民間宇宙開発ベンチャーの株式会社ispaceは、2月22日、同社が計画する世界初の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のコーポレートパートナーを発表。JAL、三井住友海上火災保険、日本特殊陶業の3社が、それぞれの得意分野から支援を提供し、人類の新しい挑戦を後押しする。
既存の宇宙産業プレーヤー以外の参入も必要
2018年2月までにシリーズA国内過去最高額となる103.5億円の資金調達 を実施し、2018年11月末に、米NASAが行う月への商業輸送サービスCLPS(クリプス、Commercial Lunar Payload Services)にも採択されたispaceは、コーポレートパートナーの獲得という新たなステップに進んだ。
航空会社のJALは、成田のエンジンセンターにてランダー(着陸船)の組み立て及びロケットを打ち上げる海外等への輸送支援を行う。保険会社の三井住友海上火災保険はリスク管理の面から支援、ispaceとともに「月保険」等の保険商品を設計する。日本特殊陶業は、月面用に、液体のリチウム電池よりも稼働可能な温度範囲や安全性が高い「全個体電池」を開発し、2021年のミッションにペイロードとして搭載、月面での世界初のとなる全個体電池の技術実証試験を行う。
「宇宙資源を起点とした新しい産業を創出するのがispaceのビジョン。それは、ispaceや既存の宇宙産業のプレーヤーだけでもできないと考えています。航空・エネルギー・自動車・素材・保険・医療・メディアといった産業を巻き込んで競争していくことが重要。今回発表するのは、新しい産業の礎となる技術・サービスを支援いただけるパートナーの皆さんです」(ispaceディレクター&COO 中村貴裕氏)
アポロ50周年、「はやぶさ2」着陸…高まる宇宙への注目度
今年は1969年に米アポロ11号が人類史上初の月面着陸を果たしてから50年の記念すべき年。また、発表と同じ2月22日には、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が地球から約3億km離れた小惑星「りゅうぐう」に着陸したニュースも届き、宇宙産業界隈はにわかに騒がしくなっている。こういった流れについて、ispaceファウンダー&代表取締役 袴田武史氏は、「宇宙産業が盛り上がって大きくなっていく最前線で活動できてエキサイティングに感じている」とコメント。
「HAKUTO-R」は昨年9月にスペースXとの打ち上げ契約を発表後、ランダーの詳細設計とともに試験モデルの製造も開始。2020年中頃に月面周回ミッションの打ち上げ、2021年中頃に月面着陸ミッションの打ち上げを予定している。
「月面輸送の事業化を目指す企業は世界に数社あります。NASAのCLPSに参加するチームや、ヨーロッパのパートタイム・サイエンティスツ(独)などの競合があるなかで、われわれは資金面も潤沢にありますし、有能な人材も集まり、ビジネス面でもグローバルに顧客開拓をしていますので、非常にいいポジションにいると思います」(袴田氏)
なお、「HAKUTO-R」は最先端のテクノロジーカルチャーを実装するショーケース「Media Ambition Tokyo」 にて、2月23日(土)~3月3日(日)の期間中、実寸大のランダーおよびローバーを一般展示する。