ビジネス

一流サッカー選手は若い頃に何が違うのか 川淵三郎キャプテンインタビュー

0コメント

日本サッカー界に大きな影響を持つ”キャプテン”こと川淵三郎氏。Jリーグ初代チェアマンとしても知られ、日本サッカー協会(JFA)会長を経て、現在は首都大学東京の理事長に就かれている。一流のサッカー選手は若い頃に何が違ったのか、インタビューに答えてもらった。

 日本トップリーグ連携機構代表理事 会長/日本サッカー協会 相談役

川淵三郎 かわぶち さぶろう

1936年12月3日生まれ。大阪府出身。高校からサッカー選手として活躍し、日本代表としてオリンピックなどに出場。現役引退後は日本代表監督に就任。Jリーグ創立に尽力し、初代チェアマンを務めた。その後、日本サッカー協会会長や最高顧問などを務め、現在は相談役。また、公立大学法人首都大学東京理事長(2013年4月~2017年3月)を務めたほか、日本バスケットボール協会会長(2015年5月〜2016年6月)に就任しBリーグ創設を牽引した。2015年5月より、日本トップリーグ連携機構代表理事 会長。職歴としては、早稲田大学卒業後、古河電気工業株式会社入社、古河産業の取締役を務めた。

続きを見る

「まじめさの反面、覇気に乏しい」

川淵キャプテンは現役引退後、日本代表監督、日本サッカー協会会長など、数々の重要ポストを歴任。さらにはサッカー選手としてだけでなく、「古河産業」の取締役も務めた、実業界においてもすごい人物だ。御年77歳になるが、いまだに忙しい毎日を送られている。

「6割が首都大学。それから2割5分くらいがサッカー関連の取材。残りが日本サッカー協会のプロジェクトとか、講演とか。肩書きだけでも20個くらいあるんだよ。その対応って感じかな」

現在、首都大学東京の理事長を務める川淵氏は、現代の若者をどう感じているのだろうか。

「すごく大人しくて、(僕らの時代と違って)授業をサボって遊ぼうという学生が少ない。そういうまじめさの反面、覇気に乏しいなっていう感じがするよね。僕は実際、授業に参加もしているんだけど、一番感じることは学生の声が小さいこと。教授も生徒に対して厳しく指導していくことを、遠慮しているところがあるね。僕だったら、もっと大きな声でしゃべれとか、すぐ言うね(笑)」

授業を見ていても、ときどき注意したくなるときもあるという。では、川淵氏はどんな学生だったのだろう。

「Jリーグを創立したころの話は、それなりに自信もって言えるけども、学生時代の話はあんまりしたくないし(笑)、何も考えてなかった。そういう意味では後悔ばっかりで、授業そのものをもっと真剣に……というよりも、英語の勉強をもっとしておけば良かったとか、語学をしっかり学んでこなかったことの後悔があるね」

「仮に上司だろうが、思ったことを言ってきた」

そう振り返る川淵氏だが、では、いまの学生たちが社会に出たときには何を”武器”とするべきだろう。

「僕自身の価値って自分で言うのも変だけど、思ったことを口に出して、仮に上司だろうが、ずっと言ってきた。新入社員の頃から。卒業したての頃に、工場の一番偉い総務部長が、なんでも言いたいことがあったら言えっていうから、『事故が起こってから事故対策をやっているようじゃ話にならない』って言ったら、そんなことは、公文書でものを言えって、ものすごく怒られて(笑)。新入社員の頃から上司とやりあってたもんね。そういう姿勢が、やはり一番、若者にとって大事だと思うんだよね。どっか違うのにな、と思いながら(何も言わずに)過ごしてしまう学生、あるいは新社会人が多いんじゃないの?」

サッカーに関してはどうだろう。カズやラモスが活躍した日本代表と今の代表では、やはり今のほうが個性に欠けるということか。

「まったく違うね。逆に今のほうが個性に満ちあふれた選手が出てきてる。あの頃はヨーロッパの一流クラブでやっていた選手が選ばれるのはほとんどいなかったけど、今度は10人以上選ばれるんじゃないの。こんなチームは今までなかったわけで、それだけ日本の代表チームは国際化して、それこそグローバルな人材にサッカーはなったということ。(選手も)お互いの能力を認め合って、自分たちが世界のなかでもかなり実力の持ったいいチームだぞっていう自信を持っているはずだから」

vol4_buki_kawabuchi.jpg

「決まる前にいかに自分の意見を言うか」

確かに今のほうが環境は恵まれていて、スポーツの技術も著しく発展した。それは普段の社会生活も同じはず。では、恵まれた環境を生かすには、どんな心構えでいればいいのだろうか。

「例えば組織のなかで、物事がトップダウンで決まったときに、それに従っていかなきゃいけないっていう大前提があるわけでね。だから決まる前にいかに自分の意見を言っていくかってことが大事。今決められたなかでベストを尽くしながら、こうだよって言っていく、そこのバランス感覚がないのは、リーダーにはなれないね」

スポーツ界から実業界まで、さまざまな経験をしてきた川淵キャプテンだから言える説得力のある言葉。学生ならずとも心に響いた方もいるかと思う。ぜひ、この”指導”を明日からの武器にしてほしい。

◇次回(7/10公開)は、中田(英寿)選手と本田(圭佑)選手の話。世代が移ったことで何が変わったのか、そして情報があふれる現代で何をすべきか、を語ります。

[学生よ、武器を持て]賢人からのメッセージ~川淵三郎キャプテン、見城徹氏、秋元康氏