急がば坐れ!~全生庵便り

【禅的思考で頭スッキリ】男女の友情

2017.1.10

社会

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あなたには異性の友人がいるでしょうか? 異性間の友情は、同性同士では考える必要のない恋愛や性欲など、さまざまなことが複雑に絡み、育むのも継続するのも難しい……。そんな「男女の友情」について住職に聞いてみました。

「友」とは価値基準を共有する間柄

禅の世界には「法友(ほうゆう)」「同友(どうゆう)」という言葉があります。同じ修行道場で時間を過ごした仲間をこう呼びます。いわゆる「同じ釜の飯を食う」体育会の同期の感覚に近いでしょうか。24時間の厳しい合宿生活を3年間にわたって一緒に送るので、仲間意識が芽生えますし、私自身、一生を通して助け合っていける仲間だろうと思っています。

「友」について修行という例を挙げましたが、趣味や仕事、生活習慣など、どこか価値基準が一致すれば、そこから友情は始まっていくように思います。しかし、それが異性、”男女”となるとそこには性欲や恋愛などが複雑に絡みだし、少しややこしい話になりそうです。

男女の友情が成立するシチュエーションって?

友情を男女に限定すると、2人を近づけるのを難しくする性別としての特性があります。

まず、女性の場合、共通の価値基準に加えて、男性に対する人間として好ましいと思う気持ちが必要だと感じます。生理的にOKか否かというものです。女性は男性以上に感性を大切にしている人が多いように思うので、OKと感じられないと、友達候補にすら選ばず、2人が近づくきっかけ自体が生まれなさそうです。

一方男性は、異性に声をかけるときは”あわよくば”の下心があることがほとんど。自分の経験を振り返ってみてください。恋愛的な意味で興味のない女性にはそもそも声をかけなかったりしますので、”友情”として関係をスタートさせることを難しくしています。

しかし、男性が経験を積んだら、例えば結婚して妻を持ち、子どもができるなどして、守るべきものができると、下心をリスクとしてとらえ、心の奥底にしまいます。そうすると、女性を性の対象としてだけではなく、ひとりの人間として見ることができるようになります。そうして初めてその人自身の魅力に気づけるようになるのです。

そうなれば、友達までの道は遠くありません。つまり、女性からある程度の好意があって、男性側に下心がないときに、男女の友達関係は成立するのではないでしょうか。

私の場合は、例えば以前交際していた人とも、今はお互いに家庭を持って落ち着いていて、ざっくばらんに話しをできる関係を築けています。この状態を男女の友情と呼ぶのだろうと思います。男女間では、恋愛感情の先に友情があるのかもしれません。あるいは、男女間で友情を育むには時間(男性側の経験)が必要とも言えるのかもしれませんね。

友達や友情に「型」はない

ただ、これは狭義の「友達」「友情」の話です。友達を、互いに好ましいと思い合う関係で、その度合いが”知人”より上で、などと定義するなら、男女の友達関係が成立するのは、上述のような状況になるでしょう。しかし、ちゃぶ台返しのようで恐縮ですが、そもそも友達や友情を厳密に定義する必要があるのでしょうか。

頭の中で友情や友達に「型」を作ってしまうと、生きづらくなってくる気がします。恋人や夫婦にしてもそうですが、「こうあるべき」と頭の中で決めてしまうと、当てはまらない場合に苛立ちを感じたり、不安になったりします。要件を満たしているかどうか、相手のこちらへの思いが必要以上に気になってしまうものです。

友達、友情のカタチはいろいろです。深い友情もあれば浅い友情もある。家族ぐるみの友情もあれば、仕事がベースの友情もあるでしょう。つまり、人と人の間柄の数だけそのカタチがあるのです。
極端なことをいえば、関心がある人はみんな友達だと思ってしまってもいいかもしれません。たとえ嫌い合っていたとしても、相手に関心があって初めて嫌えるわけですし。そういう意味では、例えセックスフレンドというような体だけでつながっている関係でも、ひとつの友達のカタチだといえるのではないでしょうか。

禅では心をよく水に例えます。水は丸い器に入れれば丸く、四角い器に入れれば四角く、そのカタチを変えます。人の心も同じです。人間関係に「型」を持ち込まないで、今ある関係をそのまま受け止めてみてください。きっと日々を前向きに過ごせるはずです。

僕なら”ウマが合う同世代同士”を友情と定義する

 

例えば、仕事上で知り合いになった人たちは、取引先や、先輩・後輩、上司・部下という関係になり、世間で言う「友達」にはほとんどなり得ない。しかし、男と女となると不思議なもので、仕事関係だろうが、年の差があろうがなかろうが、恋愛関係が成り立ってしまう。ある意味、恋愛関係は友達より成立しやすいと言えるかもしれない。

僕が「友情」を定義するなら、価値観やモノの見方が近く、いわゆる”ウマが合う同世代同士”とする。”一緒にいて楽な相手”という感じ。同世代の男女間で、モノの見方や価値観が共通であれば、前述のとおり、片思いも含めて恋愛感情を抱く可能性が高いので、友情は成り立たないのでは? という議論もあるだろう。

しかし、人は恋愛を成就させるための障害が多いと、それ以上進むことをあきらめてしまうこともある。相手や自分にパートナーがいる場合が当てはまるだろう。そういう関係の中に男女の友情は生まれるのかもしれない。

回りくどいが、そうなってしまうと性別なんて関係なくなるのだが。まったく、友達、友情をどのように定義するかはなかなか難しい。