出版業界はぬるま湯? 不要になりそうな「取次」の行方

2015.8.12

社会

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 出版社と書店間での本の流通を担う「取次」に危機が迫っています。原則として書店は一定期間売れなかった本を取次経由で出版社に返品でき、これによって書店は在庫リスクを減らすことができます。しかし、2014年には稼ぎ頭である雑誌の返品率が初めて40%を超えるなど返品率が増加してコストがかさみ、書店と取次双方の収益を圧迫。こうした背景もあり、流通が見直されようとしています。

 2014年秋に取次3位の大阪屋(大阪)の経営危機表面化、6月には同4位の栗田出版販売(東京)が法的整理となりました。両社は、楽天と講談社によって経営統合が予定され、ITに強い取次への再生を狙います。

 また、KADOKAWAは2015年4月にネット通販大手のアマゾンジャパンと取次を介さない直接取引を開始。販売額がピークだった1996年から”本離れ”は加速し続け、流通制度そのものを考え直す動きも取次を脅かしています。

ニュースが”わかる”尊徳編集長の解説

Q業界の3、4位がITに強い形で再編ということですが、1位の日販(日本出版販売)と2位のトーハンは、業績悪化に対策を打っているのでしょうか。

A手をこまねいいているわけではないだろうけど、有効な手は打っていないよね。

 昔の百貨店もそうだったけど、単なる場所貸しで、売れなかったものは返品してるから、結局「売れなくてもいいや」と競争力が生まれなかった。現在はファストファッションなどが台頭してきて競争が激しくなったので、自分たちのバイヤーを育てる努力をしだした。

 出版業界は、出版社が作った本を書店で定価販売できる「再販制度」に守られた価格競争がない業界。出版社は本を作れば、売れようと売れまいと、とりあえず取次から入金がある。それを次の本を作る資金にして、運良くベストセラーが出れば、それまでのコストを回収できる。作り続ければ、自転車操業ができたんだ。

 でも、売れなければ返品されて、お金を返さなければならない。市場がシュリンクしていっているのだから、いつかは詰まるよね。もっと読者のニーズを拾って、”売る”という努力をするべき。このままだと、取次はいらなくなると思う。


QKADOKAWAとアマゾン間のような直接取引はある程度の規模がないと難しいですよね。中小企業は今後どうやっていくのでしょうか。

A出版社の数は大きく減ると思う。

 いろんな業界を見てわかるように、集約されてるでしょ? ニッチなところは特色がないと生きていけない。どの業界もそうだけど、仕方ないよね。僕は出版社に勤めていたけど、ある種、競争のないぬるま湯だったもの。

 電子書籍などは出版社を介さなくても作家がお客と直取引ができるし、形は変わらざるを得ないよね。

[参考:「出版、返品4割の重荷 ネット巻き込み流通改革」(日経新聞朝刊2面 2015年8月12日)]

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