学校区ごとに養育里親を置くことができれば、一時的に親から分離する必要がある子どもも、転校せずに通学ができ、地域の支援を受けたり、地域の資源を使ったりして育つことができます。親子再統合も地域の中で可能になります。

子どもが権利の主体となって、地域で育てられる仕組みを作ることが、最も大きな虐待防止だと考えています。地域社会で、親を支え、子どもを育てていく機能が充実していくことを願っています」

虐待に敏感になった世間の目が母親を追い詰めることも

厚生労働省によると、平成29年度に児相が対応した児童虐待相談件数は133778件。調査の始まった平成2年度の1101件からすると、この二十数年で急激に増えたように見える。毎年の調査結果をまとめた推移では、右肩上がりのカーブを描いている。

「カウントが始まった平成2年度に1101件しかなかった虐待が13万件以上まで増えているかというと、そうは言い切れないと思います。昔は同じようなことや、もっとひどいことがあっても虐待という認識そのものがなく、放置されていたということではないでしょうか。

2000年に起きた、愛知県武豊町の3歳児餓死事件のお母さんも子ども時代に飢えていますし、今だったら通報される事案でしょう。お父さんはギャンブル依存症、お母さんは家出してしまっている。そういう育てられ方を、誰も『虐待だ』とは言わなかった時代だったと思います」

つまり、虐待が「虐待」として認知され、大きく報道されるようになったことで、世間の目も敏感になった。

実際に、私も住んでいるアパートの大家さんから電話をもらったことがある。他の住人から、「子どもが泣いても抱っこしていないんじゃないの?」という声が出たという。心当たりは、保育園から帰ってきて晩ご飯を作っているときに、お腹をすかせた子どもが泣いていたことだ。原因は空腹なので、一刻も早くご飯を作らなくてはならない。抱っこすれば、その分ご飯を作るのが遅くなる。

敏感になった世間の目によって、母親たちを追い詰めている面もあるように思う。私もその一件で、“ダメな母親”という烙印を押された気がしたし、その場所に住み続けることが少し嫌になった。できるだけ外に音が漏れないように窓を閉め切った時期があった。

「気軽に生きていけない社会が生まれてきていて、その中で子育てするという負担を、ほとんどの場合、母親が引き受けている。それを全部、家庭の中だけで解決していかなければならないという考え方自体が変わっていかないと、安心して子どもを産めないですよね」

写真はイメージ

虐待親は地続きの世界にいると知る一方で、自分との違いも理解する

近隣住人の中に、私のことを「虐待しているんじゃないか」と見ている人がいるかもしれないと思ったら、急に虐待が他人事ではなくなった。さらに、「もしかしたら、自分もいつか虐待してしまうのではないか」と不安になっていった。知人の中には、虐待を受けて育ったから連鎖してしまうのではないかと、子どもを産まないと決めた人もいる。

「『誰でも虐待をする可能性がある』という考え方が社会に広がってきている気がします。しかも、なぜそういうことが起きるのかわからない。虐待理解が不十分で、得体が知れない。だから、怖い。そんな気持ちも生まれてきているのではないでしょうか。

何かの都合で、子育てうまくいかなくなると、自分を責める。それは辛い。もっと虐待の仕組みがよく理解される必要があるのではないでしょうか。社会に、子育てに関しての理解が広がっていくと、不安からも自由になれるのではないかと思います。

虐待事件は誰にでも起きるという言い方もできるし、事件を起こすのは、さまざまなことを奪われてしまい、非常に孤立した人たちなんだという見方もできる。不用意に不安がるのではなく、社会にそうした人たちをケアする仕組みをもっともっと手厚く用意してほしいと、社会的な視点で考えることも、個人的で先の見えない不安を解消していくことにつながるのではないかと思います」

杉山さんは前出の著書の中で、武豊町3歳児餓死事件の母親との違いをはっきりと見出したと書いている。当初は同じ母親として、時代の子育てに関する空気感を通して、この母親に強く自分を重ねていたという。

「事件を追うなかで、彼女が拘置所内で書いたというノートを読みました。彼女は当時、妊娠していたのですが、『お腹の子が亡くなった子の生まれ変わりで、夫と子どもたちの家族4人で暮らすのだ』と語っていた。子どもを死なせたというリアルからは遠く、病理性を理解しました。母親は、大きな困難の中にいる。そのときに、子どもを虐待死させてしまう母親と、自分を過剰に重ねてはいけないと気づいたんです。

だから、何でもかんでも重ねない方がいい。例えば子ども時代、親に虐待された人もいるかもしれない。でも、大人になっていく過程で考える力や、社会にアプローチする力など、いろいろなものを備えてきているはず。そうした力を持っていれば、むやみにおびえる必要はないんです。そういう意味では自分をもっと信じていいと思う」

幼いときの自分をかわいがるように

杉山さんと話していて、私の方がインタビューされているのではないかという瞬間が何度もあった。いつのまにか、自分の子育ての不安や考えを引き出されていた。

子どもに自分の都合を押しつけてしまうこと、声が荒くなるときがあること。その後に反省して、子どもに謝っていること。いつかストッパーが外れてしまうのではないかと不安を抱えていること。だからこそ、自分の子育てが正しいと思わずに、自分への疑問は常に持ち続けていこうとしていること。

そう伝えたときに、杉山さんにこう言われた。

「私は、自分を大事にしたらいいのにって思う。自分のことをかわいがってあげたらいいと思います。私はよくやっているよね、頑張ってるよね、って。自分を褒めるっていうのはすごく大事です」

えっ。もっと自分をかわいがってもいいの……? 思わぬ言葉に、いつの間にかボロボロと涙が出ていた。誰かに評価してもらえることに、こんなに飢えていたのか。それは、自分自身の評価が著しく低いということもあっただろう。自分が思っていたよりも随分と張り詰めた中で子育てしていたのだと、気づかされたようだった。

「以前、カナダの加害者プログラムについての取材をしたときに、『幼いときの自分をかわいがって、声をかけてあげるようにすることが大事』と聞きました。自分をすごく大事にしてあげることが、一番、暴力から遠ざかっていく道だと感じます。自分を大事にできないと、人を大事にできないそうです。世のお母さんたちはみんな、あまりにも反省しすぎているような気がします」

私が特殊なのかというと、決してそうではないと思っている。この社会は女性に対して、母としても仕事人としても輝けと、理想の母親像を押しつけてくる。ますます役割を増やされた挙句、少しでも“あら”があると叩かれる。これでは、母親の自己肯定感が育ちにくい世の中なのではないだろうか。

インターネットが発達して、いろんな意見が聞けるようになった。さまざまな選択肢が認められ、多様性が受け入れられるのはいいことだ。同時に、母親が「大変だ」と声を上げやすくなった一方で、子育てが大変そうに見えて出産しない道を模索する人もいる。

情報を選び取りながら、自分たちで生き方を決めていかなくてはいけないからこそ、悩む。私たちはまだまだ多様性に翻弄されているのかもしれない。

でも、どういう道であれ、自分で選び取り、生きるための努力をしているのだから、これからは「よく頑張ってるね」と褒めてあげたいと思った。幼いあの日の自分に話しかけるように。

The post 気軽さの無い社会での子育ては息苦しい【児童虐待を取材してきたルポライター杉山春さんインタビュー】 appeared first on 政経電論.

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