香港立法会選挙、投票率約3割 市民は議会に対して不信任

写真:AP/アフロ

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香港立法会選挙、投票率約3割 市民は議会に対して不信任

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12月19日に実施された香港立法会選挙において、定員90議席のうち一般市民の投票による直接選挙枠(20議席分)の投票率は、2016年に行われた前回選挙58.3%から30.2%と大きく下回り、過去最低を記録。議会に対して香港市民が不信任を突きつける形となった。

民主派が立候補しにくい仕組み

新しい選挙制度で行われることになった今選挙からは、民主派が立候補するには最低100人の推薦がいるほか、5つに分類されている選挙委員すべてから最低2人の推薦が必要となった。その選挙委員は基本的に親中派であることから推薦人を集めることは困難を極める。仮に推薦人を集めることができたとしても、選挙管理委員会が事前審査をすることから立候補を認められないケースもあり得たため、立候補できるかどうかもわからない状況だった。

その結果、民主派最大政党の民主党からは1人も立候補しなかったほか、民主派からの立候補はわずか12人だった。

また、前回までは定員70議席のうち直接選挙枠は35議席と半分あったが、今回からは定員が90議席に増えたが直接選挙枠は20議席に減った。つまり、仮に直接選挙枠で民主派が20議席を獲得したとしても、法案の制定にはほとんど影響を与えないという制度だ。

こういったことから、香港市民の間では選挙前からしらけムードが高まっていた。PR会社に勤めるAさんは投票に行かなかったが「行っても行かなくても(結果は)一緒でしょ」と冷めた口調で語った。

政府も投票率を上げようと躍起

香港政府は投票率が低くなることを想定していた。投票率が低ければ議会の正当性が失われてしまうため投票率向上に躍起になった。まずはオーソドックスに新聞広告を打ったりCMを大量に流したりした。投票所も香港と深圳のボーダー3カ所に設置。広東省に住む香港人に投票してもらえるようにした。

裏目に出た政策もあった。選挙当日の12月19日はバス、地下鉄といった公共交通機関を無料したことだ。これは移動をしやすくして投票所に向かってもらおうというものだったが。しかし、香港では新型コロナウイルスのデルタ株、オミクロン株もほぼ抑え込んでおり、市中感染のリスクが低いことから香港市民はここぞとばかりにテーマパークやお正月に向けてたくさんの出店などが開催されているイベント会場に向かってしまった。

なお、選挙管理委員会の馮驊(ふう・か)氏は低い投票率について「投票率については評論しない」と直接的な回答を避けた。

親中派以外の当選者は1人だけ

香港において親中派は別名「建制派」と呼ばれ、民主派や中道は建制派以外という総称として「非建制派」とも言われる。

今回の香港立法会選挙の結果は、直接選挙枠で民主派は12人が立候補したが全滅。業界団体から選出される職能別の選挙枠(全30議席)で社会福利界から中間派政党の新思維(Third Side)主席である狄志遠氏が当選した。つまり、全90議席のうち89議席が建制派で1議席が非建制派ということになる。

民主派が当選できなかった要因は、前述のように民主派が立候補するには親中派の選挙委員からの推薦が必要であり、立候補できた時点で市民からは「民主派ではない」と思われてしまったことだ。また、親中派は業界団体からの支持があるため強固な組織票があり、低投票率であれば有利に働く。民主派は投票率が71%に達した2019年の区議会選挙で議席の約8割を獲得したように高い投票率が必要だったが、今回のように投票率が3割ではほとんど勝ち目はなかった。

これで立法会の審議機能はほぼ形骸化。中国政府と香港政府が制定したい法律が簡単に立法化されることになる。今回の選挙で1国2制度の事実上の終焉の仕上げがされてしまった形だ。