世の中のさまざまな働き方を取り上げ、”自分がどんな生き方をしたいか”を考える本企画。今回はプロゲーマーのふ~ど選手を直撃。小さな頃から好きだったゲームを大人になっても続け、それが仕事に。たとえ遊びでも”好き”を突き詰めれば、ニーズは生まれる。
マジメにゲームをしていたらプロになった
「ゲームは人一倍好きでした。子どもの頃は誰しもやっていたと思いますが、僕はそのまま続けてきただけです」
ふ~どさんは、現在30歳。2011年にアメリカで行われたゲームの世界大会で優勝した際、ゲーミングデバイスメーカーのRazerからスポンサー契約のオファーが来た。プロは日本にもまだ数人しかいなかったが、未開の道に興味を持ち、契約を受け入れる。
それまではゲームのデバッグや攻略本の制作に携わっていたが、プロゲーマーの伏線がなかったわけではない。友人のゲーマーたちとゲーム漬けの日々を送るなか、格闘ゲーム「バーチャファイター」のトッププレーヤーだった彼は、当時から何かとゲームの仕事が舞い込んでいた。
「ただゲームが強いだけでは、稼ぐ機会には恵まれなかった。コミュニティーの場を通じて得た、人とのつながりが大きいです」
ゲームに勝って道を切り拓く面白さ
スポンサーの要望に応えるためにゲーム大会へ出場するが、そこには自らの意思も重なる。賞金は数百万円から、海外の大きな大会では1千万円を超すものも。
「大会は”仕事”です。弱いプロゲーマーなんて意味がないじゃないですか。プロであるために勝たないといけない」
だが、彼は高額賞金よりも、勝ったことで広がる”道”に興味があるという。
「以前は『その歳でまだゲームやってるの?』と言われていましたが、それが『仕事だ』と言えるようになりました。自分は特に変わっていないんですが、周囲の反応が変わってきています」
この世界のプロはまだまだ未開拓。正解がないなかで、ふ~どさんは仲間とともに模索を続けている。
「格闘ゲームは日本をはじめアジア勢がダントツで強い。欧米の人たちがそれに追いついて活躍するようになってきたら、業界がもっと盛り上がっていくと思っています」
“好きこそ物の上手なれ”が結実するケースは珍しい。だが、自ら仕事を作っていく彼の開拓者精神は、社会で働く者としての”覚悟”以外の何ものでもない。
この働き方の良いところ
ゲーム三昧でも周囲は否定できない
「結果に対してちゃんと評価が返ってくる業界です。自分がプロになったのも大会で優勝したことがきっかけでした。それに、とにかく好きなゲームをやり続けられる。自分は格闘ゲームがメインですが、以前は『モンスターハンター』も仕事でやりましたし、いろいろなゲームをできるようになったのは自分の性に合っていますね。
毎日がゲーム三昧だけど、それも仕事の一環なんだと周りが思ってくれます。”仕事”だとそれに対して周りは否定できないので。だから後ろめたさはまったくありません」
この働き方の大変なところ
将来の道は自分で作る必要がある
「自分がやりたくないゲームでも、スポンサーに頼まれたらやらなければいけないことも。『このゲームしかしてはいけない』というような制限がかからなければ、プロなので対応します。数あるなかに追加されるのであれば、そこまできつくないので。
プロゲーマーはずっとやりたいと思っていますが、将来の道はそこまで見えていません。この業界は人気商売なので、スポンサーから価値がないと判断されたら終わりです。ただ、プロゲーマーになるためにゲームをやっているわけではないので、そのようなもの、と自分でも割り切っています。
もしプロじゃなくなったとしても、やっぱりゲームが好きなので、ゲーム関係の仕事をしたいですね。そのために今、いろいろな方とつながりを持てているのはありがたいです」
「やりたいこと」を選ぶ働き方の傾向