2016年4月20日に発売された著書『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』で、尊徳編集長は9人のリーダーたちを鋭く見抜き、巧みな言葉で評している。今回の「俺にも言わせろ」は番外編として、普段吠えている編集長にインタビューし、その”人を見ぬく力”に迫ります。
尊徳編集長の思考法
取材を振り返って率直に何を思いますか?
普段から付き合いのある人たちを改めてインタビューしたんだけど、この人たちにはやっぱりやり遂げてきた”芯”のようなものがあるんだなと感じた。
人間は誰でも曲げないところはあると思うけど、それを隠しながら組織の中とかで生きていくでしょ? でも、彼らはそこにぶち当たったら、絶対に曲げないでここまできている。
「曲げないぞ」という気持ちはどこから生まれるのでしょうか?
メンターなど人との出会いもあるけど、やっぱり”強い思い”があるからだと思う。サイバーエージェントの藤田くんの場合は、自分でつくったわが子のような会社を手放さなければいけなかったときに、本当は手放したくないという思いが言動に表れたから、支援者が現れた。中途半端な気持ちだったら、譲ることになっていたと思う。
ホントは曲げるほうが楽なんだよね。組織に染まるとか。C CHANNELの森川さんは、組織にいながら自分がやりたいと思ったことは、それを具現化するために何とかしてきた。普通の人だったら具現化するという思いが時間とともにぼやけてくるものでしょ。
大きなことを成し遂げたいと思ったら、一本筋が通ってないといけない。一度曲げたら、周囲も”曲げる人”だと思うようになるからね。曲げなかったら、「あいつは曲げないやつだ」と認められて、人が助けてくれるようになる。曲げるか曲げないかに、その人の人となりが出るんだな。曲げ続けるとその人が何を考えているかわからなくなるからね。いい人とは思われると思うけど。
彼らに共通することはありますか?
GMOインターネットの熊谷さんは「一番になる」ということを大事にしているけど、言葉は違えど皆、ほかの経営者も政治家も同じことを思っている。人と同じことをやって埋もれてもしょうがないから、人にはできないことを作ったり、提供したりすることにこだわる。きっと彼らは2番手、3番手は嫌だよ。
僕の場合の一番は、発言とか、人との距離感とか、政財界とかかわる位置だね。エスタブリッシュメントの人たちと接しながらも、自分が体制派になろうとは思わない。社会の矛盾は絶対に是正する、という意見を言える、そういう影響力を持つ人物として一番になりたいと思っている。
尊徳流の人付き合いを教えてください。
昔、月刊『WiLL』の花田紀凱さんが「異質な人と毎日3人会え」と言っていた。それは不可能だったけど、それくらい新たな人脈を開拓することに僕は注力してる。いくらでも人と会いたい。今は無理しないけど、昔は必ず毎日誰かと会食するように予定を埋めてた。
人のつながりは、ある程度のネットワークがあったら自然に増えるようになるよ。会いたいと言ってくれる人と会ったり、逆に紹介したりというのを愚直にこなしていくとどんどん増えていく。人と会うときは「この人は何を求めているのか」を常に考えるようにしているよ。会いたいと言ってくれた人は、僕の何を求めてきたのか、また、会ってくれた人にはできるだけ何かを提供したいから。
普通の人にも”曲げない気持ち”は持てますか?
川淵さんとカレーを食べた話を書いているけど、僕からしたら、ほかで何があろうが僕自身に危害がなければ、その人との距離はまったく変わらない。川淵さんも、安倍総理も、井川意高も。慰めようとかそんな気はなかったけど、川淵さんにあんなに喜ばれたら、こっちもやってよかったなって思うよね。
僕の判断基準は常に僕の中にあって、ほかは関係ない。郵政のときに聖子先生と絶交したのも、自分がおかしいと思ったからそうしたまで。社会の矛盾を正したいと思っているのに、そこで仲良くしていたら「そういうやつ」だと思われるでしょう。
そんなふうに、人間生きていたら”そうしたい”と思うことはあるでしょ? いい仕事がしたいとか、釣りがしたいとか、おいしいご飯が食べたいとか、何でもいい。無かったら辛いだけじゃないかな。
何となく生きるのが嫌だと思うなら、何でもいいから一つ何かをしようと決めて頑張ることだよ。そう思った方が、メリハリが効いて自分のなすべきことがわかるようになる。
一つのことを貫いていくのは、彼らでも辛いしキツイ。でも、目的を実現すると決めたらやるんだよ。誰に評価されるわけでもなく、達成したときに「よかった」と思える、それだけのためにね。