政経電論 https://seikeidenron.jp 政経電論は、若い世代やビジネスパーソンに政治・経済・社会問題を発信するオピニオンメディア。ニュースの背景をわかりやすく伝えたり、時事用語の解説を通して、現代を生きる若者の行動を促すことを目指します。 Thu, 20 Jan 2022 10:59:39 +0000 ja hourly 1 10増10減反対論の理由と、政治が都市部の声を反映しない理由 https://seikeidenron.jp/articles/20267 https://seikeidenron.jp/articles/20267#respond Fri, 14 Jan 2022 12:14:58 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20267

2022年の政治テーマの中で、意外に重要なのが衆院選挙区の「10増10減」だ。最新の人口比に従って東京や神奈川など5都県の定数を増やす一方、和歌山や山口など10県の定数を減らす内容だが、細田博之衆院議長や二階俊博元幹事長らが公然と批判の声をあげる。なぜ、彼らは10増10減に反対するのか。実現すれば国民にとってどんな影響があるのか。

2022年6月までに新たな区割り案を提出

「腹立たしい。地方にとっては迷惑な話だ」。二階氏は1月10日に自民党和歌山県連の会合に出席した後、地元メディアに出演して憤りを露わにした。「10増10減」が実現すれば、和歌山県内の衆院の定数は現在の3から2に減る見通し。県連の会合でも定数減を批判する声が相次いだという。

各有権者の持つ票の価値の差を「1票の格差」と呼ぶ。衆院小選挙区の当選者はすべて1人だが、仮にA選挙区では10万人の有権者がおり、B選挙区には20万人の有権者しかいないとすると、10万人で1人を選ぶのと20万人で1人を選ぶことになるため、A選挙区の有権者の票の価値はB選挙区の有権者の2倍となる計算。この格差を全国で2倍以下に抑えるため、国政選挙では5年に一度の国政調査が行われるたびに最新の人口に基づいて定数を見直すよう法律が定めている。

今回は2020年国勢調査の速報値が2021年6月に公表されたことを受け、有識者で組織する衆院議員選挙区画定審議会が協議を開始。速報値公表から1年以内、2022年6月までに具体的な区割り案を政府に勧告することとなっている。

法律に基づいて定数を配分すると東京が5増、神奈川が2増、埼玉、千葉、愛知が1増となる一方、宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎が1減となる。

10増10減で定数はこう変わる

【定数増】
選挙区 現 新
東京  25 30
神奈川 18 20
埼玉  15 16
千葉  13 14
愛知  15 16

【定数減】
選挙区 現 新
宮城  6 5
福島  5 4
新潟  6 5
滋賀  4 3
和歌山 3 2
岡山  5 4
広島  7 6
山口  4 3
愛媛  4 3
長崎  4 3

二階氏の気がかりは衆院への転身を狙う世耕氏

和歌山の定数が3から2に減れば、3つの選挙区を2つに再編することとなる。このうち1区の選出議員は国民民主党だが、2区は石田真敏元総務相、3区は二階氏という自民党のベテラン2人の強固な地盤。区割り次第では身内同士の公認争いにつながる可能性がある。

さらに二階氏にとって気がかりなのが世耕弘成自民党参院幹事長の動向だろう。2021年の衆院選で林芳正外相が河村健夫元官房長官の子息を退け参院から衆院に華麗な転身を遂げたのは記憶に新しいところ。和歌山では世耕氏が同じように将来の首相の座を目指して衆院3区への転出を狙っている。

第2次岸田内閣の外務大臣・林芳正氏は次期首相候補?

2021.11.10

世耕氏は祖父が衆院議員や経済企画庁長官を歴任、叔父が衆参議員や自治相などを務めた政治家一家出身。内閣官房副長官や経済産業相などを歴任したことから知名度も高く、自身も含めて一族が近畿大学の歴代理事長を務めており財力も十分だ。

二階氏は2022年1月現在82歳で、秘書を務める三男への禅譲のタイミングを計っているとされる。そんなさなかに選挙区が再編されれば、世耕氏の付け入るスキが大きくなる。地盤を守るためには引退を先延ばしにし、激しい公認争いを勝ち抜かなければならなくなる。

公認争いが勃発? 山口では因縁の対決も

林外相が3区の公認を奪い取った山口県にも火種がある。山口では自民党が政権復帰した2012年以降、4回の総選挙すべてで自民党が議席を独占してきた。1区は外相や自民党副総裁を歴任した高村正彦元衆院議員と、2017年に地盤を譲った息子正大氏。2区は安倍晋三元首相の実弟である岸信夫防衛相、4区は安倍元首相の地盤。

特に安倍氏と林氏はそれぞれの父親である晋太郎氏と義郎氏が中選挙区時代に激しく競り合った“因縁”の仲で、当時の旧山口1区が現在の3区と4区に分かれた経緯からも、激しい公認争いが起きかねない。

定数削減対象となる10県のうち、山口以外に滋賀、岡山、愛媛の3県も2021年の衆院選で自民党が議席を独占。定数減が実現すれば現職同士の公認争いにつながる。細田議長が東京3増、新潟、愛媛、長崎1減の「3増3減」案を提示したのも、公認争いを避けたいという“身内の事情”に配慮したからだ。10増10減への反対論は現職議員の保身に他ならない。

いずれにしても1票の格差は残る

二階氏ら反対論者は「地方の声が国政に届かなくなる」などと主張するが、逆に言えば格差を放置するということは「都市部の声が国政に届かなくない」ことと同じ。自民党が農業や地方のインフラ整備ばかりに熱心で、先端科学技術の振興や都市部のインフラ整備といった“都市的”な課題になかなか向き合おうとしないのも、都市部に比べて地方に多くの定数が配分されているからだ。

仮に10増10減が実現したとしても、2倍に満たない1票の格差は残る。現状の定数配分の考え方である「アダムズ方式」や都道府県単位にこだわれば、どうやっても一定の格差は残るため、根本的な選挙制度改革を求める声もある。

政府・与党を率いる岸田文雄首相は2021年12月の記者会見で「政府の立場から言うと現行の法律をしっかり履行し、対応しなければならない」と明言。選挙区画定審議会の勧告を反映させた関連法案を国会に提出する考えを示している。

首相は党内の反対を押し切って“正論”を貫けるか。それとも“聞く力”を発揮してあやふやな結論になり、国民に“保身”を見抜かれるか――。首相の覚悟が問われている。

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メタバースはオンラインショッピングを変え得るか? https://seikeidenron.jp/articles/20254 https://seikeidenron.jp/articles/20254#respond Thu, 13 Jan 2022 22:00:41 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20254

WBB3.0とともに2021年を代表するバズワードとなったメタバースは、ネット上の仮想空間を意味する。仮想空間と聞くとオンラインゲームをイメージしてしまうが、近年、ショッピングに特化したメタバースが注目されている。アバターの服やアイテムを購入するだけでなく、自分が実際に使う服や自動車までメタバースで購入できるようだ。近い将来、イオンモールに代わって“メタバースモール”が一般的となるかもしれない。

メタバースは3種類

「Metaverse(メタバース)」は「meta(何もない)」と「巨大空間(universe)」を組み合わせた造語で、一般的にはネット上の仮想空間を意味する。もともとはSF作家ニール・スティーヴンスンが30年前に発表した小説『スノウ・クラッシュ』(1992年)に登場する架空の仮想空間サービスの名前だが、近年、多くのサービスが提供されるようになり2021年最大のバズワードとなった。

現在、メタバース関連のサービスは主に「ゲーム」「仕事」「ショッピング」の3つに分けられる。ゲーム分野でいえば任天堂の「あつまれ どうぶつの森」やマイクロソフトの「Minecraft」、そのほか各種オンラインゲームが当てはまる。こうしたサービスではゲーム上で共同生活や対戦ができる。仕事分野ではMeta(旧Facebook)の「Horizon Workrooms」(β版)があり、メタバースで会議やプレゼンができるとしてコロナ禍で注目された。

