政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は、若い世代やビジネスパーソンに政治・経済・社会問題を発信するオピニオンメディア。ニュースの背景をわかりやすく伝えたり、時事用語の解説を通して、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Fri, 13 Jan 2023 09:41:09 +0000 ja hourly 1 【2023年の経済】4月、政府・日銀のアコード見直しに注目 https://seikeidenron.jp/articles/21947 https://seikeidenron.jp/articles/21947#respond Thu, 05 Jan 2023 07:35:09 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21947

「卯は跳ねる」というのが、株式市場の格言だが、2023年の日本経済も「卯」のように飛躍できるだろうか。

年の前半にイベント目白押し

鍵を握る3大イベントは4~5月に訪れる。まず1つ目のイベントは4月8日の黒田東彦日銀総裁の任期満了に伴う新総裁へのバトンタッチだ。2つ目のイベントは4月9日、同23日の統一地方選挙(道府県知事選投開票)、そして5月19日に広島市で開催される主要7カ国首脳会談(G7サミット)だ。年の前半におけるこの3イベントが日本経済の潮流を決めると見ていい。

一方、グローバルには、中国のゼロコロナ解除後の経済回復の行方、世界的なインフレ高進と基軸通貨米ドルを司るFRB(米連邦準備理事会)による利上げ打ち止めのタイミング、そしてロシア・ウクライナ戦争に停戦の可能性はあるのかなど、数多くの鍵を握る要素が存在し、当然のことながら日本経済へも多大な影響を及ぼす。こうした国内外のキーファクターがシンクロするように進む2023年が予想される。

黒田総裁の変節とポスト黒田

日銀は12月19~20日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を修正する方針を決めた。長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げたもので、事実上の利上げを意味すると受け止められている。アベノミクスの象徴だった異次元緩和は10年目に転換点に差し掛かったことは確かだ。

これまで日銀の黒田東彦総裁は長期金利の変動許容幅の拡大について「明らかに金融緩和の効果を阻害する」と明確に否定していただけに、市場は虚を突かれた格好になった。黒田総裁は12月20日の記者会見で、今回の政策転換について「景気にはまったくマイナスにならない」と、これまでの説明を一変させた。変節の背景には何があるのか。鍵は11月10日の岸田文雄首相と黒田総裁の面談にあったようだ。

「余分なことまで会見で言わないように」。朝日新聞によると、11月10日午後、首相官邸を訪れた黒田総裁は、面会した岸田首相からこう釘を刺されたという。岸田氏が問題視したとみられているのは、大規模な金融緩和の維持を決めた9月22日の金融政策決定会合後の記者会見だったとされる。

当時、与党内では、「急激な円安に伴う物価上昇」を懸念する声が強かった。利上げを急ぐFRB(米連邦準備理事会)に対して、頑として金融緩和を続ける日銀。日米の金利差に起因すると見られる円安を前に、与党内には黒田総裁の姿勢を疑問視する声が絶えなかった。にもかかわらず黒田総裁は9月22日の記者会見で「当面、金利を引き上げることはないと言ってよい」と述べ、緩和を引き締めに転じる時期について「2~3年先」と自身の任期後にまで言及した。次期総裁の任命権を持つ岸田首相の手足を縛りかねない発言に、苦々しい思いを抱いたのは想像に難くない。

しかし、その一方で、日銀は政府が発行する国債を市場から大量に購入することで、金利を低位に抑え込んでいる。大規模な金融緩和の転換は財政問題へと飛び火しかねないリスクを孕む。日銀の姿勢を批判することは簡単だが、その処方箋は難題だ。

事実、日銀の国債保有残高(国庫短期証券を除く時価ベース)は、9月末時点で535兆6187億円と、発行残高の50.3%を占め、初めて5割を超えた。異次元緩和がスタートした10年前は約10%であったことを考慮すれば、いかに日銀が国債を購入し、金融緩和を継続してきたかがわかる。

だが、「国の借金の半分以上を日銀が引き受けている構図はやはり異常だ。いずれ是正される局面が訪れるだろう」(市場関係者)とみられていた。そのとき、国の財政運営はどうなるのか。多額の公的債務を抱えるものの、日本のソブリン格付けは最高水準に維持されている。しかし、このまま大規模な財政出動を続ければいずれ限界が来るかもしれないと危惧されている。

日銀関係者によると、大規模金融緩和の継続に固執する黒田氏に対して、日銀事務方は緩和を徐々に手仕舞うべきと考えていたという。2022年3月に長期金利の変動幅を上下0.25%程度まで広げた真意は、日銀事務方によるステルステーパリング(緩和縮小)で、その幅をさらに広げていくことで、緩和をなし崩しすることが狙いだったというのだ。今回0。5%程度まで変動許容幅を広げたのは、その延長にあると言っていい。変節したのはまさに黒田総裁その人ということだろう。

そうしたなか、はやくもポスト黒田の人事に注目が集まっている。有力候補と目されているのは前日銀副総裁の中曽宏氏(東大大学院経済学研究科金融教育センター特任教授、大和総研理事長)と、中曽氏と同じ日銀プロパーで、黒田総裁の懐刀として現在、日銀事務方を統括している雨宮正佳副総裁だ。「中曽氏はロンドン事務所勤務や国際決済銀行への出向など主に国際畑が長く、海外の通貨マフィアなど海外要人と広い人脈がある。一方、雨宮氏は若い頃から一貫して企画畑で育ち、エリート街道まっしぐらで副総裁まで上り詰めた逸材」(日銀関係者)という。

さらに、政界ではこの2人のほか、日銀出身で日本総合研究所理事長の翁百合氏や元日銀副総裁の山口廣秀氏(年金積立金管理運用独立行政法人経営委員長)の名前も浮上している。「日本長期信用銀行に勤務した経験のある岸田首相だけに、経済運営における日銀総裁の重要性を政界の誰よりも熟知している。女性の総裁登用というサプライズ人事があるかもしれない」(与党幹部)という指摘も聞かれる。

岸田政権の支持率低下と統一地方選

2年目に入った岸田政権だが、国民からの支持率は低下の一途を辿っている。昨年12月中旬の全国紙などの支持率調査では政権発足以来最低の20~30%台で推移しており、いずれの調査でも不支持率が支持率を上回っている。「岸田政権は存亡の危機という表現は行き過ぎかもしれないが、かなりきわどい立場になりつつある」(野党幹部)と言っていい。

旧統一教会との関係や政治資金をめぐる不正などの問題が支持率低下に直結している面は否めないが、コロナ禍が継続するなか、過度の円安やインフレ進行に伴う生活難に対して有効な手を打てないでいることへの失望感も強い。特に唐突に防衛費の引き上げ「GDP2%」を提唱し、これから必要となる防衛費増を既存の余剰や効率化により財源を捻出し、それでも足りない一年あたり約1兆円強の財源を税金(国民負担)で賄う方針を自民党税調に指示したことも支持率低下に拍車を掛けたとみられる。

また、看板施策として打ち出した「新しい資本主義」についても、NISAの拡大(少額投資非課税制度)の拡大程度しか打ち出せておらず、「資産所得倍増プラン」としては力不足とみられている。また、肝心な賃金引上げによる富の再分配と成長の加速も未だ道半ばだ。

岸田政権の低支持率を見る限り、4月の統一地方選も苦戦が予想される。4月9日には道府県と政令指定都市の首長・議員選が投開票され、同23日には政令市以外の市区町村の首長・議員選挙が投開票される。その数は981件にのぼる。「統一地方選挙の結果次第によれば、岸田政権のレームダック化が決定的になる可能性もある」(野党幹部)と指摘される。

G7サミットと総選挙の行方

そうした支持率低下に歯止めをかけると期待されているのが、岸田首相の地元・広島で5月に開催される主要7カ国首脳会談(G7サミット)だ。このG7にはウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインで参加する見通しで、岸田首相は年頭所感で「力による一方的な現状変更や核による脅しを断固として拒否する強い意思を、歴史に残る重みをもって示していきたい」と強調した。4月の統一地方選挙とG7をテコに、岸田首相は解散総選挙を決断する可能性も囁かれている。

日本経済はこうした政治日程を睨みながら、政府の政策運営に大きく左右されることになろう。繰り返しになるが最大の焦点は4月の次期日銀総裁人事に注がれる。岸田首相は、次期総裁の就任と合わせて、政府と日銀が2013年に結んだ2%の物価を目標とするアコード(共同声明)を見直す方針を示している。どういった内容の新アコードになるのかは未知数だが、誰が次期総裁に就いても、待っているのは黒田総裁が10年近く続けてきた異次元緩和の後始末であり、「出口戦略」という難題であることには変わりはない。

異次元緩和の終焉は、とりもなおさず、世の中に「金利が復活する」ことにつながる。このことは同時に、これまでゼロ金利下で先送りされてきた過剰債務企業や個人の淘汰が始まることを意味する。日本経済は金利上昇という痛みを乗り越えなければならない年となろう。

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2022年の国際情勢のから日本が学ぶべきこと https://seikeidenron.jp/articles/21939 https://seikeidenron.jp/articles/21939#respond Fri, 30 Dec 2022 05:06:26 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21939 ロシアの侵攻によって国際政治は新たな局面を迎えた

