尊徳編集長の俺にも言わせろ!!

2014年は株価が下落する!

2014.5.12

経済

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民主党から自民党に政権交代が起きて、日本でもアベノミクスに湧き、以来株価も上昇を続けてきた。しかし、私は年初に今年は株価が下落すると予想した。確たる根拠があるわけではないが、リーマンショック時に似ているところがあるのだ。もしかしたら大外れをするかもしれないが、少し時間を割いて読んでもらえるとありがたい。

ベアー・スターンズの破綻

2008年9月15日にアメリカ第4位の投資銀行、リーマン・ブラザーズが破綻した。その余波は凄まじく、100年に一度と言われる金融危機が起きた。メーカー各社は「需要が消えた」と口を揃え、世界恐慌になるのではないかとの恐怖感が覆った。

予兆はあった。その頃、筆者は近いうちに必ず金融危機が起きると宣言していた。確たる証拠があったわけではない。言ってしまえば長年の勘だ。(読むのをやめようとした人、もう少しお付き合いください)

当時、アメリカはサブプライムローンの問題がくすぶっていたが、世界の経済は絶好調だった。日本も増収増益が続き、ある大手自動車メーカーの役員が筆者に、「佐藤さんが言うように、確かに先進国の(景気の)腰が折れるかもしれないけど、新興国の需要に支えられますよ。うちも6年最高益を更新しているので、いい頃しか知らない社員が増えてきた。少しくらいならぴりっとするために凹んだ方がいいかもしれません」と言った。これこそ緩みである。経営者たるもの、利益を上げることを考え続けなければならない。このような考えが蔓延していたことも、危ないと思った理由である。

リーマンが破綻する数ヶ月前、第5位の投資銀行ベアー・スターンズが経営破綻してJPモルガン・チェースに救済買収されたことは忘れられがちだ。サブプライムローン問題が何度も金融市場を揺らしていた。

フレディ・マック、ファニー・メイでモラルハザード

ベアー・スターンズが救済され、サブプライムローン問題も一段落ついたかと思われた矢先、ファニー・メイ(連邦抵当金庫)とフレディ・マック(連邦住宅抵当貸付公社)の経営危機が表面化した。ファニー・メイとフレディ・マックは公庫というとおり、半官半民の金融保証会社で、信用力の低いローンも多額の保証をしていた。日本では住専(住宅金融専門会社)の問題があったが、それを彷彿とさせた。

“Too big to fail”(大き過ぎて潰せない)だ。潰すにはあまりに大きな影響があるので、国有化された。しかし私はこの中途半端な処理が間違いだったと思っている。株主は当然損害を被ったが、債権者には利払いが続いたからだ。その後も何度も資本注入を受けることで、モラルハザード(倫理観の欠如)が起きたのだと推察される。人間は誰かが助けてくれると思えばどこかで緩みが出るものだ。

デリバティブが主商品に

デリバティブとは金融派生商品といい、先物など金融商品を組み合わせたものである。そもそも先物取引やデリバティブは、企業がリスクヘッジのために買うものだ。例えば、将来原油が値上がり(値下がり)すると燃料費負担が増すので、航空会社が今の値段で将来の燃料を予約する(先物)という具合だ。

しかし、実需とは関係のない人たちが原油も買いだした。ある大手商社会長は「実需で言ったらせいぜい70ドル程度だ」という原油が100ドルを突破して、150ドル近辺まで値上がりした。これは弾けると直感した。

繰り返すが、世間はサブプライムローンもクリアして、最高益を更新していくという意見が圧倒的だった。振り返れば、日本のバブル時も1990年には日経平均が45,000円を突破して、史上最高値をつけると誰もが言っていたのに、年初から株価は下落を始めてバブルは弾けたのだ。

韓国産業銀行の資本受け入れを拒否してしまったリーマン・ブラザーズ

そして9月、本丸のリーマン・ブラザーズだ。破綻する2週間ほど前、リーマン・ブラザーズは、韓国産業銀行と資本受け入れの交渉をしていた。ここからは私見が入るので、事実ではないかもしれないが、間違いがあったら指摘してほしい。

フレディ・マックやファニー・メイを中途半端に救った結果、リーマンにも甘い考えが浮かんだのではないか。もう崖っぷちなのに、自分たちも(当局に)救ってもらえると思い、売価を引き上げたのだ。交渉は決裂して、韓国産業銀行は引き上げることになる。しかし、アメリカ当局はリーマンを見放した。週末、金融機関関係者を集めて、財務当局者たちとリーマン破綻後のシミュレーションをした。

しかし、9月15日市場が開くと、当局の想像を超えて、株式は一斉に売りに回った。全米4位の投資銀行が潰れただけで、全世界の金融がパニックになったのだ。そりゃそうだろう。凄まじい過剰流動性で生まれた市場だから、誰かが一抜けたと宣言した途端、われ先にと一斉に現金化する流れになる。

リーマンは終わっていない

長くなってきたので、この辺から超特急で結論に向かおう(もう少し付き合いください)。アメリカ当局も、AIG(全米1位の保険会社)まで破綻リスクに晒すとは思っていなかった。結局、リーマンは破綻をさせたが、AIGは資本注入をして救うしかなくなった。これはダブルスタンダードで、モラルハザードを起こしかねない。その後、経営危機に陥ったGM(全米1位の自動車メーカー)にも資本を注入するしかなくなった。潰すものと見捨てるものとの明確な基準がないので、これでは資本主義が成り立たなくなる。

全世界で一斉に金融緩和して、過剰流動性をさらに生んだ。中国では4兆元(約54兆円)の財政出動で景気の下支えをした。それが今、シャドーバンキングをいう問題を生み、第二のサブプライムローンになるのではないかと危惧している。あのときは利下げの余地がまだあったから、何とか支えることができたが、今度はもう利下げ余地はない。無理に無理を重ねた金融相場はそろそろ終わりを迎えるはずだ。

根拠はないが、物が豊富になってきた成熟社会において、経済の裕福さだけを享受させようとしても、社会全体がそれを求めているわけではないことに政治も気づくべきだろう。精神的な裕福さを与えるような、政治を目指してほしいと思う。