そして3つ目がショッピング特化型のサービスだ。ゲームのようにメタバースの中でしか使えないアイテムを購入するだけでなく、メタバースで商品を確認、注文することができ後日、自宅に商品が届くサービスもある。ショッピング用のメタバースが普及すれば、出るのが億劫な寒い日でもショッピングする気になるだろう。近年注目されているショッピング特化型のメタバースを見ていこう。

日本発のサービス「バーチャルマーケット」

「バーチャルマーケット2021」より 写真:HIKKY

バーチャルマーケット(Vket)は日本で生まれたショッピング特化型のメタバースだ。お祭りのように一定期間のみ開催され、最新のVket2021は2021年12月に約80社が出展して開催、1stは2018年にはすでに開催されている。マーケットは夏祭りや中東のオアシス、中国の歓楽街、ファンタジーなど多彩な世界観の中で展開される。VRヘッドセットもしくはPC、スマホを持っていればアプリ、ブラウザを介してどこからでも参加でき、VRヘッドセットを使えば実際に街を歩くような体験ができる。

大手企業も多数出展。Vket6に出展したヤマハ発動機はVRシェアライドサービスとしてワールド内で運転できる2種類のバイクを提供。乗ったときの感覚まで完全再現できるわけではないが、バイクは実際に販売されているものもあり大いにブランドの宣伝になるだろう。国内エアガントップの「東京マルイ」からは銃モデルの展示場やVRでサバイバルゲームできるブースを出展。JRからは秋葉原駅を再現した空間が出展されSNSで話題となった。

~2021では秋葉原駅もパワーアップ。Suicaで改札も通過できる 写真:HIKKY

一方で一般サークルも出展しており、サークルはアバターの服やアイテムの販売を主目的としているようだ。

VRアプリのVRChatやゲーム配信プラットフォームのSteamへの登録が必要など少しハードルはあるが、何度でも訪れたなるような面白いワールドが多数あり、メタバースのメリットを大いに生かしたサービスだといえる。これまでのVketでは、企業は収益をあげるというよりも宣伝、話題作りを目的として出展したようだが、100万人以上が訪れるイベントへと育った今後は本格的に販売活動を始めることになるだろう。

まさかの凸版印刷が提供する「Metapa」

凸版印刷が提供する「Metapa(メタパ)」のイメージ 写真:凸版印刷

印刷だけでなく半導体やデジタルサイネージ、製造に関するDXプラットフォームなどデジタル領域にも強い凸版印刷は、メタバースの将来を見据え新たなサービスを提供するようだ。2021年12月15日よりサービスを開始した「Metapa(メタパ)」は仮想空間上で実際のモノをショッピングができるスマホアプリ。

3人称視点で自分のキャラクターを操作でき、実店舗で買い物するように“バーチャル店舗”内を移動して商品を確認する。通常の買い物アプリでは写真を見て商品を判断するしかないが、メタパでは各商品が3DCGとして再現されているため、手に取るようにさまざまな角度から商品を確認できる。

「ポケモン GO」で話題となったAR機能(=カメラ映像越しにCGを映し出す技術)にも対応しているため、商品を自分の部屋に置いたときの感じをつかむことも可能だ。買ってみたけど思ったより大きくて困った、ということが防げるだろう。

ちなみに友人と一緒に店舗を回ることもでき、チャットや音声通話にも対応している。出店する側は一店舗当たり最低300万円からサービスを利用できる。消費者の行動はすべてデータ化されているため店舗へのアクセス数や商品閲覧数を正確に把握でき、商品開発や設置位置の最適化にも活かせるだろう。

24時間営業のメタパは閉店時間を気にする必要はなく、何よりスマホひとつで済むため非常に利便性が高い。提供開始から1カ月程度でまだ未知数だが、少なくとも資金力に余裕のある上場企業は出店するのではないだろうか。今後の普及に期待したい。

現実とリンクした「Obsess」

Obsess(オブセス)は米ニューヨークに本社を置くメタバースのプラットフォーム企業だ。2017年に設立されたベンチャー企業で、出店者向けに“バーチャル店舗”を提供している。実店舗のデータを取り込んだ店舗のほか、完全バーチャルで再現した店舗などがある。ラルフローレンやフェンディ、Leeなどアパレル大手各社がObsessを利用しており、利用客はPCやスマホを使って公式ホームページから訪れることができる。

実際にLeeのバーチャル店舗を訪れてみた。自由に歩き回れる訳ではないが店舗内の各地点をクリックし、カーソルを移動させて360度辺りを見渡すことができる。もちろん商品をクリックすればオンラインでの購入が可能だ。通常のオンラインショップでは自分の探している服の種類を決めてから検索するが、バーチャル店舗では実店舗のように商品が並べられているため衝動買いをしてしまいそうだ。なお、Obsessの公式HPを見るとVRに対応した店舗も設計できるとしている。

やや簡易な作りのためVketのような臨場感を感じることはできないが、消費者にとって容易に利用できるのがメリットだ。敷居の低さが理由でアパレル各社も採用していると考えられる。だが各社の公式HPからしか訪れることができないため、そのブランドのファン以外にリーチするのは難しいかもしれない。

Obsessのプラットフォームを利用したLee(リー)のショップ 写真:Lee

“メタバース版アウトレット”が普及のカギ

ショッピングの目的は「買い物」だけではない。普段歩かない場所を歩き、非日常を感じる楽しさもショッピングの目的といえよう。こうして考えてみるとメタパ、Obsessのメタバースはブランドごとに店舗が分かれており、買い物しかできないため固定のファンしか集まらなさそうだ。

一方でバーチャルマーケット(Vket)は街全体を歩くことができ、買い物以外の楽しさも感じられる。メタバースに人を集めるにはさまざまなブランドの店舗があり、その上で風景を楽しめる“街歩き要素”が必要になるだろう。街やショッピングモール全体を再現した仮想空間が現れれば、メタバースでのショッピングも一般的となるかもしれない。

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良いインフレ・悪いインフレ 日本はスタグフレーションに陥ったのか https://seikeidenron.jp/articles/20244 https://seikeidenron.jp/articles/20244#respond Thu, 13 Jan 2022 09:27:19 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20244

日本銀行の公表する企業物価指数は、2021年11月速報値で2015年比108.7%と35年ぶりの高さとなっています。長らくデフレーションで苦しんだ日本はインフレ-ションに転じたのでしょうか。しかし、2013年に政府と日銀が設定した消費者物価の前年比上昇率2%は達成できていません。また、2021年秋ごろから食料品の値上げが相次ぎ、原油高騰による電力の値上げも起きています。デフレなのに物価が上昇? AD-AS(総需要・総供給)分析を用いて今の日本の状況を考えてみます。

日本はデフレ圧力から抜け切れていない

日本経済は1999年ころから、継続的な物価下落状態(デフレ)に陥ったと考えられ、内閣府の月例経済報告で2009年11月に「緩やかなデフレ状況にある」と明記され、2013年12月にデフレという表現が削除され改善の兆しはあったものの、2020年度の内閣府「経済財政白書」では新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機(コロナショック)に伴う需要不足によるデフレ圧力にも注意が必要であるとし、日本が本格的にデフレ圧力から脱していないことを示唆しています。

また、日銀も2013年1月に「物価安定の目標(インフレターゲット)」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、継続的にさまざまな政策を行っていますが、いまだ実現できていません(1%を行ったり来たり)。

AD-AS(総需要・総供給)分析

ケインズ経済学で物価を考える場合には、AD-AS分析を用います。縦軸に物価P、横軸に国民所得(GDP)Yをとり、右下がりのAD(総需要)曲線と右上がりのAS(総供給)曲線の交点で国の物価P*と国民所得Y*が決定するという分析フレームです。

何かの要因で需要が増加した場合にはAD(総需要)曲線が右方にシフトするため、物価が上昇し、国民所得が増加します。このような物価上昇をディマンド・プル・インフレーションといいます。需要増加が引っ張って物価上昇を起こしたという意味です。経済成長時には持続的な需要増加が生じるため、ディマンド・プル・インフレーションは、いわゆる良いインフレーションとなります。

