技術の向上で、アマチュア作品のクオリティが一昔前と比べて格段に上がった昨今、”インディペンデント・フィルム”と呼ばれる自主制作映画もまた注目を集めている。 商業映画のような派手さは無いが、監督が「撮りたいものを撮った」主観的な作品は、全国ロードショーが並ぶシネコンや、莫大な制作費をかけた大作には無い”心の自由”と”静かな熱”がある。 自主制作映画の登竜門として知られる「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)」や、「映画×音楽」というユニークなコンセプトの映画祭「MOOSIC LAB」ともコラボする動画配信サイト「青山シアター」の紹介とともに、2017年現在の自主制作映画の魅力に迫る。
映画作りに情熱を燃やす若者たち
「インディペンデント・フィルム」「自主制作映画」。そう聞いて思い出す漫画がある。「ビッグコミック」(小学館)に不定期連載され、1986年に単行本化された細野不二彦の「あどりぶシネ倶楽部」だ。
舞台は、大学の映画同好会。映画作りに情熱を燃やす若者たちの挫折や葛藤、苦悩、そして恋愛を描いた青春群像劇。「ギャラリーフェイク」をはじめ代表作の多い作者の隠れた名作として今でも人気が高く、1980年代を中学~大学生として過ごした現在の40~50代であれば胸を打つこと必至の、珠玉のエピソードが並んでいる。
本作の時間設定は、1982年。劇中の「このビデオ全盛の時代にシコシコ8ミリ撮ってる」というセリフが物語るように、家庭用ビデオテープが普及し始め、8ミリフィルムが斜陽を迎える、直前の話だ。
ちなみに当時、自主制作映画で人気だった富士フィルムのムービーフィルム「シングル8」 は、一巻3分がおよそ1500円、現像代は500~600円ほど。主人公たちは最終的に70分の大作に挑むが、感材費に6万円以上のコストがかかることになる。
「NGを除いたって、らくらく4時間以上あるんですよ、フィルム」とのセリフがあるから、その作品はフィルム代だけで12万円以上がかかっている計算だ。
スクリーンに映写でき、フィルムを切り張りすることで編集に高価な機材を必要としないなど、アマチュアの映像制作者の間では8ミリはまだまだ重宝されていたそうだが、当時の大学生にとっては、なかなかの出費だったに違いない。
日本のインディペンデント映画の傑作を動画で
それから30年余り。2000年代に登場したデジタルビデオ「MiniDV」や液晶プロジェクター、パソコンの高性能化・低価格化でデジタル映像編集が個人でも可能になり、今ではスマートフォンで映画を撮る若い監督が現れるなど、誰もが、手軽に、安価に自主制作で映画を作れる時代になった。
同時に、パソコンやスマートフォン、タブレットで、いつでも、どこでも、自由に映画を楽しむことができる時代にもなった。ストリーミング系の動画サービスも一般に浸透し、新作を除けば、公開されて間もない作品がすぐ観られるという環境は当たり前になったといえる。
そんななか、映画配給会社・ギャガは独自路線の動画サイト「青山シアター」を運営している。「青山シアター」は、話題の新作から、他の動画配信サイトにはない通好みのミニシアター系作品まで幅広く配信する動画配信サイトで、無料の会員登録をすれば、劇場公開最新作のオンライン試写会(抽選)に参加したり、キャストインタビューなどの特別動画が観られるほか、イベント招待や映画グッズプレゼントも実施している。
そして、そんな「青山シアター」が日本のインディペンデント映画の傑作をお届けする特集企画が「インディペンデント・フィルム!(IF!)」だ。
おすすめ企画および配信作一覧は、「青山シアター」の公式HPに譲るが、国内外の映画祭などで話題になった単館系上映作品、自主制作作品からワークショップ・映画学校系の作品まで幅広く紹介。「IF!」でしか観られない作品も数多く取り揃えていて、ディープな世界観を構築している。
PFF&MOOSIC LABともコラボ
デジタル化が進んだ現在でも、自主制作映画に掛かる費用は1分間でおおよそ1万円程度と言われ、撮影期間も少なくて3カ月以上を要するため、監督の出費額は大きい。
予算の確保やモチベーションの維持には大変な苦労が伴うと思われるが、「IF!」で紹介する監督たちが「撮りたいものを撮った」作品には、それを凌駕する”心の自由”と”静かな熱”がある。その志は、先の漫画が描かれた30余年前と、なんら変わらない。
