TTP(徹底的にパクる)の法則 倍速で成長するための行動様式

2019.4.4

ビジネス

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TTP(徹底的にパクる)の法則 倍速で成長するための行動様式

写真/芹澤裕介

競合がしのぎを削る美容外科業界で、屈指の知名度と顧客満足度を誇る湘南美容外科クリニック。同クリニックを手掛けるSBCメディカルグループが通常の倍速で成長できた理由のひとつに、“TTPの法則”がある。TTP=徹底的にパクる、つまり成功者のまねをすることで“成長にかかる時間をワープする”、究極ともいえる時短成長術だ。

※本企画は2018年にSBCメディカルグループ内行われた講演を基にしています。

SBCメディカルグループ 代表

相川佳之 あいかわ よしゆき

1970年生まれ、神奈川県出身。1997年、日本大学医学部卒業後、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。大手美容外科を経て、2000年に独立、湘南美容外科クリニックを開院。料金体系の表示、治療直後の腫れ具合の写真を公開するなどの美容業界タブーを打ち破り、わずか18年で全国に75拠点80院を構えるまでに成長。さらに、審美歯科や頭髪治療、不妊治療、眼科、血管外科、整形外科、がん免疫療法など多分野に進出。2019年中には100拠点を予定。

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人の良いところを徹底的にパクると倍速で成長できる!

かつて美容整形といえば、芸能人や接客業など、外見的な美しさや若さが求められる一部の職業の人が受ける“特別なもの”というイメージが強かった。しかし近年は、メスを使わないヒアルロン酸注射やボトックス注射、レーザーによるシミ取りなどの施術が登場し、いわゆる“プチ整形”が一般人にも身近になった。

その分、美容外科医院の生き残りは激化している。国内での同業他院との価格競争やサービス競争はもちろんのこと、韓国を筆頭に美容整形先進国との競争もある。

そんな競争・淘汰の著しい業界において、SBCメディカルグループは常に急勾配の右肩上がりで拡大を続けてきた。相川佳之代表が第1号院を神奈川県の湘南で開業したのが2000年。そこから19年で、SBCメディカルグループは全国100院に到達しようとしている。事業拡大に伴い、直近の2年で組織は3000人規模になった。2020年には5000人規模になる見込みだ。

なぜ、SBCメディカルグループはこんなにも急成長できたのか。その理由のひとつとして、相川代表は「TTP」を挙げる。

「TTPとは、“徹底的にパクる”の略です。例えば外科医の世界では、上手な先生の手術を見て、その手技を完全にパクった人が一番早く上手になっていきます。これは、どんな職業や仕事でも同じです。ぜひ仕事ができる人を見つけてよく観察し、そのやり方を丸ごとパクってください」

人のまね事は良くないという意識がある人にとっては、“パクる”ことに抵抗を感じるかもしれないが、「自己流でやるより、TTPのほうがずっと理に叶っている」と相川代表は力説する。

「むやみに自己流でやると、どうしても失敗が多くなります。失敗→反省→学習というその一連の手間と時間が、私に言わせればもったいない! せっかく先達が失敗の中から見つけた“正解”があるのに、どうしてわざわざ自分も同じ失敗をしにいく必要があるのですか? 仮に先達が10年かかって手に入れた正解をパクることができたら、自分は10年分を一足飛びできるのです。私はそうやって“時間をワープ”することで、人の倍速で成長できました」

パクると決めたら、とことんパクるのが流儀

「私の手術や仕事のやり方も、遠慮なくどんどんパクって役立ててほしい」という相川代表だが、パクり方には流儀があるといい、「パクるなら中途半端はダメ。とことん完璧にパクることが大事です」と釘を刺す。

徹底的にパクることの重要性を強調するのは、インテリア家具のニトリの例を知っているからだ。相川代表は、ニトリの会長・似鳥昭雄氏とは普段から交流があり、尊敬する経営者としてたびたびアドバイスをもらう仲だ。

「似鳥さんはアメリカの研修で、“家や部屋全体をコーディネートして売る”というスタイルを学び、それを日本に持ち込んで、ニトリを今の大成功に導きました。成功した一番の秘訣は何かと尋ねたら、『他の研修参加者は中途半端にアメリカ流をパクって、うまくいかなかった。自分だけが完璧にパクって成功できた』と笑って話してくれました」