何かの要因で素材価格や賃金が上昇した場合にはAS(総供給)曲線が上方にシフトするため、物価が上昇し、国民所得が減少します。このような物価上昇をコスト・プッシュ・インフレーションといいます。コスト上昇が物価を押し上げたという意味です。コスト・プッシュ・インフレーションはGDPの減少を伴うため、経済の縮小過程で生じる、いわゆる悪いインフレーションとなります。

世界的な素材価格の上昇

業者間で売買する物品の価格水準を数値化した物価関連の経済指標である企業物価指数は、2021年11月月に2015年比108.7%と、バブル景気だった1986年2月以来の高さとなっています。

国際的な原油価格の上昇からガソリンや軽油が値上がりしたことが主な原因ですが、鉄鋼、銅、アルミニウム、合成ゴムなどの価格が上昇したことも挙げられます。また、農林水産省は2021年10月からの輸入小麦の政府売渡価格(※)について、主要銘柄平均で19.0%の引き上げを行うなどさまざまなものが値上がりの兆しを見せています。

※輸入小麦は日本政府が買い付け、国内の製粉会社に売り渡す仕組み。

これは、コロナの影響からいち早く脱した中国をはじめとした国々の需要増加、また各国の正常化を見越した需要増加、また、コロナを原因としたコンテナ不足などの物流価格の上昇などが主な原因と考えられています。

見通しが良くても公的支出が機能しなければスタグフレーションに陥る可能性も

2021年12月末の令和4年度「政府経済見通し」(内閣府)によると、2021年度(令和3年度)のGDP成長率は、実質で2.6%程度、名目で1.7%程度となり、GDPは年度中にコロナ前の水準を回復することが見込まれ、2022年度(令和4年度)は、総合経済対策の円滑かつ着実な実施により、公的支出による経済の下支えと民間需要の喚起、民需の自律的な回復も相まって、実質GDP成長率3.2%程度、名目GDP成長率3.6%程度となり、GDPは過去最高になることが見込まれるとしています。

これは、AD-AS分析だと、政府支出をベースにAD(総需要)曲線を右方シフトし、その後に民間需要を喚起、自立的な回復でさらに右方シフトさせて国民所得を増加させようと考えています。先ほどのAS曲線のシフトと考えると次のような状態を想定しています。

しかしながら、政府の対策がうまく機能せず、AD曲線のシフトの影響がAS曲線のシフトの影響より小さければどうなるでしょうか。

この場合には、物価は上昇しGDPは減少する、いわゆる景気の停滞とインフレーションが同時に発生する、スタグフレーションの状態に陥ります。失業や業績悪化と共に物価が上昇した場合、家計や企業は大打撃を受けるでしょう。

このような最悪な状態を避けるため、確かに財政規律の問題はあるものの、今のタイミングでは、政府は素材価格上昇の影響を上回る政府支出を行い、日本経済を成長軌道に乗せる必要があると考えられます。

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【2022年の経済】世界は通貨価値の変動、国内は企業の過剰債務の解消に注目 https://seikeidenron.jp/articles/20240 https://seikeidenron.jp/articles/20240#respond Thu, 13 Jan 2022 05:43:46 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20240

2022年の経済を占うキーファクターは、アメリカの通貨・金融政策の行方と米中経済対立、そして引き続き世界の経済を覆う新型コロナウイルス禍の帰趨に注がれている。日本経済はコロナ禍で傷んだ企業の財務、過剰債務の解消が最大の焦点となろう。

“円安ショック”が日本経済を直撃?

2022年の経済トピックスの筆頭は世界の通貨価値の変動であろう。中長期的にはドルと人民元の覇権をめぐる動きがより鮮明化し、世界の基軸通貨であるドルの地位が低下していく可能性が高い。だが、短期的にはアメリカの利上げに伴うドル高が予想され、その裏返しである円安がどこまで進行するのかが焦点となる。

そうした通貨価値の変動を予感させるのが、世界の中央銀行や公的機関による金の保有増である。国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシルによると、過去10年間で世界の中央銀行が積み増した金の総量は4500トン超に達する。1990年以来31年ぶりの高水準である。金は金利が付かない実物資産であり、米国債など通貨資産に対して劣後する。それでも中央銀行や公的機関が保有率を高める背景にあるのは、“通貨の変動”への懸念だ。端的に言えばドルの信認低下と言い換えてもいい。

1971年のニクソン・ショックで金とドルの交換停止を表明してからの50年で、金に対するドルの価値は約50分の1に低下している。ペーパーマネー(紙幣本位)体制となって以降、アメリカはドルの大量発行を続けていく。アメリカの通貨発行量は過去50年で約30倍に膨張した。米ドルの価格変動幅は広がり、その乱高下はブラックマンデー(1987年)やアジア通貨危機(1990年代)等の経済危機に直結した。

その悪夢が2022年に再現されるかもしれない。米連邦準備制度理事会(FRB)は長引く高インフレ(2021年11月の消費者物価指数[CPI]は前年同月比の上昇率が6.8%に達する歴史的な高水準となった)に焦りを見せ、金融緩和の修正を急ぐ構えだ。FRBはすでにテーパリング(資産購入の段階的削減)に入っており、市場では3月までにテーパリングを終え、年内に3~4回の利上げに踏み切りのではないかという見方も浮上している。

とくにアメリカはバイデン大統領への審判となる連邦議会の中間選挙を11月に控えている。上院の3分の1と下院の全議席が改選となる両院で与党・民主党が過半数を維持できるのかが焦点となるが、トランプ前大統領の影響力の残る共和党は対決姿勢を強めており、波乱も予想される。

FRBが利上げを急げば、金融市場への影響は無視できないものになる。とりわけ円の価値低下は深刻とならざるを得ない。“円安ショック”が日本経済を直撃しかねない。

円の守護神である日本銀行の手腕が問われるが、その日銀は長引く金融緩和のジレンマに苦悩している。FRBが金融緩和を収束させ、利上げに転じるのとは対照的に、日本のCPIは鈍いままで日銀は大規模金融緩和を続ける。日米の金融政策の方向の違いは円安を招き、エネルギー価格と併せ輸入価格が高騰する“悪いインフレ”をもたらしている。

2021年、先進国通貨の中で円は対ドルの下落率が最も大きかった。年初1ドル=103円台だった円相場は足元では115円台で推移しており、2022年も円安基調は続くとの見方が有力だ。「アメリカの長期金利が1%変化すると円相場は6円程度の変動要因になる」(エコノミスト)といわれており、アメリカの利上げに伴う日米の金利差から過度の円安を覚悟しなければならないかも知れない。

米中の覇権争いの舞台はデジタル通貨へ

通貨価値の変動で注目されるのは米中の覇権争いであろう。2022年は米ドルと中国人民元の通貨覇権をめぐる争いが鮮明化することが予感される。かつ主戦場はハードカレンシーからデジタル通貨に移ろう。

ここ数年、トランプ政権時代に米中の経済摩擦が激化した。この流れはバイデン政権にも引き継がれているが、米中の経済摩擦は、通貨の攻防へと発展しかねない。すでに中国はデジタル人民元の実用化に向けて着々と布石を打っており、2月に開催する北京冬季オリンピック・パランピックで、デジタル人民元を使えるようにする予定だ。「基軸通貨としての地位にある米ドルはレガシーがある分、デジタル通貨への動きが鈍い。次世代の通貨戦争では劣後するリスクがある」(エコノミスト)と指摘される。

中国のGDP(国内総生産)は2030年代にはアメリカを上回ると予想されている。国の総合力を示すGDPの米中逆転は世界の盟主の交代を意味する。長期的には中国の人口減少による労働不足から2050年代にはアメリカが再逆転するとの分析もあるが、中国がアメリカと並ぶ経済大国に躍り出ることは間違いない。経済・軍事の両面で「パックスアメリカーナ」から「パックスチャイナ」への移行は強烈だ。

