平将明の『言いたい放題』

内閣府の仕事~タコツボ化した縦割り省庁と大激論

2014.11.10

政治

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2014年9月に発足した第2次安倍改造内閣で、内閣府副大臣に任命された平氏。副大臣は省庁をまたぐ案件を仕切るかなり大変な立場らしい。”まとめ役”になった平氏が、政界の縦割り体質を言いたい放題!

いっ……じょうなほど幅広い内閣府の仕事

内閣府副大臣の仕事は、それこそ死ぬほどあります。自分でも把握できてるかちょっと怪しいくらい。内閣府には兼務も含めて8人の大臣がいるのですが、副大臣は3人しかいない。政務官も3人しかいなくて、逆三角形になっています。

私の担当は、地方創生国家戦略特区を持ってる石破(茂)大臣のもの全部。山口俊一さん(内閣府特命担当大臣)はITとかクールジャパンとかいろいろやっていて、それも全部私。沖縄基地負担軽減も菅義偉さん(内閣官房長官)担当なんだけど、それも私。

なんでこんなに広いかっていうと、省庁をまたぐと全部内閣府の担当になるから。原子力政策も経産省だけじゃできないですよね? 沖縄・北方対策もそうです。省庁を横断した瞬間にうちに来ます。だから、いっ……じょうに広いわけです。

副大臣と政務官は何が違う?

例えば地方創生は新しいカテゴリーだから、これまでの積み重ねがない。そこで、各省庁から人を集めて80~100人くらいの事務局を作っています。ルーティンをやっている役所から比べると、ゼロから始まって、その都度スタッフをかき集めてやるプロジェクト型だといえるかもしれません。前からある沖縄とか北方とか宇宙政策とか地方分権とかは別ですが。

大臣と違うのは、ボードメンバーの大臣は閣議があるけど、私たちにはない(笑)。副大臣っていうのは……なんでしょうね、副社長ですかね。専務のような立場の政務官も、やってる仕事は一緒だけど、政務官は特定事項について大臣を補佐していて、副大臣は特定事項というよりも全体を見る。副大臣は大臣がいないときは代わりにもなるし、同じく全体を見ていると。

交渉は”ポスト”が大事

やっぱり政治ってポストが大事で、政務官が出てくるのと副大臣が出てくるのは重みが違う。官僚に対しても他省庁に対しても。だから大臣が出てくる最終局面までは、ほとんど副大臣の担当です。落としどころがだいたい見えてきたところで、「大臣出てくださいよ」と(笑)。そこまでの仕事を政務官はできないですよね。

ただ、内閣府は省庁横断なので、各省庁を説得したり、戦ったりしなきゃいけない。向こうが持ってる権益に対して、地方分権だったら「地方に渡して」とか、「あなたの持っている政策をここで集約するから、やり方をこう変えて」とか言うことになります。

国会

タコツボ化した縦割り省庁と大激論

省庁は縦割りになっていて、それぞれの所管があって、それぞれが正しいと思うことをやっているんですが、縦割で世の中を見ていると見誤ることがあります。自分のエリアしか見てないので。

“エリア”で見たら正しいかもしれないけど、俯瞰して高いところから見るとそれは違うかもしれない。「いやいやそっちじゃないよ」と言うためには全体を見なきゃいけないので、そういう仕事は内閣府が多かったりするんです。
調整するなかで、彼らには「役所はこれまでこうやってたってきたんだ」という自負も誇りもあるし、思いも強いから、一筋縄ではいかない。そこを「今は時代がこう変わったのだから、こうやらなきゃダメでしょ」と激論するわけです。

目指すべき政策パッケージが明らかなときは、それぞれの省庁に任せて機能を発揮すればできますが、時代が変わると省庁の縦割りだけではうまくいかない。そこで内閣府が必要になる。結果としてどうなるかっていうと、内閣府の仕事が増えてしまいました。

政治の世界がグレーなのは当たり前

単に規制緩和と言っても、今の時代のニーズと、そもそも規制することになった背景や理由との整合性をどういうふうにして、最終的に誰が責任を持つか議論しないと、実際の政治は進んでいきません。それはそれは大激論になるわけです。過去からの流れで来た人と、今の流れの不具合を変えようとする人と、立ち位置が違うわけなので。

どっちが100%正しいっていうのは政治の世界ではほぼありません。規制が必要だという人の意見はかなり合理的ですし、一方で規制っていうのは作った瞬間から時代遅れになる運命にあるわけで、時代の変化に合わせて規制を改革、緩和しなければなりません。
緩和するとこういう良いこともあるけど、こういうリスクも増えていくよね、という議論をして、日本の社会が許容できる内容に落としていくんです。

よく”政治決着”っていうじゃないですか? それをグレーだっていうけど、それは当たり前で、どっちの言い分にも正しい部分はあるし、それをやることによって起きる負の部分もある。
議論すればするほど、だいたい落としどころは細かくなっていくわけだけど、マスコミ的にはわかりにくい結末になる。どっちが正義の味方でどっちが悪かという二元論で語りたがるからね。
その結末をちゃんと伝える能力がマスコミにないと、「改革骨抜き」とか「グレーな政治決着」って見出しになる。でも実は、政策的には精緻な結末になっているんです。

議論をするのが国会議員の仕事

 

中学のとき、「公民」で国会は唯一の立法府だと習ったはず。国会議員は国の法律を作る仕事を担っている。法律は適用したらマイナスになることも出てくるから、全体としてプラスになることを立法化することになる。その議論をするのが国会議員で、できた法律を運用して行政を行うのがいわゆる役所だ。

国会議員がそれぞれの立場で勝手なことを言ってはまとまらないので、それぞれの省庁に担当する大臣がいて、その下に副大臣、そのまた下に政務官が控えている、と考えれば良い。最終決定は大臣がするのだが、それまでにまとめるための折衝を副大臣や政務官が動く。

相当な権限もあるため、ポストに就ければ国会議員として仕事がしやすくなる。逆にポストに就けなかった人は不満を抱え込むこともあるので、総理は適度な内閣改造をして、当選回数を重ねた人にポストを割り振ることになる。それが、本当の適材適所になることを願うけど……。