上辺だけ適当にパクって、それらしく見せても底が知れている。本質や神髄まで理解して徹底的にパクることが、パクらせてもらう相手へのリスペクトでもあるのだ。

仕事で成功したいなら、“教えたい人”になれ

では、より効率的に上手にパクるには、どうすればよいか。

「“教えたい人”になるのが一番の近道ですね。物事を教えるには、忍耐力も時間も要ります。その労力を払ってでも教えてあげたいと思ってもらえる人間になりましょう」

相川代表自身も研修医時代、知識と技術を身につけたくて、先輩から「相川に教えたい」と思われるよう意識して努めた経験がある。

例えば、朝10時始業のところを、9時20分に医局に来て誰よりも早く出勤。それを続けていると、いつも9時半頃に出勤してくる5年先輩の医師から、「今まで俺より早く出勤する若手はいなかった。お前、やる気あるな」と認められるようになった。それ以来、始業までの20分間、先輩医師からマンツーマンでさまざまなことを教わることができた。

「毎朝、先輩から5年分の知識や経験を注入してもらえました。休日もいろいろな病院に手術の見学に行っては、行く先々で先生たちの技を片っ端からパクりまくりました(笑)。おかげで、同期の中では一番の成長株になれました」

そんな相川代表が考える“教えたい人”の特徴は、次の5つだ。

[1]素直

  •  失敗やミスした時に言い訳をしたり、人のせいにしたりをしない=自分の落ち度を認めて、すぐに謝ることができる
  •  人のアドバイスや忠告に耳を傾け、受け入れることができる

[2]やる気がある

  •  遅刻や欠席をしない人=人より先に来て準備をしている
  •  「何かできることはありませんか」と自分から仕事を求める
  •  メモを取って忘れないようにする

[3]明るい笑顔

  •  笑顔で応える
  •  姿勢がよい
  •  目と目を合わせて話したり聞いたりする
  •  血色がよく健康
  •  話していて、こちらも楽しくなる
  •  ポジティブな言葉を使う

[4]挨拶や礼儀ができる

  •  はっきり話す
  •  笑顔で挨拶する
  •  みんなに分け隔てなく礼儀正しい
  •  身だしなみが清潔

[5]感謝ができる

  •  小さなことでも「ありがとう」や「すみません」を忘れない
  •  相手の目を見て伝える
  •  人にしてもらった恩を忘れない
  •  恩人に恩返しをする

こういった“教えたい人”のところには、協力や支援や有益な情報が自然と寄ってくる。人の知恵と力を借りられるので、倍速といわず倍々速での成長もしていける。それに比べて、“教えたくない人”は、自分の力だけで頑張らねばならず、その歩みは孤独で遅々としたものになりがちだ。どちらが得な人生か、答えは明白だろう。

ちなみに、相川代表が今も“教えたい人”であることがわかるエピソードがある。

今から数年前、ニトリの似鳥会長から「湘南美容外科クリニックのテレビCMを見たぞ。あれは最低のCMだな」とダメ出しをもらった。そのCMは、相川代表の好きな言葉「情熱」を前面に打ち出す内容だったのだが、似鳥会長は「お前が、情熱が好きとか、患者さんにはどうでもいい話。もっと患者さんが気になる商品と価格を伝えろ」と一刀両断。そこで、相川代表は、翌日すぐに「二重術、〇円。脱毛、〇円」という内容に作り替えた。

「新CMを流したところ、脱毛のオーダーが3倍になってビックリ! 素直にアドバイスを聞いて大正解でした。もちろん、その場で似鳥さんに電話して、感謝を伝えました」

結果にこだわれ、やり方にこだわるな

このようにTTPで時間をワープし、最短で成長してきた相川代表が常日頃からスタッフに言っているのは、「結果にこだわれ、やり方にこだわるな」ということ。この言葉には、次のメッセージが込められている。

「美容外科医療のゴールは、安全な医療を提供し、患者の悩みを軽減して笑顔になってもらうことです。安全と患者の満足には大いにこだわってほしい。でも、そのためのやり方にこだわる必要はなく、各自が考えて自由にやっていいよということです」

わかりやすい例で言えば、麻酔のかけ方は医師によって少しずつ異なり、どれが正解というのはない。言い換えれば、安全に手術ができれば、どのやり方も正解である。そういう意味で、やり方にこだわる必要はないと相川代表は言うのだ。

人の良いとこどりを積み重ねると、自分流ができていく

人のまねばかりしていては、いつまでたっても自分のやり方ができないのではないかという根本的な問いに対しては、「TTPを積み重ねるなかで“自分流”ができていくから心配無用。むしろ、徹底的にパクればパクるほど、自分のものになっていきます」と、相川代表は太鼓判を押す。

TTPのコツは、手本を一つに絞らず、自分の方向性に合いそうな手本はすべて試してみることだ。

「Aのやり方、Bのやり方、Cのやり方といろいろなやり方をパクっていくと、それぞれの良いところが見えてきます。全部の良いところだけを集めていけば、CDのベスト盤と同じで、自分なりのベストに近づいていけます。自分なりのベストこそが即ち“自分流”なのです」