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して2021年末でちょうど20年になった。加盟を後押ししたのはアメリカであり、中国が経済成長の過程で民主化を進めることを期待した。しかし、現実には中国は経済成長したものの民主化は形骸化し、習近平国家主席の下、アメリカにとって脅威となっている。バイデン政権は2021年3月に中国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」と位置付けた。台湾海峡をめぐる軍事的な緊張や中国のTPP加盟問題もあり、米中の関係は新たな局面に入っている。

企業が抱え込んだ過剰な債務をどう解消するか

その分岐点となると予想されるのは、2022年の経済トピックスのもう一つの極である新型コロナウイルスの帰趨(帰結)であろう。ここ数年、世界経済はまさにコロナ禍に翻弄され、その禍は今も続いている。足元では変異したオミクロン株が広がり、感染者数の急増に世界が苦悩している。

日本も例外ではない。コロナ禍に対応した緊急事態宣言、まん延防止措置が頻発し、人流は制限され、経済は大きく停滞した。特に航空、飲食・宿泊、小売りなどの業種への影響は深刻で、累次にわたる経済対策が打たれ、政府系・民間を問わず過剰なまでの金融支援が講じられた。

結果、ポストコロナを見据え、企業が抱え込んだ過剰な債務をどう解消するかが課題となっている。「実質無利子・無担保融資など政府の資金繰り支援策で企業の倒産件数は低水準で抑えられているものの、今後倒産が急増したり過剰債務に陥った企業が設備投資等を抑制するなど、経済回復の足かせとなりかねないと危惧されている」(大手信用情報機関)ためだ。

法人企業統計によれば、2021年3月末の借入金および社債は前年比で45兆円増加している。ただし、同時に法人の現預金も34兆円増加しているため、「この数字をどう見るかは判断が分かれるかもしれないが、負債のみならず資産も含めた両面から見ると、ネットで11兆円、2021年度末の総債務残高対比で2.1%の増加にとどまっており、企業セクター全体をマクロで見ると、決してレバレッジが過大になっているという状況ではない」(髙島誠・全銀協会長)と指摘される。だが、負債の水準は業種によりまちまちであり、コロナ禍で大きな痛手を負った飲食や宿泊、小売りなどでは過大な債務を抱えていることに変わりはない。

法整備で事業再構築のための私的整理円滑化

政府が2021年11月8日に公表した「新しい資本主義実現会議」の緊急提言でも、「コロナ禍が始まって2年となる中、債務の過剰感を持つ事業者が増えている。昨年8月に民間調査会社が行ったアンケート調査では、『債務の過剰感がある』と回答したのは大企業が16.7%、中小企業が35.7%となっている」と言及されている。

その上で、「新たな成長に向けて企業の事業再構築を進めていくためには、債務を軽減すれば新たな投資が可能であるとメインバンク等が判断する場合には、早期に債務の軽減措置がとれるような法制度を整備する必要がある。現在の法制度では、全ての貸し手の同意がなければ、債務の軽減措置が決定できない。このため、事業再構築のための私的整理円滑化のための法整備の検討を進め、関連法案を国会に提出する」と明記された。現在の法制度では、すべての貸し手の同意がなければ債務の軽減措置(債権放棄)を結成できないが、これを「債権者の多数決」で可能にできるよう法制度を改正するというものだ。

また、コロナ禍で過剰な債務を抱えた中小企業の救済策として「中小企業版:私的整理ガイドライン」の策定も俎上に上っている。金融機関同士の話し合いで返済猶予や債務減免を行う私的整理を利用しやすくなるよう対応策を検討するもので、私的整理ガイドラインの活用条件緩和など企業が事業再生や再構築に踏み出しやすい環境を整えるのが狙いだ。

金融機関同士の話し合いで返済猶予や債務の減免を行う「私的整理」はすでに存在するが、中小企業には使い勝手が悪い。現状の私的整理ガイドラインでは債権放棄を受けた企業の経営者は退任することが原則になっているが、中小企業では経営者の経験やノウハウ、人脈に依存する傾向が強い。このため、「債権放棄を受けても経営者は退任しなくていいとするなど中小企業の実情に即した形での見直しが想定されている」(メガバンク幹部)という。

しかし、具体的に企業の債務整理に踏み切るにはいくつかの壁が立ちはだかる。

「企業の債務整理には3つの壁がある。まず最大の壁と目されているのが税制。そして、憲法上の財産権の侵害懸念、債権者である金融機関の足並みの乱れである。これらの課題をクリアするのは容易なことではない」(メガバンク幹部)とされる。

オミクロン株の出現もあり、コロナ禍が収束に向かうのかはいまだ予断を許さないが、感染者数が増加するなかでも重症者数や病床使用率は抑えられており、経済の本格的な回復に期待が高まっている。その前提となる企業の債務整理はまさに喫緊の課題といっていい。

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苦い思い出は昔の話? AIでパートナー選びも効率化 https://seikeidenron.jp/articles/20235 https://seikeidenron.jp/articles/20235#respond Wed, 12 Jan 2022 03:07:44 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20235

昔と比べ、マッチングアプリで出会った男女が結婚する例が増えている。筆者の周りのカップルも、「出会いはアプリ」というケースは割と多い。かつての“出会い系”と違って本人確認が必要なサービスも多く、真剣な出会いを求める人に活用されているのだろう。出会いの場がデータに移行するということは、AIを活用できることを表す。AIが人の特徴を数値化し、自分に合った相手を効率的に探し出してくれるマッチングサービスは、奥手な人や忙しい人にはうってつけのサービスかもしれない。

福利厚生の一環で大手企業が導入する「Aill」

AIを使った国内のマッチングサービスとして「Aill(エール)」が挙げられる。同サービスは従来のものと違って企業が福利厚生として導入するもので、利用対象者は登録した企業の社員に限られる。登録企業は約800社に及び、九州・山口地域に事業所を有する法人約1000社が加入する九州経済連合会も、人口減少の問題の解消を目指し2020年9月に同サービスと提携。NTTグループやJR東日本、三菱電機などの大手企業も導入している“狙い目”のサービスだ。

Aillは登録した基本情報と価値観をもとにAIが相手を探し出し、一日に1回、相手を紹介してくれる仕組みとなっている。マッチングアプリだが1カ月に30人としか出会えない。機会は少ないように思えるが、1カ月以内のデート進展率は約3割、デートに誘った場合の受託率は8割を超えるそうだ。

成功率が高い理由にはAIによるアシスト機能が挙げられる。アプリにはLINEのようなチャット機能が付いており、「現段階ではデートに誘わないほうが良い」「相手の好きな映画を聞いた方が良い」などAIが提案する会話内容が表示される。会話下手でも何とか話を続かせられるわけだ。また、好感度ナビゲーションが相手の自分に対する好感度をグラフとして表示してくれるため、振られそうな相手にアタックしてしまう確率も下げられる。

おそらくAIがアプリ上での相手の動きを認識し、自分よりも興味を持っている相手がいるかどうかを判断して自分への好感度を推定しているのだろう。デートから交際に至る確率はAIアシストを利用しない場合が23%に対し、利用すると47%まで上昇することからAI機能の有用性がわかる。成功率が高ければマッチングAIの需要も伸びていくはずだ。Aillに限らずさまざまなマッチングサービスでAIが活用されていくだろう。

AIが通話をレクチャーする「AIMM」

「AIMM」は2015年にアメリカで設立されたAIマッチングサービスのベンチャーだ。AIマッチングと聞くとAillのようにAIが相手を探し出すと思いがちだがAIMMはそれだけではない。同サービスのAIは“出会いをリード”してくれる。

まず利用者は最初にアプリ上でAIと会話することになる。AIは好きな動物やスポーツ、人生観やライフスタイルなどさまざまな質問を通じて利用者の特徴を把握する。デートになった場合の架空のシチュエーションについても質問し、利用者がどのような出会いを求めているかに関しても認識する。他のサービスでは避けられがちなセックスに関連した質問もなされるようだ。こうして、AIは1週間かけて利用者の特徴を把握しようとする。