2022年も世界情勢は大きく動いたが、やはり最も世界を震撼させたのは2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことだ。最近、筆者も所属する国際安全保障学会や日本防衛学会など外交・安全保障の専門家が集う学術大会があったが、両学会とも今年はウクライナ問題でほぼ独占された。それだけ、国際政治業界の中では震撼させる出来事だったということだ。

当然ながら、学者は予想屋ではない。学者だから情勢の展望を読み解けるというのは大きな誤解だ。侵攻以前、筆者周辺の軍事・安全保障、東欧ロシア専門家の多くは侵攻することはないというスタンスだったように思う。だが、ロシア軍がウクライナ国境付近に異常に集中するようになり、プーチン大統領の脅しはハッタリではないという意識が徐々に強まっていった。筆者も当初は侵攻するリスクを考え、プーチン大統領がGo!の指令を出すとは思っていなかったが、ロシア軍の異常な集中によって徐々に意識を変えていった。

そして、2月24日以降、国際政治は新たなプロローグを迎えることになった。侵攻という決断を下した背景について、プーチン大統領が描くロシアの勢力圏、積もりに積もったNATOの東方拡大への不満など多くの理由が挙げられているが、本当の真意はプーチン大統領にしかわからないだろう。

戦況は次第にロシア軍の劣勢に

しかし、誰もが予想したように、アメリカを主導に欧米諸国は一斉にロシアへの制裁措置を発動し、ウクライナへの軍事支援を強化するようになった。プーチン大統領は当初、首都キーウを軍事的に掌握し、ゼレンスキー政権を崩壊に追いやり、親ロシア的な傀儡政権を樹立することを想定していただろうが、戦況が侵攻するなか、軍事支援を受けたウクライナ軍の攻勢が目立つようになり、ロシア軍の劣勢が顕著に見え始めるようになった。

それにより、表立って焦った顔は見せないものの、想定外の連続にプーチン大統領は内心焦り始めた。それを顕著に示す結果になったのが、9月の部分的動員令の発令とウクライナ東部南部4州のロシアへの一方的併合だ。プーチン大統領は9月下旬、軍隊経験者などの予備兵を招集するため部分的動員令を発令した。これはウクライナでの戦況で劣勢が続き、兵士のマンパワーを補うのが狙いだったが、それに反発する動きがロシア国内で一気に拡大した。

モスクワやサンクトペテルブルクなど各地では部分的動員に反発する市民と治安部隊との間で衝突が相次ぎ、多くの逮捕者や負傷者が出た。数十万人規模でフィンランドやジョージア、カザフスタンなど隣国に避難する動きも激化した。また、プーチン大統領はドネツクとルハンシク、サボリージャとヘルソンの東部南部4州でロシア編入の是非を問う住民投票を行い、同4州をロシアへ併合する条約に署名した。国際社会の誰もがそれを認めないが、プーチン大統領にとってはロシア国内ということになり、ウクライナ軍による同4州への進軍は“ウクライナの侵略”と解釈されることになった。

併合後、ロシアは同4州での公用語をロシア語にするなど“ロシア化”を一層進める計画だったと思われるが、ここでもロシア軍の劣勢がみられ、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は11月、併合したヘルソン州から軍部隊を撤退させる方針を明らかにした。ロシアはこれを戦略的撤退と内外にアピールしたいところだが、能力的撤退ということに反論はないだろう。自ら併合を堂々と宣言にもかかわらず、併合した地域から軍を撤退させたということで、これはプーチン大統領にとって大きな政治的汚点になったことは間違いない。焦り始めたプーチン大統領は、部分的動員と4州併合という手段を通して劣勢を覆そうと狙ったが、それは悪いプレゼントとしてそのまま返品されることになった。

中国も距離を置きつつある

一方、プーチン大統領が失ったものはウクライナでの戦況だけではない。侵攻という決断を下したことで、プーチン大統領は欧米との関係が冷戦後最悪になるということは織り込み済みだっただろうが、中国やインドなど非欧米世界の対応を注視していたと筆者は考える。

特に中国に関して、プーチン大統領も中国が対アメリカでロシアを戦略的共闘パートナーと位置づけていることは承知しており、侵攻後は中国の存在が大きかった。欧米が制裁を強化するなか、中国はロシアへの非難や制裁を回避し、エネルギーなど経済分野ではむしろロシアとの結びつきを強化してきた。中国のそういった対応がプーチン大統領にとって重要だったことは間違いない。

しかし、部分的動員令と4州の一方的併合、そして核使用が叫ばれるようになり、中国はロシアと距離を置く姿勢を示し始めた。9月中旬、侵攻以降対面で初めてプーチンと会談した習近平国家主席は、ウクライナ問題に話題が移ると終始無言を貫き、プーチン大統領が「中国のわれわれへの疑念を理解している。中国の中立的な立場に感謝する」と伝えた。ここで初めて、中国がロシアと距離を置く姿勢が間接的にも示された。

その後も、習国家主席は11月上旬、ドイツのショルツ首相と北京で首脳会談を行った際、欧州での核戦力の使用に反対すると立場を明確にし、同月中旬、バイデン大統領と会談した際もウクライナでの核兵器使用や威嚇に反対すると表明した。プーチン大統領はこれまでのところ習氏の反対表明に言及していないが、中国との関係を悪化させたくないロシアにとってそれはかなりの政治的インパクトがあったようにも思える。

また、中国ほどではないが今後世界第3位の経済大国になるとみられるインドの動向も、プーチン大統領にとっては重要だろう。インドも中国同様に9月以降ロシアへの態度を硬化させている。例えば、インドのモディ首相は9月にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでプーチン大統領と会談し、「今は戦争や紛争の時代ではない」と初めてウクライナ侵攻を批判し、同月、国連総会の場でインドのジャイシャンカル外相もウクライナ侵攻によって物価高やインフレが生じたと不快感を示した。その後、インドのジャイシャンカル外相は12月上旬、欧米による制裁によりロシアで重要品目が深刻化し、ロシア政府が鉄道や航空機の部品など500品目あまりの必要リストをインドに送ったなか、ロシアに対して輸出できる製品リストをプーチン政権に提供したと明らかにした。

武器供与などでインドとロシアは伝統的友好関係にあり、侵攻を批判したとはいえ、インドにとってロシアが重要な経済パートナーであることは変わりがない。侵攻は中国とインドに衝撃を与えたものの、両国とも今後ロシアと”遠からず近からず”の立ち位置をキープし、それぞれの国益を第一に追求していくことになる。

世界はより多極化へ

以上のように振り返られるが、ロシアによるウクライナ侵攻は安全保障上の伝統的脅威が依然として終わっていないことをわれわれに強く印象づけた。しかし、それによってロシアを取り巻く情勢は一気に冷え込み、欧米とロシアの亀裂が冷戦終結後最悪になり、ロシアによる経済の武器化(たとえばロシア産天然ガスの欧州への供給)だけでなく世界的な物価高パンデミックという経済領域への損害が大きくなった。しかし、日本がこの悲劇から教訓として学ぶべきこともある。

まず、世界がより多極化に向かっているということだ。侵攻直前、バイデン大統領は早々に米軍がウクライナに関与することはない意思を表明した。ウクライナはNATOに加盟しておらず、アメリカの軍事同盟国でもなく、泥沼化した対テロ戦争や中国との戦略的競争に直面するアメリカとしては、ロシアと軍事的に衝突する余裕はない。しかし、それは今日のアメリカは、超大国だった20年前あたりのアメリカとは別人で、アメリカ主導の欧米の世界的影響力が相対的に低下し、中国やインド、ロシアなど非欧米世界の影響力が高まってきていることを意味する。

すでに、2021年のアメリカのGDPが前年比2.3%減少の20兆9349億ドルだったのに対し、中国は前年比3.0%増の14兆7300億ドルとなり、2021年の時点で中国のGDPはアメリカの7割にまで到達しつつあり、2033年頃には中国はアメリカを逆転するとの予測もある。グローバルサプライチェーンが毛細血管のようになっているように、経済の相互依存は明確であり、中国はリスクを冒してまで強硬な姿勢に転じることは最大限回避するだろう。しかし、権力の相対化により、中国にとって行動できる政治的自由の領域が拡大していることも事実であり、「核心的利益」の追及など中国が譲れないと定めるイシューで緊張が高まれば、行動できる自由に沿って強硬な行動に出る恐れも排除できないだろう。われわれはそういった国際政治のパワーバランスの変化を常に注視する必要がある。

また、1つ目と関連するが、米中対立など大国間対立が顕著になる一方、それとは一線を画す、距離を置く、嫌気を示す第3世界が拡大しているということだ。いわゆるグローバルサウスには経済発展が目覚ましい国々が多く、米中とも今後の世界経済の中心がアジアになるとみている。

