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相次ぐ閣僚スキャンダル 蘇る7年前の悪夢~SMバー・うちわ配布・観劇招待疑惑~

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安倍政権が相次ぐ閣僚のスキャンダルに揺れている。改造の目玉だった小渕優子前経済産業相が地元後援者向け観劇会の費用を肩代わりしていた疑惑で、松島みどり前法相が地元の祭りでうちわを配布してきた問題でダブル辞任 。小渕氏の後任の宮沢洋一氏も政治資金をSMバー に支出していたことが発覚し、野党の追及を受けている。閣僚の不祥事で早期退陣を迫られた第一次安倍内閣の悪夢 は再び繰り返されるのか――。

支持率下落に「改造すべきじゃなかった」の声

第2次安倍政権の発足から1ヵ月。松島前法相が地元の祭りでうちわを配布していた問題に続き、週刊誌が「団扇どころじゃない、小渕経産相のデタラメすぎる『政治資金』」と報じた。

小渕氏が指摘されたのは、地元後援者向けに毎年開いていた「観劇会」の収支に赤字が生じていた疑惑。政治資金収支報告書に記載された小渕氏の後援会などが支払った入場料や飲食代に比べ、参加者から受け取った会費が数千万円単位で少なかったというものである。2012年など、収入を1円も計上していなかった年もあった。

仮に記載した数字が事実であれば、後援会が参加者の観劇費を一部、もしくはすべて負担していたことになり、地元有権者への寄付行為を禁じた公職選挙法違反の可能性がある。「実際には参加者から実費を受け取っていた」のであれば、差額が”裏金”になっていた可能性がある。その場合は政治資金規正法が禁じる虚偽記載にあたり、その金が選挙などに使われていたのであれば、別の問題に発展する。

安倍政権へのダメージが大きいのは、辞任した2人が安倍内閣の掲げる「女性登用」の象徴的存在だったからである。特に40歳にして2度目の入閣となる小渕氏は改造内閣最大の目玉。それがたった1ヵ月強で辞職したのだから、政権運営への影響は小さくない。

閣僚辞任を受けて実施した新聞各紙の世論調査では内閣支持率が下落し、おおむね改造前の水準に戻った。下落がこれで止まればいいが、宮沢経産相などが引き続き野党の攻勢にさらされている。永田町では「やっぱり改造すべきじゃなかった」という声が日増しに膨らんでいる。

改造失敗、2つの理由

内閣改造が失敗と言われる背景には2つの理由が考えられる。1つは支持率を引き上げるため、話題作りにこだわりすぎた点だ。
首相は「女性の活躍推進」を改造のキーワードに掲げ、「女性活躍担当相」ポストを新設。過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を登用した。”過去最多”にこだわるため、18人の閣僚の約3割に女性を据えた計算だ。
しかし、自民党国会議員に占める女性の割合は衆院で8%、参院で15%に過ぎない。「少ない母数から質より量(数)を優先して選んだため、松島氏のような不適任者が任命された」(永田町関係者)というわけである。
2つ目の理由は派閥への過剰な配慮だ。幹事長就任まで検討され、最終的に経産相という重要閣僚を射止めた小渕氏は”額賀派のプリンセス”。首相は同派を実質的に牛耳る参院のドンこと青木幹雄参院議員を取り込むため、小渕氏を重要閣僚に抜擢したとの見方が多い。
法相に起用された松島氏は首相の出身でもある、同党最大派閥の町村派所属。首相と町村氏は先の総裁選でも争うなど関係が悪化しているが、党内基盤を固めるため、町村氏に配慮して同氏と同じ東大出身の松島氏を入閣させたとされている。
第2次安倍政権では1年8ヵ月にわたってほとんど不祥事が表ざたになることはなく、一人の閣僚も欠けることがなかった。改造した途端、これだけ報じられるようになったのは派閥からの推薦を優先した結果、官邸側のチェックが緩んだからだとみられる。

“7年前の悪夢”の再来は

政界関係者の脳裏に浮かぶのは”7年前の悪夢”だ。2006年に発足した第1次安倍内閣では久間章生防衛相が失言で辞任し、事務所費問題を追及された松岡利勝農相は自殺。後任の赤城徳彦農相にも事務所問題が浮上して辞職し、「辞任ドミノ」などと言われた。
その間に支持率は急落し、2007年夏の参院選で惨敗。参院における与党の議席数が過半数を割り込み、「ねじれ国会」となった。いったんは続投に意欲を示した安倍氏だが、10月に臨時国会が始まった途端、体調不良を訴えて降板。首相の座は福田康夫、麻生太郎へと引き継がれたが、自民党の負ったダメージは大きく、民主党に政権を明け渡したのは周知の通りである。
当時、自公政権に決定的なダメージを与えたのはねじれ国会。参院の主導権を小沢一郎氏率いる民主党に握られ、法案審議や国会同意人事などを徹底的に妨害された。与党は昨年の参院選で大勝して参院での主導権を取り戻しており、再び国会運営で行き詰まることはない。
当面の課題は「消費税率問題」をどう乗り切るかだろう。法律上は2015年10月に10%へ引き上げる決まりで、財務省の意向を受けた自民党税制調査会の重鎮たちは”規定通りの増税”を主張。一方、党内では若手を中心に慎重派も声を上げ始めている。どちらの結論にしても激論は必至。しこりを残せば、安倍首相の長期政権構想に黄信号が灯る。

組織をまわすのも壊すのも人事次第

第1次安倍政権は、何のスキャンダルもなく、1年半もの間、高支持率を誇っていた。なぜ改造しなければならないかというと、身内に不満が溜まってくるからだ。
国会議員はそれぞれの地域の代表で一国一城の主である。当選回数を重ねていけば、地元の後援会は主要なポストに就くことを期待する。しかし、大臣ポストの数は決まっているので、それを適当な期間でまわすしかない。ただ、国民からの”見た目”も重要だから、受けがいいだろうと思われるだけで、能力が足りない人間がしばしば大臣に就くことになる。
今回は”女性”にこだわり、派閥の力学も考えて一石二鳥を狙ったのだろうが、見事にこけた。組織をまわすためには人事が一番重要だが、組織を壊すのも人事だということは肝に銘じなければならない。