消費税増税はやむなしだが、2%の軽減税率は面倒くさいだけでメリットなしの愚かな政策
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消費税増税はやむなしだが、2%の軽減税率は面倒くさいだけでメリットなしの愚かな政策

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反対の声も根強いなか、10月1日から施行される8%→10%への消費税増税。今回は税率が変わるだけでなく、テレビも新聞も無批判の「軽減税率」や、増税による景気減退対策として実施されるキャッシュレス決済を用いた「ポイント還元」など、ややこしいものが付随している。僕自身は現実を考えると増税は仕方ないと思っているのだが、皆さんは実際どう受け止めているのでしょうか?

税率が上がるのはやむを得ない

誰だって自分の財布から出て行くお金が増えるのは嫌だ。そういう意味では消費税は無い方がいいのだが、現実的にはそういうわけにもいかない。国は1000兆円を超える借金を背負っている。今はやっていけたとしても、将来的には誰かが負担しなきゃいけなくなる。

消費税の代わりに法人税を引き上げろという声もあるが、ナンセンスだと思う。法人税は、グローバル社会になって世界的に下げる方向に舵を切っている。グローバル企業はヘッドクオーター(本社)が世界中のどこにあってもいいわけで、そうなると法人税が高い国にある必要はない。法人税を引き上げたらトヨタは残るかもしれないが、IT関連企業は本社を海外へ移すだろう。

ヨーロッパなんかだと消費税が20%を超える国も多いし、そう考えると増税もやむなしだと思う。

消費税の逆進性は不平等か

消費税は逆進性が高いからダメという意見もある。

逆進性

収入の低い人の負担割合が、高い人よりも大きいこと。仮に一人当たり食費が年間120万円だとすると、消費税10%なら12万円の税負担となる。年収1000万円の人の税負担の割合は1.2%で、年収500万円の人は2.4%になるので、低収入の人の方が負担割合は大きくなる。

しかし、例えば食品を購入するとき、金持ちは単価の高い成城石井やデパ地下に行って、庶民は安売りスーパーへ行くように、高所得者と低所得者では購入額が違うだろうし、低所得者が買えないような高額なものを高所得者は100万円ポンと出して買うことだってある。そう考えると、“金額”としては高所得者も多く払うことになり、逆進性が高いとは一概に言えないのではないだろうか。

軽減税率はクソである

ということで消費税の増税については許容できるが、今回の「軽減税率」制度だけは気にくわない。はっきり言ってクソだと思う。制度自体を否定するつもりはない。何がクソかと言うと、10%→8%とたかだか2ポイントしか減らないことだ。

軽減税率制度

特定の品目の課税率を他の品目に比べて低く定める制度。国内での対象品目は酒類や外食、ケータリングなどを除く飲食料品全般と定期購読の新聞(週2回以上発行)。

ヨーロッパの国々では消費税は20%前後あり、軽減税率は15ポイント前後引かれた数字になっていることが多い。イギリスなら消費税20%に対して軽減税率はゼロだ。それぐらいやるならいいのだが、繰り返すけど日本はたった2ポイントである。

食費が年間100万円だったとしたら、税込みで110万円が108万円になり、たった2万円分しか返ってこない。これだけのためにかかる手間暇やPOSシステム(レジ)の変更など事業者にかかる負担を考えると、やる必要などないと思う。どうせやるなら10%とゼロにするぐらいじゃないと意味が無い。それでもヨーロッパの水準に届いていないが。

軽減税率制度は公明党がゴリ押しでねじ込んだものにすぎなくて、一見、弱者に寄り添っているように見えて、実は「自分たちが成果を出しました」と言いたいがためにやっているだけだ。
キャッシュレス化よりも先にするべきことがある

もうひとつ、消費税増税にあわせて始まるのがポイント還元制度だ。電子化を促進し、いずれはマイナンバーにも紐づけることでお金の流れを政府が把握できるから一石二鳥でうまいやり方なのだと思う。

ポイント還元制度

正式には「キャッシュレス・消費者還元事業」という。登録加盟店でキャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など)にて買い物をした場合、消費者に最大5%がポイントで還元される。期間は2019年10月1日から2020年6月30日までの9カ月間。

ただ、逆に言えばキャッシュレス決済の手段を持たない人にはポイント付与できない。現金主義の人だっているし、高齢者には難しくてできない人も多いだろうから、そういう人たちには恩恵が無い制度だ。

そもそも、キャッシュレス化に対するセキュリティに信頼性があって今回のような制度を進めるのなら、まず投票を電子化すべきだと思う。電子化については優先すべき事案を履き違えている。

将来の子どもたちの負担を考えると増税は必要

日本の消費税は、1978(昭和53)年に大平(正芳)内閣で「一般消費税」(仮称)を導入しようとしたのが始まりだ。そのときは国民の理解を得られず、内閣の支持率も急落し、結局導入できなかった。その後、1987(昭和62)年の中曽根(康弘)内閣でも「売上税」という名称で導入しようとしたができなかった。

昔から消費税は、内閣が倒れかねないぐらいナーバスなものだった。当時あるべき税収がなかったために、借金もその分膨らんでいったと言える。先進諸国を見れば日本は本当に間接税が低い。だから、今回の増税は嫌でもやらなければいけない。

消費税が増税されるたびにデフレや景気の減退が起きているという意見に対しては、消費税だけをすべての要因にするべきではないと思う。そもそも人口も減っていっているので消費が弱くなるのは必然であり、値下げしないとモノは売れないという悪循環もあるだろう。

少子化という問題を抱えながら膨らんだ借金は誰が返すのか。将来の子どもたちにかかる負担を考えると、今ある程度の増税は必要だと思う。

今は10%だが、この先の消費税は欧米並みにしないと持たないだろうな。