第3世界の声として、例えば、インドネシアのルトノ外相は9月、国連の場で「ASEANが新冷戦の駒になることを拒否する」との見解を示し、第2次世界大戦勃発までの動きと現在の対立プロセスが似通っており、世界が間違った方向に進んでいると懸念を示した。また、アフリカ連合のサル議長(現セネガル大統領)も国連総会でウクライナ情勢などの大国間対立に言及し、アフリカは新たな冷戦の温床になりたくないとの意志を示している。世界が流動的に変化するなか、われわれは大国間対立だけでなく、こういった第3世界の影響力も高まってきていることをウクライナからの教訓として肝に銘じておく必要があろう。

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2022年の経済を象徴する3つ「ウクライナ侵攻」「FRB利上げ」「中国ゼロコロナ」 https://seikeidenron.jp/articles/21925 https://seikeidenron.jp/articles/21925#respond Thu, 29 Dec 2022 01:39:19 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21925

ロシアのウクライナ侵攻で幕開けした2022年は、エネルギー、穀物価格を起因に世界的なインフレが嵩じ、その封じ込めもありFRBなど欧米の中央銀行は金融引き締めに転じた。同時に中国のゼロコロナ政策が世界経済の重しとなった一年であった。

ウクライナ侵攻の後遺症はいずれ跳ね返ってくる

2022年はまず2月末のロシアによるウクライナ侵攻に塗り尽くされた1年であった。「ウクライナ侵攻前」と「ウクライナ侵攻後」とで世界経済は一変した。それほど侵攻は突然であり、常識を逸するものであった。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の独立国家承認と、NATO(北大西洋条約機構)の脅威増大を大義として侵攻を正当化するが、世界の常識からかけ離れた理屈であり、自国のエゴで隣国を侵攻していいということであれば、世界秩序は崩壊する。到底容認できるものではない。

ウクライナ侵攻を受け、日本を含む欧米諸国はロシアへの制裁に乗り出し、ロシアからの輸入に厳しい制限をかけた。事実上の経済封鎖を意図したものだ。同時に国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの複数の銀行を排除し、アメリカはロシア中銀の在米資産を凍結、ルーブル防衛に外貨準備が利用できないよう制裁を課した。外貨準備に係るIMFの引き出し権も封じられた。仮想通貨も封じられ、タックスヘイブン(租税回避地)に置かれたプーチン氏やプーチン氏を支えるオリガルヒ(新興財閥)の海外資産も凍結の憂き目にあっている。

だが、制裁には中国という抜け道が存在した。中国の中央銀行である中国人民銀行とロシア中銀は1500億元(約2兆7400億円)規模の通貨スワップ協定を結んでおり、中国が金融面でロシアを支えた。その際、「ロシア中銀産出する原油や天然ガス、保有する金は有効な担保になっている」(市場関係者)とされる。中国はロシアのウクライナ侵攻に明確な批判を避けており、ロシアから安価な原油、天然ガスの購入を行っていると伝えられる。また、インドもロシアから武器の輸入の7割を頼っており、原油を安く購入するなどロシアの外貨獲得を手助けしている。

ロシアのウクライナ侵攻は当初こそ勢いがあったが、長期化するにつれてウクライナ軍の反攻が勢いを増している。ロシアが一方的に併合を宣言した東部5州についてもウクライナが奪還しつつある。このまま戦争が長期化すれば、プーチン氏は2024年の大統領選で再選されるかどうかは不透明だ。ウクライナ侵攻の後遺症はいずれロシアの国内経済に跳ね返ってくる。

FRBの利上げと異次元金融緩和の修正

ロシアのウクライナ侵攻とともに2022年の世界経済の潮流を決定付けた2つ目の要素はFRB(米連邦準備理事会)による急速な利上げであろう。FRBは3月にそれまでのゼロ金利政策を解除して以降、矢継ぎ早に金利を引き上げている。6月から4会合連続で、通常利上げ幅の3倍にあたる0.75%の利上げを行い、インフレの封じ込めを急いだ。さすがに景気への配慮から12月14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅を0.5%に縮めたものの、3月からの利上げ幅は計4%を超え、政策金利は4.25~4.5%まで上昇している。

FRBの連続利上げにかかわらず、アメリカの11月の消費者物価上昇率は7.1%と依然として高水準で、労働需給もタイトで賃金上昇を背景にした物価上昇圧力は強い。FRBの最終利上げ到達点は5.1%に引き上げられており、パウエルFRB議長は2023年度中の「利上げ打ち止め」に否定的な見方を示している。

基軸通貨である米ドルを司るFRBの利上げは、世界のマネーフローを大きく変化させた。それまでの世界的な金融緩和で新興国に流入した大量のマネーは、FRBの利上げとともにアメリカに還流し始め、世界経済を冷やしている。

日本もその埒外ではない。日米の金利差に起因する円安進行もその一つだ。3月初めまで1ドル=115円程度で安定していた円相場は秋には140円台まで下落した。半年間で30円も円安進行に前に政府はついに9月22日に約24年ぶりの円買い・ドル売り介入に踏み切った。にもかかわらず輸入物価の急騰もあり、10月の消費者物価(生鮮食料品を除く)上昇率は3.6%まで高まっている。

円安進行と輸入物価の急騰に消費者は危機感を強めている。そうした声は政治の場にも持ち込まれた。政府は2013年に日銀と結んだ政策連携に関する共同声明(アコード)の見直しに着手。日銀は12月19~20日の金融政策決定会合で大規模金融緩和の修正に動いた。長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げるもので、実質的な利上げに等しい。黒田東彦総裁の任期満了を来年4月に控え、まさにアベノミクスの象徴だった異次元緩和は転換点を迎えた。

黒田総裁が10年近くにわたり推し進めてきた「異次元緩和」はいわば日本経済を舞台にした「壮大な実験」だったが、その実験の成否はいずれ歴史が証明しよう。

また、FRBの利上げの影響は、11月に仮想通貨交換業大手のFTXトレーディングの経営破綻に波及したことも特筆に値する。負債総額は7兆円規模にのぼると見られており、仮想通貨業界では過去最大の経営破綻だ。

コロナ禍を受けた世界の中央銀行による大規模金融緩和や巨額な財政出動により、市中にばら撒かれた大量のマネーが、仮想通貨に流れ込み「仮想通貨バブル」が生じていたことは確かだ。FTXの破綻は起こるべくして起こったバブルの崩壊を意味する。

ゼロコロナ政策で中国の経済成長失速

2022年の世界経済を象徴する3つ目の要素は、中国のゼロコロナ政策であり、いまや世界第2位のGDPを誇る中国の経済成長を失速させている。

中国ではゼロコロナ政策で景気が落ち込むなか、財政と金融が同時に悪化する悪循環に陥っている。そのツケは最終的に銀行のバランスシートに回る。特に不動産融資の焦げ付きは最大の懸念材料だ。

中国の銀行の不動産融資残高は融資全体の21~22%を占める。バブル期に日本の銀行が投じた不動産融資の割合をも上回る水準だ。なかでも地方の中小銀行による不動産融資の割合は高く、その多くがいま不良債権化しつつある。「経営危機に瀕している中国恒大集団に象徴されるように、不動産開発企業が身の丈を超える負債を膨らませて過剰な新規物件を供給し、銀行は当該開発企業向け融資と物件購入のための住宅ローンでバランスシートを拡大させて行った。そのバブルが逆回転し始めている」(中国ウォッチャー)という構図だ。

この危機を封じるために中国政府は中小銀行に3200億元(約6兆3000億円)の公的資金を注入することを決めた。2020~21年に投じた2100億元(約9兆6000億円)に続く第2弾の資本注入だ。これで事態が収束するとは誰も思っていない。預金の取り付け騒ぎはそうした庶民の危機意識を表している。

7月には河北省で預金取り付け騒ぎが起こった。もともとは4月下旬から河南省の4つの銀行が預金の払い出しを停止していたのだが、その理由について「システムのバージョンアップのため」と説明していたのだが、いつまでたっても払い戻しは再開されないばかりか、事実上の店舗閉鎖状態となったことに預金者の怒りが爆発、大規模な抗議デモとなったものだ。この事態を重く見た中国政府は7月11日に預金者向けの救済策を発表し、同15日から政府が預金支払いの肩代わりを開始した。ただ、肩代わりはまず5万元(約100万円)以下の預金に限られ、それ以上はこれからということで不安は完全には払拭されていない。

預金取り付け騒ぎとなった4行は「村鎮銀行」と呼ばれる農村部の金融ニーズに応えるために設立された小規模な地域金融機関で、中国銀行業協会によると、2019年末時点で全国に1630行あり、資産の合計額は1兆6900億元に達する。4行の取り付け騒ぎが他の村鎮銀行の信用不安に飛び火すれば、全国的な社会不安を惹起しかねないため政府が肩代わりすることで封じ込めを図ったわけだ。払い戻しに投じる資金は8000億円にも上ると見られている。

中国の債務膨張は金融機関のみならず、国全体に及んでいる。国際決済銀行(BIS)が12月5日に公表した中国の金融機関を除く債務残高は6月末時点で、51兆8744億円(約7100兆円)で、国内総生産(GDP)の295%の規模にまで膨らんでいる。同水準は日本初の金融危機が懸念された1998年の日本の水準(296%)にほぼ匹敵する。最大の要因は感染力の強い変異型のオミクロン株が蔓延し、上海など主要都市がロックダウン(都市封鎖)に追い込まれたことにある。新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」による景気の悪化だ。

