新型コロナウイルスの感染拡大により、米中対立を中心に中国と自由民主主義陣営の対立が激しくなるなか、中国の対外的影響力は依然として拡大している。6月30日、第44回国連人権理事会で香港国家安全維持法が審議された際、日本やアメリカを除く欧米諸国を中心に27カ国が不支持に回った一方、中国を含み、中東やアフリカを中心に53カ国が支持に回った。支持国は、中国と同様に権威主義的で反政府勢力による問題を抱えている国や、中国が進める経済圏構想「一帯一路」によって中国から多額の支援を受けている国が目立つが、米中対立が激しくなるなかでも、中国が主導的に行動できる政治空間が拡がっているのだ。だが、その陰で中国支持国からもじわじわと「反中」の声が高まってきている。果たして中国の勢いはどこまで続くのだろうか。
影響力を増す中国、しかし反発の声も多く…
2019年11月、オーストラリア・シドニーに拠点を置くシンクタンク「ローウィ研究所」が発表した情報によると、世界各地にある在外公館の数で中国が276となり、これまで273と最多だったアメリカを上回った。うち、大使館の数は中国が169でアメリカが168、領事館の数は中国が96でアメリカが88となり、今後もその数が増える可能性がある。
だが、近年を振り返っただけでも、上述の中国支持に回った国々からも一帯一路を進める中国への懸念や反発の声が聞こえてくる。
まず、ケニアは中国支持に回ったわけではないが、2020年2月、ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は米シンクタンクでの講演の際、アフリカが米中競争の主戦場になることに対して強い懸念を示し、アフリカ各国の選択する自由と権利を強調し、米中に対してアフリカの自主性を尊重するよう求めた。
また、シエラレオネ政府は2018年2月、新空港建設のため中国輸出入銀行から多額の融資を受け、2022年までに建設を完成させる4億ドルもの契約を結んだが、翌月の大統領選で勝利したジュリアス・ビオ現大統領が建設中止を発表している。同大統領は積み重なる債務に疑念を抱き、中国主導の新空港建設は経済的ではないと判断したのだ。
現場レベルでも中国権益と地元民との間で衝突が生じている。ザンビアの首都ルサカ郊外にあるマケニでは2020年5月、中国企業の中国人幹部3人が現地の従業員に殺害される事件が発生した。具体的な犯行動機などはわかっていないが、中国人幹部から不当な雇用条件を押し付けられ、以前から同幹部たちに強い不満を抱いていたという。
国連によると、ザンビアには推定8万人の中国人が在住しているが、マケニでは多くの地元民が中国企業の不当な扱いに対して不満を募らせており、マケニの市長は中国企業に中国人のみの雇用は止めるべきだと強く主張した。
また、2019年7月、中央アフリカ共和国の北西部ウハム・ペンデ州の町ボズム(Bozoum)で金鉱採掘を行う中国企業が、採鉱によって河川が汚染されて生態系に大きな被害が出るだけでなく、住民の健康に害を及ぼす恐れがあるとして地元議会から撤退するよう要求された。地元議会はその前月、議会のメンバーが現地を調査した際、汚染によって死亡者が増加し、住民が飲み水を得られなくなっている状況を確認したというが、同国では中国人が殺害されたり、中国企業への反発が強まっている。
中東では内部からも反一帯一路の声
一方、同様の声は中東からも聞こえる。2020年4月、イラクの首都バクダッド近郊にある中国企業が操業する石油施設にロケット弾が打ち込まれた。死傷者は出なかったが、犯行声明は今でも出ていない。
イラクのアブドルマハディ前首相は2019年9月、訪問先の北京で習近平国家主席と会談し、一帯一路に新たに参加することを表明した。2019年の両国間の貿易費は300億米ドル(約3兆2,300億円)を超えるなど、近年両国間の経済関係は深まっている。一方、中国はイランとも利害関係が一致し、密な政治経済関係を維持している。よって、両政府が意図的に中国権益を狙ったり、米軍駐留施設への攻撃を続ける親イランのシーア派武装勢力が攻撃する可能性は低い。
だが、2019年にイラクでは政府の腐敗や失速する経済への不満から、若者たちによる反政府デモや暴動が激化し、多くの犠牲者が出た。市民の間では、アメリカやイランも外国勢力は出て行けとの根強い不満があり、中国企業がこのような背景から狙われる可能性はある。親イランの武装勢力も他の武装勢力同様、イラク国内で若者たちを積極的にリクルートしている。
以上のように、国家安全維持法で中国支持に回った国々の内部からも反一帯一路の声が聞こえてくる。そして、新型コロナウイルスの感染拡大は、その反一帯一路にさらなる拍車を掛けるのだろうか。
アメリカでは対中感情が過去最悪に
新型コロナウイルスが各国で流行しはじめて以降、各国では反中的な行動が増加している。韓国では旅行でソウルを訪問した中国人が地元民に「帰れ」と罵声を受け、ベトナムでも「中国人の来店お断り」の張り紙を出す店の姿が一部で確認された。また、欧米諸国では反中国を意識したアジア系への嫌がらせや暴力事件が大幅に増加傾向にある。
アメリカの調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が2020年7月に発表した最新統計によると、米市民の対中感情で中国を好意的に思わないと答えた割合が73%に達し、前回3月の調査結果である66%から7%も増加した。2018年以降では26%も増加し、新型コロナウイルスで中国が事前に十分な対応を取らなかったことが原因だと思う米市民の割合も過半数を超えている。
現在のところ、この統計結果のように、アフリカや中東の国々で反中感情が高まっているというデータは入手していない。しかし、その可能性は十分にあり、新型コロナウイルスの感染拡大が反一帯一路の声に拍車をかけ、中国が主導して行動できる政治空間がいっそう狭まる可能性もある。強硬姿勢で勢力拡大を続ける中国だが、一帯一路の進捗は見かけほど好調とはいえないかもしれない。習政権が続く限り、世界を敵に回すような外交は終わりそうにない。
パヨク撲滅運動
習政権崩壊後が楽しみ
2022.2.7 11:18