そしてAIは利用者の特徴や好みにあった相手を見つけ出し、その人の基本情報や好み、理想のデート像などを教えてくれる。だが、すぐに直接やり取りするわけではない。利用者がその人に興味があればAIは相手と仲介するが、興味が無ければ直接連絡することなく避けることができる。女性には安心な仕様といえる。

相手とのファーストコンタクトはアプリ上の通話で行われるが、通話の前にレクチャーしてくれる上、通話後は相手の印象などを教えてくれる。ちなみにAIMMにはチャット機能がなく同時に複数の異性とコンタクトがとれない仕様となっているため、利用者は緊張感をもってやりとりすることになるだろう。少しくどい感じは否めないが、誘うのが苦手ながらも真剣な出会いを求める人にはマッチするサービスといえそうだ。

ライフスタイルを分析し、最適な相手を見つけ出す

自分が入力した基本情報からではなく、普段の行動パターンをAIが分析しマッチングするサービスもある。TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の関連会社であるCreative 1は「D-AI」というサービスを提供している。

D-AIは利用者のTカード情報からマッチしそうな相手を探し出す。TSUTAYAで借りたビデオや音楽、Tカードを利用した飲食店やアパレル店というように、Tポイントを通じて行動パターンが蓄積され、これを基にAIが利用者の性格を認識する。データベース上には機械学習で蓄積された円満夫婦のモデルが存在するが、AIは利用者の性格から円満夫婦のモデルにマッチするような相手を見つけ出し、紹介してくれる仕組みだ。

通常のマッチングサービスは顔写真と年収が重視されがちだが、D-AIは初期の段階ではあえてそのような情報を見せない仕様となっており、衣食住の好みでマッチングするよう設計されている。ちなみに現段階では婚活イベント企業を通じて提供されているため利用者が直接登録することはできないようだ。

◇◇◇

中国のマッチング市場では求められる年収条件が日本以上に厳しく、持ち家の有無も重視されるようだ。しかしこの国でも行動パターンからマッチングするサービスが提供されている。「陌陌(MOMO)」は近くにいる人とやり取りができるアプリで、普段出かける場所や旅行先で相手を見つけられる。また、別のSNS「Timebook」はスマホに保存した写真をAIが認識し、趣味や好みが近い相手を探し出す。スイーツの写真が多ければスイーツ好きと、山の写真が多ければ同じく自然の写真を多く保存する相手と出会えるのだろう。自分が登録する基本情報は“盛る”ことができてしまうが、自然体に近い行動パターンを基にするのであれば、より適した相手が見つかるかもしれない。

精度は高まるが、苦い思い出が無くなってしまうかも

AIは基本的に機械学習によって精度を高めていく。利用者それぞれの性格や行動パターンを認識し、マッチしそうな相手を探し出すわけだが、2人がうまくいけば成功パターンとして蓄積され、破局すれば失敗パターンとして認識する。学習回数が多いほど各パターンの成功率は固定される。

仮に読書好き同士のマッチング率が70%、読書好きと美術好きのマッチング率が80%であり、自分が読書好きならばAIは美術好きを紹介するだろう。将来、AIの精度がより高まり、趣味に限らず食や顔の好みまで精査するようになれば限りなくマッチング率100%に近いサービスが誕生するかもしれない。

ただ、失敗する確率は減少するが、若き日の苦い思い出や想像をめぐらす緊張感の無い恋愛は楽しいのだろうか……という疑問は残るのだが。

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【2022年の政界】岸田内閣初の予算審議、夏には参院選 https://seikeidenron.jp/articles/20213 https://seikeidenron.jp/articles/20213#respond Tue, 04 Jan 2022 03:10:31 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20213

首相の交代や衆院総選挙など政治ニュースが盛りだくさんだった2021年が終わり、2022年が幕を開けた。国内政治にとって今年はどんな一年になるか。新型コロナウイルスの脅威が続くなか、岸田文雄首相は安定的に政権を運営していくことができるか。野党第一党の立憲民主党が泉健太新体制の下、勢いを盛り返すか。それとも、日本維新の会など第3勢力が与党を脅かす存在になるか。夏の参院選に向けて永田町の動きが加速しそうだ。

「聞く力」の正体は柔軟性か優柔不断か

「本年も、多くの方の声を聞きながら、国民のために何が最善なのかという観点から、政治としてしっかりと決断し、結果を出していく覚悟です」。岸田首相は年頭所感で、2022年の抱負についてこう示した。

1月17日には通常国会が召集され、首相は初めての施政方針演説で一年間の政府の基本政策を説明。その後、2022年度予算案をめぐって初めて野党との本格的な論戦に臨む。

予算審議は連日、NHKで生中継され、翌日の新聞紙面で大きく紹介されるなど注目度が高い。過去にはスキャンダルの追及などで支持率を落とした政権も多く、岸田政権にとっては2021年の衆院選に次ぐ第2の関門となりそうだ。

政権発足から約3カ月、今のところ岸田首相の政権運営はおおむね好意的に受け止められている。日本経済新聞の世論調査によると、政権発足時に59%だった内閣支持率は11月に61%、12月に65%と続けて上昇。過去4半世紀の歴代政権のうち、8割は政権発足から3カ月で支持率が低下しており、上昇は小泉政権と第2次安倍政権に続いて3例目という。菅前政権でも発足時こそ74%という異例の高さだったが、その後の2カ月で16ポイント下落。同じ発足3カ月で比べると岸田内閣が菅内閣を上回った。

支持率上昇の要因の一つが首相の“聞く姿勢”だろう。安倍晋三首相や菅義偉首相がどれだけ批判されても政策の変更や方針転換をしなかったのに対し、自らの長所を「聞く力」と語る岸田首相は柔軟な姿勢をアピールしている。

党内では比較的リベラルな宏池会(岸田派)の出身だが、総裁選では保守派に配慮して憲法改正や皇室における男系男子の維持を主張。コロナ対策における子育て世帯への10万円給付をめぐっては当初、5万円分をクーポンで配布するとしたが、費用がかさむなどと批判されるとあっさり全額現金給付を認める考えに転じた。

ただ、柔軟な姿勢は一方で、優柔不断と批判される可能性がある。2022年度予算案の審議ではどこまで野党の要望を受け入れ、どこまで政府与党の方針を貫くか。難しい判断を迫られる場面が増えるだろう。

参院選では維新・国民連合もあり得る?

2022年は通常国会が終わるとすぐに参院選が行われる(投開票は7月上旬とみられる)。参議院では248の定数(2022年から3議席増)のうち、半数ずつを3年ごとに入れ替える仕組み。次期参院選では74人を都道府県ごとの選挙区で、50人を全国単位の比例代表で選出する。

参院選では改選定数1人の「1人区」が32あり、ここで勝敗が分かれる。首相の姿勢や政府与党への支持が問われると同時に、野党が1人区で選挙協力するどうかも勝敗に大きく影響する。2021年の衆院選では最大野党の立憲民主党を中心に共産党や社民党などと“共闘”体制を組んだが、共産党との協力が有権者離れを招いたとの指摘もある。今のところ立憲の泉代表は共産党などとの選挙協力について方針を明らかにしていないが、どういう距離感で協力するかによって自民党を利する可能性も、自民党に脅威となる可能性もある。

参院選におけるもう一つの注目が第3勢力だ。大阪維新の会を母体に2012年に国政進出した日本維新の会は離合集散を経て、2021年の衆院選で議席数を公示前の11から41に大きく伸ばした。衆院選後も“国会議員のお小遣い”と揶揄される「文書交通費」などの問題追及で注目度を増しており、直近の世論調査では政党支持率や「次期参院選の投票先」で立民を上回ることもある。

維新は同じ旧民主党の流れをくみながらも立民と一線を画す国民民主党との距離を縮めており、参院選では立民・共産とは別の野党連合を組む可能性もある。維新・国民連合は憲法改正にも前向きで、議席数を伸ばせば改憲議論が前進する可能性もありそうだ。