11月~12月にゼロコロナ政策に対する大規模な抗議デモが中国各地で頻発したことを受け、習近平国家主席はゼロコロナ政策の一部緩和に踏み込んだが、足元ではコロナ感染が再拡大する兆しがあり、予断を許さない。

2023年はどういう世界の風景になるのか。ロシアのウクライナ侵攻の終結とFRBの利上げ打ち止め、中国のコロナ禍からの脱却が期待されるのだが……。

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中国のゼロコロナ緩和とネットでつながる反既得権益層 https://seikeidenron.jp/articles/21943 https://seikeidenron.jp/articles/21943#respond Thu, 29 Dec 2022 01:00:39 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21943 国内の不安が一気に噴出

中国の習近平国家主席は2022年10月に3期目をスタートさせるやいなや、大きな反発に直面することになった。11月24日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市で10人が犠牲となる火災が発生したことがきっかけとなり(当時火災があったアパートでは外出禁止など厳重な封鎖措置が行われており、それによってレスキュー隊が到着できなかったという)、反ゼロコロナを訴える反政権デモが国内外に拡大。

北京や上海など中国各地だけでなく、ロンドン、パリ、東京、シドニーなど各国に広がり、国外に在住する反政権的や学生らが参加した。そして、習政権は12月7日、感染拡大を徹底的に抑える目的で3年あまりにわたって敷いてきたゼロコロナ政策を大幅に緩和させることを発表した。

ゼロコロナ政策によって市民は日常生活を大幅に制限され、企業は安心して経済活動ができなくなった。その積もりに積もった経済的、社会的不満の声が一つの出来事をきっかけに一気に噴出した形だ。

10月の共産党大会前後にも、北京市北西部にある四通橋で、「独裁者習近平を罷免せよ」「文革ではなく改革を、PCR検査ではなく食糧を、ロックダウンではなく自由」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられ、上海でも同様の出来事があった。この反ゼロコロナをめぐる最近の動向から、筆者には2つのことが脳裏に浮かぶ。

3期目スタートから躓けない習氏

まず、緩和に踏み切った習政権の思惑だ。ここからは2つの背景が想像できる。ゼロコロナ政策も影響し中国の経済成長率は鈍化傾向にあり、習政権にはそれによって国民の不満が政権に向くことを警戒している。

習氏は10月に3期目をスタートさせたばかりであり、共産党大会での演説では、“中華民族の偉大な復興”、“中国式現代化”、“社会主義現代化強国”、そして“台湾統一”などシンボリックな言葉を繰り返し、国民からの忠誠心、愛国心を高めるように努めた。それなのに政権発足当初から躓くわけにはいかず、反政権的な流れを弱めるためにもゼロコロナ緩和に踏み切ったことが考えられる。ちなみに、ゼロコロナ政策を徹底しても、最近中国では新規感染者が増加傾向にあり、ゼロコロナ自体存在力を失っているとも言えるが。

また、こちらの方が可能性としては低いかもしれないが、習政権が戦略的緩和に踏み切った可能性だ。上述のように、ゼロコロナの有効性そのものが疑われるなか、習政権としては国民の不満を抑え、習政権3期目を平和裏な中で運営していくため、譲歩できるところは譲歩したとも解釈できないわけではない。3期目の政権運営も内政と外交を両輪に利益最適化を追求していくことになるので、柔と豪をバランスよく使い分けることが重要となる。今回の緩和もその一環の可能性もある。

グローバルにつながる既得権益層への宣戦布告

もう一つは、筆者には反ゼロコロナが、若い世代による既得権益層への“宣戦布告”であり、しかもそれがグローバルなレベルで一種の連帯感、ネットワークを生んでいるという点だ。

例えばコロナ禍の2020年、東欧のベラルーシでは同年8月9日に大統領選挙が実施され、欧州最後の独裁者といわれるルカシェンコ大統領が勝利したが、それ以降、投票の不正や即時退陣を訴える市民の反政府デモが拡大した。

タイでは7月以降、プラユット首相の退陣や憲法改正、反政府団体・活動家への弾圧停止などを求める学生・民主団体による抗議デモがバンコクを中心に激化し、デモ隊は国内で議論すること自体がタブーとなる王室の改革を求める声を上げるなどした。

そして、2019年に激しい民主化デモが香港で起こったが、2020年になり、一部のデモ参加者は欧米諸国に協力をネット上で呼び掛けるだけでなく、ベラルーシやタイなど国家権力に挑戦するデモ参加者たちへエールを送るなど、一種の国際的連帯感を生みだした。

ベラルーシやタイのデモ参加者もネット上で香港のデモ参加者と関係をつながりを構築し、タイでは一部の参加者が、「香港は国であるので香港に独立を。香港はわれわれに多くの支援をしてくれた、われわれはデモにおいて香港モデルをお手本とする」などとスローガンを掲げて歌うデモ参加者の姿が目撃され 、ベラルーシでも「香港を自由にしろ」と書かれた旗を持ってデモ行進する参加者がいた。香港でも民主活動家たちがタイ領事館前で「タイの人々を支持する、抗議デモ参加者への暴力を非難する」など抗議する声を上げた。抗議デモ隊の多くは若い世代で、これらはグローバルなレベルでつながる既得権益層への宣戦布告とも表現できよう。

今回の反ゼロコロナでも、ロンドン、パリ、東京、シドニーなど若者たちが連携し、共産党という既得権積層に訴える姿が顕著になった。これは2020年の香港、ベラルーシ、タイをつないだグローバルネットワークも極めて類似(もしくは同じ)している。若い世代による既得権益層への宣戦布告は、イラクやイラン、チリやパキスタン、ナイジェリアなど近年各地で見られる。今後も人口爆発が予想されるなか、若い世代による既得権益層への宣戦布告はもっとエスカレートする可能性がある。今回の反ゼロコロナもこの文脈でとらえることもできよう。

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安倍元首相銃撃事件に振り回された一年【2022年政治10大ニュース】 https://seikeidenron.jp/articles/21909 https://seikeidenron.jp/articles/21909#respond Wed, 28 Dec 2022 03:51:22 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21909

2022年の国内政治は、安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に銃撃され、死亡した事件に大きく振り回された。歴代最長政権を率い、辞職後も自民党最大派閥の会長として多大な影響力を持つ安倍氏の急死により、自民党内のバランスが変化。岸田文雄首相が安倍氏の葬儀を「国葬」と決めたことをめぐっても世論が真っ二つに割れ、犯行のきっかけとなった旧統一教会は社会問題化した。10大政治ニュースをランキングにまとめ、一年を振り返る。

第1位 安倍元首相銃撃され死亡、国葬めぐり世論二分

安倍元首相は7月8日の午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で演説していたところ、歩み寄ってきた男に銃で撃たれ死亡した。享年67歳だった。

岸田首相は自ら主導して1967年の吉田茂元首相以来となる国葬で弔うことを決めたが、決定プロセスの不透明さなどに批判が殺到。国葬当日は一般向けの献花台に市民による長蛇の列ができた一方、各地で国葬反対を訴えるデモが行われるなど国論が二分された。岸田政権は国葬を政権浮揚につなげる狙いだったとみられるが、目論見は見事に外れた。

安倍元首相の「国葬」で世論二分 政府は丁寧な説明を

2022.7.31

第2位 ロシアがウクライナに侵攻、核危機に

海外の出来事だが、ロシアによるウクライナ侵攻は国内政治にも大きな影響を与えたため第2位にランクイン。

ロシアは2月24日に侵攻を開始。当初は短期決戦でゼレンスキー政権を崩壊させる狙いだったとみられるが、ウクライナ側の激しい抵抗により長期化。欧米の武器支援を背景に一部地域ではウクライナが押し戻すなど激戦が続いている。第二次世界大戦以来ともいわれる本格的な戦争を目の当たりにし、日本国内でも防衛力強化を求める声が高まる契機となった。

»【特集】ロシア、ウクライナ侵攻 崩れる国際秩序

第3位 旧統一教会が社会問題化

安倍元首相の銃撃犯が、犯行動機について「旧統一教会に家庭を崩壊されたことへの恨み」と話したのを機に、教会への高額献金問題などが社会問題化。自民党を中心に教会と国会議員や地方議員と教会との接点が次々と明らかとなり、岸田首相は局面打開に向けて内閣改造を前倒しで実施した。さらに、世論の教会への激しい反発を受けて政府・与党は被害者救済法案を国会に提出。野党との協議を経て12月10日の参院本会議で可決、成立した。

支持率低迷の岸田内閣 安倍元首相国葬、国論二分の理由を振り返る

2022.11.17

第4位 岸田政権の閣僚相次ぎ辞任、支持率低下

岸田首相は旧統一教会との接点が見つかった山際大志郎経済再生担当相を内閣改造でも続投させたが、さらなる接点が次々と発覚。追及に対してあいまいな説明を繰り返す山際氏への批判が高まったため、ついに事実上更迭した。死刑執行の職務を揶揄した葉梨康弘法相、政治資金問題が浮上した寺田稔総務相も相次いで辞任。いずれも首相の決断が遅かったことから国民の不満が噴出し、一部の世論調査では内閣不支持率が50%を超えた。

