急がば坐れ!~全生庵便り

禅的思考で頭スッキリ「恋愛の先に結婚はあるか」

2016.3.10

社会

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「恋人」と「結婚相手」。皆さんはこの2つを同じものと考えますか? 恋愛を続けていれば結婚に至る、という現代人の感覚は果たして正しいのかどうか。禅的思考で解き明かします。

大きく変化した日本人の結婚観

戦前戦後を生きた日本人にとって、結婚は避けて通れないものでした。男性は結婚してこそ一人前であると認められたし、女性は結婚が遅れただけで恥とされる、そういう時代でした。

ところが今は、晩婚の人や生涯独身でいる人が増えています。理由は何でしょうか? 一つは外で働く男性にとって、妻に任せる必要があった毎日の食事や洗濯などの家事が、技術の進歩によって一人でも簡単にできるようになったこと。ほかには、女性が社会へ進出し、夫に頼らなくても経済的に自立できるようになったことなども考えられます。

一人で気楽に、自由に暮らせるなら、独身のままでいいと思う人が増えてもおかしくはありません。しかし、結婚をする人が減った大きな要因は、”恋愛をするようになったから”ではないでしょうか。

現代人の多くは、好きになった相手とお付き合いをして、「この人」と思った相手と結婚します。ところで、「この人」と思うに至るには恋愛は必要でしょうか? 恋愛するのが当たり前の皆さんは、”必要”だと考える人がきっと多いと思います。しかし、それは大きな勘違い。恋愛する道と結婚に至る道は、まったく別のものなのです。

平井正修臨済宗国泰寺派全生庵 7代目住職・平井正修

恋愛体質な現代人の大いなる勘違い

恋愛は、同棲していない限り毎日一緒にいるわけではないから、良いところだけ見せていればいいし、「好き」という互いの一方通行な気持ちだけでも成り立ってしまうもの。一方、結婚は「生活」を共にするということですから、朝ごはんの趣味からタオルのかけ方のような細かいことまで考えなくてはいけない。既婚者の方はわかると思いますが、一人で生活することと、好きな人とはいえ、他人と生活することはだいぶ勝手が違いますよね?

また、恋愛中は、自分のことを100%理解してほしいし、相手のこともすべて知りたいという気持ちから、言いたいことを何でも言い合います。ただの”恋愛”ならそれでもいい。しかし、その状態のまま結婚への道を探ることには意味がありません。なぜなら、他人同士がすべてをさらけだして完全に合致することなんてありえないからです。

いつか100%わかり合えると思ってすべてをさらけ出していると、自分も相手も疲弊してしまいます。100%を求めるがあまり、嫌なところばかり目について、自ら結婚する道を閉ざしてしまうかもしれない。せいぜい40%が合致していれば、結婚するのには十分でしょう。あとの60%は合わないのが当然だと思って捨ててしまってください。

恋愛は、ときに我を忘れさせます。禅の世界では、恋愛は愛欲、つまり執着を生むよくないものとされ、昔は修行の身である僧侶の恋愛は禁止されていたこともありました。

昔は写真でしか見たことのない人といきなり結婚することもざらにありましたが、知らないからこそ、遠慮や慎みというものをしっかり持っていました。恋愛期間もなく、相手をよく知らないまま結婚してもうまくいく夫婦がたくさんあったのです。恋愛をするのが当たり前の時代に生きる私たちは、相手に求めることに慣れすぎてしまっているのかもしれませんね。

結婚に恋愛期間は必ずしも必要ではない

私は結婚前、自分の妻になる人はお寺でいつも多くの坊さんたちと暮らさなければならないので、そういうことに耐えられる人がいいな、となんとなく思っていました。今の奥さんはお見合いで知り合ったのですが、出会った頃、彼女がちょうど知人の家に居候していて、他人と生活ができる女性なら一緒にやっていけるかな、と思ったことを覚えています。今思えば、私は最初から彼女を「結婚相手」として見ることができたし、相手も同じだったのだと思います。

共に生活することを意識し、慎みをもって相手を受け入れ、互いの気持ちを”すり合わせる”……、それこそが結婚へたどり着く道です。恋人関係を何年も続けているのに結婚しないカップルがいるのは、その間、恋人を結婚相手として見ておらず、”すり合わせ”もしていないから。一定期間付き合っていれば、おのずと結婚にたどり着くと思うのは、恋愛体質な現代人が陥りがちな勘違いなのです。

収入や外見など、誰しも結婚相手に求める条件や譲れないものがあるでしょう。でも、そうした諸条件はあくまでスタートライン。その後に”すり合わせ”ができるかどうかが肝心です。そういう意味では、恋愛期間というのはあってもなくても構わないのだと思います。

結婚にあまり意味を感じないのは僕だけ?

 

これはとんでもなく難しい問題だ。人それぞれの価値観だから。

結婚という制度がある以上、財産、子供などの諸条件が揃えば、法律的には結婚をした方がいいのだろうが、その制度に縛られる必要もない気がする。僕の周りには事実婚の人もいるし、離婚した人もたくさんいる。

当然、恋愛の期間を経てからの結婚が圧倒的に多いのだが、それでも離婚するのだから、他人が一緒に生活するというのはそれだけ難しいのだ。また、結婚してしまうと「生活」になるので、それまでの恋愛関係が変化してしまう場合が多い。

個人的にはずっと恋愛関係でいたいと思うのだが……。子供ができてから結婚する”デキ婚”は「順序が違う」などと言われていたが、その程度でいいような気がする。2人だけなら、フランスのように結婚せずに同棲だけすればいいし。結婚ということにあまり意味を感じないのは僕だけか?