公明党のゴリ押しで、財源の裏づけのない軽減税率適用を決めた巨大与党。将来へのツケを残しかねない今回の措置は本当に理解に苦しむ。前回の民主党政権時もそうだが、われわれは選挙で投票したからといって白紙委任をしたわけではない。逆進性の高い消費税の軽減税率導入でなぜ、低所得者対策になるのか。どうして、三党合意に書いてあった給付付き税額控除でなかったか。丁寧な説明が必要だ。
嘘つき民主党から始まった罪の連鎖
消費税の軽減税率が勝手に決まった。確かに国民的には納める税金が安い方がいいに決まっている。庶民である僕も同様だ。しかし、今回の決め方にはかなりの強引さと不透明さが際立った。
僕が聞き及んでいる情報によれば、自民党の国会議員の大半が、今回に限ってなぜ軽減税率が適用されるのか理解に苦しむというものだった。それなのに、このように決まったのは残念としか言いようがない。
もともと消費税が5%から10%へと引き上げられるのは、自公民の3党が合意をして、「社会保障と税の一体改革」の名目で、今後増え続ける社会保障費を賄うために、決定を下したものではなかったか。当時の民主党・野田首相が決断をしたものだが、マニフェストに政権担当の4年間は増税をしないと明記していたのに、それに嘘をついて決断してしまった。その後の選挙で大負けするのも当たり前だ。
僕は増税が必要ないとは思っていない。むしろ仕方がないと思っている。しかし、(増税しないと)国民と約束して選挙を勝ったのなら、それを履行するべきだし、約束を反故にするべきではない。これは当時も吠えた事柄だから、いまさら蒸し返すことはしないが、政治家の公約が依然として軽過ぎる。結果として嘘つき民主党が選挙で大負けしたのだから、国民は馬鹿じゃなかったということだ。
あきれた公明党の主張と新聞報道
閑話休題。今回、公明党のゴリ押しで軽減税率の導入が決まったが、「生鮮食品だけでは国民の理解が得られない」との公明党の主張にはあきれた。
「創価学会員の理解が得られない」の間違いではないか? しかも、どさくさに紛れて、一部の新聞にも軽減税率が適用された。創価学会の機関紙である聖教新聞も定期購読者には軽減税率が適用される。そして、この事実を大きく報じた大新聞は皆無に等しい。
食品や加工品の話は連日大きく取り扱ったのに、後日決まった自身のことは隅っこの方に、ひっそりと事実を報じ、世間から反発を受けないようにしたとしか思えない。
軽減税率は低所得者対策とキレイごとを並べていたが、新聞の定期購読者は低所得者ばかりか? 逆に朝日新聞などは、高収入のインテリの定期購読者が多いのでは(正確なデータを持っていないので、あくまでイメージです)? 大マスコミ(テレビ局も新聞社の子会社が多いから報道してない)に、政治がおもねったとしか思えないほど、新聞に対しての軽減税率は今までの主張から言ったら、屁理屈も通らない。
軽減税率を導入している国は確かに多いし、活字文化を守るために、書籍・新聞に軽減税率が適用されている。しかし、ほとんどの国が20%を超えるような高い消費税率だからこそ必要なのであって、10%の国など欧州ではスイス(8%)くらいのものだ。
しかも、税源が足りないのを後回しにして、とにかく軽減税率ありきの議論だったことも許せない。だったら、最初から増税なとするなと言いたい。事務コストの方が多大になり、増税効果も望めなくなるからだ。
財源はどこから持ってくる気だ?
低所得者対策として手当てしていた「総合合算制度」(医療、介護などの自己負担の上限を設ける)を取りやめて、軽減税率用に4000億円の確保をしたという。本末転倒だ。消費税は逆進性があるので、高所得者の方が恩恵を受けやすい。しかも、加工食品や新聞まで対象を広げたので、1兆3千億円の財源が必要になった。
もし、これを国債で賄うのであれば、「社会保障と税の一体改革」は本当に掛け声倒れのものになり、将来世代へのツケ回しで、ますます国力を削ぐ最悪の結果になるはずだ。収入が見込めないのに、クレジットカードで大判振る舞いをした、というような無責任極まりないものになっている。
また、足りない財源をたばこ税に求めようという意見も出ているが、本当に安直だ。元来、税は受益者負担であるから、一般財源としてたばこ税のみ増税というのは、公平性から言っても疑問を持たざるを得ない。反発の少ないところから取ろうという、2016年の参議院選挙を意識したものとしか思えない。
今回の公明党のゴリ押しを受け入れたのも、参議院選挙への協力要請と、平和安全法制への協力(もともと公明党・創価学会は平和安全法制には反対の立場)への謝意と考えるのが妥当だ。こんなでたらめで強引なことをしたのだから、そういう理由で合点するしかない。
マニフェスト破りをして嘘つきの民主党を中心とした野党と、強引で説明のつかないことをする与党。さて、どっちを選ぶか悩みは尽きない。