崖っぷちの岸田政権 早くも気になるポスト岸田の本命、ダークホースはこの人だ

2022.12.1

第5位 歴史的な円安・物価高に

ロシアによるウクライナ侵攻を機に、世界的にエネルギー価格やウクライナなどが原産国である穀物の価格などが高騰。アメリカではインフレ抑制に向けて金利を引き上げたため、ゼロ金利の続く日本との金利格差が広がり円安も急激に進んだ。円ドル相場は一時1ドル150円を超え、1990年以来32年ぶりの円安水準となった。

世界的な物価高に加えて日本国内では円安により輸入品の価格が上昇。物価高に拍車がかかったため、政府は対策に追われた。

円安は良いのか悪いのか? 日本の金融政策の分岐点

2022.5.2

第6位 新型コロナ流行続くも規制は緩和

2020年から続く新型コロナウイルスの感染は2022年になっても収まらず、2022年夏の「第7波」では一日の感染者数が25万人を超えるなど引き続き猛威をふるった。ただ、重症者数は減っていることから政府は水際対策を段階的に緩和し、外国人旅行者の本格的な受け入れを再開。国内でも「旅行支援」を開始し、観光地は賑わいを取り戻している。

マスクはいつ外せるか withコロナを改めて考える

2022.6.21

第7位 参院選で自民圧勝、比例の野党第一党に維新

第26回参院選が7月10日に投開票され、与党自民党が改選過半数となる63議席を獲得する圧勝だった。投開票の2日前に起きた安倍元首相銃撃事件も影響を与えたとみられる。憲法改正に前向きな「改憲勢力」は国会での発議に必要な参院の3分の2議席を維持。野党では衆院で最大勢力の立憲民主党が議席を減らし、日本維新の会が比例代表で立民を上回って第一党となった。

参院選、自民圧勝 改憲勢力3分の2 野党の比例第一党は維新

2022.7.11

安倍元首相急死の影響のなか明日、参院選投開票

2022.7.9

第8位 敵基地攻撃能力保有へ、防衛費増に向け増税も

政府は12月16日、外交・防衛政策の長期指針である「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を改定。防衛関連予算を倍増させることや、戦後初めて敵基地攻撃能力を保有することなどを決めた。自民、公明両党は防衛費増額の財源として法人税、所得税、たばこ税を増税する方針を決めたが、党内の反発に配慮して「2024年以降の適切な時期に実施」と記載するにとどめた。

第9位 衆院定数「10増10減」が決定、候補者調整本格化

いわゆる「1票の格差」を是正するため、衆院の小選挙区の数を「10増10減」する改正公職選挙法が11月に成立。12月28日に施行することとなり、施行日以降に行われる衆院選から適用されることとなった。

全国25都道府県の計140選挙区で区割りが変更され、東京で25から30、神奈川で18から20に増えるほか、宮城や和歌山、広島、山口など10県で選挙区が1ずつ減る。各党ではさっそく候補者の調整が始まったが、特に選挙区が減る地域では調整の難航が予測されている。

10増10減反対論の理由と、政治が都市部の声を反映しない理由

2022.1.14

第10位 米中間選挙で与党・民主党が善戦

アメリカの中間選挙が11月8日に行われ、バイデン大統領率いる与党・民主党が連邦議会の上院で多数派を維持した。下院は共和党が過半数を奪還。バイデン大統領の政権運営は厳しさを増すが、事前予測では上下両院とも共和党が過半数を抑えるとの見方があっただけに、もっぱら民主党が善戦したと評価されている。共和党のトランプ前大統領の影響力が衰えているとの見方もあり、2年後の大統領選への影響が注目されている。

米中間選挙 民主党善戦でトランプ氏以外の候補を求める声強まる?

2022.11.15
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徳川家康になれるか孫正義? https://seikeidenron.jp/articles/21798 https://seikeidenron.jp/articles/21798#comments Tue, 06 Dec 2022 13:45:16 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21798

ソフトバンクグループが11月11日に発表した2022年9月期の連結決算(国際会計基準)は、最終利益が1290億円の赤字(前年同期3635億円の黒字)となった。同グループは投資するソフトバンク・ビジョン・ファンドが大幅な損失を抱えるなど4-6月期に四半期ベースで過去最大の3兆1627億円の赤字を計上、経営不振に陥っていた。このため8月にアリババグループ・ホールディングスの株式を売却し、再評価益4兆6000億円を計上したが、最終赤字から脱せなかった。最終赤字とともに投資家を驚かせたのは、毎四半期の決算発表で、投資家に自説を朗々とプレゼンテーションしてきた孫正義社長が冒頭30分足らずのあいさつだけで引っ込み、説明を後藤芳光最高税務責任者(CFO)に委ねたことだ。この孫氏の行動に、投資家の疑心暗鬼は深まっている。

「アームの爆発的な次の成長」とは

ソフトバンクグループは説明者の交代について事前に「(孫社長は)今季は(英半導体設計会社の)アーム(Arm)の将来の成長に関連するビジネス機会にさらなる時間とエネルギーを集中させることを決意した」ためと説明していた。実際、決算発表の席上、孫氏は今後の決算説明について、「守りに徹するため、攻めの男である自分は当分の間、かかわらない」と宣言、その代わり「数年の間、(NVIDIA(エヌビディアコーポレーション)への売却が破談になった)アームの爆発的な次の成長に私は没頭する」と強調した。

ソフトバンクグループはアーム買収後、アームを非上場化した上で、NVIDIAとアームの合併を進めようとしたが、イギリスなど複数の政府から認可が下りず断念した経緯がある。孫氏が言う「アームの爆発的な次の成長に私は没頭する」とは何を指すのか。単純に「再上場して利益を得る」ことだけが目標とは思えない。
アームは半導体設計で圧倒的なシェアを持つ。「ものすごい技術革新がある」(孫氏)と指摘するように、アームは高い収益力を保持している。今年4-9月期の売上高は1837億円と前年同期比14%も増えた。10月にはアームとサムスン電子の戦略的な提携について話し合うために、孫氏は韓国を訪問している。アームの「爆発的な次の成長」に向けて壮大な絵を描いているようにも見える。

累計投資損益がマイナスに転じたビジョン・ファンド

だが、孫氏がアームに心血を注ぐ背景には、主力のビジョン・ファンドの目を覆う惨状がある。人口知能(AI)など新興企業に投資するビジョン・ファンドは9月末時点で472社に投資しているが、世界的な株安の影響を受け「今の情勢は上場株であれ、未上場株であれ、投資していた会社はほとんど全滅に近い成績になっている」(孫氏)と語るように、巨額な損失を抱えている。

ビジョン・ファンドを組成した2017年からみた累計の投資損益は今年7-9月期には14億ドル(約2000億円)の損失に転じている。663億ドルの利益を上げていた2021年前半のピーク時からの落差はあまりに大きい。

ビジョン・ファンドの損益がこれほど急激に悪化したのは、孫氏の目利き力が低下したということではない。投資の銘柄云々を議論する余地もなく、世界的な市場全体が「リスクオン」から「リスクオフ」へと大きく転換したことにある。まさに「暴風雨が吹き荒れている」(孫氏)と言っていい。

「リスクオフ」へと潮目が転換した最大の要因は米連邦準備理事会(FRB)による急速な利上げだ。ビジョン・ファンドが投資を開始した2017年当時の米長期金利は2%程度であったが、足元では4%程度まで急上昇している。コロナ禍に伴う市場の混乱に続き、ロシアによるウクライナ侵攻が重なり、世界的にインフレが嵩じているためだ。物価上昇を抑え込むためFRBは矢継ぎ早に金利を引き上げてきたおり、いまだ収束の兆しは見えない。

ビジョン・ファンドが投資している暗号資産交換業大手のFTXドレーディングの経営破綻も利上げによる資金繰り難が引き金となった。ソフトバンクグループは同社の1億ドル弱(約140億円)を投資しており、損失計上は避けられない。

記者会見で後藤CFOは、このFTXドレーディングの破綻について、「全体の金額(投資額)に比べると極めて小さい」と指摘、業績への影響は限定的との見方を示したが、FTXの破綻は氷山の一角との市場の厳しい見方もある。「このまま金利上昇が続けば、ビジョン・ファンドが投資する新興企業のいくつかは資金繰りに窮して破綻しかねない」(市場関係者)というわけだ。

厳しい見方をするアナリストの中には「ビジョン・ファンドが投資するスタートアップ企業の持ち分の価値はさらに50~70%は低下しかねない」と分析する向きもある。
そもそもビジョン・ファンドの投資スキームは、低利で調達した資金を元手に、IT分野を中心とした新興企業に投資を行い、その企業価値の向上を果実として得るものだ。その根幹にある低利での資金調達が世界的な金利上昇で逆回転し始めているのが現状と言っていい。厳しい見方をすれば、ビジョン・ファンドのビジネスモデルは崩れつつあるようなものだ。

