自分の意見を批判されたら、「わかっていない!」と憤慨するのが人間ですが、実は批判を受けることは、あなたを成長させる大きなポイントでもあります。批判をされないということは、お決まりの話をしているか、人に関心を持ってもらえていないということ。今回は、「批判する人」と「批判される人」の関係についてお話しします。
非エリート論とは?
エリート街道からドロップアウトしていたと思っていた別所氏だが、ギリギリのところで仕事を自分の思い通りにする技術”ドロップセーフ”を確立。肝心なのはモノの見方だという。その技術を身につければ、ストレスフリーで仕事ができるようになる、まさに夢の技術だ。本コラムでは、そんな”ドロップセーフ”から生まれる「非エリート」のためのビジネス「論」を語る。
上司を批判したことある?
こんにちは。ビジョン・コンサルタントの別所諒です。「なんでこんなバカな上司と仕事をしなければならないのか?」そんなことを思ったことはありませんか。
僕の場合、思ったことがあるどころか、「いつも」思っていました。結果、どの会社でも人間関係で問題を起こして、転職を繰り返していたわけです。それにしても、なんであんなに上司は賢くないと思ってしまっていたんですかね?
賢くないのは上司? 自分?
いま考えればわかるんですが、僕が賢くなかったからなんですけど(笑)。思い通りにならない時はいつも、問題を上司のせいにして、自分に問題があると考えたことなんてありませんでした。こうして、上司に不満ばかりを口にする20代・30代を過ごしたわけです。
それにしても、上司を批判しながら、現実が何も解決しないという状態は無意味だし、ストレスになりますね。しかも、こっちもミスをするわけですから、「何をやってんだよ!」なんて上司に言われたら、ほとんど喧嘩です。ところが、喧嘩に負けるのは力の弱い方で、それは部下である僕ですね。まぁ、日々のお酒も美味しくない。ほとんど会社への不満なのですから。典型的なダメサラリーマンだったわけですね。
あなたがサラリーマンだとすれば、必ず上司がいるはずです。尊敬できる上司はいますか? それならとてもラッキーですね。話のわからない上司がいますか? それならさらにラッキーですね。ということで、今回は「批判」についてのお話しです。
誰かが誰かを批判する原因
そもそも、なぜ人は誰かを批判するのでしょうか? 多くの場合、自分と考え方が違うからですね。違う考えが、自分よりも優れているならそちらに従います。違う考え方が自分の考えよりも劣っていると思うから批判をするんですね。あなたが「切れ者」でプレゼンテーションがうまいほど、この傾向は顕著だと思います。
例えば、上司にあるプロジェクトの企画案を提案したとします。企画案は論理的で考えうる限りの課題は潰しました。しかし、上司はすぐにGOを出しません。
「理屈は君のいうとおりなのだけど、何かが足りないような気がするんだよね。」
この曖昧な返答にあなたは、「具体的に話してください。課題を解決した案を再提出します」と詰め寄っても、上司の態度は煮え切りません。その時、上司は何を考えているのでしょうか?
そう簡単に論理で割り切れるものではない
上司は、あなたの「論理」を批判的に見ているのではありません。強いて言うなら、「論理的に正しければうまくいく」という姿勢に疑問を抱いているのだと思います。言い方を変えれば、「論理的に割り切れないなにか」について上司は考えているのです。「論理的に割り切れないなにか」とは、プロジェクトは人が動かすものであるということです。
組織やチームとは人の集合体である「生き物」です。あなたの企画がどんなに論理的に正しくても、本当に人が動くのか? ここには、あなた自身のコミュニケーションの取り方が大きくかかわってきます。おそらく、上司の若き日も、あなたと同じような論理で相手を説得する仕事をしてきたのかもしれません。そのなかで、論理的なだけでは割り切れない「人間関係」という現場の感覚を身につけているのかもしれません。
企業にはそれぞれの思惑を持った人が集まっていて、それぞれの部署の思惑もあります。役職が上がれば、自分の意見を主張するだけでなく、全体を見る俯瞰的な視野が必要になります。もしかしたら、上司にはあなたに見えていないものが見えているのかもしれません。
論理的に正しい企画が通らない時は、「プロジェクトに関わる人の関係性」に目を向ける。それが、全社的な視野の広さにつながります。企業とは、論理と人間関係で動いているのです。
世の中は批判される人とする人に分かれます。批判される側の人もかつては批判する側にいたのかもしれません。ところが、批判してもいいのにしない。これは妥協でも服従でもありません。他の考え方を受け入れて検討するという視野の広さです。人を批判しないで受け入れることができれば、リーダーへの第一歩を踏み出したと思ってください。あなたに、「おめでとう!」と言いたい気分です。
批判されることはリーダーの証
最後に、世の中の一つの真実を。批判される側と批判する側。圧倒的に多くのケースで、前者の方が地位が高く、成功しているということです。
ぜひ、自分と違う意見を受け入れて、批判される側に回ることを考えてみませんか? 批判されるとは責任を持つということでもあります。上司に何かを委ねることなく、あなたの企画をあなた自身が責任を持って動かす覚悟。そして、実行していけば、あなたが批判の対象になります。これこそ、リーダーとしての立ち位置です。
ちなみに、僕は小さな企業を経営しています。批判されるほど偉くはありませんが、自分の目線が上がったと感じたことがあります。それは本を出版した時です。お金を払って買ってくれる読者はお客さんなわけです。あなたも経験があると思いますが、お客さんの力は絶大です。1円でも払えば向こうが偉い。
まぁ、「面白くない」と言われることもよくありました。驚いたのは、70円の電子書籍で痛烈な批判をいただいた時です。
瞬間的に凹みましたが、公の場で批判されるというのは僕もそのステージに上がったのだと考えると悪いことではありません。しかも、相手は匿名、こっちは実名。有名税というほど僕は有名ではありませんが、批判されない有名人はいませんよね。
上司を批判したいと思ったら、「いかん、いかん、批判される方に回らないと」と考えてみてください。それがリーダーの視点です。と言いながらも、批判によっては受け入れることが難しいこともあります。そんな時はいい方法があります。その方法とは、自分と違う考えや感覚が世の中には存在することがわかったと思うことです。
批判歓迎! でも、このコラムに厳しいコメントはしないでね(笑)