NISA開始などで株主優待に対する注目が高まっている。株主優待実施の有無が株価パフォーマンスへ与える影響は限定的だが、株主優待実施企業のうち、高配当利回り銘柄のパフォーマンスは良好。期末へ向けて、高配当利回り株は良好なパフォーマンスが期待される。
高まる株主優待への注目
今年1月からNISA(少額投資非課税制度)がスタートしたことで、長期投資を行う上での銘柄選びの切り口として、個人投資家を中心に株主優待への関心が高まっている。また、株主優待を使って生活する人物を特集したテレビ番組が人気を博しており、マネー雑誌がこぞって株主優待の特集を組むなど、マスメディアからの注目も高い。
一方、企業側でも株主優待に対する関心は年々高まりを見せている。特にアベノミクス相場の中で、海外投資家の持株比率が高まり、小口で安定的な個人株主の獲得策として、株主優待に関心を寄せる企業も多い。大和インベスター・リレーションズ株式会社(大和IR)の「株主ガイド2014年版」によれば、2013年9月末の株主優待実施企業数は1094社と、調査を開始した1993年以来で最多となっており、実施率(上場企業に占める優待実施企業の比率)も30.6%と過去最高を記録している。
株主優待実施企業の株価推移
どの企業に投資をすれば、魅力的な株主優待(品物や割引券など)が得られるかについては、マネー雑誌などでも情報があふれている。しかし、株主優待を実施している企業への投資が株価パフォーマンスの面でも魅力的か否かについては、ほとんど分析が行われていないのが現状である。株価が大きく下落しても、無配が続いても、株主優待さえ得られれば良いと考える投資家は、少ないのではないだろうか。株主優待は、あくまで値上がり益や配当収入が得られた上での副次的なベネフィットという位置付けであろう。
大和IRの2007年~2013年までの株主優待実施調査で、継続して株主優待を実施していることが確認された東証1部上場銘柄(455社)と残りの東証1部上場銘柄(以下、優待非継続企業)の長期的な株価パフォーマンスの比較では、両者では大きな差がみられない。あえて言えば、アベノミクス相場までは優待継続企業が、その後は優待非継続企業の方が株価は堅調である。これは、この期間で株主優待の実施に対する評価が変わったということではなく、これまでのアベノミクス相場においては、株主優待の実施率が高い食品や陸運などのディフェンシブセクター(安定的な業種)の上昇率が相対的に低かったためであろう。
株主優待の実施企業に高配当利回りという条件を加えれば、株価パフォーマンスは大きく改善する。「図:業績好調な高配当・株主優待実施銘柄」では、今来期好業績が期待される銘柄の中から、株主優待を実施している高配当利回り銘柄のスクリーニング(選別)を行った。配当収入に加えて、値上がり益も期待でき、株主優待も得られる高配当利回り銘柄は、NISA口座の持つ非課税メリットが活かせる有望な投資対象と言えよう。これから、3月本決算企業の権利確定日へ向けて、高配当利回り銘柄のパフォーマンスが改善する傾向があり、投資タイミングとしてもよい時期だと考えている。
(塩村賢史、金沢澄恵子)