尊徳編集長の解説でニュースが”わかる”!
Q.そもそも、「全国農業協同組合中央会(JA全中)」とは、どんな組織ですか?
A.まずは「農業協同組合(農協)」を理解しないとこの問題はわからないと思います。
農協の上部組織がJA全中です。もともと、小規模農家が多い日本では、農家が組合員になり、農協を作り農具を調達して流通してきました。一括購入をしたり、集めた資金で高額な農具などを買えば共同で使えたりできます。一括で農産物を買い上げて、流通に乗せてもらえば農家も助かります。地域ごとに農協はあるのですが、上部組織のJA全中が、それらを指導して政府にも提言ができるものとして存在しています。
ここからは私の私見ですから、反対意見があればぜひお聞かせいただきたい。
もともと農協は組合員が農家だけのはずなのに、現在では准組合員として農家以外の人も利用することができます。金融機関として、住宅ローンなどの販売もしています。本来の農家を育成して補助するという役割から逸脱しているように思います。特に都会の農協では、その組織を保つために准組合員の方が多く、疑問を感じざるを得ません。
Q.政府がJA全中の指導権限撤廃を検討、各農協が営利目的で活動することも認めるということですが、なぜ今まで禁止されていたのですか?
A.大票田を持ち、自民党の支持基盤だった農家にかかわることを改革することは極めて困難だったのです。
いままで全国農業協同組合連合会(JA全農)は、株式会社の農業参入やTPPなどの農政改革に反対を続けてきました。その権限を削減する改革は大歓迎。
郵政改革もそうですが、民間でできること(特に金融)は民間に任せるべきです。質問にあるように、農協法で守られた組織ですから、納税率も優遇されているし、既得権の塊ですから、営利目的で活動することに制限が加えられていたのは当然です。しかし、兼業農家が増えて、高齢化も進む今、農協の改革こそが日本の農業の競争力アップにつながると私は確信しています。
Q.今、政府がこの改定に乗り出すのには、TPPと何か関係があるのでしょうか?
A.当然、TPP交渉にも影響を与えるはずです。
このことを担保にとって、あまり強硬に反対をするようであれば、権限を大きく削減するという警告でもあるでしょう。(佐藤尊徳)
[参考:「農協 70年ぶり抜本改革」(日経新聞 1面 2014年4月9日)]