人材の多様化で変わる企業の雇用/働き方は「価値観」で選ぶ!変わる仕事観

2016.01.12

社会

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世の中のさまざまな働き方を取り上げ、”自分がどんな生き方をしたいか”を考える本企画。今回は企業にフィーチャーし、働く目的、勤務時間、国籍など、人材の多様化をポジティブに受け止め、推進力に変えている先駆的な企業に迫る。

グローバル思考を持つ日本企業~ソニー
事業展開がもたらしたソニーのグローバル経営

1990年代のIT革命以降、情報網の広がりによって世界は狭くなった。その頃から「世界的であること」を意味する「グローバル」という言葉が氾濫し、ビジネスシーンに浸透したが、何を示すのか実はよくわからない。そんななか、電機メーカー、ソニーは日本屈指のグローバル企業といわれている。その実状を通して、「グローバル」の意味を改めて考えたい。

ソニーで働く社員は、2015年時点で日本国内に38%、海外に62%。意外にも海外の割合が国内を大きく上回る。そうなった理由は、1960年代にまでさかのぼる。

電機メーカーとして市場を広げるため、ソニーは海外に販売拠点を作り、生産拠点を持ち、現地法人を立ち上げるなど、その土地に根づいた人材を採用して運営を行っていく。創業者の一人である盛田昭夫氏は、その土地に根づいたビジネススタイルを「グローバル・ローカライゼーション」と呼び、海外展開のスタートから数十年にわたるマネジメントの基礎となった。日本企業でありながら、外国人を登用するという人材のグローバル化はかくも早くに始まっていたのだ。

そのスタイルに変化が訪れたのが2000年頃。きっかけは1988年のCBSレコード買収と1989年のコロンビア・ピクチャーズ買収による音楽・映画事業への参入だ。そもそも両事業の拠点はアメリカにあり、必ずしも日本から発信する必要性はなかった。さらに、2001年にスウェーデンの通信機器メーカー、エリクソンとのジョイントベンチャーからスタートしたモバイル事業も、従来の電機事業の在り方を変えていった。

国境を飛び越えて取り引きされる事業の登場により、現地で完結していた人材も、国籍にとらわれず最適な人物を世界規模の適材適所で配置するスタイル「グローバリゼーション」へと変わっていく。これが現在も続くソニーのグローバル人材活用の姿だ。

「グローバル」が意味を失うとき

どれだけメディアが「グローバル化」を報じようと、言葉が上滑りに聞こえるのはなぜだろうか。おそらくそれは、現場の実感を伴わない”お題目”として唱えられる場面があるからだろう。

事業の変遷に裏づけられたソニーのグローバル経営は、それとはまったく異なる。長い時間をかけて培ってきたグローバル思考はもはや”文化”といっていい。そんなソニーが考える”グローバルに活躍できる人材”とは、国籍による文化、習慣、考え方の違いなど多様性を理解してコミュニケーションをとれる人物だという。

国際的な現場では外国語が必要なことも多々あるが、話せること以上に大切なのは、価値観の異なる人物や環境とどう接するかという興味や好奇心だ。グループ人事部のゼネラルマネージャーは、それを「当たり前だと思っていることに対して、違うやり方もあると考えられること」と表現する。

多様さを受け入れ、コミュニケーションの能力もあるソニーパーソンの前では、国や人種は単なる個性にすぎない。真の「グローバル化」とは、その言葉が意味を失うことなのかもしれない。

女性活躍支援の先駆者として~資生堂
さあ、”働きがいのある”会社へ

女性が働きやすい企業として知られる資生堂は今、新たな挑戦のステージに立っている。

1990年に導入された独自基準の育児休業制度、その翌年の育児時短勤務制度から始まり、2003年の事業所内保育施設「カンガルーム汐留」、2007年の育児時短勤務者をサポートする「カンガルースタッフ」制度の導入など、女性活躍のための制度導入について同社は常に世の中の一歩先を進んできた。それによって、”働きやすさ”は一定の評価を得ている。次の目標は、働きやすさに加えて”働きがい”のある会社にステップアップすることだ。

国内の社員約2万3千人のうち、約1万人がデパートなどで化粧品の接客販売を行うビューティーコンサルタント(美容部員)。ほぼ100%が女性だ。時短勤務制度利用者も、この10年で約3倍に増え、現在は約1,100人の社員が制度を活用している。美容部員は同社にとって重要な戦力であり、彼女たちの”働きがい”の追求は大きな意味を持つ。

子どもが生まれたら退職するという時代は過ぎ、仕事と家庭の両立が可能になった。今こそ手厚い制度を利用して、キャリアアップを目指ざす時。同社は彼女たちの多様な働き方を可能にする改革に取り組んでいる。

女性活躍支援の先駆者が負う使命

2013年度から社員へのアンケートやヒアリングを行い、2014年4月に新たな取り組みをスタート。勤務シフトの慣習を見直し、2016年度からは新規採用する美容部員を正社員化、契約社員の正社員登用も進める。そこには美のプロフェッショナルとして社員を積極的に育成しようとする姿勢が見える。

