写真/若原瑞昌

経済

起業家が一緒に働きたい人 サイバーエージェント社長 藤田晋 × テイクアンド ギヴ・ニーズ会長 野尻佳孝

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とにかく楽しいインタビューだった。藤田さんは時に自虐ネタを含めながら場を和ませ、野尻さんは情熱の伝わる話を教えてくれた。前号に続き、今回は働き方や採用したい人材についての話にも触れている。どんな年齢層にも参考になることだらけだ。

【前編】特別鼎談 俺たちは、こうしてどん底から這い上がった サイバーエージェント代表取締役社長 藤田晋 × テイク アンド ギヴ・ニーズ代表取締役会長 野尻佳孝×「政経電論」編集長 佐藤尊徳

株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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株式会社テイク アンドギヴ・ニーズ 代表取締役会長

野尻佳孝 のじり よしたか

1972年6月4日生まれ。東京都出身。明治大学政治経済学部卒。株式会社テイク アンドギヴ・ニーズ代表取締役会長。日本をベースに上海、香港、深セン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど世界140ヵ国以上に拠点を持つブライダル会社を経営。

株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長

藤田 晋 ふじた すすむ

1973年5月16日生まれ。福井県出身。青山学院大学経営学部卒。インターネット総合サービス企業・株式会社サイバーエージェント代表取締役社長。一般社団法人新経済連盟理事。「渋谷ではたらく社長のアメブロ」

ブレないから継続できる

尊徳 前回は「鈍感力」というキーワードがあって、精神も段々と鍛えられるというものでした。わざわざ辛い思いをする必要はないけど、事業が大きくなってきたら、必ず壁にはぶち当たるから耐性を大きくしていた方がいいですよね

藤田 誰からも良く思われたいという人は経営者には向きませんよね。必ず叩かれますから。耐性が付いてくればディフェンスの方法も覚えますしね。

野尻 この前、秋元康さんと話したのですが、藤田君はブレないし、自然体です。人間は追い込まれたりするとブレてしまうものですけど。

藤田 2000年ネットバブル崩壊直後はブレブレだったと思いますが、それを乗り越え、耐性の重要性を身をもってわかったからでしょう。

尊徳 2人とも学生時代は何を考えてたの?

藤田 野尻さんは(大手企業の)「住友海上保険」をよくスパッと辞められましたよね。

野尻 最初から起業したかったし、入ったときから無謀にも「社長になる」って言ってましたから。

藤田 優秀な人が大企業に入ると、大企業には自分よりすごい人がたくさんいるので、大多数の人は起業するなんて恐れ多いと思ってしまいます。そして自ら芽を摘んでしまうのではないかと思うのです。

野尻 あ、いま思い出した! 当時、「独立したい、独立したい」と宣言していたときに藤田君がテレビに出て、「これから上場」と輝いていたので、「あ、俺明日(会社を)辞めよう」と決断したんでした(笑)

藤田 あの番組は視聴率も良くて、そういったことも重なり、叩かれる幅も大きくなりました(笑)

野尻 でも、僕は刺激を受けたし、テレビの向こうの藤田くんを見て、僕と同じように起業しようという若者が増えたことは事実だと思いますよ。

尊徳 学生のときに起業したいと思う何かがあったの?

野尻 僕の場合は環境ですね。自営業が多くて、家業を継ぐか起業するか、みたいな。でも、「課長島耕作」(講談社)という漫画が流行っていて、サラリーマンを極めるのも格好いいなと思う人と半々でした。

藤田 学生のときは短絡的なので、イメージで決めることも多々あると思いますが、僕の時代はサラリーマンが「リーマン」などと言われて、あまりいいイメージがありませんでした。ただ、起業家も多少胡散臭い感じがしていたので、もっと起業家のイメージを上げたいと思ったこともあります。

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ライバルというよりも時代を作る同志

尊徳 お互いに仲がいいけど、ライバルだと思ったことはないの?

野尻 堀江(貴文)君と藤田君と食事をしている時に、堀江くんが、「中国、韓国の子供たちのなりたい職業トップ10には、起業家が入っているのに、日本は入っていない。これでは日本の発展がない」とよく言っていました。そのときに、我々が頑張って、(なりたい職業トップ10に入っている)サッカー選手に負けないように、企業家の地位を上げるようにしようと真剣に話していましたから、ライバルというよりも同志のような感覚です。

藤田 ”ヒルズ族”などと揶揄される前には、一時期憧れの職業になったときもあったのですが、(ライブドア事件などもあって)元に戻ってしまったような感じですね。

尊徳 でも、注目されては散っていった人がたくさんいるなかで、2人ともここまで残って発展しているのはすごいことですよ。

一緒に働きたい人を採用する

尊徳 伸びている企業は新卒採用に力を入れていますが、どういう採用基準にしているの?

藤田 最近は知名度も上がり、有名大学の学生も多く来るようになりましたけど、より優秀な人を採ろうとやり過ぎないようにしようと思っています。組織は、優秀な人だけを集めればいいわけではありません。野球チームもそうですが、4番バッターだけでは勝てないですよね。チームプレーなので、この人と働きたいと思える人を採るようにしています。

尊徳 その人はどういう人?

藤田 テクニックを言えば「この会社が大好きです」という人です。ロイヤルティーの高い人と仕事をしたいと思うのが、日本では特に多いと思います。

尊徳 口だけでそういう人もいるかもしれないでしょ?

藤田 でも、この人は(一緒に働きたく)ないな、と思う感覚はありますよ。面接官もみんな同じように感じると思います。その感覚がズレてしまうと優秀な人をただ上から順番に取って失敗してしまうのです。

野尻 理念を共有できる人ですね。(「T&G」は)結婚式の運営会社ですから、とにかく人を喜ばすのが好きな人です。周りを喜ばせて、それを自分の喜びにしている人ですね。そして自分は目立たずに黒子に徹する人。

尊徳 あ、俺そうかも(笑)

政治・経済の知識は最低限必要

尊徳 では、学生のときに何を目指して過ごすのがいいのかな?

藤田 あるとき面接で、「会社に入ったら、がむしゃらに働いて、女優と結婚したいんです!」と言った学生がいました。そういうような目標というか、欲でいいと思うのです。若い頃にきれいごとばかり言っていると、欲を持っている人に負けてしまうと思います。社会に出た後もずっと欲ばかりではいけないと思うのですが、若い頃はいいんじゃないですかね。

尊徳 僕は政治・経済の雑誌を運営しているわけだけど、そういった知識をどうやって得ています?

野尻 現社長の知識賢治(元カネボウ社長)を招く前から家庭教師をしてもらって学んでいました。また、数年前に経団連に入ってから、積極的に人に会うようにして、情報を入れるようにしています。読書を増やして、自分にない見識など取るようにして。

藤田 やはりインターネットで情報を得ることが多いので、興味があるものだけをクリックしがちになります。ですから、偏らないように主要な新聞は全誌読んでいます。業界問わずさまざまな方と付き合うことも増えてきたので、政治・経済の知識の下地がないと恥ずかしいじゃないですか。

野尻 当然CEOですから、情報をイチ早く知ることは大事ですが、酒場で飲んでいても、世の中の動きくらいはわかっていないと社会人としてはいけないんじゃないですか。

尊徳 やはり政治や経済の知識は大事だと。だから、「政経電論」で勉強しろと。あ、言ってない?(笑) でも、政治や経済は継続が大事なので、前からの動きを知らないと理解できませんから、ぜひ興味を持って触れていってほしいですね。