「バイオ燃料」ってそもそも何?ホントに地球にやさしいの?

2020.02.14

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バイオエタノー工場

近年よく耳にする「バイオ燃料」。地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)を排出する従来の化石燃料と比較して、漠然と“地球にやさしい”イメージを持つ人が多いのではないだろうか。しかし、実際にバイオ燃料がそもそもどんな仕組みでエネルギーになるのか、どういう意味で地球にやさしいと言われているのか……意外と理解されていないように思う。環境問題対策として世界的に注目が集まっているバイオ燃料、その実態とは?

そもそも「バイオ燃料」って?

そもそも「バイオ燃料」とは何なのか。バイオとは「バイオマス(Biomas=生物体)」を意味し、要するに植物から作られた燃料のことだ。ただし多種多様で、木材をそのまま燃やす「木質バイオマス」(火力発電などに利用)や、食品廃棄物や糞尿、廃材などを発酵させてメタンガスを取り出す「バイオガス」、穀物などからつくる「バイオエタノール」、油脂からつくる「バイオディーゼル・バイオジェット燃料」などがある。

今回は特に注目度が高い2種類のバイオ液体燃料、「バイオエタノール」と「バイオディーゼル(BDF)/バイオジェット燃料」の現状と、その問題点を探ってみる。

バイオ燃料が“地球にやさしい”のはなぜか

バイオ燃料が“地球にやさしい”とされるのは、当然植物由来の燃料だから……という理由ではない。植物は大気中のCO2を吸収し水分(H2O)と反応させて枝葉(セルロース)を伸ばし、またデンプンや糖分、油脂類をつくって蓄え、不要な酸素(O2)を放出する。これが光合成で、バイオ液体燃料はこれらのデンプンや糖分、油脂類を原料にして製造される。だからこそ“地球にやさしい”燃料と見られている。

なぜかというと植物が大気中からCO2を奪ってつくった物質なので、これを燃やしてCO2を出したとしても、単にもともと大気中にあったものを戻しただけに過ぎず全体のCO2量は増えないという理屈だからだ。計算上プラス・マイナス・ゼロが成立し、これを「カーボン・ニュートラル」(炭素中立)ともいう。

ブラジル、アメリカでの主流は「バイオエタノール」

バイオ燃料として、まず注目されるのが、ブラジルやアメリカで生産・消費が拡大している「バイオエタノール」だ。

バイオエタノールの二大原料はトウモロコシとサトウキビで、作り方は基本的にお酒と同じ。糖分を多く含むサトウキビやてん菜など、あるいはデンプンの塊であるトウモロコシや米、麦などを酵母発酵させエタノール(エチルアルコール)を“醸造・蒸留”する。

世界の年間生産量は約1500億ℓで、うちアメリカが約50%(大半がトウモロコシ由来)、ブラジルが25%(同サトウキビ由来)を占める。大半が自動車燃料用として消費され、アメリカでは「E10」(ガソリンに10%混合)が一般的だが、“バイオエタノール先進国”ブラジルでは、含有率27%が標準で、エタノール100%対応エンジンを積んだ「フレックス車」が主流なのだ。

軽油の代替として期待される「バイオディーゼル」

また、バイオエタノールと並んで注目されるのが、「バイオディーゼル/バイオジェット」だ。

原料はいわゆる植物油で、油脂を多く含んだパーム(アブラヤシ)の果肉や大豆、菜種の種子から搾油する。植物油は脂肪酸とグリセリンからなり、これにメタノールを加え「脂肪酸メチルエステル」を合成、これがバイオディーゼルの主成分で、トラックなどディーゼル車の燃料である軽油の代替として期待されている。

バイオディーゼルの世界生産量は約3600万t(2017年)で、パーム由来が約40%、大豆由来が約25%、菜種由来が約20%。主な生産国(ディーゼル油原料向け)は、パームがインドネシア、マレーシア(2国で全体の8割超)、大豆がアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、菜種がEUなどだ。ちなみに中国は大豆や菜種の一大産地だが大半は食用や飼料用として消費する。

一方、「バイオジェット燃料」は早い話、バイオディーゼルをより高級にしたもので、灯油に非常に近い。新興国の経済成長やLCC(格安航空会社)の急伸で世界の航空需要が激増しており、民間旅客機が出すCO2もバカにならない状況。

