経済

3メガバンク 仁義なき戦い 狙われるみずほのシマ

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監督当局からも「他のメガバンクに比べ周回遅れ」と揶揄されるみずほ銀行。旧3行の権力闘争に明け暮れ、暴力団融資問題で頭取が交代する始末。委員会設置会社に移行して出直しを図るが、前途は多難だ。三井住友、三菱UFJのメガバンクが虎視眈々とみずほの牙城を崩そうと狙っているなか、相変わらずシステム問題で揺れているからだ。生き残りをかけるみずほ銀行をウォッチしてみた。

みずほの基盤が草刈り場に

「このままではみずほ銀行は3メガバンクから脱落しかねない」と金融界で囁かれている。広範な個人基盤に加え、法人分野では上場企業の7割以上と取引を持ち「潜在力ではトップ」とも言われるみずほ銀行だが、収益力では三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行に大きく水をあけられたまま。

昨年7月にはみずほ銀行とみずほコーポレート銀行が合併し、ようやく「ワンバンク」が実現し、競合2行を猛追するため向こう3年間の融資計画も4兆円に上方修正した。だが、その矢先に系列信販を介した暴力団向け融資が発覚し、出鼻をくじかれた格好となった。

頭取は交代し、委員会設置会社へ移行するガバナンスの一新も図る。だが、金融庁関係者からは「他2行とは周回遅れ」と突き放す声が聞かれる有様。そこにこの4月から三井住友銀行などが強烈な営業攻勢を掛けてくると見られており、「みずほの基盤が草刈り場になるのではないか」と懸念されている。

着々と将来像を描き三井住友銀行と三菱UFJが攻勢

三井住友銀行は4月に1999年以来、15年ぶりの国内営業体制の抜本的な刷新を行った。4月11日には「兵隊の人事異動も発令し、これから全国の営業現場で大きな変化が起こってくる」(三井住友銀行幹部)と語る。”兵隊”と表現するところに、”軍隊”とも呼ばれる同行の攻撃的な営業姿勢の一面がのぞく。

営業刷新の検討は2011年10月の全国拠点長会議での國部毅頭取の一言から始まった。同年4月に頭取に就任したばかりの國部氏は「足元の施策も重要だが、10年後にわれわれはどうあるべきかを、それぞれの持ち場で考えてほしい」と要請した。それから2年強、国内業務改革のタクスフォースが立ち上げられ、営業現場の徹底した調査・フィールドワークが行われた。「100数十人規模の本部行員を営業現場に派遣し、渉外担当者にべったり張りつかせ、顧客のニーズを徹底的に吸い上げている一方、顧客ニースにマッチした営業となっているかどうか分析した」(三井住友銀行幹部)という。

その結果、導き出されたのが法人・個人一体の営業店「エリア」の設置だ。最大のターゲットは個人オーナー企業や個人富裕層である。これまで大企業から中小企業オーナーまでみていた法人営業部について、大企業取引は本店の営業部に特化し、中小オーナー企業は社長個人と社長が経営する会社の両方のニーズに対応する新たな拠点「エリア」に移す。

これにより法人営業部の取引先は3分の2に減少し、提案営業に磨きが変えられる一方、経営のみならず個人の資産運用や相続、事業承継など多様化する個人オーナー企業への取り組みが強化されることになる。法人営業部からエリアへ移管される個人オーナー企業は約2万社にのぼり、業績評価体系も見直される。「三井住友銀行の軍団が動き出すのは脅威」(競合メガバンク幹部)と言っていい。

また、三菱東京UFJ銀行も、中小企業へ向けた融資で各種のファンドを設定し、リテール分野へ切り込んでいる。また、本部の審査担当者が支店に出向き営業のテコ入れを図っている。業績が思わしくない企業に審査担当者と営業現場が一体となって経営改善を働きかけ、前向きな融資に結び付ける「バリューアップ先」と呼ばれる企業群への取り組みだ。そして、赤組(三菱東京UFJ)、緑組(三井住友)の攻勢をまともに受けるとみられているのが青組(みずほ)にほかならない。

片やまたもやシステムでつまずくみずほ

だが、迎え撃つみずほ銀行では、さらなる誤算が生じている。みずほ銀行は2016年春に計画していた基幹システムの統合を17年以降に約1年間延期する。設計や開発作業に想定より時間がかかっているためだが、過去2度も大規模システム障害を起こし、今度障害を起こせば致命傷となりかねないという経営陣の危機意識がある。システム統合の延期に伴い、数百から1千億円規模のコストアップは避けられず、統合で期待された効率化も先送りされる。

実はみずほのシステム統合について、金融庁内部では1年以上も前に「延期もやむなし」との声が上がっていた。みずほのシステム統合は、メガバンクの中で最も難易度が高く、コストがかかる統合方式が選ばれている。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行では、どちらか一方のシステムに「片寄せする」方式が採られているのに対し、みずほでは、現在稼働している2つの勘定系システムを破棄して一から作り直す。

現在稼働している旧第一勧業銀行の勘定系システムは稼働から25年以上にわたり部分的に見直し利用してきた結果、応用ソフトが複雑化しているためだ。だが、勘定系を中心とするメガバンクの基幹システムの総規模は3億~4億ステップに及ぶ。その一つひとつを漏れなく読み取り、既存の商品やサービスを洗い出し、新たな仕様を固め、ソフトを実装し、システム全体の整合性を確保するのは容易なことではない。まさに気の遠くなるような作業だ。みずほのシステム開発は、その入り口を過ぎたにすぎない。

外からは他行の営業攻勢を受け、内にあってはシステム統合という難題を抱える。みずほの内憂外患は深刻と言わざるを得ない。