沖縄県による米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古移設への賛否を問う県民投票が2月24日に投開票され、「反対」が投票総数の72.2%にのぼり、19.1%の「賛成」や8.8%の「どちらでもない」を大きく上回った。投票率は52.48%。結果を受けて沖縄県の玉城デニー知事は移設阻止に向け攻勢に出る構えで、政府の対応が注目される。
注目された3つの数字
賛否を問われたのは「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立て」について。投票結果に法的拘束力はないが、条例で賛成又は反対の多い方の票数が有権者数の4分の1以上となった場合は「知事はその結果を尊重しなければならない」と定めており、その際は知事が首相と米国大統領に「速やかに結果を通知するもの」としている。
反対が多数となることが確実な情勢のなか、3つの数字が注目された。
1つ目は反対票が有権者数の過半数となるかどうか。今回の場合、投票資格者が115万3591人(速報値)だったので、57万6796票を上回れば過半数となる。有権者数の過半数となればかなりインパクトが強いが、今回は43万票あまりで下回った。
2つ目は反対票が有権者数の4分の1を上回るかどうか。今回は28万8398票で、こちらは大きく上回った。玉城知事は結果を尊重する義務が生じ、安倍晋三首相と米国のトランプ大統領に結果を通知することとなった。反対派の中には玉城知事が昨年9月の知事選で獲得した39万票を上回ったことを評価する声もある。
3つ目は投票率が50%を超えるかどうかだ。どれだけ反対票が多くても、投票率が50%を割り込めば「投票結果は民意と言えない」と主張することができる。それを狙って国政与党の自民党と公明党は自主投票とし、表立って賛成への投票を呼びかけないなど静観に徹したが、結果的に投票率は50%をわずかながら上回った。
安倍首相と玉城知事の直接会談も近々実現
3つの数字の結果を見た上で、政府はどう対応するだろうか。
まずは投票率が50%を超えたことで、完全に無視することはできなくなった。反対派にとって最低ラインだった有権者数の4分の1も大きく超えたことで、安倍首相と玉城知事は3月1日に会談することとなった。かといって、政府にとって最悪のシナリオだった有権者数の過半数には届かなかった。政府は今後、沖縄や全国の世論を見極めながら対応することになるだろう。
安倍首相は投票結果を受け「結果を真摯に受け止め、これからも基地負担軽減に向けて全力で取り組む」と述べた。一方で「日米が普天間基地の全面返還に合意してから20年以上、実現されていない。これ以上、先送りすることはできない」と強調。辺野古の埋め立て工事や移設作業を続ける方針を示唆した。
「世界一危険な基地」ともいわれる普天間基地の返還は、沖縄県民にとっても悲願。しかし、それでも辺野古への移設を拒む声が多いのは、新たな基地が固定化してしまうとの懸念があるからだ。
県民の最大の不満は国土面積の約0.6%に過ぎない沖縄県内に、全国の約70.3%の在日米軍専用施設・区域が集中していること。安倍首相も沖縄への基地負担の集中については2月25日の衆院予算委員会で「決して是認できるものではない」と認めているが、これまで日米で合意した沖縄の基地負担軽減策は一部の軍用地の返還や訓練の移転など小粒なものしかない。
辺野古への移設案も当初は「15年限定」で地元が認めたものだが、今となってはいつまで使うのかもはっきりしない。このままだと基地が県内から県内に移動しただけで、負担軽減にはならないというのが今回、反対票という形になった格好だ。
玉城知事は次なる対抗策を模索することになりそうで、問題の決着にはまだまだ時間がかかりそうだ。
(2月26日更新)
沖縄県民以外ほとんどの人が他人事だと思っているのだろうが…
沖縄県の移設反対派はなかなか有効打が無い、ということだ。投票率は5割を何とか超えたが、反対票は全有権者の過半数に届かなかったので、県民の総意だとは強く言えないし、そもそも法的な拘束力が無いのだから、世論への訴えというくらいの効果しかない。
僕は沖縄県民ではないので、反対や賛成を表明する権利も知見もないのだが、非常に難しい問題だと思う。日米関係と安全保障上の問題を考えれば移設は待ったなしなのだろうが、沖縄県だけに偏った負担を押し付けていいのかということも言えるし。
ただ一つ言えることは、沖縄県民以外ほとんどの人が他人事だと思っているのだろうが、これは日本全体の問題だと認識してほしいと思う。