所属しなければ国会議員として何も活動できない「会派」って何? 渡辺喜美氏と会派結成したN国の狙い

NHKから国民を守る党公式サイトより

政治

所属しなければ国会議員として何も活動できない「会派」って何? 渡辺喜美氏と会派結成したN国の狙い

0コメント

7月に行われた参院選で1議席を獲得し、政党要件を満たした「NHKから国民を守る会」(N国)の勢いが止まらない。北方領土をめぐって不適切発言を繰り返し、日本維新の会を除名となった丸山穂高衆院議員を入党させたほか、7月30日には無所属の渡辺喜美参院議員との会派結成を電撃発表した。ワンイシューのN国が必ずしも政策が合致しない国会議員と会派を作ることに果たして意味があるだろうか? そこには、国会における「会派」が持つ影響力や権利がある。

ワンイシューのN国が国会で何ができるか

「NHKから国民を守る会」は元NHK職員の立花孝志氏が2013年に「NHK受信料不払い党」として立ち上げ、同年7月に現在の名称に変更した政治団体。NHK受信料に反対する立場から、受信料を支払った人だけが視聴できるようにする“NHK放送のスクランブル化”を訴えている。

既存の政党が多岐にわたる政策を訴えているなかで、あえて単一論点(ワンイシュー)を掲げ、2019年春の統一地方選で26人が当選。勢いそのままに参院選で41人を立候補させ、比例区で約99万票を集めて代表の立花氏が当選した。比例区での得票率は2%で、法律で定める政党要件をギリギリで満たした。

奇抜な政見放送などから当初は泡沫候補扱いされていたN国の議席獲得自体が驚きだが、それだけで終わらなかった。党勢拡大に向けて、不適切発言で非難が渦巻く無所属の丸山穂高衆院議員に入党を呼びかけ、丸山氏も了承。続いて元みんなの党代表の渡辺喜美参院議員にも入党を呼びかけ、入党自体は断られたものの、参院で会派を結成することで合意した。会派名は「みんなの党」で、代表は渡辺氏が務める。

さまざまな経緯がある議員との共闘について、立花氏は「NHK問題以外は自由に行動してもらって構わない」と説明している。ただ、共に会派を結成した渡辺氏は記者会見で「会派結成を第一歩としてみんなの党の復活を成し遂げたい」と述べたものの、NHK改革については「正直、深く考えたことはない」と語り、温度差を露呈させた。

国会における「会派」とは何か

そもそも、「会派」とは何かと聞かれて、正確に説明できる人は少ないかもしれない。会派とは「議院内で活動を共にしようとする議員のグループ」(参議院ホームページ)のこと。政党とも(自民党内の)派閥とも異なる。通常は一つの政党の所属議員で一つの会派を結成するが、無所属議員同士で会派を作ったり、複数の政党で会派を作ったり、ある政党の会派に無所属議員が所属したりすることがある。

現在、参議院にある会派は全部で10。政党である自民、立憲民主、公明、国民民主、日本維新の会、共産党、れいわ新選組を中心とする会派が7つ。それに沖縄選挙区選出の無所属議員2人で結成した「沖縄の風」、今年の参院選で初当選した無所属議員2人による「碧水会(へきすいかい)」、今回N国の立花氏と渡辺氏で作った「みんなの党」が加わる。このほか、会派に所属しない議員が議長と副議長を含め5人いる。

衆院でも9つある会派のほとんどは政党を基本単位としているが、特殊なのが「社会保障を立て直す国民会議」。旧民主党系で、立憲民主にも国民民主にも属さない野田佳彦元首相ら無所属議員8人だけで構成する。立憲民主系の会派に無所属議員が16人属しているのも異例だ。

社会保障を立て直す国民会議のように会派で行動を共にしながら、政党を作らないのは次なる政界再編を見据えてフットワークを軽くしておきたいとの狙いがある。いったん政党を作れば事務局として人を雇ったり、事務所を置いたりしなければならず、自由に身動きがとりづらくなるからだ。

立憲民主会派に所属する無所属議員や、自民党会派に所属する無所属の細野豪志氏らは各政党の「準会員」のような立場。入党を希望する無所属議員をいったんは会派にだけ入れておき、選挙や政策、資金面などで党への貢献が認められれば入党を認めるというわけだ。

ちなみに、自民党内の派閥は党内における活動単位のこと。かつては独自の政策を抱えて党内で権力争いを繰り広げたが、現在は党内の連絡調整窓口やポストや金の配分窓口となっている。ただ、最近は無所属議員らを積極的に勧誘して膨張している二階俊博幹事長の二階派と、その他の派閥との勢力争いも目立っている。

国会議員は会派に所属しないと何も活動できない

通常、マスコミは政党ごとに国会活動をしているように報じているが、実際には国会活動は政党ではなく会派ごとに行われる。各委員会の委員や質疑時間、国会内の部屋などは会派単位で割り当てられ、「会派に所属しないと実質的には何も活動できない」(永田町関係者)。各会派には一人当たり月65万円、年780万円の「立法事務費」も支給され、国会で活動するために必要な事務職員の経費に充てることができる。

国会議員による法律の提案(議員立法)も衆院で20人以上、参院で10人以上の賛成が必要で、単独でそれが可能な会派は限られる。予算を伴う法律の提案は衆院で50人以上、参院で20人以上とさらにハードルが高い。また、10人以上の会派になれば党首討論に参加することもできる。

確かに、N国とれいわは参院選で2%以上の票を集め、政党要件を満たした。これにより、政党交付金が支給される(N国:5900万円、れいわ:6700万円)ほか、次期衆院選でも政党に満たない諸派に比べて優遇される。しかし、1~2人の所属議員ではほとんど国会で活動することができず、「NHK放送のスクランブル化」や「消費税の廃止」などといった目玉政策の実現は夢のまた夢。

また、国会にはさまざまな慣例やルールがあり、新人しかいない両党にとって活動は困難を極める。そこでベテラン議員の力を借りようというのがN国の狙いとみられる。

実際に参院で国会審議の花形である予算員会の委員構成を決める際、残り1枠を所属議員2人の4会派で争うことになり、「みんなの党」がくじ引きで見事に当たりくじを引いた。仮に立花氏だけだったら会派すら作れず、くじ引きの対象にもならなかった可能性が高い。

NHKが放送する国会中継で、N国がどんな質疑を繰り広げるのか。説得力のある討論を繰り広げられればN国への支持がさらに広がる可能性もある。