尊徳編集長の解説でニュースが”わかる”!/strong>
Q.オーストラリアとの経済連携協定(EPA)が成立したことで、アメリカは今後どう動きますか?
A.TPP交渉も何らかの進展をすることになるかもしれません。TPPはアメリカと日本の貿易が一番大きいからです。
どこの国でも、自国の産業を保護するために他国から入ってくる製品に関税をかけます。それをなるべく撤廃して自由貿易をしようというのが、EPAやFTA(自由貿易協定)、TPPです。ですからオーストラリア(豪州)とEPAが合意されたことは大きな意味を持つと思います。日本にとってオーストラリアは第3位の輸入国です。韓国と豪州は先にEPAを結び、自動車の関税が撤廃されることが決まっていたので、日本の自動車産業にとっては大きな脅威になっていたことも締結を急いだ背景にあると思います。
さて、アメリカの動きですが、一番大きな問題は、(豪州と)競合する牛肉や乳製品などに関してでしょう。オージー・ビーフの輸入が増えて、米国産の牛肉が日本で売れなくなってはアメリカにとってマイナスです。ですからTPP交渉も何らかの進展をすることになるかもしれません。TPPはアメリカと日本の貿易が一番大きいからです。
しかし、日本も国内の畜産業、農業を保護したいので(自民党の大票田だから)、アメリカが要求する関税撤廃は飲めません。そこで、豪州と結んだような妥協点をアメリカに出してもらいたいのが日本の本音です。しかし、アメリカも自国の畜産業界が大票田であるので、大きな妥協はできません。日本政府にとっても賭けに出たという感じかもしれません。
ただ、オバマ大統領が来日した時に何か日本もお土産を持たせなければ、大統領の面目が立ちませんから日本の対応が注目されます。
一つだけ言えることは、自由貿易が進めば競争力のある企業が残り、消費者にとっては安くていいものが手に入るということになるので、私は基本TPP大賛成派です。
Q.進む気配のない環太平洋経済連携協定(TPP)への影響はありそうですか?
A.豪州とのEPAは、TPP交渉への前進にはなるでしょうが、アメリカがそれで譲歩するとも思えません。
今までのタフな交渉から、かなり難航することが予想されます。しかし、国内の農業に配慮するあまり国際社会から閉鎖的な国だとみなされれば、貿易立国としての日本がこれから不利になりかねません。ここは既得権に切り込んで、大幅な譲歩(関税の撤廃など)を日本側から出してもらいたいですね。
Q.日本の輸入先として3番目に大きい貿易国との連携で供給は安定するかもしれませんが、国内生産物が危機に陥ることはないのでしょうか?
A.米もそうですが、安い外国産が入ってきたところで、競争力が落ちるとは思えません。
関税が高くても供給は安定しています。それよりも競争力がどうかということですが、もともと国産牛の方が価格が高いわけで、食べたい人は買っています。米もそうですが、安い外国産が入ってきたところで、競争力が落ちるとは思えません。高くてもうまければ買います。あまりに保護主義に走ると、逆に競争力が落ちると考えます。(佐藤尊徳)
[参考:2014年4月8日・日経新聞・1面「豪州産、88%で関税撤廃」]