写真/若原瑞昌

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働きやすい会社とは? 超成熟社会の企業のあり方[後編] 大和証券グループ会長・鈴木茂晴

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高度成長期を抜け、成熟期を迎えている日本。今後、少子高齢化にともなって労働人口が減るばかりの日本において、働きやすい会社とは? 金融界を牽引する大手証券会社・大和証券の鈴木会長に、第7号に引き続き話を聞いた。

【前編】超成熟社会の企業のあり方 大和証券グループ会長・鈴木茂晴×尊徳編集長

大和証券グループ本社 取締役会長

鈴木茂晴 すずき しげはる

1947年4月17日生まれ。京都府出身。慶應大学経済学部卒。大和証券グループ本社取締役会長。大学卒業後、大和証券に入社し、本店営業部を皮切りに、事業法人部長、引受部長、投資銀行本部長などを経て、2004年、社長に就任。2011年より会長。

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株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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ビジネスチャンスより経営理念を優先

尊徳 前回は、個人金融資産からいっても、日本の貯蓄が諸外国並みに上がってくれば、200兆円ものビジネスが広がってくるからチャンスだとおっしゃっていました。しかし、だからこそ競争も激しい。

5年前に三井住友銀行との合弁を解消して、大和証券は独自路線を歩みました。メガバンクはその組織力からも金融界では圧倒的な強さを発揮しますが、僕はそのときに大和証券がした決断を大変評価しています。それは、銀行系の強みを捨てても、”譲れない一線”があったからだと思っています。

鈴木 相手側とどうしても合わないズレがあったので、商売上のマイナスよりも基本理念を曲げることのマイナスを危惧して、合弁を解消することになりました。

お客様に選ばれるのは、”イメージ”が非常に重要です。イメージを作るのは、働いている人たちのムード。これは小さいようで、一番大きな要素です。口コミで広がっていきますから。
女性の活躍支援を10年やって気がついたのは、この国では女性がオピニオンリーダーとうことです。いち早く取り組んできたからこそ、そのオピニオンリーダーたちの意見を取り入れて、社内の雰囲気も良くしてきました。

また、会社から良い扱いをされていないのに、お客様にいい対応などできません。働くってそういうことだと思うのです。働きがいのない会社では、良いサービスは提供できない。社員たちの満足度を上げることが、お客様に選ばれる最大の要因になるということです。

尊徳 それを実現するのは、制度? 報酬? アイデンティティ?

鈴木 全部です。報酬について、営業の現場(支店)は成績で判断しやすい。でも、人事や総務などの管理部はわかりづらいから、営業成績の良い人は本部に入れて、そこでの仕事ぶりも見ます。周りから見て優秀であれば報酬が高くても納得されますから。

鈴木茂晴

企業のイメージを作るのは働いている人たちのムード(鈴木会長)

社員が勉強熱心になるのはなぜか

尊徳 あとは、外から認められる企業でないとダメですよね。最近では「ブラック企業」といわれるものもありますが、リスペクトされてないとね。あとは、どんな組織でもそうだけど、誰が見ても公平な人事でないと腐りますよね。

ところで、今の若い人たちは草食系とか言われて大人しい印象を受けますが、大和証券でもそうでうすか?

鈴木 そんなことないと思いますよ。われわれの頃よりも勉強するので感心します。夜遅くまでダラダラ勤務しないように、ピシッと19時には仕事を終えるようにと指示をしたら、その時間を使って勉強する人が増えたのです。それで、5、6年前に日本の金融機関でCFP(CERTIFIED FINANCIAL PLANNER:ファイナンシャルプランナーの最高峰)の資格取得者数を一番にしよう、と号令を掛けたら、日本生命を抜いて一番になれました。

一昔前だと、(勉強する)時間がないから、本部の取得者が圧倒的に多かったのですが、今は女性も含め、営業の取得者が多数います。2013年は産休中の人が2人も取りましたからね。そういうことを考えると、僕は若い頃にもっと勉強すれば良かったと思いますよ(笑)。

鈴木茂晴・尊徳

働けること自体が幸せなんじゃない?

尊徳 会長にとって”働く”ってどういうことですか?

鈴木 私の入社時は、高度成長時代だったから給料も自然と上がっていましたし、このままこの会社にいれば安泰だな、と感じていました。働くことに疑問を感じることもありませんでした。
今は、そこまで安泰とは思えませんし、いろんな選択肢を示されているのかもしれませんが、だからといって働くことに何か疑問を持つのはおかしいと思います。人生においてかなりのウエートを占めていますし、尊いことだと思っています。

尊徳 僕が尊敬する日本理化学工業(従業員の7割が知的障害者で、利益も出している)の大山泰弘会長がおっしゃっていました。あるお坊さんに、「人間の幸せは、愛されること、必要とされること、褒められること、働けること、の4つ」だということを教えられたそうです。

その労働を知的障害者の方たちに提供することが、自分の使命だとそのときに思ったそうです。働きたくても働けない人もいるのに、働くことに疑問を持つのはおかしな風潮。今後の日本が発展していくためには、会社組織がいかに働きやすい環境を作ってあげられるかが大切ですね。