改革は何も突然始まったことではない。それを知る従業員にとってどこに”ショック”があろうか。2015年秋に放送されたNHKの報道は、キャッチーさを求めるがあまり事実を差し置いてしまった感は否めない。もちろん、手本がなく手探りだからこそ課題に突き当たる。”働きがい”は感覚的で正解がない。また、夫である男性の育児参加や長時間労働の是正など、世の中の風土を変えるには同社だけの取り組みでは不十分だろう。

折しも2015年には女性活躍推進法が可決し、世の中も追いついてきた。政府の掲げる”2020年までに女性の管理職比率を30%に”という目標も、同社は2016年度には達成の見込みだという。先駆者である資生堂の新たな挑戦に注目したい。

万人のスタイルを受容~サイボウズ
離職率28%から改革の10年

育児休暇は最長6年まで取得可能、退社しても再入社できる「育自分休暇」、副業は自由で報告義務もなし、そして社長自らが育児時短労働を取得――。サイボウズの働き方を語るのにエッジの立った話題は事欠かない。世間のイメージも、まさにダイバーシティ企業の代表格。だが、同社にも高い離職率に悩む時代があった。

2005年のことだ。「サイボウズOffice」をはじめ、チーム内での情報共有ツール、グループウェアを扱うITベンチャーとして事業拡大の途上にあった同社の離職率は、なんと28%。実に4分の1が辞めていく計算だった。「だから、ただただ辞める人を減らしたかったのです」と、人事部の松川隆さんは語る。雇用改革の動機は切実だった。

青野社長と山田副社長の2人が社員との個人面談やヒアリングを行い、わかったのが100人100通りの価値観。立場も環境も、仕事に求める物も多岐にわたっているということ。冒頭の制度は、ヒアリングした要望一つひとつに答える形で生まれたものなのだ。

最も特徴的なのが、働く時間と場所をライフスタイルに合わせて自由に選択できる「選択型人事制度」。在宅勤務や時短勤務はもちろん、残業の有無まで細かく、その人次第だ。

「それは単に働き方の選択であって、例えば、時短勤務を選択したからといって手を抜いていることにはなりません。短い時間でも全力でコミットしている。この考え方が企業風土として浸透しています」

「グループウェア世界一」の理想を共有

この”企業風土”が同社の雇用制度をひも解くカギだ。多様な働き方が存在していることが大前提なので、時短を選択した途端に出世コースから外れる”マミートラック”といった現象とも無縁。事実、同社の執行役員の女性・中根氏は時短取得者だ。

10年にわたる改革の結果、その離職率は4%にまで低下。女性比率は4割まで上昇し、出産育児による離職率はゼロになった。18時が定時のサイボウズでは、20時を過ぎれば、社内からほとんどの社員がいなくなる。ただし、サイボウズは決して”働きやすい会社”を目指しているわけではないという。

「われわれが目指すのは、あくまでグループウェア世界一の会社。そこに共感してくれる社員に、さまざまな働き方で力を貸してくださいね、というスタンスです」

目的をしっかり共有できていれば、自由度の高い制度も成立する。同社のような雇用制度を取り入れるならば、まずこの風土醸成からスタートしなければならないのかもしれない。ちなみに、同社のグループウェアは8年連続で国内シェア第1位を記録(※)。そして、同社の平成26年(18期)の売上高は約59億円と3期連続で増加している。理想の実現に向けて着実に歩みを進めているようだ。

※ノークリサーチ社「2014年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」グループウェア部門においてサイボウズのグループウェア(サイボウズ Office、ガルーン)が、8年連続シェアNo.1を獲得。

企業の”攻めてる”制度

株式会社ファーストリテイリング
週休3日制の導入で多様な働き方に対応

「ユニクロ」を展開する同社は、2015年10月より国内約840店で働く、転勤のない「地域正社員」約1万人を対象に「週休3日制」を導入。多様化する働き方に対応するための制度だ。同社は2012年入社の社員が2015年段階ですでに3割が退職するなど離職率が高く、それらに歯止めをかける狙いもある。

株式会社リクルートホールディングス
上限日数のない在宅勤務制度で一歩先へ

在宅勤務の上限日数を設ける企業が多いなか、同社は2015年10月から、上限日数のない在宅勤務制度を導入。連絡には電話やメール、テレビ会議を活用し、仕事の進捗状況などの確認のため1日1回、上司への報告が義務づけられる。待遇面で通常の勤務体系と差はなく、成果により評価される仕組み。

株式会社OKUTA
“昼寝”制度で社員の生産性アップ!

住宅リフォームを手掛ける埼玉の会社OKUTAは、”昼寝OK”。就業中でも15~20分の仮眠を認める「パワーナップ制度」を導入する。パワーナップとは米発祥の短時間睡眠法で、疲労回復や脳の活性化などの効果があるとされ、業務効率の向上や、柔軟な発想が生まれるなどメリットがいろいろ。同社では会議の前にもまず全員で仮眠をとるとか。