11月の米中間選挙の結果次第では経済に混乱も

海外に目を向けると、11月8日にアメリカで中間選挙が行われる。中間選挙は大統領の任期4年の半分が終わった中間の年に行われる一連の選挙のことであり、上院は全議席の3分の1、下院は全議席が改選となる。

現状はバイデン大統領率いる民主党が下院の過半数をやや上回っているが、定数100の上院は民主と共和が50議席ずつでぴったり同数。アメリカでは副大統領が上院議長を兼務しており、可否同数の場合の決定権を副大統領が持っているが、中間選挙の結果次第では上下両院とも共和党が主導権を握りかねない。直近の世論調査では、バイデン政権の支持率は不支持率を大きく下回っており、11月の中間選挙で民主党が敗北して「ねじれ議会」となればアメリカの政治が混乱し、為替相場の乱高下や株価の下落などで日本にも悪影響を与える可能性がある。

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【2021年国内政治10大ニュース】菅内閣から岸田内閣へ https://seikeidenron.jp/articles/20206 https://seikeidenron.jp/articles/20206#respond Tue, 28 Dec 2021 03:48:05 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20206

2021年の国内政治は首相の交代や衆院総選挙、新型コロナウイルスとの戦いなど目まぐるしい動きを見せた。編集部では10大ニュースを取り上げ、改めて一年を振り返った。

[1]第100代内閣総理大臣に岸田文雄氏

自民党総裁選が9月29日に投開票され、「新自由主義からの転換」を掲げた岸田文雄元政調会長が河野太郎前行政改革担当相、高市早苗元総務相、野田聖子前幹事長代行らを破って当選。10月4日召集の臨時国会で第100代首相に就任し、岸田内閣を発足させた。党役員には福田達夫総務会長ら若手を抜擢し、閣僚にも当選回数の少ない若手を積極登用したが、政権発足直後の衆院選で小選挙区での当選を逃した甘利明幹事長が辞任。外相に起用した茂木敏充氏を横滑りさせるという多難な船出となった。

若手を積極登用の岸田内閣発足、政策推進力は未知数

2021.10.4

[2]菅首相が続投断念

自民党総裁としての任期満了を目前に控え、菅義偉首相が9月3日の党役員会で総裁選への不出馬を表明した。菅氏は直前まで続投に意欲を示していたが、党役員人事や衆院解散などをめぐる対応に批判が集中。直後に控える衆院選への悪影響を懸念する党内の声に押され、出馬断念に追い込まれた。首相としての在職日数は384日で、戦後の歴代首相34人の中で12番目の短命政権となった。

菅首相退陣へ、後手後手対応で総裁選出馬断念

2021.9.3

[3]東京オリ・パラ無観客で開催

2020年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルスの影響を受け、1年遅れで開催された。国内で「中止」や「再延期」を求める声が多いなか、菅政権がほぼ無観客での開催を“強行”した格好。ただ、過去最多となる27個の金メダルを獲得するなど日本選手の活躍には国内が大いに沸いた。

東京オリンピックが炙り出した大相撲が直面している問題

2021.8.20

[4]衆院選、与党が絶対安定多数確保

第49回衆院総選挙が10月31日に投開票され、自民、公明の与党が公示前より議席を減らしたものの、「絶対的安定多数」といわれる261議席を獲得した。事前調査では議席を大きく減らすとの見方もあったが、予想以上に健闘。一方で最大野党の立憲民主党が公示前勢力を大きく割り込み、日本維新の会が躍進して公明や共産党を抜いて第3党となった。

【衆院選結果】与党勝利も大物敗北目立つ 維新躍進で国会運営は潤滑に

2021.11.1

[5]立憲民主党敗北で泉新体制へ

立憲民主党の創設者であり“顔”だった枝野幸男前代表が衆院選敗北の責任を取って辞任。後任を決める代表選が11月30日に行われ、逢坂誠二、小川淳也、西村智奈美各氏を破って47歳の泉健太氏が当選した。枝野氏ら旧民主党時代の幹部からの世代交代を印象づけるが、衆院選で共闘を組んだ共産党との関係性をどうするかなど課題は山積している。

立憲民主党新代表に泉健太氏(47) 衆院選の“左傾化”戻す?

2021.12.1

[6]コロナ長期化、緊急事態宣言連発

2020年春から続く新型コロナウイルスとの戦いが長期化し、政府は2021年1~3月と4~6月、7~9月と3回にわたって緊急事態宣言を発出。緊急事態に次ぐ「まん延防止等重点措置」を含めると、2021年のほとんどの期間で国民に“自粛生活”を強いることとなった。菅前首相はコロナ対策の「切り札」としてワクチン接種を進めたが、新たに「オミクロン株」が流行するなどコロナとの戦いは2022年も続く。

日本経済、コロナ禍からの復活の鍵は国内旅行回復と半導体の確保

2021.6.30

[7]バラマキ合戦で現役官僚も苦言

コロナ対策で国・地方の財政がますます悪化するなか、自民党の総裁選や衆院選では各候補や政党が財政再建を封印し、バラマキととられかねない大盤振る舞いの政策を競い合った。こうしたなか、国の財政を司る財務省の事務方トップ、事務次官が現役にもかかわらず実名で週刊誌に寄稿。「このままでは国家財政が破綻する」と異例の警鐘を鳴らした。

【衆院選】財源無きバラマキ合戦を国民はどう見るべきか

2021.10.25

[8]温室効果ガスで新目標

欧米で「脱炭素」の流れが加速するなか、菅政権が4月、2030年度における温室効果ガスの削減目標を2013年度比で46%削減する新たな目標を発表した。従来目標は26%減だったが、米バイデン政権に背中を押される形で削減幅を大きく引き上げた。ただ、達成に向けた具体的な道筋は不明確で、実現の見通しは立っていない。

原発の大規模再稼働がなければ成立しない日本の危うい脱炭素エネルギー戦略

2021.9.6

[9]デジタル庁発足、菅内閣の成果

行政のデジタル化をけん引する組織として、9月1日に官民600人からなるデジタル庁が発足した。2020年9月に発足した菅政権の肝いりの一つで、検討開始から異例の速さで創設までこぎつけた。約1年で退陣した菅内閣ではデジタル庁発足のほか、携帯電話料金の引き下げや東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出などを決め、一定の評価も残した。

菅内閣の成績表~新型コロナ対応・デジタル庁・最低賃金引上げ

2021.9.13

[10]河井克之元法相に実刑判決

2019年7月の参院選広島選挙区で計100人に約2800万円を配ったとして、公職選挙法違反の罪に問われた河井克之元法相に、懲役3年の実刑判決が確定した。この事件では同選挙で候補者だった妻の案里氏も公選法違反の罪で懲役1年4カ月、執行猶予5年の判決が確定し、参院議員を失職していた。案里氏の失職に伴い行われた4月の参院広島選挙区の再選挙では与党候補が野党系候補に敗北。同時に行われた衆院北海道2区と参院長野選挙区の補選と合わせて「3選全敗」となり、菅首相退陣の引き金の一つとなった。

春の衆参3補選・再選 菅首相が乗り切るための最低条件は

2021.2.18
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海外の大学に勝つにはお金がかかる 東大がファンド運用に積極的な理由 https://seikeidenron.jp/articles/20196 https://seikeidenron.jp/articles/20196#respond Mon, 27 Dec 2021 06:25:36 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20196

東京大学は研究成果をもとに起業する大学発のスタートアップに投資する600億円規模のファンドを創設する。大学本部のある東京・本郷地区を「本郷インテリジェンスヒル(仮称)」と銘打ち、スタートアップや投資家が集まる一大拠点にする計画だ。欧米の有力大学に遅れをとっている大学発のベンチャーを資金・インフラの両面から支援強化する。

アメリカの有力大では年間1000社規模でスタートアップが創業

東大はすでに民間ベンチャーキャピタルの東京大学エッジキャピタルパートナーズと組んで、110社超のスタートアップに投資してきた。科学技術や経営に知見のある人材がスタートアップ経営陣と伴走し、創業前後から支援するのが強みだ。