孫氏も決算会見で「この厳しい情勢の中で、ソフトバンクグループとして取るべき道は何か。ビジョン・ファンドでこのまま投資を続けるべきなのか、それとも、負債の比率を下げて、手元のキャッシュを厚くして、安全運転に舵を切るべきなのか、社内で議論した」と明かしている。ビジョン・ファンドが岐路に立たされていることは確かだ。

マネージド・バイアウトの噂

市場の見方は複雑だ。8月の決算説明で、3兆円を超す純損失を計上したことに孫氏は「しっかりと反省し、戒めにしたい」と語っていたが、それから市場は好転するどころか、GAFAに代表されるIT関連企業の株価が大幅に下落している。「足元の米中間選挙後の市場動向も不透明で、孫氏は説明する意欲を失っているんじゃないか」(大手証券幹部)という見方や、「後継者問題に切り込まれるのが嫌なのではないか」(市場関係者)という見方が浮上している。

SNS上では孫氏の健康を不安視する書き込みもみられる。決算発表で孫氏は元気な姿を見せ、「健康を害したのか」「引退でもするのか」という質問に対して、「決してそうではない。健康そのものでやりがいも気合も十分」と意気込んで見せたが……。

そうしたなか、市場が最も注視するのは、孫氏がマネージド・バイアウト(MBO)するのではないかという懸念だ。「ソフトバンクグループはアリババ株など資産売却を急ぐ一方、その現金収入で自社株買いを加速させている。結果、そう遠くない時期にMBOによって企業としての在り方を見直す可能性がある」(証券アナリスト)というわけだ。MBOによる非上場化する可能性もささやかれている。

ソフトバンクグループのアンカーとしてお宝となっているアリババ株だが、その出資比率は相次ぐ売却により、9月末時点で14.6%まで低下している。さらに、中国政府によるIT企業への規制強化の影響もあり、アリババ株の価値は大幅に減価している。

ソフトバンクグループの財務状況は保有株の売却などで手元流動性は9月末時点で約4兆3000億円もあり、資金繰りに不安はない。しかし、今回のようにアリババ株で4兆6000億円もの利益を計上して決算を調整する余地が狭まっている。

家康の「しかみ像」で復調を誓った孫氏は…

孫氏は8月の決算会見で、徳川家康の「しかみ像」をスクリーンに映し出し、自身も家康のように捲土重来(けんどちょうらい)を期すと強調した。「しかみ像」とは、家康が三方ヶ原の戦いで敗れた姿を描かせ、慢心の戒めとしたとされる絵だ。家康は自身が最も苦しかったときのこの絵を終生忘れることなく、最後は天下人になった。

ソフトバンクの創業以来、数々の窮地に立たされながら、それを見事に跳ね返してきた孫氏。常に「狭い塀の上を歩き続けることに生きがいを見出す」稀有のアントレプレナー孫氏は果たして家康のようになれるだろうか。

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「出口戦略」のババをひくのは誰? 本格化する次期日銀総裁・副総裁人事 https://seikeidenron.jp/articles/21793 https://seikeidenron.jp/articles/21793#respond Tue, 06 Dec 2022 12:38:48 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21793

2023年4月に任期を迎える日銀の黒田東彦総裁の後任人事が本格的に動き出した。本命は副総裁の雨宮正佳氏の総裁昇格だが、その前に立ちはだかるのがほかでもない黒田総裁その人で。黒田氏と雨宮氏は金融緩和の解除時期をめぐる確執から一時、口もきかないほど関係が悪化したとされる。また、今回の人事では副総裁人事も焦点となる。女性エコノミストの起用がささやかれており、支持率が低迷する岸田文雄首相の浮揚策となるか注目される。

日銀プロパーの狙いは“雨宮氏を次期総裁に”

2023年4月8日に任期を迎える日銀の黒田東彦総裁の後任人事にがぜん注目が集まっている日米の金融政策の違いから円が対ドルで乱高下するなか、ひたすら消費者物価2%に固執し、金融緩和を続ける黒田総裁に対する批判はピークに達しつつある。日銀がこのまま過度の為替変動を放置するなら、黒田総裁の任期前辞任の可能性も棄てきれない。

その問題となる後任人事だが、「本命は副総裁の雨宮氏の昇格だろう」(市場関係者)というのがマーケットの共通認識だ。雨宮氏は若い頃から一貫して企画畑で育ち、エリート街道まっしぐらで副総裁まで上り詰めた逸材だ。「酒は飲めないが付き合いは良い」(メガバンク幹部)という人間臭い一面も。

だが、副総裁になるまでは紆余曲折もあった。例えば、雨宮氏は2012年5月に、本来であれば上がりポストの大阪支店長に就いた経緯がある。異例の人事に政界の風雲児的存在だった橋下徹大阪市長(当時)を懐柔するための布石との見方も浮上したが、実際は、「当時、ポスト白川方明総裁をめぐる政治の圧力もあり、日銀内部では伝統的な金融政策を重視する派とそううでない派とが反目していた。この混乱に巻き込まれ将来の総裁候補の雨宮氏が失脚してはならないと、大阪支店に一時疎開させた。企画畑一筋の雨宮氏は家庭の都合もあり地方の支店長を経験していなかったので大阪行きもいいのではないかとなった」(日銀関係者)という。一年後、雨宮氏は黒田総裁の就任に合わせ大阪支店から本店に呼び戻され、再び企画担当に復帰した。

だが、その後も金融政策をめぐる日銀内部の対立は現在も続いている。雨宮副総裁は表面的には黒田総裁を支えているものの、「本質は伝統的な金融政策を支持する日銀マン」(先の日銀OB)と見られる。若い頃、旧大蔵省にも出向経験もあり政府とのパイプも太い。“雨宮氏を次期総裁に” ――。日銀プロパーの狙いはここにある。

著書がよく読まれていると噂の中曽氏

本命は雨宮氏で揺るぎないが、有力な対抗馬も存在する。前日銀副総裁の中曽宏氏(東大大学院経済学研究科金融教育センター特任教授、大和総研理事長)だ。その中曽氏が著した『最後の防衛線 危機と日本銀行』(日経BP日本経済新聞出版刊)が金融界で密に読まれている。今年5月中旬に発売されたばかりで、税込4620円もする大著だが、「現在に通じる内容に引き込まれる」(メガバンク幹部)と評価されている。

本の表題が示すように内容は、1990年代の日本の金融危機と、2008年のリーマンブラザーズの破綻を挟む国際金融危機の最前線で指揮を執った前日銀副総裁が明かす戦いの記録だ。特に著書の第Ⅲ部では、白川方明前総裁の下で開始された各種の臨時異例の金融政策が、現在の黒田東彦総裁の下でどのような変化を遂げていったかについて振り返っている。まさに今に通じるテーマだ。

この中曽氏の著書が金融界でよく読まれている理由について、メガバンク野幹部は、「中曽氏は来年4月に任期を終える黒田総裁の有力後任候補として取り沙汰されている。中曽氏の考え方を知るためには是非、読んでおこうと思った」というのだ。

みずほ銀行がマイナス金利を被る理由

ただ、中曽、雨宮の両氏のいずれが次期総裁についても、待っているのは黒田総裁が10年近く続けてきた異次元緩和の後始末であり、「出口戦略」という名の“ババ”をひく役回りだ。

今夏、そのババの一端が露呈した。みずほ銀行が日銀に預けている当座預金に初めてマイナス金利が適用されたのだ。メガバンクなど大手銀行はマイナス金利の適用を避けるため、有り余る預金を市場運用することで微々たる利鞘を稼いでいたが、それも日銀のコロナオペ等による金利抑制で逆鞘となるなか、マイナス金利の適用を覚悟して当座預金にブタ積みしたという構図だ。

しかし、このマイナス金利の適用でみずほ銀が被る負担は7000万円ぽっちの微々たる金額だ。それをあえてマイナス金利適用と喧伝する背景には、メガバンクによる次の日銀総裁人事への無言の圧力があると市場関係者はみている。

メガバンクへのマイナス金利の適用は今年1月、三菱UFJ銀行が6年ぶりにマイナス金利の適用を受けたのが始まりだ。それから10カ月がたっても日銀がマイナス金利を解除する兆しは見えない。黒田東彦総裁が頑として金融緩和の解除に首を縦に振らないためだ。このため「金融緩和の転換、いわゆる出口戦略へ移行したとする日銀事務方と総裁の間に一時隙間風が吹いた」(日銀関係者)とされる。とくに日銀プロパーの雨宮副総裁の思いは複雑だろう。

繰り返しになるが雨宮氏は次期総裁の最有力視されている。「次期総裁の指名者である岸田首相は財務省と気脈を通じている。雨宮氏はその財務省と良好な関係にあり、次期総裁候補として有力視されている。副総裁には女性活用を意識して翁百合氏(日本総研理事長)の起用が有力だ。黒田総裁の後ろ盾となってきた安倍元首相が凶弾に倒れた今、大規模な金融緩和からの転換は時間の問題だろう」(市場関係者)とされる。

