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[三橋貴明が説く 今さら聞けない経済学]

3つのマイナス金利

電子雑誌「政経電論」第15号掲載
2016年03月10日
読了時間: 04分40秒

2016年1月29日、日本銀行が「マイナス金利政策」に踏み切った。10日後、"10年物国債金利の利回りがマイナス金利"に。さらに、黒田日銀総裁が"預金のマイナス金利"について国会で答弁した。今回はこの"3つのマイナス金利"について整理しよう。

読む前に要チェック 量的緩和政策 日本銀行の通貨発行は、現金紙幣の印刷には限らないため、日本銀行は国内の銀行などから国債を買い取り、代金を"日銀当座預金残高を増やす"形で支払うことができる。日本銀行が実施している「量的緩和政策」は、銀行からの国債買取を増やし、日銀当座預金を積み上げる政策のこと。

日銀当座預金にマイナス金利

 本来、日銀当座預金に金利はつかない。とはいえ、金利がゼロでは、量的緩和政策において、日本国内の各銀行は国債を日銀に売ってくれなくなる。何しろ、国債には金利が付くのだから。金利が付く国債を手放し、金利が付かない日銀当座預金と交換してくれる銀行などいない。というわけで、日銀は量的緩和政策において、日銀当座預金に0.1%の金利をつけていた。

 1月29日に決定されたマイナス金利政策は、日銀当座預金の一部(政策金利残高)に▲0.1%の金利を課すというものだ。黒田日銀総裁は、マイナス金利政策決定に際し、「イールドカーブ(残存期間ごとの金利状況)を全般にわたって引き下げ、一方で予想物価上昇率を引き上げることで、実質金利をイールドカーブ全般にわたって押し下げる。それによって、消費や投資を刺激することで、経済が拡大し、その中で需給ギャップが縮小し、インフレ期待の上昇と相まって、物価上昇率を2%に向けて引き上げていく」と、語った。

 すなわち、日銀当座預金残高の一部にマイナス金利を掛けることで、実質金利をイールドカーブ全般に渡り引き下げ、国内の消費や投資を拡大することを図ったのだ。とはいえ、現在の日本は典型的なデフレであり、民間の資金需要が乏しい。銀行はマイナス金利政策により、"民間におカネを貸し出さざるを得ない"形に追い込まれたが、肝心の民間企業や家計がカネを借りる気がないのだ。

10年物国債のマイナス金利

 マイナス金利政策を受け、貸出先不足に悩む銀行は、こぞって日本国債の購入に殺到。国債価格が高騰し、ついには額面を上回る金額で10年物国債が買われる事態に至ってしまったのだ。そして、2月9日に長期金利が▲0.035%のマイナス金利を記録した。

 筆者は以前、麻生太郎財務大臣に「日本銀行の当座預金にマイナス金利を課しても、民間の資金需要が不十分である以上、国債が買い込まれるだけ。長期国債までもがマイナスに落ち込むだろう」と、語ったことがあるのだが、実際にそうなった。

 いくらで国債が売買されようが、10年後の満期に、政府はあくまで額面の100億円しか返済しない。すなわち、満期まで国債を保有していると損をしてしまう(だから、マイナス金利と呼ばれる)わけだが、何しろデフレ継続で民間の資金需要が乏しく、日本円のめぼしい投資先がないため、結局は国債に向かわざるを得ない。さらに、日本銀行が量的緩和政策を継続しているため、"日銀という最終的な買い手がいる"という安心感もあり、海外投資家までもが日本国債を追い求めている有様になっている。

 「国の借金で破綻する!」などと騒がれている日本国債に、銀行や海外投資家が殺到しているわけだ。摩訶不思議な話もあったものである。

預金者に対するマイナス金利

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