国立大学は原則、スタートアップには直接出資できないが、2021年の通常国会で成立した改正国立大学法人法で、2022年4月から東大のほか京都大や東北大など指定国立大9校は出資が可能に。東大のスタートアップ投資ファンドはその嚆矢(こうし)となるもので、スタートアップに直接投資することも検討するという。まず東大が100億円程度を拠出し、外部の投資家らの資金も含めて10年間で600億円規模に拡大させる方針だ。

また、東大出身の上場企業経営者らでつくる「東大創業者の会」は、在学生や卒業生が立ち上げたスタートアップに投資する「同窓生ファンド」を新設する。12月に組成を開始し、20億円規模のファンドに育て上げる計画だ。同ファンドでは東大出身者の小倉博氏が創業した不動産仲介サイトのgooddaysホールディングスなどが出資する見通しで、同窓会のミクシィ創業者の笠原健治氏やユーグレナの出雲充氏など先輩起業家の知見も共有する。

経済産業省によると国内の大学発スタートアップ2020年10月現在で、東大が最多の累計323社、京都大が累計222社と続くが、アメリカの有力大では年間1000社規模でスタートアップが創業されている。その開きの主因のひとつが投資力の差で、日本の大学スタートアップが調達する資金額は欧米に比べて見劣りする。

政府も10兆円規模のファンドを組成

危機感を強めた政府も10兆円規模の大学ファンド組成に動き出した。2021年度中にも運用を開始する方針で、今秋以降、運用委託会社の選定に入っている。この動きに呼応するように「信託銀行、大手運用会社などがファンド受託に向け目の色を変えている」(市場関係者)という。

同ファンドは、欧米の大学に比べ研究力や専門人材が低下している日本の大学を資金面からのバックアップするのが狙いで、科学技術振興機構(JST)の下に設置された。資産規模は当初4兆5000億円からスタートし、「大学改革の制度設計等を踏まえ、早期に10兆円規模の運用元本にまでもっていく」(内閣府)という。すでに種銭として政府出資5000億円(2020年度第3次補正予算)、財政投融資4兆円(2021年財投計画)が措置されている。

高すぎる? 年3%の運用目標

欧米の主要大学のファンドは巨額な資金を運用し、その果実を大学運営に生かしている。例えば、米ハーバード大の約4兆5000億円はじめ、米イエール大約3兆3000億円、米スタンフォード大約3兆1000億円、英ケンブリッジ大約1兆円、英オックスフォード大約8200億円(いずれも2019年数値)を運用。

ハーバード大では運用資産の約2割を、大学発スタートアップを含む未公開株に投資しているほどだ。日本の大学もそれぞれ単独で資産運用しているが、これら欧米の大学に比べ、その規模は大きく見劣りする。このため国が音頭をとって官製大学ファンドを創設して、その差を埋めようというわけだ。

しかし、危うさもつきまとう。「具体的な運用はJSTに最高投資責任者(CIO)が担い、外部の金融機関から人材を招聘する予定で消費者物価上昇率に3%上乗せする運用を目指す」(関係者)という。この世界的な超低金利下にあって年3%の運用成果を上げるのは容易なことではない。ちなみに世界最大級の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は賃金上昇率プラス1.7%が目標だ。いかに大学ファンドの運用目標が高いかがわかる。

このためポートフォリオ(運用資産構成)では、国内外株式の割合を債券よりも高くし、高いリターンを得られるように工夫するほか、将来的には未公開株に投資するプライベート・エクイティ(PE)も増やすことを検討している。

高い運用成果を上げるためには運用のリスク度を引き上げないといけないが、果たしてうまくいくのか。また、運用に失敗した場合、誰が責任を取るのかなども問題となる。いずれにしても種銭は国民が提供したものである。大学ファンドの裏付けは税金であることを忘れてはならない。

この大学ファンドの運用を担う担当理事(CIO)に就いたのは、農林中央金庫出身の喜田昌和氏(1992年、京大経済学部卒)だ。喜田氏は開発投資部や投融資企画部など、農中で運用の中核ポストでキャリアを積んだ。2017年のオルタナティブ投資部長を経て、2019年4月に常務執行役に就いていた。ベンチマークとなる市場利回りを凌駕する高い運用利回りの実現を目指すJSTにとってまさにうってつけの人材といえよう。

政府は2021年7月27日に、大学ファンドに関する有識者会議を開いて、ファンドの基本ポートフォリオについて、国内外の上場株式が65%、国内外の債券が35%と決めた。同じ公的な年金資金を運用するGPIFの基本ポートフォリオは国内外株式がそれぞれ25%、国内外債券が各25%。大学ファンドの方が株式のウェートが高く、リスクをとる積極運用の姿勢が窺える。

政府はこのJSTから出る毎年3%の運用益を研究支援などにあてる計画だ。井上信治科学技術相(当時)は「日本の研究開発でゲームチェンジとなり得る画期的な支援だ」と意気込んだ。

規制緩和により機動的な資金調達が可能に

大学の資産運用をめぐっては、運用原資の確保を後押しする規制緩和も進められている。文部科学省は国立大学による債券発行の要件を緩和した。国立大学が発行する債券は「大学債」として流通しているが、その発行は附属病院の学生寮の整備、キャンパス移転のための土地取得などの直接的な収入が見込める事業に充てることが要件となっている。「大学の財務を健全に維持するためには、大学債の資金使途には一定の縛りが必要という認識だった」(国立大学と取引のある大手証券幹部)ためだ。

文科省はこの制限を緩和し、最先端技術の研究・開発のための施設の整備など、中長期的な視野にたって大学の競争力を高めることができる事業にも大学債の発行を認め、国立大学法人法の施行令を改正した。

今回の規制緩和は東大の政府への要望がきっかけだった。東大は企業と連携して半導体研究や量子コンピューターの設置などを計画しており、そのための資金調達が必要となっていた。このため「東京大学さんはかなり前から債券を発行して資金を調達する準備をされていました。すでに格付投資情報センター(R&I)から『ダブルAプラス』の高い格付けも取得しており、大学債の発行により数百億円を調達する計画をお持ちだと聞いています」(先の大手証券幹部)という。

国立大学の資金調達は国からの補助金や長期の借入、企業からの資金支援などがあるが、金額に限りがあるほか、調達に時間を要するケースが多かった。大学債の発行要件が緩和されたことで、より機動的な資金調達が可能となり、財務の機動性が増す。

財務戦略の高度化では、大学の資金運用も機動性が増している。2017年に国立大学法人法が改正され、世界最高水準の研究・教育を目指す「指定国立大学法人」や、文科省の認定を受けた国立大学は、幅広い有価証券への投資が可能になっている。指定国立大学法人には東大、京都大、大阪大など7行が指定され、それ以外に文科省から19大学が運用拡大の認可を得ている。資金調達、資金運用の両面から大学の財務基盤の充実が期待されている。

大学という特殊な法人が一般事業会社に近づきつつある

だが、大学の資金運用に一抹の危うさも伴う。

「駒澤大学はデリバティブ(金融派生商品)運用で154億円の損失を出した」

今から13年前の2008年末、こんな記事が新聞紙上をにぎわした。「当時はミニバブルで、どこの大学も銀行や証券会社の口車に乗り、金利スワップや通貨スワップなどをこぞって購入していました。それがリーマン・ショックで一気に暗転、巨額な損失を抱えてしまったのです」(私立大学教授)。その後始末のために、キャンパスや野球部のグラウンドなどの保有資産に根抵当を付けるなどして、資金繰りを支えた大学も少なくなかった。

大学は資金調達、資金運用の両面で自由度が増し、財務の選択肢が広がる。それは大学という特殊な法人が、一般事業会社に近づくことでもある。当然、財務のリスク度は高まるが、国内では人口減少が進む一方、各種研究分野における海外の大学との競争も高まるなか、避けては通れない道といえよう。

