ソフトバンク、コロナ禍のダメージは小さめ 「PayPay」スーパーアプリ構想&5G戦略は

2020.8.6

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ソフトバンク、コロナ禍のダメージは小さめ 「PayPay」スーパーアプリ構想&5G戦略は

国内通信大手のソフトバンク株式会社は2020年8月4日、2021年3月期第1四半期(4~6月)の決算を発表した。予想されたコロナ禍での落ち込みはそれほどなく、むしろオンライン需要を取り込んで増収を継続したという。7月末に発表されたオンライン決済アプリ「PayPay」の“スーパーアプリ”構想についても改めて言及し、晩秋からの動きに拍車がかかりそうだ。

「PayPay」をほとんどの金融サービスのプラットホームに

Zホールディングスとソフトバンクは7月31日に、傘下の金融サービスを「PayPayブランド」に統一することを発表していた。今回の決算発表で、2020年6月にユーザー数3000万人を突破し、加盟店舗数230万カ所というオンライン決済アプリ「PayPay」を軸としたビジネスを展開していくことがより明確になった。

Yahoo Japanカード、ジャパンネット銀行、One Tap BUY、Yahoo Japan保険、YJFX、Yjamは、それぞれPayPayカード、PayPay銀行、PayPay証券、PayPay保険、PayPay FX、PayPay投信へ。社名・サービスは2020年秋以降、順次変更される(画像:Zホールディングスのプレスリリースより)

PayPayは第1四半期で4.3億回の決済回数でこの1年間で9倍に増加。ソフトバンクグループはLOHACO、ASKUL、2019年11月に買収したZOZOTOWNといったeコマースのビジネスを抱えているが、今後、PayPay側からeコマース側へポイント還元などで送客を行い、かつ認知度を向上させる。一方でeコマース側からも利用者の送客と手数料収入という形で取扱高の拡大を狙う。もちろん、携帯電話のソフトバンク、Y!mobile、LINEモバイルの決済もPayPayを利用してもらう。

2021年3月に経営統合完了を見込んでいるLINEは今やソーシャルメディアというより“スーパーアプリ”に近く、PayPayのプラットホーム化もある意味、“スーパーアプリ”化を示す。そうなるとLINEと微妙な関係になってくるが、宮内謙社長は経営統合前ということで言及を避けた。

晩秋から来年にかけて5G祭り

宮内社長は「5Gの時代になり、ますます通信の役割は大きくなる」としてスマートフォンの拡大にも力を注ぐ方針を掲げた。2019年度のスマホの累計契約者数は2413万人だが2023年に3000万人を目指すという。

ソフトバンク株式会社 代表取締役社長執行役員 兼 CEO 宮内 謙氏

スマホもメインブランドの「ソフトバンク」、価格帯が安い「Y!Mobile」、買収することになった「LINEモバイル」の3ブランドを持ち、それぞれの強みを生かすことで「カニバリゼーションは起きない」と自信を見せた。日本最大級のポータルサイトのヤフーと、同じく巨大決済アプリのPayPayが連携することで新規契約の動機づけにつなげる戦略で、それは解約防止効果もあるとした。

そのためには基地局の数を増やし利便性を高める必要があるが、2021年3月で1万局を、2022年3月には5万局として人口カバー率を90%まで高めるとした。また、2023年度に契約者数3000万人の中で5Gの割合を6割にするを目標に掲げた。

宮内社長は「この秋くらいから、5G端末のローエンド、ミドルエンド、ハイエンド、3つが一気に出てくる。晩秋から来年に5G祭りが始まると思っている」と意気込みを語った。

法人ビジネス拡大に自信

法人ソリューション事業については「クラウドが特に重要」と宮内社長は述べる。ソフトバンクがパートナー企業として提供するウェブ会議ツール「Zoom」は新規開通ID数が48倍(対2019年度Q4)と特に大きな伸びを示したほか、商談でも84%がオンラインで実施され、顧客へのコンタクト数も2020年6月は1年前比べて26万回から73万回に増えたとして、法人ビジネス拡大に自信を示していた。

新型コロナウイルスは7月に入り事実上の第2波がやってきているほか、今後もワクチンができるまで、規制を強化したり、緩和したりを繰り返すものと考えられる。つまり、ワクチンの完成が長引き、第3波、第4波が来るころは、大手企業が中心となったリモートワークが中小企業まで広まっている可能性も少なくない。そのとき、今季カバーすることになった法人需要だけでは補えなくなってくる。どうするのか注目だ。

【決算発表概要】スマホの販売は落ち込むものの、ヤフーと法人で補う

国内通信大手のソフトバンク株式会社は2020年8月4日、2021年3月期第1四半期(4~6月)の決算を発表。売上高は前年同期比0.7%増の1兆1726億円、営業利益は前年同期比4.1%増の2799億円、純利益は1521億円(同7.7%減)と増収減益だった。

事業別にみると、コロナ禍の影響で携帯電話販売店の営業時間短縮などによりコンシューマ事業の営業利益は前年同期比で8%減。一方で、コマース事業の伸長によりヤフーの営業利益は同40%増、リモートワークが推進されたことで法人事業の営業利益も同11%増を記録した。

純利益がマイナスとなった要因は、前年同期にセキュリティ企業のサイバーリーズン・ジャパンの株式を売却したことの反動という一時的要因のためだとした。通期の計画との進捗率では、売上が24%、営業利益が30%、純利益は31%を達成。

会見の中での同社の宮内謙社長は、「第1四半期はコロナ禍で相当、落ち込むと思っていたが、上手く乗り切り増収を継続できた。パンデミックはまだ続くが、この3カ月間で、デジタル化により事業を伸ばしていく自信がついた」と述べた。

また、「売上高5兆5000億円、営業利益1兆円、純利益5300億円を、2022年を目標にできるるだけ早く達成したい。成長戦略と構造改革の両輪で、企業価値の最大化を図る」と語った。

また、新型コロナウイルスの感染拡大で不確定な経営環境が続くと予想されることから、資産の流動化や現金化などを行い調整後のフリーキャッシュフローを49%増の2363億円まで大幅に増やしたことも明らかにした。