空き家問題が数年前から叫ばれている。2033年には全国の住宅の約3割が空き家になるというデータもある。空き家を放置すれば治安や衛生面の悪化につながるため、自治体単位でいずれ大きな問題になってくることは確実だ。人口減のなか、空き家の利活用の道はあるのだろうか。
空き家は放置した方が、金銭的負担が少ない
総務省が2019年9月30日に発表した「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び住宅に関する基本集計」によると2018年10月1日現在、日本の総住宅数は6240万7000戸で、そのうち空き家は848万9000戸と全体の13.6%を占め、過去最高を記録。また、2019年6月に野村総合研究所が発表した「2019年版 2030年の住宅市場と課題」によると2033年には27.3%が空き家になるのではないかと予測されている。つまり、自分の家の前後左右いずれかは空き家になるということになる。
空き家の放置は不法侵入や不法投棄の可能性が高まるほか、もし災害で古くなった空き家が倒壊すると場合によっては道を塞ぎ避難経路が確保できないケースが出てくる。また、ネズミや蚊・ハエが集集まってくるという衛生上の問題もある。
なぜ空き家は増えるのか? 少子高齢化による人口減少というのはすぐ想像がつくだろう。核家族化が進み一軒の家に一世代しか住まないということもある。また、(自動車にも言えることだが)日本人は新築が好きというのがある。前述の統計調査によると、中古住宅を購入した人の割合はわずか4.9%にとどまるのに対し、新築の購入や建て替えをした人の割合は9割を超える(2016年1月~2018年9月)。日本は中古物件の有効活用ができていないことがわかる。
税金の問題もあるかもしれない。相続税はそれなりの負担になりかねないほか、相続人が配偶や子どもなど複数いる場合、話し合いになることから手続きがスムーズにいかないケースもある。また、固定資産税も土地に建物が建っていると建物と土地に軽減措置が行われるので更地より安くなる。空き家一軒を解体するのに100万円ほどかかると言われており、解体費用に加え税負担を考えると、建物をそのままにしておいた方が、金銭的負担が少ないのが実態だ。
「売る」「貸す」しか活用方法が浮かばない?
空き家の再流通システムの構築やマッチング、新しい利活用モデルの開発等を行うベンチャー、空き家活用株式会社は、空き家について理解を深めてもらおうと2021年10月末に「空活会議(アキカツかいぎ)2021」を開催。
同社の和田貴充社長によると、「2013年の戸建て空き家の市場規模は9兆円だったが、日本政府が未来投資戦略2017で2025年までに20兆円を創出するとしており、ここに空き家が貢献できる」という。空き家約849万戸のうち約500万戸は不動産会社等を通じて世の中に流通している一方で「349万戸は未流通で、戸建てと長屋建てが合わせて約270万戸となっており、この約270万戸の部分の解決が課題だ」という認識を示す。
実際に未流通の空き家もすぐ住める状態のあるという。また、所有者も「今するべき対応がわからない」「どんな選択肢があるかわからない」「どこに相談してもいいかわからない状態にある」と実像を語った。
解決策の一つとして空き家活用は、2021年11月より空き家所有者と事業者をつなぐマッチングシステム「空き家活用ナビ」を開始。まず初めに東京都世田谷区が導入するシステムを使って空き家の使い道を探したいオーナーと使える物件を探している人を引き合わせることで、空き家の発生抑制、管理不全な状態の予防および解消を目指す。
世田谷区の千葉妙子 空家・老朽建築物対策担当係長は導入の経緯と期待感を次のように語る。
「空き家はたくさんあり、良い状態のものから悪いものまでさまざま。ホットラインを設けても相談にはあまり来ないため、まずは敷居をどう下げるかというのがあった。区として調査したものは個人情報になるため公開できない。そのため、空き家所有者からアプローチをしてもらう仕組みが必要と考えていたところ、空き家活用株式会社の提案は面白いと感じた。
空き家の活用といっても、所有者は売るか貸すのかなど、選択肢が少ない。実際、空き家は地域の貢献のために使う等いろいろな使い方が可能だが、最初から具体策は持っている人はあまりいないでしょう。この提携を通じて、いろいろな提案が複数社から出てくるので、所有者の選択肢が広がるのがいい。
(今後は)手探りの中で進めることになるでしょう。全国的にも、このような窓口はないと思うので、官民それぞれで知恵を出し合って進めていきたい」
北海道栗山町の出身タレント、バービーの街おこし
今回の「空活会議」には、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーさんがゲストとして登壇。彼女は「故郷である北海道栗山町に貢献したいということから数年前から活動を始めた。すでに冬場休みになる農家のために小物を売るブランドを立ち上げたほか、地元の野菜を売るためのECサイトも作った。その活動の一環で空き家活用についての活動を始め、すでに空き家も所有している」
栗山町は札幌郊外にある町で人口1万1000人。主力産業は農業で馬鈴薯、タマネギ、メロンなどを栽培。空き家は270戸に上るという。栗山町役場の金丸佳代 若者定住推進課主事は昨今、空き家に関する相談が急増していると明かす。
「これまで空き家の相談件数は年に数件だったが、コロナの影響なのか、2020年は38件、2021年も10月の時点で26件になっている。7割は栗山町外の方」
町として空き家バンクを立ち上げたが、すぐに使える物件が数件しかないという課題に直面。活用を呼び掛けても「家族で話し合いをしていない」「本家だから親族との相談がいる」「また使うかもしれないから決断に至っていない」といった理由で流通にまでいかないケースが多いという。
2件の空き家をもつバービーさんは「空き家を50万円で買ったのはいいけれど、結局使い物にならず150万円位かけて更地にした」と活用の難しさを吐露。そこで空き家活用は、バービーさん所有の更地で事業をしたい人について募集を開始することを発表した。
家は使わない方が痛みも早いと言われ、空き家の活用はそれだけでも建物の老朽化を遅らせる意義がある。空き家が多い町は見た目もゴーストタウンのようで悲しい感じがする。こういった取り組みは町の活性化に一役買いそうだ。