北朝鮮による核実験と弾道ミサイル発射

2016.3.10

政治

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自国内政と国際社会への影響を天秤にかけて核実験を行い、弾道ミサイル発射で米国を挑発する北朝鮮。日本へのテロの可能性も排除されないまま、モラルが欠如した北朝鮮外交は、一体いつまで続くのだろうか。

核実験をした方がプラスになるという判断

北朝鮮が核実験と弾道ミサイル発射によって、米国を挑発している。まず、2016年1月6日、北朝鮮が水爆実験を行ったと発表した。北朝鮮は、過去の3度の核実験を通じて原爆を複数保有しているが、弾道ミサイル搭載可能な核爆弾の小型化はできていないと見られている。

2015年12月10日に、北朝鮮の金正恩国防委員会第1書記は、兵器工場の視察をした際に、「国家の主権と尊厳を守るため、原爆と水爆を自力で爆発させられる強大な核保有国」になったと発言した。今回の水爆実験については、この発言に客観的裏付けがあったことを示すという内政上の要因が大きいと思う。金正恩第一書記の発言は、絶対に正しいということを北朝鮮国民に説得するために、水爆実験の成功という物語が不可欠になったのだ。

2月8日の金正恩第一書記が33歳になる誕生日を前に、国際社会からの非難や制裁と核実験を強行することによる国内的な権力基盤の強化を比較考量した上で、核実験をした方がプラスになるという判断を北朝鮮指導部はしたのであろう。

佐藤優金正恩政権が”求愛を恫喝で示す”という対米外交を続ける限り、日本国内でテロが起きる可能性は排除されない(佐藤優)

2月7日、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射

北朝鮮は、弾道ミサイルではなく平和目的の気象衛星を打ち上げるためのロケットの発射だったと強弁している。先端に搭載する物が弾頭ならばミサイル、平和目的の衛星ならばロケットなので、ロケット実験で得られたデータはそのままミサイル開発に用いることができる。

ミサイル、ロケットの打ち上げ自体は、国際法で禁止されていないが、北朝鮮に関しては、弾道ミサイルに核兵器を搭載する意思を持っていると見なされているので、国連安保理決議でミサイル(北朝鮮がロケットと自称する場合も含む)発射が禁止されている。

<「北朝鮮の弾道ミサイル技術の向上については詳細な検討が必要だが、少なくとも発射技術の確実性が増したとは言えるだろう」。防衛省幹部は今回の発射をそう分析する。 >(2月8日「毎日新聞」朝刊)

<また、今回の実験では高度100キロ超の宇宙空間に出すことには成功したが、衛星運搬ロケットと異なり、ミサイルの場合は弾頭を大気圏に再突入させる技術が必要になる。再突入の速度が格段に速い長距離弾道ミサイルは特に難しい。方法を誤れば、大気との摩擦で地上到達前に燃え尽きてしまう。各国の宇宙開発情勢に詳しい辻野照久・科学技術振興機構特任フェローは「弾頭を守る部分の材質や構造には、かなり高度な技術が必要」と話す。/韓国国防省は、北朝鮮の再突入技術は中距離弾道ミサイルまでで、長距離弾道ミサイルの場合は相当な時間がかかるとしている。国家情報院は7日の国会報告で、北朝鮮が今回の発射では大気圏再突入の実証を行わなかったと報告した。>(前掲「朝日新聞デジタル」)

日本国内でテロが起きる可能性は排除されない

北朝鮮は、”求愛を恫喝で示す”という独自の外交文化を持っている。従って、核実験、長距離弾道ミサイルの発射を続ければ、米国が「ちょっと待ってくれ。話をしよう」と北朝鮮と交渉を始めると期待しているのだ。そして、交渉を通じて、米国から金正恩体制を力で転覆させることはないという保障を取りつけようとしている。しかし、北朝鮮の発想は非現実的で危険な賭けだ。

北朝鮮が、大陸間弾道ミサイルによって米本土を核攻撃する能力を持つことを米国は絶対に許さない。具体的には、米空軍が、北朝鮮の核研究所、ミサイル工場などを空爆し、徹底的に破壊する。その結果、北朝鮮の金正恩体制も崩壊することになる。米国は、公式には北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射を非難し、国連安保理決議のみならず、米国による独自制裁を強めることになる。

それと同時にCIA(米中央情報局)は、非公式に北朝鮮のインテリジェンス機関との接触を強めると思う。裏交渉で北朝鮮が強気一本の姿勢を示し続けると、米軍による北朝鮮空爆が行われることになろう。その場合は、青森県の三沢基地から米軍機が空爆を行う可能性が高い。北朝鮮は、それを阻止するために、日本に潜入させた工作員に米軍基地をテロ攻撃すべしという指示を出すであろう。

金正恩政権が”求愛を恫喝で示す”という対米外交を続ける限り、日本国内でテロが起きる可能性は排除されない。

 

本当の暴走をしても不思議ではない

 

20代で世襲によって一国の指導者になった金正恩氏。自らの体制強化のために、父親時代の側近たちまで処刑しているのを見ていると、今回の指摘も真実味を帯びている。グローバルな経験もなく、その恐怖政治により、苦言を呈してくれる人間がいるとは思えない。

経営者は、長くやっていると茶坊主ばかりが周りにいて、誰もがおべっかしか使わないので、世間の常識とは完全にずれてくる。批判をされても、逆に周りがおかしいのだと解釈する。国のリーダーもおそらく同じだ。だから、多くの国が権力は世襲できないし、期限付きなのだ。世界一の強大国、アメリカの大統領は、最長8年までしかやることができない。世襲で若くして一国のリーダーになった金正恩氏がまともな判断をできるとは思えないし、側近で導く人もいないとなれば、国際社会がいくら言い聞かせようとしても、暴走は止まらないだろう。

内政から崩壊に向かわないのなら、経済制裁でにっちもさっちもいかなくなった金正恩・北朝鮮が本当の暴走をしても不思議ではない。厄介な隣人である。