政経電論〈政治・経済を武器にする“解説”メディア〉

認知拡大を目指して動き出した「アクセル+ブレーキ療法Ⓡ」の未来 【湘南メディカルクリニックのがん免疫療法vol.4】

2017年08月 4日
読了時間: 04分00秒

湘南メディカルクリニックの阿部吉伸院長が、画期的ながん治療法「アクセル+ブレーキ療法®」 を開発して約2年。患者のおよそ8割に対して高い治療効果を上げている。その一方で、認知が広まらないなどの課題も存在する。今後、本治療が手術・抗がん剤・放射線に続く"第4のがん治療"となるには何が必要か。阿部院長へ取材し、「アクセル+ブレーキ療法®」にかける想いを聞いた。

阿部吉伸医師湘南メディカルクリニック新宿院 院長
阿部吉伸 (あべ よしのぶ)
1965年、富山県生まれ。1990年、富山医科薬科大学(現・富山大学医学部)卒業。1994年、同大学院修了。その間、パリ第12大学アンリーモンドール病院心臓外科留学。医学博士。厚生労働省、外務省に計15年所属し、国家公務員として海外で医療に携わる。家族のために日本で生活することを検討していたところ、SBCメディカルグループ総括院長・相川佳之と出会い、2015年に湘南メディカルクリニック新宿院の院長に就任。免疫細胞療法と免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせたがん治療に心血を注いでいる。

治療効果に自信を深めた、開発からの2年間

阿部院長が開発した「アクセル+ブレーキ療法®」は、患者自身の免疫力を高めてがんと闘う"免疫療法"の一つだ。

一般に、がん免疫療法というと、がんを攻撃する働きのあるNK細胞・T細胞を培養して患者の体内に戻す治療を指すが、「アクセル+ブレーキ療法®」の場合は、これにがん細胞の増殖を阻止する働きのある「オプシーボとヤーボイの併用療法」を組み合わせる。つまり、がんを攻撃する"アクセル"とがんを阻止する"ブレーキ"を両輪にするという新しい治療法だ。

「当初は私もNK・T細胞を増やす通常の免疫療法のみを行っていました。しかし、手応えが薄く、より効果的な手段はないかと探したところ、ASCOの文献でオプジーボとヤーボイの併用療法を見つけたのです」と阿部院長は振り返る。

ASCOとはAmerican Society of Clinical Oncology(アメリカ臨床腫瘍学会)の略称だ。世界中からがん研究・がん治療の最新情報が集まる、世界最高峰のがんの学会で、「がん専門医なら知らない人はいない」といわれる。

直感的に「これだ!」と思った阿部院長は、免疫療法にプラスするかたちでオプシーボとヤーボイの少量投与を始める。すると、阿部院長本人も驚くほどの大きな成果が出始めた。標準治療で効果が出なかった患者から、次々とがんの消滅や縮小が確認されたのだ。「世の中に新しい価値を見出せる治療だ」と確信した阿部院長は、これを世間に広める使命を感じる。

「アクセル+ブレーキ療法®」と阿部院長の挑戦

ブログや著書などで積極的に周知を図ってきた結果として、「アクセル+ブレーキ療法®」の認知度は少しずつだが着実に高まりつつある。これまでの連載では末期のがん患者が辿り着く治療法という印象が強かったが、最近では初期のがん患者が治療を希望するケースも出てきている。

阿部吉伸

「精密検査でがんが発見された患者が、手術を待つまでの間に免疫療法を行うなどの事例もあります。また、一旦獲得した免疫は半永久的に効果が見込めるため、術後の再発予防としても効果的です」

しかし、あと一歩、認知されるためのブレイクスルーには起爆剤が足りないという。そこで、考えたのが「ASCOに認められること」だ。

ASCOには3つのフェーズがある。第1フェーズがホームページへの掲載、第2フェーズが学会のフロアでのプレゼンテーション、第3フェーズが登壇による発表だ。

毎年6月にアメリカのシカゴで開かれる学会には、全世界から約3万人のがん専門医が集まる。がん専門医にとって登壇発表ができるというのは、科学者がノーベル賞をとるのに匹敵する名誉だ。ここで認められれば、"世界が認めたがん治療"としてのお墨付きになる。

阿部院長は昨年末「アクセル+ブレーキ療法®」のレポートをまとめ、ASCOに送った。すると、今年6月、その抄録がASCOのホームページ 上に掲載された。

「通常の免疫療法にとどまらず、オプシーボとヤーボイの併用療法を組み合わせるという発想が、ASCOの目に留まったのだと思います。抄録のホームページ掲載は、入口に立ったということを意味しますので、ここからが重要です」

阿部院長によれば、世界のがん治療の最先端は免疫療法だそうだ。この3年ほどで、ASCOでの研究発表も免疫療法関連が急増しているとのこと。

「自身の免疫力でがんを治療することは、自然なかたちと考えます。これまでの3大療法は免疫力を下げてしまいますが、『アクセル+ブレーキ療法®』は自分の持っている免疫力を最大限に高める治療なので、非常に理にかなっています」

"納得のいくがん治療"を選択するには

「アクセル+ブレーキ療法®」のように画期的な治療法が生まれている一方、効果の不確かな民間療法などが混在し、"がん迷子"になる患者も増えている。これはがん治療に限ったことではないが、日本では保険適用外の治療は、大学病院などの治療メニューには存在しない。

そのため、「もっとよい治療法はないか」と考えた場合、ネットや口コミで独自に探すことになる。すると、玉石混交の医療情報と出会うことになり、「玉」と「石」の区別がつかずに、「石」を選び取ってしまう危険も存在する。

では、私たちが正しく最善の治療を選ぶには、どうすればよいのか。

「がん治療の選択は生き方の選択。ですから、ネットの情報に惑わされずに、エビデンスのしっかりしているものを選ぶことが大切です。ASCOなどの世界的に信頼性のある学会や研究誌で認められているかどうかで、ある程度見極めることができます」

「アクセル+ブレーキ療法®」が"第4のがん治療"になる日

さて、「保険診療で認められている治療法以外にも、がんの消滅や延命が期待できる治療法があることを知ってほしい」という阿部院長の念願を叶えるには、ASCOでもうワンランク昇格する必要がある。そのための直近の課題は、臨床研究だ。

阿部吉伸

「来年、再来年などの近い将来、ASCOの第2フェーズで発表できるよう、今は臨床研究を行っています。地道にエビデンスを積み重ねていくことが、一番の近道と考えます」

世界的に見ても、『アクセル+ブレーキ療法®』と類似の研究はまだなく、本格的な臨床研究を始めているのは本例のみだ。そういう意味で、世界最先端の治療といえる。日本生まれのこの治療法が、世界のがん医療を変える日が間もなく来るかもしれない。

そして、もう一つの課題が"日本のどこにいても『アクセル+ブレーキ療法®』が受けられるようにする"ことだ。

現在、本治療は新宿院以外に大阪、名古屋、両国でも治療を受けることができる。また、将来的には東北地方や九州地方での開院も視野に入れているという。そうなれば、最適な治療を必要としているがん患者に対して、治療の選択肢をさらに増やすことができるだろう。

「アクセル+ブレーキ療法®」が一日も早く"世界が認めるがん治療"として、患者の未来を明るく照らしてくれることを期待したい。

»湘南メディカルクリニックHP

この記事について意見・感想などをコメントしてください

コメントガイドライン »

最新の関連記事

新着記事