政経電論〈政治・経済を武器にする“解説”メディア〉

政治

ミサイル防衛はコスト度外視なら「イージス・アショア」と「THAAD」がベター

2017年05月22日
読了時間: 04分00秒

写真/ロッキード・マーティン社

「専守防衛」の日本にあって、自民党が敵基地攻撃能力の保有の議論を始めたことは驚いたが、他国の脅威から日本をどう守るかという問題は考えておかなければならない。「イージス・アショア」「THAAD」といった現実的に配備されるべき防衛体制はどんなものか。

「専守防衛」の中の敵基地攻撃能力

昨今の"金王朝"による、度重なる核兵器・弾道ミサイル実験、そして日本への攻撃をほのめかした挑発的な発言に対し、与党・自民党では、目下、自衛隊に敵基地攻撃能力を保有させるための具体的研究がなされている。

日本は「専守防衛」という国是があるため、一般的には他国への攻撃は禁止されているが、国際法的には、他国が今まさに日本を攻撃しようとする確実な事実・証拠があった場合(日本への攻撃を宣言した核ミサイルが、今まさに点火されたなど)、相手に対する先制攻撃は自衛権行使の範疇として容認されている。そして先の安保法制の議論の際に安倍政権もこれを是認する意向のようだ。

こうした考えの下、同党の国防部会は、巡航ミサイル「トマホーク」の新規保有や、近く導入される最新鋭のステルス戦闘機F-35Aを使った侵攻爆撃、さらには大型の正規空母を使った反復攻撃や、制空権・制海権確保などを検討している模様。

F-35A 写真/航空自衛隊F-35A

こうした反撃能力を有すること自体、他国からあれこれ批判されるいわれはない。軍隊が侵攻能力を持つのは当然の姿で、むしろ「専守防衛」を前面に掲げる軍隊=自衛隊の存在自体が、世界的に見れば非常識なのだし。

"敵基地"はどこに?

先制攻撃能力を保有すること自体は、これまで「専守防衛」を墨守し、ややもすれば「どうせ何も手出しができないだろ」と半ば舐められ気味だった日本にとって、周辺国に対する、ある意味の抑止力となる可能性もある。

しかし、北朝鮮が核ミサイルを発射する前に、その基地や発射台を潰してしまおう、という安易な発想から出たものだとしたら、それはハリウッド映画の観過ぎであり、"軍事オンチ"として世界から嘲笑されるかもしれない。

というのも、仮に北朝鮮が核、非核に限らず、日本に対し弾道ミサイルを撃ち込もうとする場合、大型トラクターに搭載した「移動式」で発射するはずで、しかもこのトラクターは恐らく中朝国境周辺に広がる山岳地帯に無数に掘られたトンネルに隠され、いざというときに外に出され、数十分ほどで発射完了し、再びトンネル内に身を隠す、という行程を踏む。

しかも実際に撃つ場合は、1基だけではなく、恐らく数十基単位の同時発射となる可能性が高い。これを考えると、山岳地帯の奥深くに巧妙に隠されたトンネルをどうやって探し出すのか、それがまったく欠落している。

「人工衛星で把握できないのか」という声も相変わらずあるが、偵察衛星というのはものすごいスピードで地球の周りを回っており、当該地域の上空を通過するのはせいぜい1日数分程度でしかない。これでは発射位置を特定することなど不可能だ。

「イージス・アショア」と「THAAD」

逆に、ミサイル防衛体制について、「スタンダード・ミサイル3(SM3)」「パトリオットPAC3」対空ミサイルの二段構えでは少々心許ない、という議論は以前からある。

そこで、将来の防衛の要として導入が期待されているのが、「イージス・アショア」(陸上配備型イージス・システム)だ。要はイージス艦の機能を地上に置くというもので、イージス艦を建造し、それを動かす要員の確保や訓練が不要となるため、比較的安価に仕上がる。

現在、日米で開発中の、SM3の発達型「SM-3ブロック2A」が配備されると想定されるが、これは既存のSM-3の性能の約2倍で、射程は約2000km、迎撃高度は1000kmを誇る。

射程が2000kmもあるため、国内に数カ所構築すれば理論上日本全土をカバーできるわけだが、"北"による飽和攻撃(数百発規模の一斉発射)を想定して、それぞれが重複して守備範囲をカバーできるように相当数を全国に構築する必要がある。

となれば、その費用は数兆円に上るはずで、そのコスト負担もバカにならない。また、地上配備型のため、密かに日本に潜入した北朝鮮の工作部隊などの格好の標的になりかねず、洋上に浮かぶイージス艦と比べて脆弱性は否定できない。

一方、在韓米軍に配備され、中国が猛反発する「THAAD」も、防衛体制の強化のためには導入を検討すべきもの。「終末高高度防衛ミサイル」と呼ばれる弾道ミサイル迎撃ミサイルで、簡単に言うならPAC3の超強力版だ。

「THAAD」 写真/ロッキード・マーティン社THAAD

弾道ミサイルがミッドコース(大気圏外を飛行)を終え、大気圏内に再突入を図ろうとする段階(終末コース)で迎撃しようとするもので、迎撃高度は最大150km。大気圏外(成層圏)で迎撃する理由は、核ミサイルを破壊したのはいいが、高濃度の放射能を帯びた残骸が降り注ぐことを防ぐためだ。

「THAAD」を導入すれば、ミサイル防衛はイージス艦のPAC-3/イージス・アショア、THAAD、PAC-3の三段構えとなり、より鉄壁となる。だが、これに伴うコストも莫大となり、国の借金が1000兆円超のなか、その費用をどのように捻出するのかというまったく別の難問が噴出するのだが......。

  • «
  • 1

記事に関する意見・疑問はコチラ

コメントガイドライン »

最新の関連記事

新着記事