メガバンクなど銀行は金利の世界で生きている。その金利がなきに等しい異次元緩和がこれ以上続いてはたまらない。この思いは日銀の事務方も同じ。金融調節の本丸は金利の上げ下げにあることは確かだ。メガバンクがあえてマイナス金利の適用を選択するのは、雨宮総裁を早く実現してほしいというシグナルにほかならない。

日銀審議委員の力関係に変化

政策変更のシグナルはすでに出始めている。7月の2人の日銀政策委員会審議委員人事だ。金融緩和に積極的な「リフレ派」の急先方と目されてきた片岡剛士氏と、三菱UFJ銀行出身でマイナス金利政策に否定的であった鈴木人司氏の両審議員が7月23日に任期満了となり、その後任にそれぞれ岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏と三井住友銀行上席顧問の田村直樹氏が就任した。

高田氏は元日本興業銀行(現みずほ銀行)出身で、みずほ総合研究所副理事長(エコノミスト)として日本の財政問題に対する危機意識を発信してきた。「国債暴落」や「異次元緩和脱出 出口戦略のシミュレーション」などの著書もある。

また、田村氏は三井住友銀行で中核の経営企画部やリテール部門の統括などを務めてきた。銀行業務の実務に精通したバンカーだ。新しい審議委員はともにメガバンク出身で、リフレ派とは一線を画する、財政規律派と見ていい。

日銀審議委員は日銀の政策決定を行う重要ポストで、黒田東彦総裁をはじめ9人で構成される。審議委員のうち、これまで若田部昌澄副総裁(早稲田大学教授)、片岡剛士氏(三菱UFJリサーチコンサルティング上席主任研究員)、安達誠司審議委員(丸三証券調査部長)、野口旭氏(専修大経済学部教授)の4人は明確なリフレ派で、黒田総裁と雨宮正佳副総裁は金融緩和が好ましいとするハト派であることから、大規模金融緩和が維持されてきた。しかし、高田、田村の加入・交代で審議委員の力関係が変化する可能性がある。

特に、高田氏はみずほ総研時代に筆者の取材に対して、日本の国債が値崩れせずに消化されているのは、「他国の国債と違い、日本国債はそのほぼすべてを国内で消化されているからであり、その中心に日銀の大量購入がある」と語っていた。その上で「比喩的に表現すれば夫(国)が妻(国民)から借金しているようなものだからだが、夫の浪費に妻が愛想をつかす日が近いかも知れない」とも指摘していた。高田氏は審議委員就任直前に自民党の会合に呼ばれ、国債の「Xデー」について講演を行っている。

7月25日に日銀本店で開かれた就任会見で両氏とも言及したのは、マイナス金利政策の功罪だった。高田氏は「金融機関の収益に影響がある一方、物価や経済の改善を促した」と指摘。村田氏は「効果と副作用をチェックして政策を続けるか考えてほしいと言ってきた。今後は日銀の立場としてみていきたい」と語った。

来年春には黒田東彦総裁と2人の副総裁も交代する。残り4カ月を切ろうとするなか、後任総裁・副総裁人事が本格的に動き出すとみられる。日銀の政策変更が予感される。

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長引くウクライナ侵攻で舵取りが難しくなる中国 https://seikeidenron.jp/articles/21749 https://seikeidenron.jp/articles/21749#respond Mon, 05 Dec 2022 12:57:58 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21749 深まるロシアの孤立

ロシアによるウクライナ侵攻から10カ月が過ぎようとするなか、プーチン大統領が当初描いていたウクライナ首都キーウの掌握、それに続くゼレンスキー政権の崩壊、そして親ロシア的な傀儡政権の樹立という“ロシアンドリーム”は、すでにフィクションと化している。

欧米が対露制裁を強化するだけでなく、ウクライナへ積極的に軍事支援を行ったことにより、ウクライナ軍が善戦し、ロシア軍の劣勢が顕著になっている。昨今、プーチン大統領が国民の部分的動員を発令し、東部4州のロシアへの併合を急いで行ったことは、ロシアの劣勢を裏づけるものだ。

侵攻当初の1カ月、ウクライナ軍が何とか持ちこたえ、その間に欧米が軍事支援を行ったことがロシア軍の劣勢を決定づける大きな要因となった。プーチン大統領は劣勢に立たされており、一層孤立している。

対米姿勢でわかる明確な中国とロシアの違い

一方、昨今の国際関係に難しい立場に追いやられているのはプーチン大統領だけではない。中国の習近平国家主席も複雑な国際情勢のなか、頭を悩ませているように感じる。

ウクライナ侵攻以降、中国はロシアを一回も非難することなく、制裁も回避するどころか、経済的にはロシアとエネルギー上の結び付きを強化し、安全保障的には日本周辺で中露の合同軍事演習を活発化させてきた。しかし、ロシアをめぐる緊張が長期化するにつれ、中国も国際社会から“中国はいつまでもロシアと肩を並べる”という圧力を感じるようになり、遂にはロシアと一定の距離を置く姿勢を示唆した。9月中旬、ウズベキスタンでの中露会談の際、プーチン大統領が習国家主席に「中国が抱く懸念や不満は理解する」と述べたことは、その左証と言えよう。

今日の国際関係で、中国とロシアが異にするのは、一つに“グローバルな大国としての野心を持っているかどうか”、もっと言えば“アメリカを戦略的競争相手と位置づけているかどうか”にある。

今のプーチン大統領の脳裏に、“グローバルな影響力を持つ大国ロシア”、“アメリカとの戦略的競争”という概念があるかというと、それは疑わしい。しかし、習国家主席は、“一帯一路によって大国中国の対外的影響力を拡大させる”“政治的、経済的にアメリカに対峙する”というビジョンを抱いており、アメリカを本気で競争相手と位置づけている。よって、中国としては欧米やロシアだけでなく、他の国々の動向にも配慮する必要があり、そういった国々がウクライナ戦争をどのようにとらえているかも十分に察知する必要があるのだ。

中国は中小国・途上国にも気を配る必要あり

今日、欧米や中国、ロシアなど一部の大国を除くと、多くの中小国、途上国は沈黙を守っている……というか、困惑している。9月の国連総会でも、アフリカ連合のサル議長(現セネガル大統領)がウクライナ情勢などの大国間対立に言及し、「アフリカは新たな冷戦の温床になりたくない」との意思を示し、インドネシアのルトノ外相も「東南アジアを冷戦の駒にするべきではない」と発言した。インドネシアのジョコ大統領も、ロシアを孤立させるのは良くないとして秋のG20にプーチン大統領を招待する意向を示している。

また、カンボジアやラオス、ミャンマー、パキスタンやスリランカなど世界には長年、中国から莫大な経済支援を受ける国々が少なくなく、そういった国々は中国がロシアを非難、制裁しないなかではそれに異論は唱えられないという政治的事情もあるが、中国としてはこういった中小国、途上国がウクライナ戦争における中国の立場をどうとらえているかということにも耳を傾ける必要がある。

欧米陣営は虎視眈々と隙を狙っている

仮に、この問題で中国と中国支援国の政治的立場で乖離が強まることになれば、欧米陣営がそこを突くように中国支援国へ経済的支援を強化し、一部の国が中国寄りから欧米寄りへ舵を切る可能性もある。アメリカ・日本・オーストラリア・インドで構成されるクアッド(Quad)、そして先進7カ国は今年、中国の一帯一路へ対抗する措置としてそれぞれ多額の途上国支援策を打ち出した。対外的影響力の拡大を狙う中国は、中小国、途上国が欧米主導の支援策を優先するようになることを常に警戒している。

近年、中国は新型コロナウイルスの真相解明やウイグルや香港の人権問題、台湾有事などをめぐって欧米との対立が先鋭化しているが、それにロシアによるウクライナ侵攻が重なり、中国にとってはより国際関係の舵取りが難しくなっている。

中国にとって対米でロシアは戦略的共闘相手として重要で、今後ともロシアとの関係は維持したい。しかし、プーチン大統領が一線を越えた行動に出始めたことで、今日中国としてもイメージ悪化を避けるため、ロシアとの距離を置かざるを得ない状況になっている。アメリカは対中国でも対ロシアでも姿勢は首尾一貫しているが、中国は欧米、ロシア、そして中小国、途上国というなかでアメリカより難しい立場にあると言えよう。

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中国とインドのロシア離れ プーチン大統領は内外双方で苦境に https://seikeidenron.jp/articles/21741 https://seikeidenron.jp/articles/21741#respond Thu, 01 Dec 2022 14:12:24 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21741 苦しくなるロシアのウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナ侵攻は、“ロシアの劣勢”というより“プーチン大統領の暴走”というもっと深刻な状況に突入している。

プーチン大統領は9月21日に軍隊経験者・予備役を招集するため部分的動員令を発令したが、それ以後ロシア国内では国民の脱出が広がり、今日までにカザフスタンやジョージア、フィンランドやエストニアなどを中心に20万人以上のロシア人が脱出したという。本来対象にならない人々にまで動員が拡大し、北方4島からも動員された人々がいるという。

