日本国憲法制定から75年 改憲への意識も変化

2022.5.7

政治

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日本国憲法制定から75年 改憲への意識も変化

5月3日の憲法記念日で、1947年に日本国憲法が施行されてから75年を迎えた。足元では新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて改憲を求める声がじわりと増えている。国家の基本ルールを定める憲法は時代に合わせて変えていくべきか、それとも守り続けていくべきか。

世界では憲法改正はよくあること

「日本国憲法はこれまで何回改正されたことがあるか?」。最近はやりの常識クイズに出てきそうなこの問題。あなたは自信をもって答えることができるだろうか。

答えは「0回」だ。日本国憲法は1947年の施行以来、75年もの間、一度も改正されたことがない。その間に戦後の焼け野原だった日本は復興から高度経済成長を遂げ、バブル経済を経て長期デフレ経済に突入。阪神・淡路大震災や東日本大震災、福島第一原発事故といった未曽有の災害も経験したが、憲法の条文は1文字も変わっていない。

この間にアメリカでは6回、フランスは27回、ドイツは65回も憲法を改正。同じアジアでも中国は10回、韓国は9回にわたって憲法を改正している。アメリカでは大統領の3選禁止(1951年)や選挙権年齢の満18歳への引き下げ(1971年)、ドイツでは緊急事態条項の追加(1968年)、韓国では大統領の直接選挙制の廃止(1972年)と直接選挙制の復活(1987年)などの例がある(いずれも国立国会図書館の2021年調査)。

国家元首個人の体制維持を目的とした改憲もある。現在、隣国のウクライナを軍事侵攻中のロシアではプーチン大統領主導で2020年7月、憲法改正により大統領選の立候補制限を緩和。プーチン氏の大統領の任期は2024年までの予定だったが、最長でさらに12年、2036年まで延長できるようにした。現在、69歳のプーチン氏は83歳まで大統領でいられることとなり「事実上の終身大統領狙い」との声があがる。

日本における改憲議論

日本で憲法改正を阻む最大の要因は「改憲の要件が厳しすぎる」というのがこれまでの定説だった。日本国憲法は第96条で改正要件を規定。衆参両院がそれぞれ全議員の3分の2以上の賛成を得た場合に国会が改憲を「発議」することができ、さらに国民投票で過半数の賛成を得た場合に初めて改正が実現する。

日本では戦後長らく改憲賛成の与党・自民党と改憲反対の野党・社会党の「55年体制」が続き、野党も議席を得やすい選挙制度だったこともあり自民党が衆参両院で3分の2議席に届くことはなかった。「改憲は事実上無理」との意識から、憲法改正の具体的な手続きを定める国民投票法も長い間、未整備だった。

しかし、1996年の衆院選から小選挙区制が導入され、議席の振れ幅が大きくなったこともあり、2005年の「郵政解散」で当時の小泉純一郎首相率いる与党が3分の2以上の議席を獲得。民主党政権を経て、自公が政権の座を取り戻した2012年でも再び3分の2議席を獲得し、安倍政権下の2014年、2017年の衆院選でも3分の2議席を維持した。参院では2016年の通常選挙で初めて自公両党が3分の2以上の議席を獲得し、改憲ができる環境が整った。現在も与党に日本維新の会などを加えた「改憲勢力」は衆参で3分の2を確保している。

改憲の手続きもようやく整った。改憲に前向きだった安倍政権下で2007年、具体的な手続きを定めた国民投票法が成立。2021年6月には一部野党の反対で3年間たなざらしにされていた改正国民投票法も成立し、先に改正された一般選挙と同様に国民投票で駅の構内やショッピングセンターなどに「共通投票所」を設置できるようになったほか、投票所に入場できる子どもの対象年齢も広がった。いよいよ改憲議論は“手続き論”から“改正内容”にステージが変わった。

岸田文雄首相は3月の自民党大会で「わが党が示す4項目は、いずれも今こそ取り組まなければならない課題だ。憲法改正という党是を成し遂げよう」と意気込んだ。

自民党が目指す「改憲4項目」とは①自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実――のこと。このうち、憲法への自衛隊の明記は意見が分かれるが、新型コロナのまん延やロシアによるウクライナ侵攻の影響で緊急事態対応については賛同する声が増えている。

自民党は緊急事態対応について、現行憲法に規定がないとして①緊急事態においても、国会の機能をできるだけ維持する、②それが難しい場合、内閣の権限を一時的に強化し、迅速に対応できる仕組みを憲法に規定――することを提起している。

国内外の情勢変化で国民の意識も変化

日本経済新聞の2022年4月の世論調査で、各党が憲法改正の具体的な議論をすべきだと思うかとの質問に対し「議論すべきだ」が72%で、「議論する必要はない」の21%を大きく上回った。緊急事態条項創設案についても「賛成」が49%で「反対」の37%を上回った。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の4月の世論調査でも緊急事態条項の創設について賛成が72.4%で、反対の19.7%を大きく上回っている。

日本国憲法が制定された75年前に比べ、国内および国際情勢は大きく変わった。多くの国民にとって“読みづらい”条文をこの先も守り続けていくのか、それとも時代に合わせて変えていくのか。2022年は真剣に向き合ういい機会かもしれない。