尊徳編集長の解説でニュースが”わかる”!
Q.商船三井が中国当局から船舶を差し押さえられましたが、差し押さえられなければならないようなことをしたのでしょうか?
A.うーん……してないと思いますが。それに、同時期にオバマ大統領が来日したこともありますが、もう少しこの問題をメディアは取り上げてほしいですね。
戦時中の話を今更訴えられても……と思っていたのですが、商船三井に聞いたら教えてくれました。1987年に中国の民法ができあがり、時効という概念ができました。1988年末がこの事件の時効だと決められ、慌てて訴えたのが始まりだそうです。その際、中威輪船公司代表者の相続人が商船三井を訴えました。
日本と違い、中国は判決が確定しても、その後に和解交渉をすることができます。その交渉をしている時に、中国当局の強制執行で船を差し押さえられてしまったということです。商船三井も寝耳に水のような状況だったようです。
商船三井も判決が確定した後で、損金を計上していましたから、賠償金を一銭も払わないとは思っていなかったようですが、この突然の行為はちょっと乱暴な気がします。
Q.賠償が40億円とは、高額すぎると思うのですが、国際問題に発展しないのでしょうか?
A.40億円が高額かどうかは何とも言えないのでは? 船が一隻なくなっているので、29億円強の判決で、利息(戦時中からですから)が11億円です。
あくまで、民間同士の争い、ということになっています。商船三井も逆に国際問題にはしたくないのが本音です。日本政府もこの問題が長引けば、外交問題にせざるを得なかったでしょうが、民間同士ということで、幕引きをすると思います。ここで中国と争っても得にはなりませんから。1972年の日中共同声明の時に、戦争賠償請求は放棄したんですけどね……。民間はそうではないんですって。ま、中国との商売はカントリーリスク(※)が高いということです。
ただ、このような前例が、日本企業の資産の差し押さえが続くというようなことにならないように祈ります。(佐藤尊徳)
※カントリーリスク…企業が外国の事業に投融資や貿易取引をする際に、政治・経済・社会状況の変化に伴い、損失を被ったり資金が回収できなくなったりする危険性。
[参考:2014年4月25日 日経新聞 13面「商船三井『日中政冷』に翻弄」]