サラリーマンが知っておくべき”投資をしないリスク”

2016.3.10

経済

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投資にはリスクがあるのはよく知られている。しかし、投資をしないことにリスクがあることは、どれだけの人が知っているだろうか? 日本人が大好きな預金の陰にある、他人事ではないリスクに目を向けよう。

“預金志向”では乗り越えられない壁

1684兆円――。現在、日本で個人が保有している金融資産の総額だ。このうち、現金と預金の総額が887兆円で、全体の52.7%を占める。対して、投資信託が91兆円、株式・出資金が163兆円。いわゆる「投資」の占める額は254兆円で、比率にすると15.1%に過ぎない。

ちなみにアメリカの個人金融資産は、総額が68.9兆ドルで、このうち現金と預金の比率が13.7%、投資信託と株式・出資金を合わせた比率が46.7%になる。日本とアメリカでは、現預金と投資の比率が、ほぼ逆転しているのだ。

このように、日本の個人は”預金志向”が強いわけだが、これからの時代、預金にばかり集中的にお金を置いておくと、何かと困った事態に直面するリスクが高まっている。

年金はそんなにもらえなくなる

一番の問題は、老後の生活費が枯渇する恐れがあること。厚生労働省が2015年に発表した公的年金の試算によると、1945年生まれの70歳の世帯は、納めた保険料に対して5.2倍の年金が給付されるのに対し、1985年に生れた30歳の世帯は、2.3倍の年金しか支給されないという。

公的年金は、定年後の生活を支える大事な生活資金だ。今のおじいさん、おばあさん世代に比べて、20代、30代の人たちが将来、迎える老後の生活は、公的年金のみに頼ると確実に貧困化する。

加えて、みんなが望まない形のインフレが日本を襲うリスクも考慮に入れておきたい。デフレ経済からの脱出と緩やかなインフレの導入を目的にしたアベノミクスは、今のところ大きな効果を見せず、物価はむしろデフレ気味で推移している。しかし、日本の財政赤字は、世界的に見ても極めて高い水準にある。

「いつ財政破綻するかも知れない日本の資産を持つのは危ない」と誰かが考え、日本国債や日本株、円を売り始めたら、一気に円安が加速する。日本のように、食糧や資源・エネルギーを海外からの輸入に頼っている国の通貨が売られれば、瞬く間にインフレが昂進するだろう。

預金を卒業して将来に備えよ!

さて、このようなリスクを抱えた日本で生活するのに、資産の大半を円建ての預金にしておいたら、どうなるだろうか。現在の定期預金の利率は、1カ月物から10年物まで一律の年0.010%程度。驚くなかれ、100万円を30年間運用して得られる利息は、税引き前でたったの3000円程度でしかない。

もし、政府がいうように物価が年2%のペースで上昇したら、現金の価値は何もしなくても確実に目減りする。そのうえ、この程度の金利収入では、いくら預金で積立をしたとしても、資産はほとんど増えない。

年金には頼れず、望まない形のインフレリスクを抱えている今の日本で、30代、40代のサラリーマンが老後資金を準備するためには、手元にある資産を、より高いリターンが期待できるものに配分して運用するよりほかに手はない。”貯蓄から投資へ”というスローガンに込められているメッセージを、今こそしっかり受け止め、将来に備えるべきだろう。