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北京五輪の外交ボイコットで試される岸田政権の外交力 米欧中の狭間で何を思う https://seikeidenron.jp/articles/20163 https://seikeidenron.jp/articles/20163#respond Wed, 22 Dec 2021 13:47:11 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20163

選挙における政策論争として、外交・安全保障というのは国民の間で決して関心が高い分野とはいえない。だが、世界情勢はより複雑さを増しており、それは日本にとってより舵取りが難しいものになっている。なぜ、そう言えるのか。それは近年、特にバイデン政権以降の国際政治をとらえれば明らかだろう。

多国間で中国に対抗するアメリカ

2021年1月に脱トランプを掲げて誕生したバイデン政権は、発足以来、トランプ政権で冷え込んだ欧州との関係を改善させ、パリ協定や国連人権理事会などへの復帰を進めるなど、まさに“トランプ・アメリカ”の4年間を巻き戻しするかのような行動を取っている。しかし、政策課題によっては、脱トランプのバイデンもトランプ継承者である。その最たるが対中国だ。

バイデン政権も中国を最大の競争相手と位置付け、今日まで中国へ厳しい姿勢を貫いている。しかし、対中姿勢はトランプと同じでも、その手法は大きく異なる。トランプ政権はアメリカだけで中国へ対抗してきたイメージが強いが、バイデン政権はイギリスやオーストラリア、フランスやドイツ、そして日本など価値観を同じくする国々とタッグを組み、多国間で中国に対抗する戦略をとる。

それは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国による枠組みQUAD(クアッド)や、アメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国で創設した安全保障協力AUKUS(オーカス)など、インド太平洋地域でバイデン政権が中国を意識した多国間枠組みを強化しようとしていることからも明らかだろう。

また、2021年はイギリスやフランス、ドイツやカナダなどアメリカ以外の欧米諸国の空母やフリゲート艦が日本近海を航行し、自衛隊と合同訓練を実施するだけでなく、フランスやオーストラリアなどの議員団が相次いで台湾の蔡英文政権を訪問。中国の習近平政権のいら立ちや警戒心もこれまでになく高まっているだろうが、これらもバイデン政権が重視する多国間対中牽制網の延長線上でとらえることができる。

日本にとって中国に代わる国は無い

一方、日本は中国と同じく東アジアを構成する国で、中国は依然として日本にとって最大の貿易相手国である。経済界でチャイナリスクを警戒する動きもあるが、全体でみればそれほど大きな動きではなく、中国での事業縮小や撤退を進める企業は依然として少ない。それどころか中国市場の重要性を再発見し、事業拡大を狙う動きや、「中国に取って代わる国が無い」との声も聞かれる。

このような日本が抱える安全保障と経済の実情は、岸田政権の対中政策を困難にする。

トランプ政権は日本の対中姿勢はそれほど意識していなかったように思う。しかし、バイデン政権は多国間で中国に対抗する戦略を重視しており、トランプ政権よりは日本の対中姿勢を意識していると考えられる。

また、イギリスやフランス、ドイツなど他のG7諸国が対中でバイデン政権と結束を深めることも、日本の対中姿勢を描く上で悩みの種となろう。

反対に、日本と中国との深い経済関係を考慮すれば、バイデン政権と完全に足並みを揃えるという選択肢は取りづらく、米中対立が欧州などを巻き込む形で拡大するなか、日本はその狭間で最も均衡の取れた折衷点を発見することになるだろう。

リミット迫る、北京五輪の外交ボイコット

しかし、その機会はすぐに訪れそうだ。2月の北京冬季五輪だ。バイデン政権は発足当初から北京五輪の外交的ボイコットをちらつかせてきたが、2021年12月6日に政府代表団を送らないと発表。続けてオーストラリア、イギリス、カナダ等もボイコットを表明した。各国いずれも中国政府によるウイグル人権侵害などを背景にしたものだ。

このままの情勢が続けば、台湾問題含め欧米と中国との対立はさらに激しくなる可能性があり、その分、岸田政権の対中政策は難しくなる。日本外交の基軸は日米関係、日米同盟であるので、その前提で岸田政権は中国と向き合うことになる。

岸田首相は、外交ボイコット論について国益に基づいて決断する意思を示しているが、それによって中国側も岸田政権への姿勢を見極めることだろう。政権発足から間もないが、早くも大きな選択肢が岸田政権を待ち迎えている。

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香港立法会選挙、投票率約3割 市民は議会に対して不信任 https://seikeidenron.jp/articles/20217 https://seikeidenron.jp/articles/20217#respond Mon, 20 Dec 2021 13:29:16 +0000 https://seikeidenron.jp/?p=20217

12月19日に実施された香港立法会選挙において、定員90議席のうち一般市民の投票による直接選挙枠(20議席分)の投票率は、2016年に行われた前回選挙58.3%から30.2%と大きく下回り、過去最低を記録。議会に対して香港市民が不信任を突きつける形となった。

民主派が立候補しにくい仕組み

新しい選挙制度で行われることになった今選挙からは、民主派が立候補するには最低100人の推薦がいるほか、5つに分類されている選挙委員すべてから最低2人の推薦が必要となった。その選挙委員は基本的に親中派であることから推薦人を集めることは困難を極める。仮に推薦人を集めることができたとしても、選挙管理委員会が事前審査をすることから立候補を認められないケースもあり得たため、立候補できるかどうかもわからない状況だった。

その結果、民主派最大政党の民主党からは1人も立候補しなかったほか、民主派からの立候補はわずか12人だった。

また、前回までは定員70議席のうち直接選挙枠は35議席と半分あったが、今回からは定員が90議席に増えたが直接選挙枠は20議席に減った。つまり、仮に直接選挙枠で民主派が20議席を獲得したとしても、法案の制定にはほとんど影響を与えないという制度だ。

こういったことから、香港市民の間では選挙前からしらけムードが高まっていた。PR会社に勤めるAさんは投票に行かなかったが「行っても行かなくても(結果は)一緒でしょ」と冷めた口調で語った。

政府も投票率を上げようと躍起

香港政府は投票率が低くなることを想定していた。投票率が低ければ議会の正当性が失われてしまうため投票率向上に躍起になった。まずはオーソドックスに新聞広告を打ったりCMを大量に流したりした。投票所も香港と深圳のボーダー3カ所に設置。広東省に住む香港人に投票してもらえるようにした。

裏目に出た政策もあった。選挙当日の12月19日はバス、地下鉄といった公共交通機関を無料したことだ。これは移動をしやすくして投票所に向かってもらおうというものだったが。しかし、香港では新型コロナウイルスのデルタ株、オミクロン株もほぼ抑え込んでおり、市中感染のリスクが低いことから香港市民はここぞとばかりにテーマパークやお正月に向けてたくさんの出店などが開催されているイベント会場に向かってしまった。

なお、選挙管理委員会の馮驊(ふう・か)氏は低い投票率について「投票率については評論しない」と直接的な回答を避けた。

親中派以外の当選者は1人だけ

香港において親中派は別名「建制派」と呼ばれ、民主派や中道は建制派以外という総称として「非建制派」とも言われる。

今回の香港立法会選挙の結果は、直接選挙枠で民主派は12人が立候補したが全滅。業界団体から選出される職能別の選挙枠(全30議席)で社会福利界から中間派政党の新思維(Third Side)主席である狄志遠氏が当選した。つまり、全90議席のうち89議席が建制派で1議席が非建制派ということになる。

民主派が当選できなかった要因は、前述のように民主派が立候補するには親中派の選挙委員からの推薦が必要であり、立候補できた時点で市民からは「民主派ではない」と思われてしまったことだ。また、親中派は業界団体からの支持があるため強固な組織票があり、低投票率であれば有利に働く。民主派は投票率が71%に達した2019年の区議会選挙で議席の約8割を獲得したように高い投票率が必要だったが、今回のように投票率が3割ではほとんど勝ち目はなかった。

これで立法会の審議機能はほぼ形骸化。中国政府と香港政府が制定したい法律が簡単に立法化されることになる。今回の選挙で1国2制度の事実上の終焉の仕上げがされてしまった形だ。

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