仕事の大きさで選ぶ~国家公務員、総合商社 鉄鉱石・製鉄資源部/働き方は「価値観」で選ぶ!変わる仕事観

2016.1.12

社会

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世の中のさまざまな働き方を取り上げ、”自分がどんな生き方をしたいか”を考える本企画。ここでは「仕事の大きさ」で働く場所を選んだ2人に、働き方の魅力を聞いた。まずは俗にキャリアと呼ばれる国家公務員から。国家的事業を手掛ける緊張感と引き換えに、圧倒的な達成感を得られる職種だ。国を思う心がなければその重圧には耐えられない。

国家公務員(キャリア)
「国益」に叶う付加価値を考える

軸足は、常に「国益」にある。例えば、国家外交の最前線に立つ外務省員は、さまざまな利害関係を持つ国家間、または関係省庁間を横断して議論を重ね、スピード感ある意思決定を求められる。若手省員の彼は言う。

「当然、個人ではなく、本質的に何が日本にとって正しいことなのかを突き詰めて議論します」

案件が大きいほど、満足感の一方で自身が”歯車”に過ぎないのではと悩む者もいる。しかし彼にその心配は無用だ。「どんな仕事にも個人の付加価値をつけられます」と、きっぱり。

“付加価値”とは、広い視野からの企画力だ。そのために外交文書を読み込むのはもちろん、国内外の新聞や雑誌に目を通し、世の関心事に注目する。目下の目標は、従事する業務で最善を尽くすこと。それは今後のキャリアアップによって立場が変わっても同様だ。常に足元を見つめながら、付加価値を考え続ける。

この働き方の良いところ
ハイレベルな議論に興奮

「国家外交の最先端で交わされるハイレベルな議論を目の前で聞ける体験には、ワクワクするものがあります。また、ハイレベルな議論の裏には、日本国内の議論の積み重ねがあります。そこに至る過程も含めて見られるのが面白い。常に自分ならどうするかを考えるようにしています。

さまざまな情報を収集してアウトプットしていく必要がありますが、必ずしも自分が考えた通りに進むわけもなく、ほかの意見を取り入れて良くなるのであれば喜んで受け入れます。そういうふうに、どんどん意思決定をして前に進めていくのが楽しいですね」

この働き方の大変なところ
縦割り組織の難しさ

「案件の規模が大きい場合、個人の仕事領域が細かく決まった縦割りになりやすく、難しさを感じるときもあります。

国にかかわる案件を扱うのに、広い視野は必須。自分の領域だけを見て隣のことは知らない、では話になりません。そういう意味でも、いい仕事をされている方は各課・各分野・各省庁を横断し、各所を巻き込みながら議論を重ねて多角的な政策へと転換していますね。そして、その横串を貫く軸はやはり『国益」です」

パラメータ「仕事の大きさ」で選ぶ働き方の傾向(国家公務員)

 

続いて、「ミネラルウォーターから人工衛星まで」といわれるほど幅広い取引を行う総合商社の、大きいモノを扱う部署「鉄鉱石・製鉄資源部」に勤めている女性。常に億単位の予算を扱う仕事だ。

総合商社 鉄鉱石・製鉄資源部
あらゆる規模の大きさがモチベーションに

伊藤忠商事に勤めて7年目の松本さん(女性)。数年前までは、日韓台の製鉄会社とコンソーシアムを組んでブラジルの鉄鉱石の会社に合計約30億ドルを投資するプロジェクトに携わっていた。

「大学時代に会社を立ち上げる友人もいましたが、私は個人では絶対に扱えないような金額の案件に携わりたかった」

ひとつ間違えば何百億円という損が出る。また、議論するのは専門の弁護士、会計士、税理士ら百戦錬磨のプロたちだ。会社の看板を背負って上司とともに交渉の場に臨む責任や緊張感は計り知れないが、それがモチベーションになっているという。一方、総合商社は収入の大きさも魅力のはずだが……。

「もちろんプロジェクトでは稼ぎたいですが、仕事はチーム戦ですから自分だけが突出した高収入を得たいというのはありません。これまで携わってきたような仕事ができるのなら、今より収入が低くなっても構いません」

将来的には経営判断も下せるようなキャリアアップを描いているという彼女は、日々の研さんに喜びを感じながら今日も働く。

この働き方の良いところ
総合商社でしか得られない高揚感

「鉱山では何千という人たちが働いていて、それを実際に目の当たりにすると思わず『おお!』と声を出してしまうぐらい仕事の大きさを感じます。私たちが投資した鉱山から採掘された鉱石が、鉄になって、各種製造業のベースになっているのを感じるのは、総合商社でしか得られない感覚でしょうね。

プロの方と議論するにはいろいろな知識が必要ですが、知らないことを学ぶのは常にモチベーションになります。彼らと仕事をするのは刺激になりますし、私の場合、根底に負けず嫌いなところがあるのだと思うのですが、『私も絶対に負けていられない!』という感じで頑張れます(笑)」

この働き方の大変なところ
日本人のように律儀な人は誰もいない

「海外の人と働くときに大変だと思うのは、日本人のように律儀な人はほとんどいないということ(笑)。”数時間後”とか”明日”とか口では約束しても絶対に出てこない。そのため、密にコミュニケーションをとって”つかまえておく”ことが必要ですね。それを繰り返しているうちに逆に楽しくなってきて、うまくそのリズムに巻き込んであげないといけないと思います。

かかわる人がたくさんいるので、自分が思った通りに進まないこともありますし、自分の意見が伝わらないとフラストレーションを感じることもある。そういうなかでも前向きにやっていけるのは、チームプレーで周りと助け合っていく仕事だからだと思います」

パラメータ「仕事の大きさ」で選ぶ働き方の傾向(総合商社 鉄鉱石・製鉄資源部)