社会

日本政府が電子化する日~マイナンバーが導く未来国家

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誰が何のために導入するのかわかりづらい「マイナンバー制度」について、国の立場から推進する平井卓也議員と、インフラを手がけるGMOの熊谷社長に話を聞いた。

GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表

熊谷正寿 くまがい まさとし

1963年、長野県生まれ。GMOインターネット株式会社代表取締役会長兼社長・グループ代表。ネットインフラ、広告・メディア、証券、モバイルエンターテイメントなど、インターネットにおけるさまざまな事業を展開。グループは上場9社を含む87社、スタッフは4,600人を超す。

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 自民党IT戦略特命委員長

平井卓也 ひらいたくや

1958年、香川県生まれ。上智大学外国語学部英語科卒。自民党IT戦略特命委員長。電通に6年務めた後、西日本放送代表取締役社長、高松中央高等学校理事長などを経て、2000年、衆議院選挙で初当選。国土交通副大臣、自民党政務調査会副会長などを歴任。現在6期目。
マイナンバー制度をはじめ、サイバーセキュリティ基本法の制定など、自民党のIT政策を主導している。

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株式会社損得舎 代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳 さとう そんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。

Twitter:@SonsonSugar

ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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世界の失敗を基にした最先端のセキュリティー

尊徳 マイナンバーは本当にわかりづらい。僕も内閣府にまで行って勉強しましたけど、平井さんには改めて、マイナンバーは何に活用できるのか、何をどうしたら国民のメリットになるのかを聞きたいです。また、マイナンバーに関するインフラ整備にもかかわるGMOの熊谷さんには、企業側の対応も聞いてみたいと思います。

熊谷 以前、平井さんと話していて、マイナンバーは名前と一緒だから誰が知ってもいいんだとおっしゃっていて。それを企業は漏らしてはいけないとビクビクしていて誤解がある、というところから話が盛り上がりました。

平井 漏らしてはいけないのは社員の給与や社会保障の情報であって、マイナンバー自体ではないということです。

尊徳  メディアだってわかってるかどうか怪しい。世間的には「マイナンバー」と「個人番号カード」を混同している人も少なくないし、セキュリティーを心配する声もあります。個人番号カードを落としてマイナンバーを他人に知られても、パスワードがわからなければ給与所得や社会保障情報などの個人情報を盗まれることはないとのことですが、本当に安全対策は取られているのでしょうか。

尊徳
どうしてもネガティブなイメージが拭えない(尊徳)

»マイナンバー制度って何?

平井 帳簿で管理する今のアナログな方法に比べたら、セキュリティーレベルは格段に上がります。帳簿では閲覧履歴が残りませんから。日本はマイナンバー制度において世界でも最後発国。アメリカや韓国などのこれまでの他国の失敗経験に加え、日本の住基ネット裁判の歴史など、すべてを引き継いで法律の体系とシステム設計を行なっているため、世界最先端の番号システムを実現しています。

尊徳 先行した国々の失敗とは、どのようなものですか?

平井 例えばアメリカの社会保障番号は民間利用に制限がなく、さまざまな情報がひもづけされていました。また、本人確認機能が極めて脆弱だったために”なりすまし”が多発し、情報が芋づる式に漏洩してしまいました。
しかしマイナンバーは、インターネット社会において個人情報を識別して守っていくことを前提で誕生したもの。ここまでデジタル化やグローバル化が進むと想定していなかった海外のシステムとは、根本的に違うのです。

尊徳 しかし、1960年代に起きた国民総背番号制の議論などの影響か、国家が国民を一元管理するのではないかというネガティブなイメージがいまだにあるようです。

平井 もはや時代が変わり、国はネット社会においてどうやって国民の権利を守るのかという問題に直面しています。マイナンバーと併せて、国民自身が自分たちの情報を監視できる機能「マイナポータル」を導入することで、行政がいつ、どのような理由で自分の情報を見たのかを知ることができるようになります。これは情報管理の意識を根本から変える政策なのです。

 

平井
普及すればネット投票も当然できる(平井)

年間3兆円! 強烈なコスト削減効果

尊徳  導入によるメリットはどのようなところに生まれますか。

平井 最も大きいのは個人を特定できることです。戸籍や住民票には氏名があってもフリガナはありません。実は漢字の氏名だけでは本人を正確に識別するのは極めて難しく、なりすましも容易。このデジタル化された社会において、国民IDなしで個人の権利を守るのは困難です。

熊谷 企業サイドから見ても本人確認の技術進歩は大きなメリットです。現在、各企業がそれぞれに本人確認を行っていますが、マイナンバーが普及すれば人材採用や証券、銀行口座開設など、1回の確認ですべてに通用するようになります。導入に際しての初期コストは掛かりますが、長い目で見ると個人の特定コストは下がりますね。

平井 経団連も以前からマイナンバー制度の導入を求めていて、業務の効率化だけで官民合わせて年間3兆円の削減を見込めるというデータも算出しています。

熊谷 人口減少が進む日本経済の状況を考えると、生産性を上げていくことが必須です。その最たる道がIT化。マイナンバー制度は、その切り札ともいえる政策だと思います。

電子政府と民間利用への道

熊谷
電子政府への道が近づいています(熊谷)

尊徳 わかってくると、この政策に可能性を感じてきます。導入後はどんな社会になっていきますかね。

熊谷 日本は高速通信という意味では世界トップクラスですが、政府のデジタル活用という点では非常に遅れています。普及の最大の障害は”対面・書面の原則”が残っていること。ネット上での本人確認が可能なマイナンバーの登場によって”対面・書面の原則”が撤廃され、ネット上で簡単に契約できるようになる。電子政府への道が近づいています。

平井 年金情報もまともに管理できない状況から抜け出し、脱税や生活保護の不正受給、健康保険証の不正使用などを防ぎ、公正公平な社会を実現できます。そのためには電子署名法やe-文書法、行政手続オンライン化法などの法律変更も必要ですね。

尊徳 インターネット投票もできるようになりますか?

平井 当然できます。例えば、現在は海外在住の日本人は大使館や領事館で面倒な登録を行わなければ投票できません。しかし、マイナンバーが普及すれば、ネット投票にも道が開けると思います。今は大騒ぎしていますが、数年もしたらあまり意識せずに普通に個人番号カードを使っていると思いますよ。

尊徳 マイナポータルの普及や法律改正を行っていけば、国民にとって利便性はより一層アップし、民間企業の利用も無限に広がっていくでしょう。ただ、まだまだ周知が足りないのも事実。マイナンバー制度が着実に普及して、デジタル化社会に適したシステムを確立し、名実ともに日本が真の電子政府となれる日が来ることに期待したいですね。