また、プーチン大統領は時を同じくして、ドネツクとルハンシク、サポリージャとヘルソンの東部南部4州でロシア編入の是非を問う住民投票を行い、9月30日に同4州をロシアへ併合する条約に署名した。併合したということはロシアにとって4州は当然ロシア領土となり、解釈的にはウクライナ軍の4州での軍事活動はそもそも侵略行為となる。そして、併合したのにウクライナ軍に進軍され続けるとなれば、併合を宣言したプーチン大統領にとっては政治的威信、信頼を大きく損なうことになる。こういった状況はロシアの劣勢を顕著に示すものだ。

一方、部分的動員や東部4州の併合というプーチン大統領の決断に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領はNATO加盟に向けて動き出すことを明らかにした。NATOに加盟する中・東欧9カ国の首脳も10月2日、ウクライナのNATO加盟を支持する方針を明らかにした。支持を表明したのはチェコやスロバキア、ポーランドやルーマニア、バルト3国などだが、プーチン大統領が長年NATOの東方拡大に対して強い不満を抱き、それがウクライナ侵攻の背景にあることから、こういったNATOによる動きはプーチン大統領をさらに挑発することになろう。今後、プーチン大統領は一定の地域に影響を抑えられる小型核などを使用する恐れもあろう。

“プーチン大統領の暴走”で進む中国・インドのロシア離れ

プーチン大統領の暴走によって、ロシアを取り巻く外交環境にも大きな変化がみられる。それは中国とインドのロシア離れだ。

侵攻から今日まで、中国は一貫してロシア非難を避け、制裁も一切実行していない。経済的にはロシアとの結び付きが強まってきた。中国税関総署によると、今年5月、中国のロシアからの原油輸入量が前年5月比で55%、天然ガスが54%それぞれ増加し、8月の貿易統計では世界各国からの輸入伸び率が前年8月比で0.3%に留まった一方、ロシアからの輸入が60%増加したとされる。

また、安全保障面でも、中国軍は9月1日から7日にかけて日本海やオホーツク海など極東海域で実施されたロシア主催の大規模軍事演習「ボストーク2022」に参加し、両軍は日本海で機関銃の射撃演習などを行った。それ以降も中露両軍が日本周辺海域で合同航行する姿が目撃されている。こういった現実は、まさに中露の接近、共闘を示すものだろう。

しかし、中国としてもプーチン大統領の暴走には距離を置く姿勢を示し始めた。9月中旬、プーチン大統領と習国家主席がウズベキスタンで約半年ぶりに顔を合わせたが、その際、両者は「この半年間でも世界は劇的に変化したが変わらないものが一つある。それは中露の友情だ」「激変する世界で中国はロシアとともに大国の模範を示し、主導的役割を果たす」と中露関係の重要性を改めて確認し合ったものの、ウクライナ問題に話が移ると、習国家主席は無言を貫き、プーチン大統領が「中国側の疑念や懸念を理解している。中国の中立的立場を高く評価する」と発言した。

これまで、中国がロシアに対してこの問題で苦言を呈したり、不快感を示したりすることはなかったが、9月の会談は両国の間で乖離が生じていることが初めて浮き彫りとなった。

そして、ロシアの伝統的友好国であるインドは最近、中国より明確な態度で反対を示している。インドのモディ首相は9月はじめ、ロシア極東ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムの場でプーチン大統領と会談し、「今は戦争や紛争の時代ではない」と明確にロシアの行動を批判した。インドの外相も9月、国連の場でロシアを名指しで非難することは避けつつも、ウクライナ侵攻によって物価高やインフレが生じたとし、ロシアへの不快感を滲ませた。

核の使用に至る前に

中国は対米でロシアを戦略的共闘パートナーとして、インドは武器供与でロシアを伝統的友好国と位置づけており、両国ともロシアとの関係が冷え込むことは避けたいのが本音だ。しかし、ウクライナ情勢がプーチン大統領の暴走という時代に入ったことで、これ以上は今までのような関係は維持できないという焦りや危機感を抱き始めている。今後、両国とロシアの関係が一気に冷え込むことはないが、中国インドはロシアと“1つの壁で遮る”ような態度で接していくことだろう。

いずれにせよ、プーチン大統領は内外双方で苦境に立たされており、これまでの姿勢から考慮すれば、核というオプションも現実味を帯びてきている。中国やインドのロシア離れがプーチン大統領の暴走に拍車を掛けないことを望むまでだ。

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経済安全保障と台湾問題の狭間で 新たな時代の日中首脳会談 https://seikeidenron.jp/articles/21733 https://seikeidenron.jp/articles/21733#respond Thu, 01 Dec 2022 13:54:20 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=21733 2022年11月中旬、岸田文雄首相は訪問先のタイで中国の習近平国家主席と対面ではおよそ3年ぶりとなる日中首脳会談を行った。岸田首相は中国船による尖閣諸島への領海侵入に加え、今年8月のペロシ米下院議長の台湾訪問の際に中国が日本の排他的経済水域(EEZ)を含む日本近海に弾道ミサイルを発射したことなど、中国の日本周辺での軍事活動について強い懸念を伝えた。

一方、両者は建設的で安定的な日中関係の発展に向け、首脳レベルから事務レベルに至るまで緊密に意思疎通を取っていくことで一致し、偶発的衝突を回避するために防衛当局者が連絡を取り合うホットラインの早期設置、外務・防衛当局の高官による日中安保対話などを進めていくことを確認した。

日中会談では、習国家主席も日中関係が今も昔も重要であることは変わりがなく、新しい時代の要求にあった日中関係を構築したいと言及した。また、岸田首相は中国で実施されるゼロコロナ政策の緩和も呼び掛けたとされる。今回の日中会談から、どのようなことが言えるのだろうか。ここでは2つを挙げてみたい。

双方にとって重要な貿易相手

まず、米中対立の狭間で難しい舵取りを余儀なくされ、台湾有事では日中関係の悪化が想定されるなか、今の時点で日中双方の指導者が会談し、しかも日中関係の重要性を共有し、未来志向的な方向性で一致できた政治的意義は大きい。

近年、日中関係の冷え込みが指摘されるが、現在でも日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、日本企業の脱中国化は脱ロシア化とは比較できないほど難しいのが現状だ。また、中国に進出する日本企業関係者の間でもチャイナリスクへの懸念が拡大しているが、関係悪化のエスカレートを和らげる意味でも今回の会談には少なからず意義があろう。

米中対立が深まり、国内経済の成長率も鈍化するなか、習政権としては日本との経済関係を維持するだけでなく、サプライチェーンなど経済安全保障の視点からも日米をデカップリングさせたい狙いもあろう。その観点では、日本にとってだけでなく、中国にとっても日本は重要な貿易相手である。

台湾問題次第で日中関係の悪化も

一方、今回の会談では台湾問題で大きな亀裂があることが改めて浮き彫りとなった。習国家主席は会談で台湾問題は中国の政治的基盤にかかわるものであり、いかなる者もいかなる理由であっても中国の内政に干渉することは許されないと岸田首相に伝えたという。

蔡英文政権になって以降、中台関係は悪化の一途を辿るだけでなく、同政権がアメリカやオーストラリア、フランスやエストニアなど欧米各国と関係を密にすることで、中国の台湾への不信感はこれまでになく強まっている。今年8月はじめには、米ナンバー3とも言われるペロシ米下院議長が台湾を訪問して蔡英文総統と結束を誓ったことで、中国は報復として台湾を包囲するような軍事演習を活発化させ、複数のミサイルを発射するなどした。中国軍機による中台中間線超えや台湾離島へのドローン飛来なども激増し、台湾を取り巻く緊張はこれまでになく高まっている。

10月の共産党大会で習国家主席は台湾統一は必ずできると自信を露わにした。そして武力行使も辞さない構えを示し、“台湾独立に断固として反対し、抑え込む”ことが党規約に盛り込まれた。ゼロコロナ政策で中国市民の北京への不満が高まるなか、習政権3期目は台湾問題でこれまで以上に強気の姿勢を貫く必要性に迫られている。

台湾問題で蔡英文政権やバイデン政権に強気の姿勢を示すことで習政権への不満や批判をそらし、ナショナリズムを高揚させる戦略を取る可能性もあろう。仮に有事となれば、アメリカの軍事同盟国である以上、日本は中国と対立軸で接することになり、日中関係の悪化は避けられそうにない。しかも今まさに台湾問題が米中、日本台湾の間で最も大きな問題になっており、この問題が日中関係全体を雷雲で覆う潜在的リスクがある。

台湾問題で日中関係が悪化すれば、偶発的衝突を回避するために防衛当局者が連絡を取り合うホットラインの早期設置、外務・防衛当局の高官による日中安保対話などの動きが一気に停滞することになろう。今後の日中関係において、双方とも関係悪化を最大限避ける道を基本的には歩むことだろう。しかし、台湾など片方がもう一方の地雷を踏むことになれば、関係悪化を回避するための努力は一気に水の泡になる恐れがある。われわれはその潜在的リスクを常に把握する必要がある。

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