また、「青山シアター」では、自主制作映画の登竜門として知られ、有名監督を多数輩出してきた映画祭「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)」の、2015年、2016年度の入賞作品を配信中。上映期間を逃してしまったり、会場まで足を運べなかった観客も、サイトを通じて入選作を観賞できる。また、黒沢清、中島哲也、園子温、塚本晋也らPFF出身監督&関連作品も配信。
さらに、本年度のPFF会期中に、早くも入賞作品の配信が決定! 【青山シアター】ぴあフィルムフェスティバル特設サイトにて、9月23日(土)~10月22日(日)で期間限定配信。
PFF(ぴあフィルムフェスティバル)
“映画の新しい才能と育成”をテーマに1977年にスタートしたP FFは、世界最大級の自主映画コンペ”PFFアワード”をメインプログラムに据えている映画祭。本アワードから多くの監督が誕生しており、今年のベルリン映画祭に正式出品された4本の日本映画のうち、3作品(荻上直子監督『彼らが本気で編むときは、』、石井裕也監督『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、吉田光希監督『三つの光』)はPFFで入選した監督の作品だった。 2017年のPFFは、東京国立近代美術館フィルムセンター(東京都中央区京橋)にて、9月16日(土)~29日(金)まで開催(※月曜休館)。
加えて、”映画×音楽”をコンセプトに、過去にはアカシック、N’夙川BOYS、大森靖子、柴田聡子ら今をときめくアーティストたちが出演した作品も上映された映画祭「MOOSIC LAB」(ムージック・ラボ)ともコラボし、ここでしか観られない動画を配信する。
MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)
あらゆるミュージシャンと映画監督がタッグを組み、一本の映画を製作、全国各地で上映する映画祭。2017年は長編部門に加え、新たに短編部門が加わり、エントリー全18作品が東京・新宿K’s cinema/UPLINK渋谷にて、8月12日(土)~9月8日(金)に上映された。
2017年は、全国での劇場公開に先駆け、10月7日(土)より11月5日(日)まで「青山シアター」にて初オンライン上映される。
さらに8月9日(水)~12月31日(日)は、MOOSIC LABの2012年~2016年の作品を期間限定配信。吉岡里帆や森川葵らいまや第一線で活躍する若手女優の出演作もあり、新鮮なラインナップとなっている。
30年で変わってきた自主制作映画界
「あどりぶシネ倶楽部」では、「でも悲しいかな、日本の映画界にはそういう若い才能を育てていく環境にはなっていない――」と1980年代当時の現状を嘆くが、30年の間に、少しずつではあるものの、着実に変化してきている印象だ。
ネットによって映画が時と場所を選ばなくなった今、かつて「中野武蔵野ホール」や「吉祥寺バウスシアター」、渋谷スペイン坂上の「シネマライズ」……などなど、残念ながら閉館してしまった映画館に足しげく通っていたという元サブカル少年も。
地方暮らしでそうした環境になく、「今だからこそ観てみたい」という元サブカル少女も。もちろん、今の若者も。これを機会に、ぜひ「青山シアター」の扉を開けてみてはいかがだろうか。
映画配給会社ギャガが運営する動画配信サイト【青山シアター】
IF!(イフ!)/青山シアター Twitter:@if_aoyama
↓↓映画祭×「青山シアター」のコラボ続々↓↓
下北沢映画祭×「青山シアター」
ジャンルを問わないコンペティションをメインプログラムに、音楽や演劇、ファッション、グルメなど下北沢を彩るさまざまなカルチャーを切り口にしたプログラムを行う映画祭。9回目の2017年は、10月7日(土)~10月9日(月・祝)に東京・しもきた空間リバティ、下北沢トリウッド、近松(チカマツ)、HIBOU HIBOUの4会場で開催。 「青山シアター」では、10月9日~11月5日(日)に、2017年コンペティションノミネート作品のオンライン上映を開催。また、2014年~2016年の傑作セレクションを、9月7日~12月31日まで配信。