このため世界の大半の民間航空会社が加盟するIATA(国際航空輸送協会)は、2050年までに2005年比でCO2排出量5割削減を掲げバイオジェット燃料に期待する。2000年代に入り欧米ではこれを使った旅客機の飛行試験が繰り返されており、日本でも東京五輪に合わせ、2020年から実証試験が行われる模様だ。

しかし、“食料で燃料を生産には大きな矛盾が

このように一見“CO2を増やさず地球にやさしい”バイオ液体燃料だが、近年広まるSDGs(世界で掲げられる持続可能な開発目標)的に大きな矛盾を抱える、との指摘も。

原料のサトウキビやトウモロコシ、アブラヤシ、大豆、菜種などはそもそも食料であり、マイカーの燃料に回すよりも、飢餓に苦しむ人々を助ける方が先ではないのか、という論法だ。ちなみに国連によると世界の飢餓人口は2018年に約8億人に達し、“地球上の9人に1人は腹ペコ”というのが実情。

加えて先進国や新興国がそれぞれ公言するCO2削減目標をクリアすべくバイオ液体燃料を増産・調達する結果、原料となる農作物が高騰し本来食料となるべきトウモロコシや大豆などの価格も上がり人々の生活を圧迫しかねない……という問題で、いわゆる“食料との競合”の懸念である。

またバイオ液体燃料の需要増に応じ、農地拡大のための森林破壊が横行も問題視されている。特にインドネシアやマレーシアでは近年熱帯雨林が急速にアブラヤシのプランテーションへと変貌、同様に2019年から深刻化するブラジル・アマゾン流域の大規模森林火災も、バイオディーゼル向け大豆の生産拡大を目論んだ無秩序なジャングル開墾が原因だともいわれ、それぞれ世界的非難を浴びている。

さらに国内でバイオ液体燃料を量産していない日本の場合、CO2削減目標をクリアするためブラジルからバイオエタノールを、インドネシアやマレーシアからパーム油やヤシ殻(バイオマス火力発電の燃料用)を、わざわざ燃料を使い船で運んでいる状況。トータルで考えるとCO2削減効果は怪しいだろう。

この他にも、外貨獲得に走る発展途上国が伝統的農業をやめ、バイオ液体燃料用の作物栽培一本に転換した結果、国内の食料自給率が激減、国際市況にも大きく左右されるばかりでなく買い手となる先進国の意向を強く受け「フェアトレード」(適正価格による取引)からは程遠い事例も少なくない。いわゆるプランテーション農業による「モノカルチャー(単一作物)経済」そのもので、“新植民地主義”と揶揄する向きもある。

“本当に地球にやさしい”燃料は「コスト高」が泣き所

こうしたことから、前述のような食料を原料とするバイオ液体燃料をいわば「在来型」と定義し、新たに微細藻類(ミドリムシ)や草木(藁や間伐材・未利用材など)、都市ごみを使った「次世代型」バイオ液体燃料の研究開発も急速に進化を遂げている。

なかでもバイオベンチャーとして近年頭角を現している「ユーグレナ社」は、バイオ液体燃料の素となる「ワックスエステル」(油脂の一種)を光合成により体内に蓄積する性質を持つミドリムシの大量培養を実施、2020年2月には同社製造のバイオジェット燃料が厚労省からのお墨付きを得て旅客機用燃料として使用可能になった。

ただし“次世代”の最大の欠点は、一にも二にもコスト。ユーグレナ社のバイオジェット燃料の価格は現在1万円~数千円/ℓで、普通のジェット燃料(60円前後/ℓ)の100倍以上であるため、今後大規模量産化によるコスト低減が課題。また「光合成」が決め手なため、天候不順による生産量低減のリスクも気になる。同様に草木や都市ごみの場合も安定供給が一番の悩みどころだ。

またソーラーや風力発電の急激な普及、さらにアメリカでのシェールオイル/ガス開発が影響し長期的に原油価格は少しずつ下落していくとの指摘もあるが、皮肉にもこれが化石燃料の価格競争力アップへと直結、バイオ燃料はいつまでたっても割高で普及に拍車がかからないという状況に陥りかねない。

このように、漠然と“地球にやさしい”イメージが先行しているバイオ燃料だが、コスト面や燃料生産をめぐる社会問題など、まだまだ課題は山積みだ。SDGsへの関心が高まるなか、近い将来本来の意味で持続可能なバイオ燃料が普及することを期待したい。