与党の税制大綱、コロナ禍で減税措置拡大・延長 課題はポストコロナの成長路線
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与党の税制大綱、コロナ禍で減税措置拡大・延長 課題はポストコロナの成長路線

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自民、公明両党は2021年度の与党税制大綱を決定した。新型コロナウイルス感染症の拡大で経済が打撃を受けるなか、国民生活に配慮して住宅ローンやエコカーなどへの減税措置を拡大・延長。菅義偉首相が掲げる「デジタル化」や「脱炭素」も後押しする。全体で総額600億円程度の減税となるが、ポストコロナ時代も見据え、単なるバラマキに終わらないよう効果を見極める必要がある。

アクセルから足を離さず

「経済を壊してしまったら大変。アクセルとブレーキを踏みながら、今やっている」。菅首相は12月11日、生出演したインターネット動画サイトの番組で観光振興策「GoToトラベル」の継続について聞かれ、苦しい胸の内をこう表現した。

新型コロナウイルス感染症拡大防止への取り組みを国民にお願いしつつ、GoToトラベルはかたくなにやめようとしない――。こうした政府の姿勢に「アクセルとブレーキを両方踏んでいる」との批判は多く、GoToトラベルについては報道機関の世論調査で8割が否定的な見方を示すなど批判が高まっており、菅首相は14日になって急きょ、GoToトラベルの一時停止を発表した。

しかし、首相の発言からも見えるように、「ギリギリまでアクセルから足を離したくない」。これが菅政権の基本的な考え方なのだ。今回の税制大綱にもそんな政権の姿勢が色濃く反映されている。

住宅ローン減税は特例措置2年延長

国民生活を支える減税の拡大・延長の柱は住宅ローン減税。借入残高の1%を税額から控除する減税措置は通常10年間だが、消費税率の引き上げに伴う反動減対策として現在、13年に拡大している。与党はこの特例をさらに2年間延長して2022年末までの入居を対象とするとともに、合計所得が1000万円以下の世帯に限って減税の対象物件を50平方メートル以上から40平方メートル以上に緩和する。

また、3年に一度見直す固定資産税については2021年度が見直し時期にあたるが、算定時期が新型コロナウイルス拡大前の2020年1月となることから税額が上昇する地域が多くなることが懸念される。そのため、税額が上昇するすべての土地の税額を2020年度と同額に据え置き、下落する場合はそのまま反映させることとした。

燃費性能の高い自動車の車検時の自動車重量税を軽減するエコカー減税についても、2021年4月末に終了予定だったものを2年間延長。クリーンディーゼル車は優遇措置を縮小するが、財務省が廃止を求めたハイブリッド車への優遇は続けることとした。自動車購入時の自動車税と軽自動車税を1%引き下げる暫定措置も9カ月延長する。

「デジタル化」「脱炭素」の2本柱、企業に優遇

エコカー減税の継続は、菅政権が政策の柱に掲げる【脱炭素】を後押しする狙いもある。政府は2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、「経済産業省が2030年代半ばにガソリン車の新車販売を禁止する方向で調整している」とも報じられている。欧州ではハイブリッド車も販売禁止する流れが広がっているが、トヨタ自動車をはじめとする日本メーカーはハイブリッド技術に注力してきたことから、国内メーカーへの配慮でハイブリッド車も当面、優遇対象とすることとした。

脱炭素に向けては「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」も新設。温室効果ガスの削減に寄与する設備に投資した場合、取得価格の5~10%を税額控除する。

もう一つの柱は【デジタル化】だ。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)、つまりデジタル化による業務や組織の変革に向け、クラウド型システムを活用する設備に投資した場合、投資額の最大5%を法人税から控除。研究開発税制も見直し、現在は対象外となっているクラウドを通じて提供するソフトウェアの開発投資も税優遇の対象に加える。

中小企業にも手厚い措置を盛り込んだ。消費税率の引き上げに伴う措置として法人税率を引き下げる特例措置を2年延長。中小企業がM&A(合併・買収)を実行した場合に、株式取得後に隠れ債務などが発覚するリスクに備えた準備金の積み立てを損金に算入できる措置も創設。2020年度末に期限を迎える所得拡大促進税制は現在、賃上げが必須要件だが、賃上げだけではなく人員増による給与総額の増額も現在対象に加えることとした。

財務省は減税措置の拡大・延長の代わりに、役割を終えた既存の減税措置を廃止・縮小すべきだと訴えたが、与党側は景気が冷え込むなか、痛みを伴う改革に及び腰。結果的に国・地方合わせて年600億円前後の減税となることでまとまった。

ただ、新型コロナ禍による財政悪化が進むなか、効果の薄い税制優遇措置をいつまでも続けていられるほどの余裕はない。本来なら淘汰されるべき企業を延命させるだけの減税や助成制度も少なくないと指摘される。

2021年度の与党税制大綱は130ページにわたって多くの減税措置が盛り込まれているが、デジタル化、脱炭素、中小企業の生産性向上といったお題目だけに目をとらわれず、実質的に税金を使うこととなる減税策が本当にこの国の成長につながるのか、ポストコロナ時代も見据えてしっかり精査していく必要がある。来春の国会でも丁寧な議論を期待したい。